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楽しくておいしくて、災害時の備えにもなる「アースオーブン」のつくり方

みなさんは、「アースオーブン」というものをご存知でしょうか?

パーマカルチャーなどに精通している方はご存知かもしれませんが、どうやらアースオーブンとは、環境にやさしく、生きる力を高め、さらにおいしいピザが食べられるとかなんとか…? うーん、もう少し詳しく知りたいと思い、ワークショップでアースオーブンづくりをしている方に聞いてみました。

教えてくれたのは、アースオーブンをつくるワークショップで講師をしているクドウシュウジさん。2016年からこの活動をして国内外を巡っています。

アースオーブンとは、身の回りにある天然資材で手づくりする、土をベースにしたオーブンです。ピザやパンはもちろん、焼きリンゴやキッシュなどオーブン料理全般がつくれますよ。地域にひとつの共有オーブンがあるだけで、ただ楽しい時間を過ごすだけでなく、災害時にも大きく役立ちます。

つくり方は色々ありますが、基本的には石などでつくった土台の上に、ドーム型のオーブンをつくります。オーブンの材料は、粘土質となる土、それに砂や藁(わら)といった天然素材。作業工程がいくつかあるので、ワークショップは4〜5回に分けて開催するか、合宿作業にするなどしています。全体の形をつくるところまでで約5日前後、そのあと天気にもよりますが1ヶ月ほど乾燥させてから使いはじめるようにしています。

シュウジさん曰く「アースオーブンの魅力は自由度の高さ」なんだとか。基本的なポイントを抑えれば、デザインや装飾は好きにできるし、職人じゃなくてもつくれるし、小さなお子さんも参加できて、さらに材料の入手方法次第ではコストも限りなく抑えることが可能。完成後の楽しみ方や可能性も広がるようです。

これまでに沖縄やタイの山奥など、色々なところからワークショップに呼んでもらいましたが、基本的に「土」はどこにでもあるものです。

ただ、その土地によって土の質には違いがあるし、土を使わせてもらうためには地元の方の協力も欠かせません。みんなで一緒に材料調達の方法を相談したり、どんなアースオーブンをつくって、完成後は何をしたいかと話し合ううちに、参加者同士の仲が深まるんです。コミュニティで共有できるオーブンがあったら、ローカルなイベントなんかも開催しやすくなります。

コンクリートなど他の素材に比べて、土でつくるのは具体的にどんな点がいいのでしょうか?

土には断熱性と、かつ、蓄熱性もあるということです。コンクリートでもオーブンはつくれますが、薪で火入れしたオーブンの内側は300〜400度と高温になりますので、コンクリート素材の場合は近寄ると危険なほど外側も熱くなります。しかし土でつくった場合、外側はそこまでは高温になりません。

また、一般的にレストランやパン屋さんが商業用に使う焼き窯は耐火煉瓦が用いられますが、それはもう職人さんでないと扱えない特殊な素材ですね。すごく技術が必要だし、もちろんコストも相当掛かります。

あと、ドラム缶などで火を起こすことはイメージできるかもしれませんが、熱が逃げるのでパンやピザを焼くのはむずかしいですね。

高温になったアースオーブンの庫内。土の断熱性により、たとえ外側に触れてしまったとしても瞬間的にひどい火傷をするようなことはない。(画像協力: 石尾遼)

オーブンの用途はやはり、パンやピザですよね。

オーブンは元々、西洋の小麦文化から始まったものですからね。ただ、日本や東洋にも土でつくった「かまど」で煮炊きをしていた文化がありました。

僕は、アースオーブンのつくりかたを教えてくれた臼井健二さんのデザインを踏襲させてもらうことが多いのですが、それはオーブンと一緒に、かまども一体化していてすごく使いやすいです。

また、吸気と排気の部分も使いやすさを考えて、オーブンの入り口上部に煙突型の排気口を設けるようにしています。調理している人が煙くならないし、この口の部分がひとつの熱源として使えるので、オーブンを使いながらお湯を沸かしたり簡単な調理もできる。これも臼井さんから学んだデザインですね。

左の黄色っぽいのがオーブン(まだ完成前)上部に排気口を作ることで煙を逃し、熱源にもできる。右の煙突で吸気し、手前の「かまど」でご飯も炊ける。

自由にいろんなつくり方ができることが理解できたところで、基本的なアースオーブンの制作工程を教えてもらいました。

まず土台となる部分を、石を組んだりブロックを使ってつくります。ちなみにこのとき、空き瓶や空き缶、ガラスや廃コンクリートといった、行き場のなくなった建築廃材を内部に使うことができるので、厄介だと思っていたものが活かされるチャンスでもあるんですよ。

土台ができたらその上に「焼き床」と呼ばれる、パンやピザを乗せる平らな部分をコンクリート板やレンガでつくります。ここまでできたら後はドーム部分。ここも色んなつくり方がありますが、僕は入口にレンガを使うことが多いですね。

空洞になる部分は砂を積み上げて山にして、その上で成型して乾燥させてから、最後に中の砂をかき出しています。アーチ型にするときは水を混ぜて手でペタペタとするので、お子さんたちも楽しんで参加してくれます。この成型の時に、粘土を混ぜて固まりやすくする人や、竹で型をつくる人など、つくり方は本当いろいろあります。

あと、この一連の作業の前に屋根をつくること!これは、忘れてはならない、とっても大切な最初にすることです。

屋根が大事とは、作業中のためですか?

いいえ、アースオーブンは土でできているので、水分が多くなると痛みやすく、基本的には雨が当たらない場所を確保してからつくる必要があります。完成した後も頻繁に使い続ける方が、乾燥により庫内の温度が上がりやすいですし、オーブン自体が丈夫になり長持ちします。水分量による膨張と収縮を繰り返すとどうしてももろくなるので、使わずに長期間放置するようだと傷みやすいですね。

なるほど。一度オーブンをつくったら永遠にそのまま使えるわけではないんですね。

アースオーブンの思想として「永久に存在するものではない」という大前提があります。だからこそ、特別なスキルのある人だけがつくれるのではなく、一般の人がつくること、そして壊れたら補修すること、その過程さえも楽しむという姿勢が大切ですね。

小麦粉を練って手づくりピザをするだけではなく、そのピザを焼くためのオーブンから自作する。それ自体を楽しい遊びのひとつと考えるようになれたら、今までお金を払って誰かに頼むしかなかった物事の捉え方が少しずつ変わります。「自分のしたいことは地球の資源で自分でつくれる」と気がつくと、思考が柔軟になるんです。

ワークショップを続けているうちに、僕はアースオーブンがそうした気づきの第一歩にぴったりのツールだと感じるようになりました。ワークショップには年齢もバックグラウンドも様々な人が来てくれますが、多くの人が「おいしい!」とか「すてき!」といった、純粋でシンプルな感性で喜んでくれます。

アースオーブンをつくるためにどこで石が拾えるかを考えたり、完成した後、継続的に薪を手に入れる方法を考えたりしながら、地域や環境のことを自分ごとにできます。

それもすごく自然にできるんですよ。パンやピザを焼いて食べたら、少し温度が下がったオーブンにアルミホイルで包んだリンゴやサツマイモを放り込む。おいしいデザートが焼きあがるのを待ってる間におしゃべりしていれば、自然とそんな会話になるもんです(笑)

(画像協力: 石尾遼)

シュウジさんの話を聞いていたら、自宅の庭にアースオーブンがあったらいいなぁという妄想が広がりましたが、どうやら「肝心なのは完成した後」だそう。

ワークショップをしたいと言われたら、いつも最初に、オーブンを活かせる土壌があるのかどうかを確認しています。将来的なメンテナンスのためにも持ち主自身がワークショップに参加することは必須。僕だけがオーブンをつくる請負いみたいなことでは意味がないので。

あとは、完成後にオーブンを使う頻度の可能性や、資材を入手するコネクションやアクセス、コミュニティなど。それらがあって初めてアースオーブンが活きると思うからです。

ようは「うまいピザを食いたい!」みたいなことを、どのくらい本気で楽しめるかってことです。便利さだけで言ったら、コンセントをつないでスイッチを押すオーブンの方が断然便利なことには間違いありませんからね。でもそこをあえて不便な手段を選ぶには、相当本気で遊ぶ気合いが必要です。

 
ワークショップに呼ばれた地域で参加者とともに寝泊まりし、地元の土地から土や石をいただいて始める一連のフローを通して、シュウジさん自身も「決してガイドブックに載ってない旅」を楽しんでいるそう。

どうやらアースオーブンとは、「みんなが幸せな時間を共有し、生きる視点が広がるツール」と言えそうです。

もしもあなたのコミュニティにアースオーブンがあったら、どんな活用ができそうですか?

(画像協力: 石尾遼)