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編集の力で、地域はもっとクリエイティブにできる。多摩エリアでウェブメディアをつくり、仕事をコレクションする「TeiP」の「地域の編集長」という存在 #求人あり

グリーンズ 求人での募集期間は終了しました。募集状況はTeiPにお問い合わせください。

東京都の西側にある多摩エリアは、30市町村からなる地域。自然が多い一方で都心へのアクセスもよく、都民の1/3にあたる約400万人以上が暮らしています。

この多摩エリアで、クリエイティブとビジネスをつなぐプロジェクト「TeiP(テイプ)」がはじまりました。「Tama editorial incubation Platform」の頭文字をとった名前で、編集の視点から多摩の企業・地域・人をつなげ、クリエイティブな仕事を地域に増やして活性化させるプラットフォームです。

そんな2018年10月にはじまったばかりの「TeiP」は、編集者の視点で「多摩らしさ」を編み直し、ウェブマガジンや本を通じて広く伝えていく「地域の編集長 候補」を募集しています。

いったい「地域の編集長候補」とはどんな仕事なのか、そもそも「TeiP」とはどんなプロジェクトなのか、「TeiP」の代表で「けやき出版」代表取締役社長の小崎奈央子さんに伺いました。

多摩でクリエイティブとビジネスをつなげたい

国立市生まれの小崎奈央子さん。「たまら・び」(2019年4月1日をもって休刊)編集長を経て、2015年に4代目の取締役社長に就任しました。

立川市にある「けやき出版」は1981年の創業以来、多摩という地域の魅力を伝えている出版社です。テーマごとに多摩エリアを紹介する雑誌「たまら・び」のほか書籍や冊子などを制作・出版しています。

小崎さんは「たまら・び」を制作するなかで、ある思いを抱えていました。

小崎さん 「たまら・び」は3ヶ月に1冊つくっていたのですが、毎回30人から50人ほどの方たちに協力していただき、情報やアイデアをいただいてきました。

でも、せっかくおもしろい人たちと出会っても、制作が終わったら関わりがなくなり、どうしても出会いが一過性になってしまって…。この関係性が恒常的に続いて、本づくりだけでなく地域でやってみたい取り組みなどに発展させることができたら、と思っていました。

これまでに103号も発行された「たまら・び」。

その母体としてはじまったのが「TeiP」です。東京都が産業発展のために新たなプレイヤーを生み出し、創業を促進することを目的に、3年間補助金を支給する「インキュベーションHUB推進プロジェクト」という創業支援の一環として採択されました。

けやき出版を中心に、多摩信用金庫株式会社まちづくり立川NPO法人こととふラボの4社が協働し、多摩エリアで企業・地域・人がつながり、それぞれの「働く」価値を創造するプラットフォームをつくっていく取り組みです。

「TeiP」キックオフ交流イベントの様子。(写真提供: 株式会社けやき出版)

多摩エリアには複数の美術大学があり、卒業生を中心とするデザイナーやイラストレーター、カメラマン、建築家といったクリエイターが多く住んでいます。けやき出版では、意識的にそうした地域のクリエイターたちと仕事をしてきたそう。しかしそうした中で、小崎さんは歯がゆさを感じていたと言います。

小崎さん 多摩エリアのクリエイターの方と仕事をするなかで、多摩はどうしても23区に比べて案件や金額が少なかったり、おもしろい案件があっても多摩以外の代理店に発注してしまっていたり、パートナー(クライアント)もデザインに対する価値をあまり見出していなかったりすることに課題を感じていたんです。

そこで、編集的な視点によって地域の課題とパートナーとクリエイターの関係を編みなおすことで、多摩にしかない仕事をつくるプロジェクトとして「TeiP」を立ち上げることにしました。

「TeiP」では、クリエイター、パートナー(地域の企業・行政・団体など)、クリエイティブエディター(クリエイターやパートナーをつなげ、プロジェクトをつくり、まわしていく存在)が連携して、地域に新しい仕事を創造していきます。

仕事をつくり、発信し、交流し、学ぶ。「TeiP」の4つの柱

もう少し「TeiP」について詳しく見ていきましょう。

「TeiP」には4つの柱があります。まず、「Teip」のメインとなるのが、多摩エリアで新たな仕事を創造する「WORK」。「WORK」は、クリエイターと企業・行政・団体といったパートナーの間に、営業や契約、チームづくりなどをおこなうクリエイティブエディター(コーディネーター)が入り、編集的な視点から事業をつくり、まわしていくことで、多摩エリアに新たな「WORK(仕事)」を生み出していく機能です。

すでにいくつかの取り組みが動きはじめていて、そのひとつに「立川レモンプロジェクト」があります。もともとは、立川市商店街連合会と国産レモンの発祥地である広島県呉市のとびしま地区の住民とが連携して、とびしま地区から国産レモン発祥の苗木をわけてもらい、立川市で栽培して「立川とびしまレモン」という新しいレモンをつくる活動が行われていました。

この活動の連携事業が「TeiP」の「立川レモンプロジェクト」で、「立川とびしまレモン」を使った商品を開発して、クリエイターの力でブランド化して行くというものです。このプロジェクトを通して、すでにいくつかの「WORK(仕事)」がスタートしています。

レモンの苗木を植えている様子。(写真提供: 株式会社けやき出版)

2つめの柱が、「WORK」で生まれた仕事などを発信するウェブマガジンであるBAAALL(ボール)」。春夏・秋冬と年に2シーズンごとにテーマを決めて発信していく特集企画や、多摩エリアのクリエイターが書く連載などを通じて、「クリエイティブなエリア・多摩」を目指して発信していきます。

今回募集している地域の編集長候補の方が関わるのは、主にこの「BAAALL」の編集です。また、「BAAALL」の内容を整理して書籍にすることも視野に入れているそう。

もうひとつは「BAAALL BAR(ボール・バー)」。月に1度、多摩のクリエイターが集まり、お酒を飲んだり料理を食べたりしながら仕事の話をする場です。

「BAAALL BAR」の様子。多摩エリアのクリエイターたちが集まり、交流の場に。(写真提供:株式会社けやき出版)

小崎さん クリエイター、パートナー、クリエイティブエディター、それぞれがただ出会えば仕事が生まれるというわけではなく、相手がどんな人なのかを知った先に「じゃあこういう仕事をやってみよう」という話になると思うので、会議室で話すというよりは、気軽に飲みながら話せる場をつくろう思ったんです。定期的に会える機会がないと仕事に発展するような関係性は築けないと思うので、毎月1回開いています。

クリエイターでなくても興味のある方は誰でも歓迎で、ざっくばらんに話しながら仲良くなれる場になれば、と思っています。

毎回30人ほどが集まり、なかには3回連続で来た方がほかの参加者に「TeiP」の説明をする場面も。「Teip」の取り組みを自分ごととして捉えている人が着実に増えているようです。

最後に、「TeiP SchooL」という、多摩エリアにクリエイティブな仕事を増やすための実践的な学びと交流の場。半年間にわたって、前半は現場で活躍する人たちに学ぶ10の講座、後半はグループワークでイベントやメディアの企画をおこないます。

「TeiP SchooL」の開校式では日本仕事百貨のナカムラケンタさんがゲストに登壇。(写真提供: 株式会社けやき出版)

「地域の編集長候補」という仕事

東京都から補助金が支給されるのは3年間。そのため、それ以降も継続できるようマネタイズを意識して具体的なプロジェクトをつくっていく必要があります。それも、クライアントから受注してプロジェクトが動き出すというよりは、「自分たちから新しい仕事をつくり、発信していきたい」とのこと。どの地域にもあるような仕事でなく、多摩ならではのクリエイティブな仕事を生み出そうとしています。

そのために必要なのが、編集者の視点。地域の人々も気づいていないようなこのエリアの魅力を見つけ、編み直し、発信する「地域の編集長」の存在が不可欠なのです。

具体的に「地域の編集長候補」が取り組むのは、ウェブマガジン「BAAALL」の企画・ディレクションなど。先ほど紹介した「WORK」と連動して、地域で生まれた仕事を魅力的に紹介していきます。

また、「BAAALL」は4月に立ち上がったばかりのウェブマガジンなので、「地域の編集長候補」はメディアの立ち上げを担う存在でもあります。そのため、具体的な業務がきっちりと決められているわけではありません。「決められたことをこなしていきたい」という方にとっては難しい環境かもしれませんが、「これまで培った編集の経験を生かして、地域のメディアをイチからつくっていきたい」という方にとっては、非常にやりがいがある仕事になるはずです。

また、ゆくゆくはウェブマガジンの編集だけではなく、「BAAALL」の内容を元にした新刊ムックの編集長業務や、編集のスキルを活かして地域に新しい「WORK=仕事」を生み出すことも視野に入れられているそうです。もちろん、すべて一人で担うのではなく「TeiP」のメンバーとともに実行していきます。

ウェブマガジン「BAAALL」のイメージ。http://baaall.tokyo

とはいえ、なかなか仕事内容は幅広く、いきなり「編集長」となって統括することは難しいため、はじめは小崎さんの“右腕”として多摩エリアを見ていくところから始めることになりそうです。(そのため、今回は「地域の編集長”候補”」という名前を使っています。)

小崎さん ゆくゆくは編集長としてプロジェクト全体を把握し、進めていってほしいですが、まずはウェブマガジンの企画や更新から取り組んでいただければと思います。

ウェブマガジンはオンラインでクリエイターとつながる場を目指していて、クリエイターの方の個性がわかるような連載などを予定しています。最終的には記事をまとめて書籍化も見据えています。

そのため編集経験のある方に来ていただきたいですが、本をつくることだけが「編集」ではないと思っていて、「WORK」やウェブマガジンの特集である「COLLECTION」をどう発展させていくかなども一緒に考えていきたいし、柔軟性を持って自由にできることをポジティブに受け取ってもらえる方が合うと思います。自分が関わることで「TeiP」が動いていくという責任感を持ちつつ、ワクワクして進めてもらえるといいですね。

小崎さん自身も「自分にない視点や経験を教えてもらいたい」と言うように、ずっと小崎さんの下について学ぶというよりは、基本的な仕事の流れをつかみ、地域の方々との関係性を築いたあとは、ともに「TeiP」や多摩エリアの仕事をつくっていくような人が求められています。

まちの原石を発掘していく

現在、「TeiP」に携わっているのは15人ほど。4つの事業者のメンバーと、個人でけやき出版に関わりのある人たちです。

そのうちの一人、寺島由里佳さんは府中市在住のフリーランスのカメラマン。「たまら・び」の撮影をしていた縁から小崎さんに誘われ、「TeiP」のメンバーになったそう。アドバイザーとして外からの目線で見ながら、どんなプロジェクトにするのか話し合っています。

「カメラマン以外の関わりを持つことができてうれしい」と寺島由里佳さん。http://yuricamera.net

寺島さん はじめは一介のカメラマンに何ができるのか、すごく悩みました。写真を撮る仕事は、すでに素材があるのでとてもわかりやすい仕事なんですね。でも「TeiP」はないものをつくる仕事。0から1にするとき、1のなかに無限のやらないといけないことがあり、手探りの状態でやっています。

その過程は「発掘作業をしている感じ」だと表現していました。

寺島さん 私自身も多摩に住んでいて関わっていたのに、「TeiP」に関わることで新たにおもしろいものがたくさん落ちていたことに気づきました。

たとえば、「BAAALL BAR」で初めて立川で刀剣の砥ぎ師さんに会ったのですが、今まで出会ったことのない人たちや仕事など、未知の出会いがたくさんあります。

一方で小崎さんは、「私も楽しくてあれもこれも手を出してしまい、結果的に自分の首を締めてしまっている…」と反省モードに。

そこへ「それだけ楽しい種がたくさんあるということだね」と絶妙なフォローをしてくれたのが、「TeiP」事業者のひとつである株式会社まちづくり立川の岩下光明さん。立川市で不動産会社を営む傍ら、先ほど紹介したレモンプロジェクトのパートナーでもあります。

岩下光明さんのご実家は、大正時代から立川市で代々商いを営んでいるそう。

岩下さん 市内でビルをいくつか貸しているのですが、ただ賃貸業をやるだけでなく地域のために何かできないかと思い、地域の課題を経営という力で解決するまちづくり会社を立ち上げました。シェアオフィスや多摩地域に特化したクラウドファンディングサイト「FAAVO東京多摩中央」などを運営しています。

小崎さんとは「地元を元気にしたい」という思いが同じなので、仕事の付き合いだけでなく緩やかな連携を常に持っています。

岩下さんが捉えている「TeiP」を、こんな例えにして説明してくれました。

岩下さん 多摩エリアにたくさんの鉱山があって、ダイヤとか宝石があるけどまだ誰も気づいていない。それを「TeiP」のクリエイティブエディターや「地域の編集長候補」が見つけ出して、掘って、「これ何かわからないけど、磨かない?」とクリエイターに渡し、コレクションしていくというイメージ。僕は地域のつながりがあるので、鉱脈や原石を出す役割なのかな。

小崎さんも「考え方次第で仕事はたくさんある」と頷きます。

小崎さん フリーランスの方は個人だと行政や大きい仕事が来ても契約できなかったり、持て余してしまったりして断ることがあるとよく聞きます。そうした埋もれている仕事を「TeiP」が引き取ったり、丁寧に掘り起こしたりして、磨いていきたいですね。

多摩エリア内で完結できる仕事を増やす

寺島さんは「TeiP」に関わる際に、小崎さんの思いに感心したと言います。

寺島さん 「TeiP」はどんなことを目指しているのか聞いたときに、「23区にある大手の代理店と並ぶまでレベルアップしていけたら」と小崎さんが言っていて。今までになかった初めての試みだと思うんですが、ポジティブな変革を多摩から起こしていけたらと思いました。

小崎さん 多摩エリアにも大きいプロジェクトを動かせる企業がたくさんあるのですが、みんな23区にある大手の代理店に頼んでいるのが実情です。多摩にある企業と組めば地域のことを知っている人と近い関係性でできるし、ネームバリューや規模感だけで判断せず、多摩で完結できる仕事もあっていいと思うんです。

多摩でそれが実現できれば、ほかの地域でも応用できるはず。そのためにも「TeiP」の存在を全国に知ってもらい、多摩全体のよさを伝えていきたい、と意気込みます。
今回募集する人も、多摩にゆかりのある人のほうがいいのでしょうか?

小崎さん 多摩に関わりのない方でも、多摩を好きになってもらえたら問題ありません。むしろ私は多摩中心に考えてしまいがちなので、外からの目線を持って視野を広げてくれるのもありがたいです。

小崎さん 「TeiP」は3年後以降もずっと続けていきたいので、多摩全体がクリエイティブなまちになるよう、一緒に長期的な計画を立てられるといいなと思います。

「これは3年後の理想像を描いたものです」と、このイラストを見せてくれました。

「TeiP」の未来の理想像を描いたイラスト((C)yosiyuki yokosuka)

小崎さん いろんな人と知り合って、自由に集まれる場所をつくりたいと思っています。多摩エリアの情報センターや地域ブランドの発信スペース、ライブラリー、カフェ、キッズスペース、そこに編集部や地域企画室も入れたい。

「TeiP ShooL」の開校式の参加者に、この絵を見て「まさに自分たちがやりたかったことだ!」と言ってくれた人たちもいて。求めている人がほかにもいて嬉しかったです。

「地域の仕事を編集する」という役割を、まちの未来を見据えて、同じ地域の人たちと手の届く範囲で、それも東京でできる機会は、なかなかないと思います。

多摩に住んでいなくても、クリエイターでなくても、ともに地域の原石を見つけ、磨き、広げていきませんか? すでに答えがあるような仕事ではなく、予想していなかった出来事に直面することもあるでしょう。しかしだからこそ、自分の「編集」というスキルによって地域が変わっていく様子を肌で感じることができるはずです。

(写真: 秋山まどか)

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株式会社けやき出版:担当 木村
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