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日本の3割が空き家となる未来。新しい価値を生み出し、地域の暮らしを守る「空き家相談の担い手」を育成します。

2033年、日本の空き家率は30%を超えるといわれています。それは、3軒に1軒が空き家になる時代がくるということ。これを社会問題と見るか、それとも利活用可能なリソースが地域に増えると考えるか? とらえ方ひとつで日本の未来の描き方は全く違うものになる予感がしています。

株式会社LIFULLが運用を開始した「LIFULL HOME’S空き家バンク」は、地方自治体が管理する空き家、空き地と、それらの利活用を希望するユーザーとをマッチングする情報プラットフォーム。国土交通省が支援する「全国版空き家・空き地バンクの構築運営に関するモデル事業」の一環として、各自治体の空き家等情報の標準化・集約化を図り、全国どこからでも簡単にアクセス・検索できるようデータベース化し、空き家の活用を促進するプロジェクトです。

育成講座の受講から事業展開までのイメージ

また、2019年からは、全国の地域に根ざした「空き家の専門家」を育成するプログラムも始まります。プログラムづくりのパートナーである「NPO法人空き家コンシェルジュ」とともに、今こそ始めるべき空き家対策と、その可能性について株式会社LIFULLとNPO法人空き家コンシェルジュそれぞれの責任者にお話をうかがいました。

お話から見えてきたのは、単純な物件活用の問題でなく、地域、まち、自治体でどう暮らしていきたいかを考え、その暮らしに「タウン・プライド」あるいは「ビレッジ・プライド」とも言える「誇り」を取り戻そうとする志であり、地域に向き合う覚悟から生まれる「希望」でした。

渡辺昌宏(わたなべ・まさひろ)
(写真左) 株式会社LIFULL 地方創生推進部
地方創生推進部にて空き家対策に関わり全国の自治体や地域を飛び回る日々。
有江正太(ありえ・ただたか)
(写真右) NPO法人空き家コンシェルジュ 代表理事
奈良県大和高田市出身。広告代理店・建築関係の仕事のかたわら実家の相続問題を機に空き家対策に関わる。奈良県の橿原市に本部を置き、吉野にも古民家を再生した事務所を構え現在5事務所を運営。空き家相談会は年間30回を超え、空き家相談件数は累計4500件を超えている。

磨き、受け継ぐ事が地域の歴史と文化につながる

株式会社LIFULL 地方創生推進部の渡辺昌宏さんは、フランス人の友人から「なぜ築100年のビルを惜しげもなく、新しいビルに建て替えるのか?」と質問された経験があります。

渡辺さん 彼から見れば築100年経っていることが価値なんだ、と。年数を積み上げていっているものを、なぜゼロベースの無機質なものに変えていくんだ? その年輪こそが本来の価値じゃないか。それが地域の歴史と文化につながる。とすごい勢いで言われましたね。

住宅にまつわる政策や歴史、住宅に対する考え方はその国その国によって違うということを前置きさせていただき、調べてみると欧州人は、親の世代から4世代持つ家を残そうと考えるので、建替えは頻繁に繰返さないそうです。そうして家を受け継いだ世代がさらに磨き、次へとつなげるのです。それが百年以上続く建物と美しい町並みとしての景観をつくり上げることにつながっているのですね。

積み重なった価値は、活かされて始めて地域資源になります。

土地統計調査結果によると現在820万戸もの空き家が日本各地に存在し、野村総合研究所の予測では2033年、日本の空き家率は30%を超えるといわれています。この事実に目を向けたとき、何らかのアプローチを行う必要があると感じました。

渡辺さん 空き家の約56%が相続のタイミングによって空き家になります。例えば、2025年には団塊の世代が日本の人口の20%を占め、その先の2040年には、ある統計によると政令指定都市ひとつ分にも迫る人口が減少すると予測されています。

ここで問題になる一つは、家の相続です。残された家に住み手が見つからず、空き家になって荒廃していくのは、まわりから見ていても辛いものです。家族で話し合うきっかけをつくり事前に準備することで、多様な選択肢から解決策を導けた案件もたくさんあるようです。

一方、空き家対策を進める自治体側にも悩みがあります。総務省の調査では、空き家対策における自治体の悩みとして「相続人が多数いるなどの場合、事務負担が大きい」「全般に人手が足りない」といった声が挙げられています。

こうした状況を踏まえ自治体と連携し、相続など空き家の対策に安心して相談できる、専門知識を持つ人材を各地域に増やしていこうとするのが、これから始まる「空き家相談の担い手育成講座」、空き家コーディネーターを育成する講座です。

持続可能な社会のために、空き家の相談窓口を

奈良で「NPO法人空き家コンシェルジュ」を運営する有江正太さんは、株式会社LIFULLと連携して専門家育成と相談窓口の展開に取り組むパートナーです。有江さんは2013年に法人を設立し、奈良県下の自治体と連携して空き家の相談や所有者の課題解決、利用者とのマッチングなどに取り組んできた先駆者で、地域に根ざした対策と対応に実績があります。

有江さん 設立当初は奈良県下の39自治体を3回まわってヒアリングしました。すると「自治体としては何とか対策したいけれどもノウハウと人材が足りない」、「職員は地域のいろんな業務を兼務しているので空き家対策の専属にはなれない」という現状がわかりました。

じつは空き家の相談は、ほぼ生活相談ともいえる内容が多く、丁寧に関わる必要があるんです。所有者の健康状態や身体的な問題、経済的な問題、そもそも物件の立地や管理の状態など、複合的に絡まった問題があります。じっくり腰を据えてその糸をほどいてあげないと次のステップに進むことはできません。

つまり、単に利用者とマッチングすることが空き家問題の解決ではなく、相談者のさまざまな問題解決を図ることこそ空き家問題の解決に必要、ということ。

それぞれの状況を理解した上で、空き家のマッチングにいたる流れを「コンシェルジュ」(今回の講座での名称はコーディネーター)として自治体に提案したことで、有江さんへの相談件数は年間1500件にもなりました。

有江さん自身、祖母が認知症になったことをきっかけとして家の相続、管理問題に直面しました。相続手続きの煩雑さや、どこへ何から相談すればよいのかがあまりにも不透明なことに疑問を持った経験が「NPO法人空き家コンシェルジュ」の設立につながったそうです。

有江さん ケースはさまざまです。例えば、奈良に残っていたご両親がともに亡くなられて息子さんが東京にいらっしゃる、としましょう。東京の相場感覚でその物件を対処したいと依頼されますが、思っておられる価格とはどうしても開きがあります。東京だと20〜30万円で物件を譲るって考えられないイメージですよね。

最初のうちは定期的に家を管理に来られるのですが、その方自身も年齢を重ねていくと体力も費用も負担になり、次第に足が遠のきます。地域の業者に頼もうと思っても、どこにどういう風に頼めばいいのかよほどのご縁がないとなかなかわからない、とお困りの場合があります。

また、現在お住まいの方が認知症になられたとしたら、ご本人の判断能力が低下しているなかで安易に対処できない、なんてことも多いですね。

他にも世間体や親戚の目が気になる、とか、中には家を手放すことで自分たちが生活に困窮しているように思われないかと懸念される場合もあるのだとか。人間関係の調整と法律の知識に長けた調整役になれる人がいないと、なかなか解決に進まず、そのまま放置されることも多いそうです。

空き家は住宅以外にも店舗や工場などもある

渡辺さん こうした問題を解決した物件が空き家のデータベースになっていきます。課題解決のステップを踏んだ、リアルタイムで正確なデータベースがあるからこそ、利用者の多様なニーズに応えることが可能だと思っています。

空き家対策は、地域のインフラになっていく

「空き家の活用や利用者とのマッチングには見落としがちな視点がある」と有江さんは言います。不動産業の視点からだけで誰のための空き家対策なのかを考えてしまうと、暮らしの視点が抜けてしまう、と。

有江さん 地域の空き家というと、移住や定住振興で新たに移り住む方にどうしてもスポットが当たるんですけど、空き家対策というのは、水道や電気と一緒で地域に不可欠なインフラになっていくかもな、と思うんです。一番重要と考えるべきは、今その地域に住んでいる方々が住みやすく、この先も住み続けられる状態にするための空き家対策をする、ということ。

そう考えると、地域にとってその空き家を壊した方がいい場合もあれば、残した方がいい場合もある。その判断基準に地域性が表れ、それによって地域ごとの特色が生まれていきます。きっと、昔はもっとそういう価値基準が各地にあったんだろうと思いますね。

各地へ出向いた空き家対策説明会から住民さんとの交流がスタートします。

有江さんが言う通り、空き家の問題は、所有者とその家族に留まらず、物件がある地域全体の暮らしをどのようにしていくかという「都市計画・地域計画」とも密接な関係にあります。

渡辺さん そこで、空き家コーディネーターの役割が非常に重要だと考えています。LIFULLが提供しようと思っているのは、サポートデスク、業務支援システム、育成講座など、空き家コーディネーターとして活躍できるためのバックアップと専門性のインプットです。

空き家を中心に深く地域に寄りそうことができる空き家コーディネーターは、地域での起業のきっかけにも非常に有効な事業のようにも思えます。空き家の相談が地域の相談に発展し、自治体と連携したまちづくりの仕事にもつながっていく可能性も大いにあります。では、どんな人がこの、空き家コーディネーターに向いているのでしょうか?

有江さん 何かの専門分野を持っている方もいいんですが、意外とニュートラルな視点を持てる方がいいのかな、という気がします。

もともと住んでいる人よりも、他の地域から来た人の方が利害関係や先入観がなくてやりやすいように思います。実際に岩手の釜石市などはそうした人材を採用して成功しています。

有江さんはこれまでの経験から、各地の行政センターなどで所有者や地元の方を集めた空き家管理や活用のセミナーをしても、地域によって危機感のズレが大きいと感じています。

空き家対策を準備できる段階から早めに始めることこそが、例え全国の空き家が2000万件を越えるような時代になったとしても慌てずにすむために必要ではないでしょうか。そこで、フラットな視点で地域の未来図を描ける人がますます求められることでしょう。

コーディネーターの目でまちをあるくと、どんな未来を描くべきかのヒントがみつかります

森をみて地域の「希望」をコーディネートする仕事

地域にある個々の空き家はいわば1本の”木”のようなもの。その木々が集まった”森”をどんな森に育てるのがいいかを考え、保全と新緑を芽吹かせていくのが空き家コーディネーターの仕事といえるかもしれません。有江さんと渡辺さんのお話からはそんな印象を受けました。

有江さんが手掛ける活用事例のひとつ。かつての呉服屋を利活用中。

まちのチャレンジショップとして定期的にマーケットを開いています。

空き家を住まいとして活用する場合には、DIYなどで改修することで住む人の価値観に則した暮らしを叶えることができるでしょう。あるいは、ゲストハウスや企業のオフィスとしての活用が進めば、地域に新たな生業や産業が生まれることにもつながります。

住宅密集エリアならば、安全性を考慮した防災空地として残す方法もあるでしょう。シェアキッチンやカフェといったパブリックスペースとして活用すれば、これまでにない出会いが生まれる場所になるかもしれません。

空き家問題は、確かに日本全体の課題ですが、活かし方次第では地域にさまざまな「希望」を灯す地域資源であり、空き家コーディネーターはとても必要とされる仕事です。これまでになかった価値観に着目することで、新しい未来のつくりかたにつながります。

– INFORMATION –

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3/14(木)green drinks Tokyo「空き家と人の関係をデザインする。」


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