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beの肩書きは、まちづくりや組織開発にいかせる! 『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』の立ち読みはこちら!〈vol.3〉

対話メソッドとしてのbeの肩書き、3つの事例

これまでbeの肩書きのワークショップを80回以上重ねてきましたが、そこで気づいたことがひとつありました。それはbeの肩書きを通じて、“自分理念”を見つけたり、弱みを強みとしてリフレームできたりといった個人的なメリットだけでなく、組織的なメリットもあるということです。

心を許せる他者の存在によってお互いのbeが引き出され、さらにbeとbeが共鳴することで組織がいきいきとしていく。その結果beの肩書きは、組織の中の何らかの課題を解決するための対話メソッドにもなりうると気づいたのでした。

組織論のジャンルでベストセラーとなっている『ティール組織』(英治出版、2018年1月発行)という書籍の中で、「メンバー全員の能力が存分に発揮されていることや、個人的な不安やメンバーとの関係性の上での気になること等に組織として寄り沿い合えること」を意味する「ホールネス(個人としての全体性の発揮)」というキーワードが重要視されています。

そして、まさにbeの肩書きを共有することは、すでにdoでつながっている仲間たちとより深く、全体的に出会い直すことを可能にするのです。

ということでPART.2の最後に、僕がこれまで実践してきた「beの肩書き×キャリア教育」「beの肩書き×組織開発」「beの肩書き×まちづくり」という3つの事例をご紹介します。

①beの肩書き×キャリア教育

ひとつめの応用例は、「自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てること」=「キャリア教育」の分野です。

僕の現場は京都精華大学ですが、そこでは「will beの肩書き」として、未来のあり方を想像し、それに近づくための新たなdoを考えていくという授業を行なっています。
 
例えばbeの肩書きを「音楽を真面目に聴いてきた音楽療法士見習い」にしたAさんは、処方箋のように気分に合わせて音楽をお届けしてくれる「ONGAKU錠剤」というプロジェクトで、「バイトが忙しすぎて勉強が手に付かないときに、リラックスできるBGM」を仲間のために選曲してくれました。
 
自分で課題を見つけて、プロジェクトのアイデアを考え、計画を立てて実行する、という一連のステップは、自由度が高いからこそ難しい課題です。そのとき「これをやることは、beの肩書き“的”な自分にとってどう嬉しいのか?」というシンプルな問いを立てることで、納得のいく次の一歩を見つけやすくなります。

そしてもちろんお互いのbeを共有することで、「将来に焦っていたのは自分だけではなかった」という安心感も得られていたようです。

ただ、いきなり「デザイナー(ドン!)」と宣言するのは気が引ける、という学生の気持ちもわかるので、「デザイナー見習い」のようにすべてに「見習い」を付けるなど、まだまだ試行錯誤しているところです。今後は小学校から高等学校まで、それぞれのステージに合わせたキャリア教育のためのワークをデザインしていきたいと考えています。

②beの肩書き×組織開発

ふたつめの応用例は、「個人間の関係への働きかけで組織を活性化し、個人の能力を引き出そうとするアプローチ」=「組織開発」の分野です。
 
これまで数十人規模のベンチャー企業や大手企業など、社員研修の一環としてbeの肩書きワークショップを実践してきました。最初はそんなご相談をいただいていること自体驚きでしたが、おかげさまで「なかなか自分自身について振り返る機会がなかったので、とても新鮮だった」「仲間とより深く話せるようになった」といった嬉しい声をたくさんいただくことができました。

仕事を通じてひとりではできないことを成し遂げるために、私たちはさまざまな人とつながる必要があります。そして多くの場合、先に大まかな計画があって、明確な役割分担があって、それに合わせて人を採用します。そういう背景もあり、私たちはdoとして振る舞うことにすっかり慣れてしまっていますが、本当に求めているのは、doをきっかけにしながらも、beでつながりあうことなのではないでしょうか。

最先端の組織論として「ホールネス」が注目されている背景には、多くの企業がメンタルの不調や人材の流出に頭を悩ませている現実があります。そしてその原因のほとんどは、当事者の責任というよりも、本人のポテンシャルと仕事の内容とのミスマッチにあるのではないか、と僕は観察しています。

そのときお互いのbeの肩書きを共有していれば、例えばbeの肩書きが「声優」というメンバーに、「声」をテーマにしたプロジェクトをアサインすることで、その人の深い成長を促すことができるかもしれません。そうやってミスマッチを減らすだけでなく、“愛のあるムチャブリ” の確率を高めていけるように、これからも企業向けの取り組みに注力してゆきたいと思っています。

③beの肩書き×まちづくり

最後の応用例は、「まちづくり」の分野です。
 
2018年6月に芦屋市で開催された「未来をつくる芦屋たぶん100人会議」では、be の肩書きをきっかけにまちとの関わり方を考えるワークショップに挑戦してみました。

そのときにモチーフとしたのが、自分の成長のために打ち込む「部活動」でも、やらされ感のある「当番活動」でもなく、「新聞係」や「お祝い係」など、よりよい状況(学校でいうと「よりよいクラス」、まちづくりでいうと「よりよいまち」)をつくることをいちばんの目的として、それに向けて自分の得意なことに打ち込む「係活動」です。

例えば、「植物園職員のような不動産営業担当さん」なら「まちのみどり係」、「チアリーダーのようなホームヘルパーさん」なら「まちの応援係」、「天気予報士のようなおばあちゃん」なら「まちのお天気係」など、doではなく beから新しい「まちの○○係」を考えることで、まちづくり活動の新たな可能性が開かれるのではないか、そんな仮説を立ててみました。

その結果、「まちの楽しいことコーディネーター係」「まちのお片付け係」「まちの見守り係」「まちの案内係」など、たくさんの係が生まれ、そのための最初の一歩となるアイデアを生み出すことができました。

ここでもやはり、単なる “顔見知り” から、ともに根付いて暮らす仲間へ、ホールネスな出会い直しが起こっていたように思います。あなたのまちでもぜひ、まちづくりの第一歩として、beの肩書きを取り入れてみませんか?

『beの肩書き: 「人生の肩書き」は、プレゼントしよう』、p89-93より



みんなの「beの肩書き図鑑」のページはこんな感じ

〈vol.1〉〈vol.2〉と3回にわたってお届けしてきた、立ち読みコーナーいかがでしたでしょうか?

立ち読みでご紹介できなかった①ワークショップの具体的なやり方や、②NUMABOOKS代表の内沼晋太郎さん、SIONEブランドデザイナーの河原尚子さん、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん、ツクルバCCOの中村真広さんのインタビュー、そして③全国の実践者によるコラムなどなどは、ぜひ実際に本を手にとってご覧いただけるとうれしいです。

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