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IKEAのショールームをふさぐ壁。そこから聞こえてきたものは…怒号に、すすり泣き!? ドメスティック・バイオレンスを見える化する「the Room」

世界の女性の3人に1人が被害に遭っているという、ドメスティック・バイオレンス。

それほど多くの人が抱えている問題にもかかわらず、表面化しづらいのは、その多くが家庭内などの密室で行われるから。

よく児童虐待などの報道で、「(加害者に対して)そんな人だとは思わなかった」とか、「(気になるところはあったけど)そこまで深刻だとは思わなかった」といった近所の人のコメントが聞かれますが、それと同じように、ドメスティック・バイオレンスも明るみに出にくい「密室の暴力」なのです。

いつもどこかで起きている。
だけど見えづらい。

そんなドメスティック・バイオレンスの問題を、多くの人に考えてもらうには…。とても難しいこの課題に、イタリアのNGOと意外な企業が、驚くようなアイデアで応えました。

舞台となったのは、北欧のチャーミングなデザインの家具や雑貨が手頃な価格でずらりと並ぶ「IKEA」の店舗。インテリアコーディネートを、ひとつひとつの「部屋」として見せるディスプレイにはワクワクさせられますよね。「こんな値段で、こんな工夫で、部屋が、暮らしが変わるのか!」と。

去年の11月25日、イタリアのとあるIKEAの店舗を訪れた人たちは息を呑みました。「今日は、どんな家具や雑貨と出会えるのかな」そんなウキウキした気分で店舗に足を運んだところ、他のショールームと違って、壁に覆われている部屋が。近づいてみると、何やら物々しい声が聞こえてきます。

そんなことされると、お前を殺したくなるんだよ!

なんでそんなことするの…?

口答えするんじゃねえ!

また暴力を振るうの…?

怒りにまかせた声、恐怖に怯える声、嗚咽…。
じっと耳を澄ましていると、それがドメスティック・バイオレンスのリアルな音声であることがわかります。

壁には、こんなメッセージが。

ドメスティック・バイオレンスは、あなたが想像するより近くで起こっています。時には、あなたと壁ひとつ隔てた先で起こっているかもしれません。

ショールームではさらに、実際にあったドメスティック・バイオレンスを再現する演劇も行われ、多くの買い物客にその恐ろしさを啓発しました。

実は、このキャンペーンが行われた11月25日は、「女性に対する暴力反対デー(International Day Against Violence on Women)」として国際的に制定されている日。店舗でのこの施策は237ものメディアで取り上げられ、6200万人の人にSNSでリーチするほど大きな話題に。同時に多くのNPO団体に対して、電話でドメスティック・バイオレンスに悩む多くの人たちの相談が殺到したのだそう。

ドメスティック・バイオレンスに限らず、当事者でなければ気づきにくい社会課題というのはたくさんあります。それを、どういう場で、どういう形で伝えれば、自分ごととしてとらえることができるのか。また、多くの人に伝えられることができるのか。

本当に難しいことですが、問題が起きている現場である「部屋」と、多くの人が訪れる「部屋」があるIKEAの店舗を結びつけるアイデアが秀逸ですね。ふだんはハッピーな売り場とのギャップも、触れる人に強烈な印象を残します。そして、NPOと協力して売り場を社会的なメッセージを発する場にしたイタリアのIKEAの姿勢も素晴らしいです。

何かを伝えたい。
でも、どうしたら効果的に伝わるだろうか…。

悩みに悩んだあとは、ふらっと街を歩いてみてはどうでしょう。思いがけないところに、驚くようなアイデアのヒントが転がっているかもしれませんよ。

(翻訳協力: 加藤絢子さん/「作文の学校」卒業生)

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