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大人の野遊びが、里山も地方も元気にする。「Japan Bushcraft School」認定インストラクターの藤野龍一さんが目指す、ブッシュクラフトでつくる里山と私たちのもう一つのカタチ。

リュックひとつで森に泊まる。
テントやたくさんの調理道具は持ち込まず、持っていくのは最小限の道具と少しの技術と知恵だけ。

こんなキャンプに挑戦してみたい人はいますか?

キャンプといっても、オートキャンプやコテージ泊、グランピングとさまざまなスタイルが選べるようになりました。そしてここ数年、アウトドア愛好家たちの間で密かな人気を集めているのが、サバイバル技術をベースにした「ブッシュクラフト」というキャンプスタイル。

“サバイバル技術”と聞くと、その言葉の響きから敬遠してしまう方もいるかもしれません。しかし、ブッシュクラフトは命を守るための技術を学ぶ過程にある”楽しさ”にフォーカスした、趣味感覚で野遊びを楽しめる、むしろどんな人でも取り入れられるプログラムなのです。キャンプに限らず、野原や公園など自然があるところであれば、どこでも役に立つといいます。

意外かもしれませんが、ブッシュクラフトが里山の暮らしをのぞく入り口にもなり得るんです。

と話すのは、藤野龍一さん。「里山ホテル ときわ路」で里山の魅力を発信するマーケターとして携わりながら、「Japan Bushcraft School」の認定インストラクターとしても活動しています。

ブッシュクラフトは里山の暮らしとどうつながるのでしょうか? 実際に、ブッシュクラフトの講習会に参加し、さらに藤野さんにお聞きしました。

薪も焚き火台もいらない。
森を歩いて手に入れたもので手軽に焚き火ができる!

知人のSNSで興味を持った方、ソロキャンプを極めたい方、ガチキャンプをしたいと旦那さまを誘って参加されたご夫婦など、さまざまな思いを持った参加者が集まっていました。

訪れたのは、茨城県常陸大宮市で行われたブッシュクラフトアドバイザーの認定講習会場。この日の講師を務めたのは、「Japan Bushcraft School」代表であり、「ブッシュクラフト 〜大人の野遊びマニュアル〜」の著者である川口拓さんでした。

今回体験したのは、ブッシュクラフトの楽しみの主役でもある”焚き火”。
焚き火台も何もない森の中で、どうやって火を起こすのでしょうか。

まずは地面に穴を掘ります。そこに拾い集めてきた二本の太い枝、スギの枯れ葉、細い枝、中くらいの枝、太めの枝を置いたら、火床のでき上がり。

火床のそばには、焚き火の熱を無駄なく利用するために、ファイヤーリフレクター(反射板)をつくります。4本の杭を地面に打ち込んだら、その間に丸太や枝を置いていきます。

そして、着火。ブッシュクラフトでは定番アイテムだというメタルマッチやライターで火がついたら、ケトルでお湯を沸かしましょう。

火の番をするのに腰かけがあるといいな、と椅子もつくってみました。


座る人数に合わせて、枝の長さを変えられるのも手づくりならでは。

お湯が湧いたら、拾ってきたヒノキの葉でお茶を淹れてみるのもいいでしょう。

沸いたお茶に、細かくちぎったヒノキの葉を入れて蒸らしたらできあがり。ほのかな甘さがあって美味しかったです。

最後は、焚き火の後片付け。薪を真っ白になるまで燃やしきって粉々にした後、熱が下がって安全な状態になっていることを確かめてから、灰を森にまいていきます。

熱が下がったか、火種が残っていないか、灰に手をかざしながら確かめます。

ここで焚き火をしていたとは思えないほど、きれいに片付けたら終了です。
焚き火をする前と同じ状態に戻すことを心掛けるのは、大事なことですね。

あっという間の体験でした。作業も掘る・切るといったシンプルなものが多く、初めての人でも取り組みやすい印象。

そして、必要な材料を森の中で揃えられることも魅力の一つ。
周りを少し歩くだけで、木の枝や葉はいたるところに落ちています。放っておけば荒れてしまう森が、こうして人が入ることできれいに保たれるんだと、里山でブッシュクラフトの活動をすることに可能性を感じました。

ブッシュクラフトは里山の暮らしそのもの。里山に足を踏み入れるきっかけにしたい。

藤野龍一(ふじの・りゅういち)
リゾート運営会社で企画から運用までを経験。現在は、持続可能な社会を実現するために新しい里山のあり方「里山3.0」を掲げ、地域を巻き込んだ里山体験を提案する「里山ホテル ときわ路」で、マーケティングの責任者を務める。
2016年4月より内閣府地方創生推進事務局 地域活性化伝道師。2018年1月より認定ブッシュクラフト インストラクター。2018年6月より「Japan Bushcraft School」を運営する「一般社団法人 危機管理リーダー教育協会」理事。

これまで「Japan Bushcraft School」では、川口さんが全国で開催するアドバイザー講習・インストラクター講習のほか、福岡の「ねたび自然体験農園」での講座開催などが行われてきました。これに加える形で、「里山ホテル ときわ路」に隣接する森をフィールドに、講習会や野営実習などの形でブッシュクラフトを里山体験で取り入れたプロジェクトが始まっています。

ロープワークを学ぶインストラクターたち

大人だけでなく、里山で思い切り遊ぶための子ども向けのイベントも不定期で開き、今後は「Japan Bushcraft School」として、北海道、長野、兵庫と連携して展開するなど、活動の幅を広げていく予定でいます。

子どもたちも火床をつくるところから始めます。

例えば、ブッシュクラフトで学ぶロープワークは、実は庭や畑の柵づくりなど里山の暮らしでも日常的に活用されています。柵づくりのためにわざわざ材料をお店で揃える必要はなくて、里山に生えている竹とロープがあればできることなんです。

里山の暮らしの技術としてのロープワークを、楽しい野遊びで体系的に学べてしまえるのがブッシュクラフトの魅力のひとつだと思っています。

ロープワークに限らず、ブッシュクラフトを知れば知るほど、里山の毎日の暮らしと共通するものを感じたと藤野さんは言います。

ブッシュクラフトの技術そのものは、里山に暮らす方がやっていること、里山の暮らしそのものだと思うんです。その根底にあるものは同じで、限られた自然環境の中でいかに豊かに過ごすかだと思っています。それを、必要に迫られて身につけるか、遊びの中で体系的に学ぶか、その入口が異なるだけで。

ブッシュクラフトを始めてから、一人の「生き物」として必要なことと、贅沢としてほしいものとの線引きがはっきり分かるようになって。身の周りに物が減るとダイレクトに自然環境が影響するから、周りを良く見るようになりましたね。森の中で日が暮れる前に火起こししていないと不安に駆られるようになったり。

里山には何もないと言うけど、だからこそ自分で見つけ出し、つくり出すおもしろさがあると思うんです。ちょっと木陰がほしかったら、近くの木にシートを結びつけただけで、数人が休める場所をつくることができたり。自分の発想とその時々の環境の組み合わせは無限だから、飽きようがないんですよね。

こうした楽しさも含めて、ブッシュクラフトが里山の現状を知るきっかけにもなるし、里山暮らしに足を踏み入れる入り口にもなり得ると思います。

荒廃する森から、人が足を踏み入れる森へ。
フィールドとして開放すれば、自然に里山と関わることができる。

なぜ、藤野さんは里山でブッシュクラフトを取り入れた活動を始めるようになったのでしょうか。

「里山ホテルときわ路」の裏にある森は市が管理する土地なのですが、その活用方法は苦慮されていたようです。人が定期的に足を踏み入れないために荒れ放題で、イノシシが下りくることもあって。「里山ホテル ときわ路」の敷地と隣接していたので、森をお客様と楽しく活用することでこうした問題を解消したいという思いを抱いていました。

そんな時、偶然知ったのが、ブッシュクラフトだったと言います。

ブッシュクラフトって楽しいなという感覚で、知人5人と「里山ブッシュクラフト部」を立ち上げたんです。初めは本やインターネットをもとに見よう見まねでやっていたのですが、それでは物足りなくなり、ブッシュクラフトスクールの講習会を受けました。そしたら、講師の川口さんの哲学にも共感するところがたくさんあり、どっぷりとはまってしまいました。

ところがブッシュクラフトは、直火を使い、薪や枝を森の中から見つける過程に楽しみを感じるもの。勝手に山に入って焚き火をするわけにもいかず。キャンプ場だと直火が禁止だったり、整備が行き届いているために木の枝や落ち葉が片付けられていたりと、フィールドの問題につきあたります。

最初の発想はすごく単純で、「里山ホテル ときわ路」の裏にある森をブッシュクラフトのフィールドとして開放すれば、管理に困っている木の枝や落ち葉を活用できる。使う人がいない森から使う人がいる森へと変えられるのではないかと思ったんです。

日本の森の多くは、材木として使われる一部の木以外は切り出すほど赤字になり、森の管理そのものが経済的に成り立たないといいます。「里山ホテル ときわ路」の裏の森も人が足を踏み入れなくなったことで、森は荒廃し、野生動物の生息圏と人間の生活圏との緩衝地帯という里山が本来持つべき役割を果たしていませんでした。

人が里山に入ることで、枯れ枝や杉の葉などの落ち葉が活用できるし、イノシシも近寄らなくなり、森も踏み固められていきます。ブッシュクラフトを通して、自然と里山と関わることができると思うんです。

フィールドとしてのニーズも実感していたので、この森の資源に付加価値をつけられて、経済的な価値を生み出せるのではないか、と思ったんです。

遠い存在になってしまった里山が、自然に身近な存在に。地方にあるブッシュクラフトのフィールドで、もう一つの里山との関わり方が始まっています。

ブッシュクラフトで各地の森を訪れる人が増えれば、地方はもっと元気になる

今回は特定の地域で行われている「Japan Bushcraft School」のアドバイザー講習会でしたが、幅広いカリキュラムを、少しずつ全国で展開していきたいと考えているそう。藤野さんに今後の展望を教えていただきました。

サバイバル術をベースにしたブッシュクラフトは、キャンプではもちろん、災害時や緊急時でも役立つ技術です。いざという時に命を守ることのできる技術を持つ人が増えてほしいし、たくさんの人にブッシュクラフトを知ってもらいたいです。

地方への移住に興味があっても、そこで暮らしていく術を知らないことって多いと思うんです。何でもかんでも既製品・完成品を買ってくるのではなく、モノはつくっていいんだっていう知識と技術を持っておけば、里山で暮らす基礎にもなるし、地域の人との共通の話題にもなりますよね。

子どもたちに木の枝とブルーシートでちょっとした秘密基地をつくってみたら、おもしろいねって地元の方と話すきっかけになったこともありますし。ブッシュクラフトが地域の輪に入っていくきっかけになってほしいし、田舎暮らしの大変さを払拭したいですね。

現在、「Japan Bushcraft School」の公認インストラクターは約60人になり、しだいに広がりを見せています。

日本各地にインストラクターが増えて、地域のインストラクターとして迎えることで、みなさんに日本各地の森を訪れてほしいと思います。フィールドでブッシュクラフトを満喫した後は、もう一つの楽しみとして地域の美味しいお店などに立ち寄って、ぜひ地域の方と交流してもらいたいですね。

地域と関わる形に、”関係人口”という言葉がありますが、移住に固執せず、継続的に特定の地域を訪れる人が、ブッシュクラフトを通してもっと増えることで、地方が元気になってほしいと思います。

火を起こすことや、ちょっとした道具をつくることは時間と手間は掛かるものですが、今回そういった体験をした私は、今の恵まれた暮らしに感謝すると同時に、充実感を感じました。

里山の暮らしもきっと同じで、便利ではないけれど、自分の手でつくる暮らしの先には、喜びがあるはずです。

人と自然がともに生きる価値があったからこそ、受け継がれ、続いてきた里山。そんな里山の”楽しみ方”を知るところから始めてみるのも、いいかもしれません。

ブッシュクラフトにピンときたみなさん、まずは「Japan Bushcraft School」のイベントを訪れてみませんか?

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