greenz.jpは2018年7月16日に12周年を迎え、タグラインを「ほしい未来は、つくろう」から「いかしあうつながり」へ変更しました。
でも「いかしあうつながり」って、一体何なのでしょう? みなさんは、暮らしや仕事の中で、いかしあうつながりを体感したことはありますか?
あれこれ語る前に、まずは感じることから!
ということで、5月27日、greenz peopleのみなさんとともに「いかしあうつながり」を体感するワークショップを開催しました。
この記事でご紹介するのは、年に一度、日本全国や世界各地にちらばるgreenz peopleが一同に介するイベント「ピープルサミット!』の一幕。全員参加で「できること」「してほしいこと」を語り合い、マッチングすることで見えてきた、「いかしあうつながり」のある未来の可能性とは?
みなさんも自分の「できること」「してほしいこと」を思い浮かべながら、現場の空気に触れてみてください。
関係性のデザインという冒険へ
ワークショップの前に、編集長・鈴木菜央より、ピープルのみなさんへ「いかしあうつながり」についてのお話がありました。「いかしあうつながり」という言葉に込めた思いの詳細はこちらのコラムに譲りますが、この場では、ともに歩み続けてきたピープルの皆さんへ、こんなメッセージが投げかけられました。
菜央 「つながり」というものについて、今後何年かかけてgreenz.jpで考えていこうと思っています。
関係性をデザインすることは、すごく大きな可能性がある。つい何かを成した人と団体の活動ばかりに目がいってしまうけれど、社会問題や環境問題が複雑になってきている今、これまでのやり方では解決できないと思っていて。
たくさんの人たちが関係性をつくれる人間になっていくことが糸口になるのではないかと思います。
まったく新しい領域で仮説でしかないんですけど、皆さんと一緒に関係性というものをつくって深めて冒険していきたいなと思うので、一緒に旅にでかけてくれるとうれしいです。
“ほしい未来をつくる仲間たち”から、“いかしあうつながりをつくる仲間たち”へ。ピープルのみなさんの存在なしでは、グリーンズのつくりたい社会はつくれません。
だから誰よりも早く、「いかしあうつながり」を、ピープルのみなさんとともに体感したい。「ピープルサミット!』でこのワークショップを開催する背景には、そんな鈴木菜央の想いが込められているのです。
わたしのできること、あなたのできること
お話の後は、いよいよワークショップです。
まず、参加しているメンバー全員の「できること」・「してほしいこと」をリスト化した「でしリスト」をつくります。「でしリスト」は「give me give you list」とも呼ばれ、コミュニティ内のニーズと資源を可視化するためのもの。地域通貨を運営しているコミュニティなどで活用されています。
たとえば「できること」なら、「デザインができる」「ギターが演奏できる」といったスキルや、「キャンプ用品を貸せる」「自宅の一部を自由に使って!」といった資源など、自分の差し出せるものをリスト化していきます。
一方「してほしいこと」は、「SNSの使い方を教えてほしい」「喪服を貸してほしい」といったスキルや資源のほか、「子どもを預かってほしい」「旅行中に庭の水やりをしてほしい」といった困りごとも対象になっていきます。
今回のワークショップは、こうしてできあがったピープルコミュニティの「でしリスト」を見合うなかで、「できること」と「してほしいこと」がマッチして、“いかしあうつながり”がピープル同士の間で生まれていくことをねらいとしたものです。
さて会場は、まずは「できること」の可視化からスタート。
6〜7人ほどのグループで机を囲み、1人につき5分ずつ周りの人がインタビュー。「できること」をふせんに書き出します。
あるテーブルではこのような会話がありました。
Aさん 私、なにができるかな。
Bさん ファシリテーターができるんじゃない?
Aさん あー、そういえばイベントやWSよく主催してるね。
Cさん 普通免許くらいしかもってないよ。
Dさん それ、車を運転できるということだよ!
Cさん たしかに中型の車までは自信をもって運転できるかもしれない。ハイエースとか。
Dさん 大きいワゴン車を自信もって運転できる人って意外といないよ。
人と話す中で自分のもっているものに気づく風景にたくさん出会いました。
会場のあちこちから、思いもよらない特技に「おおー!」という歓声もあちらこちらからあがってたいへんな盛り上がりです。
「できること」ワークのおわりに各グループで出たものを全体でシェアしたところ、
・砂漠を250km走ることができる
・けん玉とマリオオデッセイ(ゲームです)が得意
・だんじり(祭礼に奉納される山車などのこと)をもっている
・ネイチャージャーナル(身近な自然を知るための絵日記)が描ける
など、この会場内に色とりどりの「できること」が潜んでいることが見えてきました。
安心して掘り下げられる場
つづいて「してほしいこと」を発見していくワークへ。
今度も同じグループで、1人3分ずつ語り合っていきます。
aさん スペイン語を話せるんだけど、使わないと忘れてしまうから話す仲間がほしいかな。
bさん Airbnbしてみたらいいんじゃない?
cさん スペイン語が母語の子どもの先生とかはどう?
aさん たしかに子どもは好きだからいいかもしれない!
と、「してほしいこと」についてaさんが考えていなかった視点を仲間からもらい、次の一歩を踏み出すきっかけを得られたようです。
dさん 地域通貨をうちの地域でも・・・本や酒の交換なんかをからめてやりたいな。
eさん なぜ本と酒を?
dさん もう少し地域の人と出会いたいし、語り合いたいというのがあって。本や酒はそのきっかけにいいかなと。たとえばBBQイベントなんかも開催できたら。
eさん 友人にBBQマイスターいるよ!
この会話では、早くもマッチングが生まれていますが、「できること」のワークではたくさんのことをあげていくのが目立った一方、「してほしいこと」ではひとつを詳しく掘り下げる対話が多かったように感じます。グループ対話によってお互いの人となりを共有しあってきたことが、安心して身の上の話をできる土台を築いたのかもしれません。
各テーブルで出てきた「してほしいこと」をシェアしていただくと、
・暑い季節がやってくるから、おいしいクリームソーダがあるお店を知りたい
・200万の古民家を一緒に運営する仲間がほしい
・福島の村に戻ってくる人のための夜楽しめるバススナックのママを募集している
・今晩一緒に飲む人に出会いたい
・山の上で料理をしながら音楽をかけてパーティをする仲間がほしい
・木造古民家のシェアハウスに一緒に住んでほしい
など、これまたユニークなニーズが浮かび上がりました。
困りごとは、つながりごと
最後のワークは「でし列車をつくろう」です。
各自が出した「してほしいこと」から、これこそはというものを1つ選んで紙に書き出し、自分のニーズが誰かに満たされたと思ったらその人の後ろにつきます。満たされた人が増えれば増えるほど列車が長くなっていくのです。
正太郎 だれかのニーズを自分では満たせなくても「こんな人がうちのグループにいたよ!紹介するね」とつなぐ意識をもつといいですよ。
と、グリーンズの植原正太郎。なるほど、こうすることでニーズのマッチングが加速していきそうです。
会場では、たくさんの「してほしいこと」が出逢います。
だんだんつながっていきました。
参加者の方々に、ニーズが満たされて後ろにつこうと思ったのはどんなときだったか聞いてみました。
「フリーランスの生き方を知りたい」方は「経験談を話せるよ」と言われたとき、
「インターネット業界で働きたい」方は「詳しく知っている人がいるから紹介するよ」、
「お寺の住職さん向けのイベントをやりたい」方は「この流派の住職さんの知り合いはたくさんいるよ」
など、それぞれに決め手の一言があったようです。
トータル3時間にわたって行われた、「いかしあうつながり」をつくるワークショップ。いかがでしたでしょうか?
この時間にマッチングの相手が見つからなくても、たとえば家電を求めていた方同士で「リサイクルショップに買いに行きましょう!」といった会話が盛り上がっていたり、会場のあちこちで新たなつながりが生まれていました。
また、この会場で集まった「できること」「してほしいこと」は、その後「でしリスト」となってgreenz people会員限定のFacebookグループページにアップされ、随時更新されています。運用開始からまだ2ヶ月足らずですが、ピープル同士のマッチングが起こって解決することも。また、「でしリスト」を活用して暮らしもつながりも豊かに耕していく部活「でし部』も始まり、盛り上がりを見せています。
会場で参加していた方の中には、このワークショップを地元でも開催する人も現れました。私も一緒に仕事をする仲間とやってみて、「こういうことが好きなんだ!」「そういう悩みをかかえているのかあ」など、ふだん一緒に活動をしている中では見えにくい特技や考えごとを発見することができ、よりお互いを知り合える機会になりました。
また、共通する点がたくさんある人とは共感しあえることが多いのはもちろん、違う点が多い人同士ほど「できること」と「してほしいこと」のマッチングが起こりやすく、ちがいは宝だとも感じました。
ワークショップというほどではなくても、日々の雑談などの中でもこういうことを話し、聴き合っていくことで人と人との温かいつながりがつくられていくのでしょう。
まずは身近な人に「できること」、「してほしいこと」をたずねてみませんか?
そんな一人ひとりの小さな行動から、新しい関係性が広がってゆく予感がします。