\12周年、タグラインをリニューアルします/

7月16日からgreenz.jpのタグラインは「ほしい未来は、つくろう。」から「いかしあうつながり」に変わりました。

詳しくは編集長鈴木菜央のコラムを読んでもらえると嬉しいです。

7月16日、greenz.jpのタグラインは「いかしあうつながり」に変わりました。

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子どもの貧困を解決しないと、日本の未来は危うし!? NPO×行政×地域のステークホルダーで課題に立ち向かう「コレクティブフォーチルドレン」の取り組み

このところ、“子どもの貧困”という言葉を目や耳にする人は多いでしょう。しかし、実際に貧困状態にある子どもに出会う人は少ないかもしれません。

いわゆる貧困状態にある子どもとは、”相対的貧困”といって国民ひとりひとりの所得の中央値の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもを指します。具体的には年間約120万円以下で暮らす世帯のこと。現在、子どもの7人に1人が貧困状態にあるともいわれています。

一見彼らは、衣食住に困っているように見えないかもしれません。
しかし統計上ではこの“相対的貧困”は、夜霧のように今の日本に満ちています。つまり子どもの貧困は、可視化されにくいのです。

今日はそんな闇に差し込む光のような存在「コレクティブフォーチルドレン(以下、コレチル)」をご紹介します。昨年もgreenz.jpにご登場いただきましたが、その後取り組みはどのように進化・発展をとげているでしょうか? 共同代表を務める高亜希さんと、河内崇典さんにお話を伺いました。

高亜希(こう・あき)
(社)「コレクティブフォーチルドレン」共同代表/大阪に拠点を置くNPO法人「ノーベル」代表。子どもを産んでも当たり前に女性が働ける社会を目指して、病児保育サービスを提供するNPOを立ち上げる。ひとり親家庭の子どもやお母さんと接する中で、課題解決をするには複数のNPOなどの組織の連携が必要と感じ、2016年、NPO法人「コレクティブフォーチルドレン」を立ち上げる。

河内崇典(かわうち・たかのり)
(社)「コレクティブフォーチルドレン」共同代表/大阪市住之江区に拠点を置くNPO法人「み・らいず」代表。学生時代にアルバイトで重度の身体障害者の入浴介助を行ったことをきっかけに、在学中から「み・らいず」の前身となるボランティアサークルを立ち上げる。誰もが当たり前に地域で暮らせる社会を目標に、障害者へのヘルパー派遣事業、不登校の子どもたちへの学習支援、居場所づくりなどを行う。

子どもをキーワードに、6つのNPOが集結

「コレクティブフォーチルドレン」は子どもの貧困を解決するべく、関西を拠点に子どもや福祉にまつわるサービスを展開する6つのNPOが集まってできた、2016年生まれの新しい組織です。

共同代表を務める高さんは、病児保育(37.5度以上の熱があって子どもを保育園に預けられず仕事も休めない親に代わって、保育すること)を提供するNPO法人「ノーベル」の代表。新たな団体設立の背景を改めて語ってくれました。

高さん 「ノーベル」は子どもを産んでも当たり前に女性が働き続けることを目指して立ち上げた団体です。しかし活動の3年目ぐらいからひとり親家庭や、発達障害・身体障害を持っていて医療機器を使うケアをしなければならない子どもなど、様々な家庭や子どもと出会って、意識の対象者が母親から子どもになってきたんです。

福祉的な介入が必要な場合もあって、どこかにつなげたいけど、つなげられない。つまり「ノーベル」だけでは対処できなくなって1団体としての限界を感じることがでてきました。

ノーベルは2011年の東北・東日本大震災で福島から避難してきた親子のために保育サービスを提供し、河内さんが代表をつとめるNPO法人「み・らいず」は相談支援に乗るサービスを展開していました。

この時「もっとみんなが一緒にサポートしないと、何も解決できないのではないか」と思ったこと、それが「コレチル」が立ち上がった原点。「み・らいず」でも現場で貧困家庭に出会うことも少なくなかったそう。

河内さん 「み・らいず」で20年ほど福祉のサポートをしてきましたが、僕らが拠点とする大阪でニートやひきこもりも40歳ぐらいになっている。もっとそうなる前に何とかできなかったのか? という場面も多くて、高さんに「もっと(問題の)前のほうに行かないか?」と話をしました。

実は河内さんは、関西の社会起業家の登竜門であるビジネスプランコンペ「edge」の理事をなさっています。そして、高さんも2009年に「edge」にプレイヤーとして参加し、その後数年前まで理事兼事務局長として関わっていました。

かねてから関わりのあった2団体の代表は、意見も一致。おなじく「edge」にゆかりのある他の4団体も加わり、「コレクティブフォーチルドレン」が立ち上がりました。

参画している組織は、病児保育サービスの認定NPO法人「ノーベル」、障害者・高齢者・ひきこもりの子などを支援するNPO法人「み・らいず」、1人親家庭への学習支援を行うNPO法人「あっとすくーる」、地域や社会の課題をデザインで解決するNPO法人「Co.to.hana」、青少年への支援を行う学生主体のNPO法人「ブレーンヒューマニティ」。

学びたい意欲を、もっと伸ばせるように

ちなみに貧困状態にある子どもは、ぱっと見た目にはわからなくとも、友達が通っている塾や習いごとに、「行きたいけど行けない」など、隠れた我慢を強いられることが多いそう。

実際に親の所得の格差は、学歴の差にもつながる(*)という統計結果もあります。学ぶ機会、択肢の少なさ、習いごとなどに通わず、ひとつの家庭の中だけで得られる情報の少なさは、子どもの人生に少なからず影響します。(*)図表1‐1‐6 親の収入と高校卒業後の進路 文部科学省

また子どもの成長には、年齢や発達段階、家庭の状況によって、さまざまな支援が必要です。そこで「コレチル」は、利用申し込みのあった0歳から20歳までの子どもや若者がいる家庭に向けて、塾や習いごと、育児サービスなどで使用できるクーポンを発行。2017年10月には尼崎市内在住の25人にクーポンが配布されました。

その結果、利用者から以下のようなコメントが寄せられました。

幼稚園のお友だちが習いごとに行っているのを見て、自分も行きたいと思っていたのはわかっていましたが、やはり費用が厳しく、我慢させていました。クーポンのおかげで、子どもは「ママ、ありがとう!」と言って、笑顔で毎週楽しみに習いごとに通っています。

学ぶことに積極的な心の芽を摘みとらずに、育てることができた。その子の可能性を何倍にも伸ばしてあげるきっかけになったのではないでしょうか。

また、「コレチル」はただクーポンを配布するだけではなく、「子ども若者相談員」という相談窓口を設けて利用者の相談に乗っています。その相談員の存在が、とても重要な役割を果たしているようです。

クーポンのお陰で、今まで使えると思っていなかったサービスを使うことができて助かりました。また友達や家族、先生などには相談しづらいことも、相談員に気兼ねなく話せるところがいいです。

クーポンを使って塾にいき、無事高校に合格しました。いろいろ話を聞いてもらえたのも良かったです。

子ども・若者応援クーポン事務局のメンバー。写真手前の女性と、左奥の男性は子どもや保護者の相談にのる相談員。

相談員は「み・らいず」でこれまでケアマネなどの経験を積み、障害者の支援をしてきた相談のプロ。家族や先生に話しづらいことも相談できるなんて、まさに心のサードプレイス。なくてはならない存在です。

このクーポン事業は規模を拡大し、2018年4月からは200人の子どもと若者に配布される予定です。

高さん 4月から利用開始のクーポンは10月のクーポン配布に比べ資料請求の応募数もぐんと増えました。

今回は尼崎市に後援していただいているので、市内のソーシャルワーカーの方も協力してくださり、必要とされるところにコレチルのチラシを配っていただいていますので、一定の効果を感じています。今後も事業者を募り、あらゆる場面で支援の網目を細かくしていけたらと思います。

本当に“コレクティブ”なサポートのあり方とは?

クーポンが利用できる塾やお稽古事の事業者も、いまや200社・団体にまで増えました。クーポンがどこで使えるのかという具体性が増し、利用の促進にもつながっていきそうです。

現状では小・中学生の塾やお稽古ごとの利用が多いそうですが、4月からスタートするクーポンの利用状況を見て、今後の対応を柔軟に変えていきたいと高さん・河内さんは話します。

河内さん 4月から200人に一挙にクーポンを配るので、想定外のことも起こると思うのです。いまは比較的意識が高い人にクーポンが届いているけど、そうじゃない人にもどうやって届けるかとか。どの年代の子どもへの支援を強くするべきだとか議論していけるのは楽しみです。

高さん 今年1年の結果がどうだったかで、来年以降はアプローチを変えるかもしれません。問題の根本を解決することが大事で、いま現状のあり方にこだわっているわけではないのです。

今年の結果を見て支援のあり方をどんどん変えて行くという姿勢は、イノベーティブそのもの。

実際に、クーポンの利用先の事業所に訪問すると、塾などからは「僕らも何とかしたいと思ってたんです」と好意的な言葉をもらうことも多いそう。こうした子どもたちを見守る地域の網の目は細かいほうがいい。河内さんはこれからの支援のあり方についてビジョンを語ってくれました。

子ども・若者応援クーポン記者会見の様子。

河内さん 2016年、僕たちが、日本財団が主催する「ソーシャルイノベーター支援制度」に応募したときは、複数のNPOが集まって、NPO同士や行政と連携することが大事だと思ってたんです。

しかし、実際には複数のNPOと行政だけでも足りない、日々地域の子どもたちと関わっている塾や習いごとの先生たち、子ども食堂のような場とどれだけ多くつながり、セーフティネットの網の目をせばめていけるかが肝なんですよね。

あとは、子どもの支援者としては児童相談所がありますが、もっと身近に社会福祉士が保育や子どものことを勉強したり、逆に保育士も福祉のことを学んだりするなど、あらゆる資格の人が子どもという共通言語のもとに、学びを共有しあってコミュニティをつくっていけたらと思います。

また、このプロジェクト遂行の期間中に出産を経験し、1児の母となった高さんも、母親という観点から改めて本当に必要な支援とは何かを痛感しているそう。

高さん 赤ちゃんが生まれた後、出生届や、児童手当の申請を市役所に提出しますが、本当に子どものセーフティネットとして機能させていくとなると、妊娠した時点から、医療機関やその他の団体と連携していく必要があると感じています。

「コレチル」では、クーポンを配布し必要な支援を見極めたのち、政策提言につなげたいと考えています。

少子高齢社会の日本において、これからの未来を担うのは子どもです。しかし、「子どもの貧困」という言葉が浮上する今の社会現状は、格差社会や核家族化のつけが小さくて弱いものにまわっているとも言えます。実に、子どもの貧困を放置すると1兆円の社会的損失につながるという指摘もあります。

そう、「子どもの貧困」は大人の貧困の反射。ひいては社会全体が先細りになるということ。もはや他人事ではなく、あなたと私の問題です。「私も何とかしたい!」と思ったあなたは、「コレチル」と一緒に子どもたちをサポートしませんか? そのサポートが、私たちの未来を豊かなものにするはずです。

– INFORMATION –

「コレチル」と一緒に子どもたちをサポートしませんか?
 コレクティブフォーチルドレン ウェブサイト http://cforc.jp