タイトルでは突然のクイズ、失礼しました。みなさん、答えはわかりましたか? アンテナの高い方は、タイトルとアイキャッチ画像を見ただけでピンと来たかもしれませんね。そう、答えは「場の発明カンパニー」こと株式会社ツクルバです。
「いや、初めて聞いたけど……?」という方のために、簡単に説明しましょう。
ツクルバは、ブームに先駆けて会員制のコワーキングスペース「co-ba」をつくり全国にネットワークを広げたり、それまであまりなかった中古リノベーション住宅に特化した流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を立ち上げたりと、時代のちょっと先を見て、たくさんの人が「そうそう、こういうものがほしかったんだよね!」と思うようなサービスを提供している会社です。
分類としては、いわゆる不動産ベンチャー。というと、イケイケな印象を抱くかもしれません。実際その通りで、ツクルバは2011年の創業以来、どんどん新しいことに挑戦し急成長しています。でも、根底にはしっかりとした哲学や社会貢献意識が流れていて、それに対して驚くほど忠実なのです。このギャップに、ツクルバという会社の魅力があると言えるでしょう。
そんなツクルバが、「cowcamoエージェント」を募集しているという噂を耳に入れ、詳しい話を聞きに行きました。
「理想の暮らし」を実現するお手伝い
まずはcowcamoのサイトを覗いてみましょう。キャッチコピーは“「一点もの」の住まいに出会おう”。ちょっとユニークなタイトルと共に、魅力的な東京の中古マンション、リノベーションマンションがいくつも並んでいます。
物件の個別ページでは、スペックや雰囲気はもちろん、周辺の地域情報も掲載されています。「ここに住んだらどんな暮らしが始まるんだろう?」と、眺めているだけで想像が広がります。
ツクルバがcowcamoを始めたのは2015年のこと。その動機をツクルバCCOの中村真広さんに伺いました。
中村さん 「co-ba」が成功したおかげでオフィス関連の空間プロデュースをたくさんご依頼いただくようになりましたが、僕も共同代表の村上もハウジング系の出身なので、住まい周りの事業にも関心があったんです。それで、試しに中古物件をリノベーションして販売してみました。ちょうど国交省もリノベーションを後押しするなど、盛り上がっていたのもあって。
でも、実際にやってみたら課題が見えてきました。仲介業者は築古のリノベマンションよりも、築浅のタワーマンションなどを売りたがるんです。売りやすいし、単価も高いから。周りを見渡すと、商品開発力はあるけど販売に困っている再販事業者がたくさんいました。じゃあ、その人たちのパートナーになって、流通を促進させていくことを事業にしたらどうだろう、と。
もともと建築・不動産領域にITをかけ算した新規事業に挑戦したいと思っていたので、cowcamoの仕組みを考えました。
あれ、cowcamoってITの要素あるんですか?
中村さん 実は、見えないところに。cowcamoには無料の会員制度があって、そこでユーザーデータを収集・分析しています。そのデータを元に、「こんな条件の物件を求めているお客さんが多い」とか、「このエリアならこの価格帯がいいですよ」と、商品開発側に提案して、完成した物件をcowcamoを通じて仲介しているんです。
それと、昨年はカジュアルユーザー向けのアプリもつくりました。音楽アプリには、「ムーディーな曲」などテイストを選ぶと勝手に曲を流してくれるものがありますよね。物件も「もしあなたが犬だったら」「とりあえず一軒目」といった独自の視点で物件リストをつくり紹介しています。まだ真剣に家を買おうと思ってない人も気軽に眺めて、そのうちに興味を持ってcowcamoのセミナーやイベントに参加するようになって、物件を内見して……と検討が進んでいく。そんなユーザーエクスペリエンスを考えて設計しています。
そうやって段階を踏み問い合わせしてきた人を応対するのが今回募集する「cowcamoエージェント」の仕事です。具体的な業務内容は普通の不動産仲介業と同じで、一人当たり月30組ほど案内するそう。でも、cowcamoエージェントマネージャーの森勇貴さんは、「普通の不動産仲介業とは違う仕事だと思っている」とキッパリ。どういうことでしょう?
森さん 売り手の物件に対する想い、買い手が叶えたい暮らしを聴きとって両者をつなぐ。家を売ることが仕事なのではなく、相談してくれた人が理想の暮らしを実現するお手伝いが僕たちの仕事だと思っています。だから、求めるスペックなど表面的なところだけではなく、かなりプライベートなところまで踏み込んでお話を伺います。
普通の不動産仲介業だったら、成約したらそこで関係が途切れることが多いでしょう。cowcamoの場合は、購入後も関係が続きます。確定申告に関する相談を受けたり、物件に合う家具選びについて聞かれたり、「子どもが生まれました」と報告を受けたり。逆に、僕たちが買い手さんの経営するレストランに食べに行くこともあります。公私問わず、連絡を取り合っていますね。
一生に一度の買い物として家を購入するのではなく、家族構成や環境の変化に合わせて家を住み替える。今後世の中はそんな風になっていくと、森さんは予測しています。関係を続けていれば、いつか家を売りたくなったときはcowcamoに相談してくれるかもしれません。そうした考えもあり、一組一組とじっくりつき合っているのです。
そんなcowcamoエージェントの仕事ですが、ズバリどんな人に向いていると思いますか?
森さん 人の話をちゃんと聴ける人ですね。その上で、相手が求める条件や優先順位を整理して、最適な提案ができる人。不動産業界の経験や知識は不問です。実際にいまは、ホテル、花屋、キャビンアテンダント、メーカーなど、さまざまな業界出身の人が働いています。動機はそれぞれですが、暮らしに関する一番大きな選択に立ち会えることにやりがいを感じる人が多いですね。
メンバーが面白くなればなるほど、ツクルバも面白くなる
さて、仕事内容は大体わかりましたが、会社全体の社風も気になります。まだ転職して日が浅いという人事部の本間由佳さんも交え、ツクルバがどんな会社なのか聞いてみましょう。そもそも本間さんは、なぜツクルバに?
本間さん ツクルバの前は人材育成系のNPOで働いていました。やりがいを感じ充実していたのですが、あるとき自分の働き方を見直す機会があり、「自分の心身の健康を疎かにして仕事していたのではないか」と気づいたんです。人材育成に関わる立場の人間として、自分の心身の声に耳を傾け、健康に楽しく働くことで、目の前の人に向き合える自分でいようと決めました。そして、自分だけが変わるのではなく、共に働くメンバー全員が健全に働いていける組織をつくりたいと考えるようになったんです。
それが実現できる会社を探していたときにツクルバに出合い、組織づくりの思想を聞いてビビッときました。
実際に働いてみての感想は?
本間さん ツクルバって、社員というよりコミュニティメンバーという感じなんです。まーさん(※中村さん)、浩輝さん(※村上さん)を頂点としたピラミッド組織じゃなくて、ミッションのもとにみんなが並列に存在している。大事にするものがちゃんと明文化されているから動きやすいし、若いメンバーもアイデアを提案できるんです。
ツクルバのミッションとは、“「場の発明」を通じて欲しい未来をつくる”。人と人が出会う場、人と情報が混ざり合う場、想いとビジネスが出会い結び目になる場。そうした場を新たにつくって社会に普及させ、だれかの当たり前をちょっとアップデートしていく。それを実現するために、5つのクレドを掲げています。
中村さん こうした僕たちのビジョンに共感してくれる人、体現してくれる人と働きたいです。というか、このあたりのことを僕らが説明してテンションのあがらない人だとお互いにうまくいかないでしょうね。
世の中の感覚と自分の感覚とにずっとズレを感じてきたけど、あるときそれを理解してもらえた経験があって、だから場というものに対する想いが強い。そういう人とはすぐに意気投合します。いわゆる普通の会社でちょっとだけ窮屈さや生きづらさを感じている人、それをきちんとフラストレーションだと認識できる人がいい。認識すれば変えようとするし、何らかのアクションを起こすでしょう。アクションしつづけられる人と一緒に働きたいんです。
メンバー一人ひとりが本来の持ち味を活かして働けるように、ツクルバでは勉強家・兼松佳宏さんが提唱する「BEの肩書き」を取り入れています。「BEの肩書き」とは、普段の仕事の肩書き(DOの肩書き)ではなく、もっと深いところにある“あり方”を可視化したもの。自分のBEを把握して、目の前の仕事に取り入れる。「あの人のBEはこうだから、仕事にもこういうクセがあるよね」と、お互いを理解する足がかりにする。そんな風に活用しているそう。
もちろん、常にBEとDOが100%一致した状態で働ける、というわけではないと思います。「本当は自分のBEを活かせるのはこっちだけど、いまはこれをやらなきゃ」という局面もあるでしょう。でも、そういったことを自覚して取り組むのと、言語化できない不満を抱いたまま取り組むのでは大きな差があるのではないでしょうか。
また、「活動家申請」という制度も導入しています。簡単に言えば「副業OK!」ということで、お店を始めてもいいし、仲間とNPOを立ち上げてもいいし、必要があれば社内のリソースを使っても構いません。
メンバーが面白くなるほど、ツクルバも面白くなる。メンバーが社外でソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を増やすほど、ツクルバの活動の幅も広がり、世の中に大きな価値を提供できるようになる。これからの時代はキャピタルを増やすより、ソーシャル・キャピタルを増やすほうが重要になってくるから、やりたいことがあったらどんどん挑戦してほしい。そんな風に考えているのだとか。
ツクルバのウィークポイント、教えます
こうして話を聞いていると、「ツクルバって本当に面白い会社だな」と思うのですが、なんだか美点ばかりで胡散臭く見えてしまうような……。なので逆に、ダメなところや課題を教えてください!
中村さん ありますよ、いっぱい。クレドで「誰もやらなかったことに挑戦し、発明の種を生み出す」と言っているんですが、一番新しい発明はcowcamoで、もう3年前。この3年でツクルバに入ったメンバーは、Inventionが起こる瞬間を見ていないんです。ちゃんと背中を見せないといけませんね。何もないところから事業が立ち上がってぐわっと成長していく様子を追体験して、「Inventionとはこういうことか」と腹落ちしてもらいたい。僕の今期のミッションは、その種を植えることです。
ダメなところを聞いたのにちょっとかっこよく締めているのがズルい気もしますが、本当にミッションやクレドに忠実なんだな、と改めて感じました。本間さんの視点からはいかがでしょう?
本間さん 営業、設計士、編集者、エンジニアと、ツクルバではいろんな職能を持った人がひとつのフロアで働いています。それが面白いところでもあるんですが、それぞれ思考回路が違うしこだわりも強く、ちゃんと納得のいく解を出すまで妥協しないんです。だから話していてちょっと……疲れることも(笑) 何事にも真剣に向き合う姿勢に刺激を受けるし自分もそうなりたいと思いますが、体力使うことは確かですね。
中村さん わかる! みんなちょっと面倒くさいよね(笑)
本間さん もうひとつ課題を挙げると、人数が増えて組織がどんどん変化していくことへの対応ですね。いまメンバーは80人いて、夏には100人を超える予定です。顔と名前とパーソナリティがわかっていたから自然と乗り越えられていたことが、これからは意識しないと難しくなる。
外から来た人が馴染むのにも時間がかかるだろうし、それを本人の主体性に任せるのではなく、組織として仕組みや体制を整える必要があると思います。
中村さん 昔からいるメンバーも、過去のツクルバ像に囚われていると戸惑うと思います。人の心にも慣性の法則が働くので、挑戦を好むタイプの人でも、無意識のうちに現状維持を望んで変化を恐れてしまったりするんですよね。会社の変化と個人の変化のスピードの差をどう埋めるかは頭を悩ませているところです。
急成長を遂げているが故のコミュニケーションの課題と、個人の変化の課題、両方があるということですね。後者には、当事者意識を高めるワークショップを取り入れるなどして対応しているそう。
前者に関してはこれからの部分も多いものの、部署を越えてランダムにメンバーを数人選んで3000円を支給し、ちょっと贅沢なランチを食べに行ってもらう「3000円ランチ」という制度があるといいます。羨ましい!
アクションするDNAを受け継ぐ
最後に、これからのcowcamoの話を少し。
cowcamoが生まれた背景には、世の中の新築志向が強かったことにより、住環境の選択肢に偏りがあるという社会問題がありました。でも、いざ始めてみたら、ほかにも住まいや暮らしを取り巻く課題やニーズを次々発見したといいます。
マンションコミュニティを醸成することにも取り組んでいきたいし、住んだ後の暮らしを豊かにするサポート、たとえばホームパーティー講座なんかも需要がありそうだ。都心の住宅を販売しているからこそ、田舎で自然体験をするプログラムを提案すると喜ばれそうだし、必要なことなんじゃないか。
そんな風にメンバー同士で話をしながら新規事業の種を考えていて、新メンバーからの提案も大歓迎とのこと。これからますます面白くなっていく予感!
中村さん 僕たちは社会性と事業性のバランスを大事にしていますが、対象とする課題にこだわりはないんです。cowcamoも、中古リノベーション住宅が選択肢として一般的になれば役割を終えるかもしれない。でも、常に問いを見つけられるチームだったら、そのときには既に新しい課題を解決する事業を生み出しているはず。
理想は、100年後もツクルバのメンバーが社会に対して何らかのアクションを起こしていること。アクションするDNAを未来に残したいですね。
もしこれを読んで「そのDNAを受け継ぎたい」と少しでも思ったなら、ぜひ応募して直接話を聞いてみてほしいです。文章ではどうしても零れ落ちてしまうエネルギーや勢いを感じるはず。
ちなみに……。個人的な印象として、ツクルバのみなさんってハキハキ堂々としているしお洒落だし、普段のイベント写真を見るとワイワイ盛り上がっていて楽しそうだし、パリピや陽キャじゃないとやっていけないのでは? という疑惑を抱いていたのですが、中村さん曰く「それたまに言われるんですけど、一部の人間だけですから!」とのこと。
バリバリの理系男子もいるし、人が大勢いるところが苦手という人もいるし、シャイな人もいるし、むしろそういった多様性を大事にしているそうなので、どうぞご安心ください。
ツクルバという場を構成するメンバーに、あなたもなりませんか?
(撮影:服部希代野)