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命は燃やすものでも、懸けるものでもない。味わうものなんだ。『シャイン』のモデルとなった天才ピアニストのドキュメンタリー映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』

突然ですがみなさん、最近誰かとハグしましたか? 今回の記事の主人公、ピアニストのデイヴィッド・ヘルフゴッドさんに聞くと、きっとこう答えるでしょう。「ああ、ついさっき、たくさんの人とハグしたよ」と。

3月3日から全国で順次ロードショー公開される映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』は、天才ピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドのドキュメンタリーです。

アカデミー賞を受賞した映画『シャイン』のモデルとしても知られるデイヴィッドは、幼少時より神童とうたわれ、数々のコンクールで入賞し、英国王立音楽大学に特待生として入学。音楽の殿堂ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートを大成功させるも、直後に精神病に陥ってしまいます。11年間、ピアノのない精神病院で過ごしたデイヴィッド。彼のピアニストとしてのキャリアは、もはや終わったと思われていました。

しかし退院後、不安定な精神を抱えながらもワインバーのピアニストとして働いていたデイヴィッドは、のちに妻となる女性、ギリアンと出会います。音楽への尽きない情熱と、ギリアンとの深い愛に満ちた日々はデイヴィッドの心を奮い立たせ、ついにコンサートのステージにカムバックを果たします。そんなふたりの、ハラハラドキドキ、そしてラブラブな日常をリアルに映し出すのが、この映画の魅力です。

私は先行上映でこの映画を観たときに、映画というよりも、人間のあたたかみに直に触れたような感動を覚えました。何度でも観たい。誰彼構わずハグしまくるデイヴィッドにハグされたいとすら思ってしまいました。

「愛」や「芸術」というと、時にとても重く感じます。幼少期から周囲の期待を集め、ピアノに全身全霊で向き合ってきたデイヴィッドを押しつぶした重圧は、私の想像など超える過酷さだったに違いありません。

しかし、心は押しつぶされることはあっても、失われることはないのですね。押し付けではない、魂からわきあがるような愛情。そして、競うのではなく、自らを解き放つ芸術。それらをギリアンとの暮らしのなかで見出したデイヴィッドは、生きる喜びを爆発させているように眩しく見えました。

まるで子どものように無邪気に弾むデイヴィッドの様子は時に笑いを誘いますが、その姿から自分が忘れていたかもしれない人生の味わい方を教えられているようで、ハッとさせられます。ぜひ、たくさんの方に観ていただき、この感動を共有したいと思います。

あるがまま素敵に生きている姿の素晴らしさに感動する映画

この映画を配給するユナイテッドピープル代表の関根健次さんからも、熱いコメントをいただいています。

関根さん 3月3日(土)にシアター・イメージフォーラム他で全国順次ロードショーとなる『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』と出会ったのはベルリン国際映画祭でした。

ちょうど2年前の今頃、肌寒いベルリンで、UNITED PEOPLEのラインナップには合わないだろうけど「参考に」と紹介されたのがアカデミー賞受賞作『シャイン』主人公モデル、デイヴィッド・ヘルフゴットのその後の人生を追ったドキュメンタリー『Hello I am David!』(本映画の原題)でした。

「合わない」と言われたのは先方が、UNITED PEOPLEが社会課題のドキュメンタリーだけを扱っていることを知っていたからでした。もちろん映画『シャイン』は知っていたし、興味を持ったので「一応観るか」程度の軽い気持ちで観ることにしたのです。

それが観てみるとデイヴィッドの姿に魅了され、普段あまり即断即決の気持ちにはならないのですが「これは届けたい!」とすぐに思ったのです。

実は社会的なテーマがある映画で、デイヴィッドは精神を患い11年もの間、精神病院に入院していました。その後、再びピアノを弾くようになったことと、妻ギリアンとの出会いによって、奇跡の復活デビューを果たすのですが、障害を乗り越えたというよりは、あるがまま素敵に生きている姿の素晴らしさに感動します。

3月の劇場公開前に行われた先行上映会にトークゲストとして登壇された精神科医の香山リカさんは、デイヴィッドの患った病について、こう話されました。

香山さん これはあくまで私見ですが、ベースには発達障害があるのではないでしょうか。 強いこだわりや個性的なコミュニケーションは自閉症スペクトラム障害に似ています。

彼ぐらい知的にも高いタイプは、アスペルガー症候群と呼ばれることもあります。
こういう人たちの中で、ひとつの能力がものすごく秀でている人たちがいる。サヴァン症候群ともいわれます。

彼らには共感覚という独特の知覚のスタイルがあり、私たちが耳で聞くことを「見える」と言ったり、味が「聞こえる」と言ったり。デイヴィッドも音符ではなく弾きながら風景を観ていると言っていました。記憶力も抜群ですよね。楽譜もほとんど暗譜している。独特の記憶力があるアスペルガー症候群と同じかもしれません。

この映画は「障害を愛で乗り越えた、素晴らしい演奏をする人の愛の物語」なんて言えばわかりやすいけど、そうじゃない。そうも観られるけど、そんな安っぽい分類の映画じゃなくて、「生きるって素晴らしい」って思わせてくれる凄く普遍的なメッセージのある映画。それもドキュメンタリーというところがなんて言っても凄いと思いました。

関根さん 香山さんが言われるように、デイヴィッドは、生きる喜びに満ちた生き方をしていて、常に前向きで、明るく、誰とでも分け隔てなく笑顔で挨拶し、ハグし、キスをする子どもの心を持った「天才ピアニスト」です。障害なんかじゃなく、その存在そのものが素敵で観ているだけで癒されます。

妻ギリアンが出会った時のデイヴィッドは、200ドルとラジオしか持っていなかったそうです。そんなこと関係なしに、大好きなピアノを演奏し、いつも瞬間瞬間を感謝しながら輝き続けて来たのです。映画『シャイン』という題名の通り。もちろん、彼のピアノ演奏も最高ですし、映画『シャイン』を観たことがなくても楽しめる映画です。

ぜひデイヴィッドの姿を、そしてデイヴィッドに寄り添い、響きあうように人生を共に歩んでいる妻ギリアンの姿をご覧いただきたいと思います。元気が出た、幸せな気持ちになったなど、感動の声が次々に届いている映画です。

(編集: スズキコウタ)

– INFORMATION –

アカデミー賞受賞作『シャイン』主人公モデルの初のドキュメンタリー
『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』

3月3日(土)シアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開!
★初日は先着100名様に映画特製ステッカープレゼント&初回上映後は東ちづるさんトークショー!
http://unitedpeople.jp/h/