\12周年、タグラインをリニューアルします/

7月16日からgreenz.jpのタグラインは「ほしい未来は、つくろう。」から「いかしあうつながり」に変わりました。

詳しくは編集長鈴木菜央のコラムを読んでもらえると嬉しいです。

7月16日、greenz.jpのタグラインは「いかしあうつながり」に変わりました。

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今、デザイナーが地域の仕事をしたほうがいい理由。バウム宇田川裕喜さんと語る、地域とデザイナーのうれしい関係

たとえば、友だちと旅行に行った帰り道。お土産なに買おう? いつもちょっと頭を悩ませます。
そんなとき、目を引くパッケージの特産品を見つけたら、私は迷わず手にとってしまうだろうな。

全国区では知名度が低いものの、観光スポットが豊富な茨城県大子町。現在、グリーンズと共に地域の起業家人材を発掘・育成する事業を進めていますが、観光もさることながら、実は地域産品の豊富さも自慢なんです。

そんなわけで、地域外から先輩起業家を招いてお話を聞く企画の第二回は、大子町の地域産品を取り上げたいと思います。

本取材に登場する先輩起業家は、まちからプロダクトまで大小の場をデザインしている株式会社バウム宇田川裕喜さん。子どもの頃、区役所のまちづくり推進課に憧れていたそうです。

宇田川さんに大子町の地域産品を紹介しながら、地域産品とデザインの関係を一緒に考えます。

宇田川裕喜(うだがわ・ゆうき)
コンセプトデザイナー、 株式会社バウム 代表取締役
東京都出身。大学在学中に、環境雑誌記者として企業を取材しながら世界を旅する。コミュニケーションの力で「貧困を過去のものにしよう」としたNGOのキャンペーンに感動して広告の世界へ。2010年、株式会社バウム設立。アイデア、デザインの力で「場」を生むことで企業や社会の課題解決や事業創出に取り組む。2012年より米国ポートランド進出。現地でまちづくりの学校を開講するとともに、日本企業の国際戦略開発を現地デザインスタジオと共に展開。2016年からコペンハーゲンにも拠点を持つ。

樹上完熟が自慢の「奥久慈りんご」

大子町のりんごは “樹上完熟”を徹底しています。完熟りんごの美味しさを伝える一番の方法が直売なのだそう。

大子町と言えばりんご。近隣に住む人なら言わずと知れた特産品、ということで、私たちが最初に訪れたのはりんご園です。大子町に44軒あるりんご園を代表して、今回は「藤田観光りんご園」を訪ねました。

大子町でりんごが本格的に栽培され始めたのは、昭和35年頃のこと。その10年後、りんご狩りを主とする観光りんご園に業態を絞っていきました。町全体で約50種のりんごが収穫できます。

藤田観光りんご園の藤田史子さん。こちらに嫁いで20年だそう。

りんごの加工品づくりも盛んです。アップルパイや干しりんご、りんごジャム、りんごジュースにりんごサイダー、そしてシードルと種類も豊富。各農園や組合で企画し、味を競い合っています。

藤田さんに少しお話を伺いました。

藤田さん うちではアップルパイを製造しています。平成16年に加工場を建てました。ジュースは加工を組合に委託し、パッケージはこちらで企画しました。小さいサイズがなかったので、イメージをデザイナーさんに伝えて、形にしてもらったんです。子育てがひと段落したら、自社商品をもっと増やしたいと思っているので、今は展示会に足を運んだりして勉強中です。

昔懐かしいおばあちゃんの味「大子おやき」

廃校になった小学校の木造校舎を再利用した「大子おやき学校」。実演販売のほか、調理の体験教室も開いている。

続いては、大子おやきの登場です。

おやきと言えば、長野の名物と思う人も多いでしょう。実はここ大子町でも、古くから親しまれてきた郷土食なのです。意外かもしれませんが、大子町は盆地にあるため、温暖な茨城県にあって冬の冷え込みがとても厳しい地域。

日本の寒冷地では、お米に代わる主食として伝統的に小麦や蕎麦が食べられてきました。その食文化を現代風にアレンジしてつくったのが大子おやきです。

大子町の農産物を具材にした現代風おやきは、全部で10種類。りんご、いもがら、きのこ、やさい、かぼちゃ、おから、あずき、チーズ、きんぴら、のざわな、と豊富なバリエーションに目移りしてしまいます。

いもがらおやきを試食してみました。醤油で煮付けたいもがらが、ほのかな甘みを感じる小麦の皮にくるまれています。やさしいお味でおいしい! いもがら自体、はじめて食べましたがシャキシャキした歯触りです。

いもがらは別名で芋茎(ずいき)と呼ばれ、大子町の農産物のひとつ。里芋の茎や葉の部分を乾燥させた保存食品で、水でもどして、胡麻油で炒めたり、けんちん汁に入れるそう。

味にコクあり、香りも強い「奥久慈茶」

移動の途中に通りがかった茶畑の様子。雨にしっとり濡れて、緑が艶めいていました。

大子町は、小規模ながらお茶の産地でもあるんです。500軒ほどの農家が、年間約120トンのお茶を生産しています。この地域で栽培されたお茶は、奥久慈茶と名付けられています。

奥久慈茶の里公園を訪ねました。お茶の販売のほか、茶道や茶摘みなどの体験が楽しめます。

奥久慈茶は香り高く味の深いのが特長です。大子町の冬はとても寒く、夏でも日夜の寒暖差が大きいため、厚みのある茶葉が育ちます。茶葉が厚い分、2煎、3煎目になってもお茶の美味しさが楽しめるのだそう。

宇田川さんがお茶のパッケージに興味を示しました。気になるデザインがあったのでしょうか?

番外編: ひなびた美しさ、和紙人形

奥久慈茶の里公園の敷地内にある、和紙人形美術館にもちょっと寄り道。晩年を大子町で過ごした和紙人形作家・山岡草さんの作品が展示されています。

丸みを帯びたフォルムがなんとも可愛らしい。

山岡さんは大子町の自然に一目惚れし、晩年に移り住んで作品制作に没頭していたそうです。「日本の心ひなびた美しさ」「自然が創作の源である」を信念に、600体を超える和紙を用いた人形や作品を残しています。

手前:取材に同行したグリーンズプロデューサーの小野。

大子町は、高級和紙の原料となる那須楮(こうぞ)の産地でもあるそうなんです。宇田川さんと小野は、物販コーナーで和紙の工芸品や土産品を物色していました。

他にも地域産品がもりだくさん!

最後は、大子町の地域産品が一堂に会する道の駅で、まとめて特産品をチェック! 宇田川さんと小野さんは、奥久慈しゃもや奥久慈そば、ゆばにわさびと、地域の逸品をじっくり物色中。

江戸時代に水戸藩の財政を支えたほど、こんにゃくの栽培が盛んな大子町。こんにゃく芋をすりおろしてつくる生こんにゃくは、もちもちとした食感とみずみずしさが絶品でした。

なんと地ビールまでありました!

大子町の地域産品、いかがでしたか? 人口約1.8万人の小さな町が、これほどバラエティに富んだ生産・加工品をつくっているなんて、なんだか信じられませんよね。

寡黙にひとつひとつの商品をじっくり観察していた宇田川さん。頭の中ではどんなことを思っていたのでしょうか。ここからは、宇田川さんにお話をいろいろ聞いてみたいと思います。

世の中にいい変化をもたらす“場を生む”デザインを

はじめに、先輩起業家である宇田川さんのお仕事についてご紹介しましょう。

みなさんは、デザインと聞いてどんなイメージが浮かびますか?

日本語で言う「デザイン」は、見た目をつくるという意味で用いられることが多いですが、インターネット後の現在では、何かしらの行動を促したり、関係をつくろうとする行為をデザインと呼ぶのがより適切です。どうしたら人は行動を起こすのか。その行動はどのような未来につながるのか。これを戦略的なコンセプトにまとめ、実現するための「ことば」と「かたち」をつくります。

コンセプトデザイナーである宇田川さんは、ブランディングやマーケティングをベースにしつつ、お店やホテルなど実際の場のコンセプトづくりによって、企業や社会の課題の発見や解決を行なっています。

宇田川さんの運営する株式会社バウムでは、一行の文章からひとつのまちまで、すべてが人の集う場であると考えています。あるひと言が、商品が、お店が、ウェブサイトが、誰かの行動や考え方を変える場となる。

依頼された商品のコンセプトづくりや、全体の方向性を決めるといった、工程の川上から設計するのが宇田川さんの仕事です。その商品にどんなカタチを与えたら、つくり手もお客さんも社会も嬉しくなれるのか。三方よしを大事にし、依頼主の相談に乗っているのです。

宇田川さん 僕は宣伝の仕事からデザインに転向したので、いわゆる美大を出てデザイナーになった人たちとはちょっと違う道を歩いてきました。地域の仕事に関わるようになったのは2008年頃からです。前職時代に、経産省のプロジェクトに広報担当として入りました。

そのとき、様々な地域を訪ねて地域産品の生産現場を見る機会があって。僕、昔からけっこうちょっと引いた目線を持ってるんですけど、「こんなに無駄な努力をしている人たちがいる」って胸が痛んだんです。

無駄な努力――。少し言葉がキツイでしょうか。これはハートはあったかい宇田川さんの照れ隠し。伝えたかったのは、成果につながるプロセスが見当たらなかったということ。宇田川さんは、ニーズのない商品を一生懸命つくっている地域の人たちの姿を見ては、悲しい気持ちになっていたのだそう。

もっとお客さんのニーズに適った魅力的な地域商品をつくりたい。そんな思いが芽生えて企画したのが、2009年に開講した「丸の内朝大学」での地域プロデュースプロジェクト。

丸の内で働く人たちが持つ都会ならではの視点を地域に活かせたら、魅力的な商品が生まれるのではとの発想から生まれた試みです。

宇田川さん 都会と地方の人との新しい関わり方をつくりたかった。都会の人は仕事の外で誰かの役に立ちたいし、地方の人は上からじゃなく横から一緒につくってくれる人がほしい。

その図式でいくつかクラスをつくったんですが、実行するチームが素晴らしくて、思ってた以上の盛り上がりになりました。そのままIターンしたり、地域に根付いて結婚しちゃう人も。なんか、そういう人と人の関係のよりよい形をつくる仕事をつくりたかったんですよね。

そこは今もやっぱり変わっていなくて。小さな規模の場合、依頼主の暮らしのことをまず考えるというか。彼らがどんな思いで何の商売をしていて、この商品を売ることでどういう人たちが買ってくれるようになって、未来がどう変わっていくか、いつも考えています。

次世代につなぐ仕事をつくる︎りんご農家の話

宇田川さんが最近手がけた仕事のひとつに、長野県のりんご農園がつくるハードサイダー(発泡性のりんごのお酒)の商品化プロジェクトがあります。その名も「SON OF THE SMITH」。

宇田川さん 日本でいうシードルなんですけど、彼らは米国オレゴン州・ポートランドで勉強したので現地流にハードサイダーと呼んでいます。りんごづくりにとても誇りを持っている人たちで、世界中から様々な品種を輸入して研究しながら、新しいりんごづくりに挑戦している。

彼らがやろうとしているのは、次の世代にどういう形の商いを残すかってこと。りんごの木はしっかりと投資をして育てていて、そこで獲れたりんごをどう活かしたら、自分の子どもたちにいい形で残せるだろうって一緒に考えました。

ユーモラスな名前の商品ですが根底に熱い想いがあります。「日本のりんごの未来を変える」。世界に胸を張って輸出できるハードサイダーブランドに育てていこうとの狙いでつくられました。

お酒は初期投資が大きく、回収するのに5年や10年かかります。そんなに長い間、ずっと売れ続ける商品をつくるのは実はとても大変なことなのです。だからこそ、手にとってもらえるデザインや、少量生産ならではの販路の開拓をしたい。そんな宇田川さんの願いが込められています。

お酒は世界中で飲まれているし、面白いものは世界に出て行きやすいので夢がある。自分たちがワクワクできることをしっかりやり、次の世代もワクワクできるものをつくるのがいいなと。

「SON OF THE SMITH」は、2014年に米国政府に公式に依頼してオレゴン州とワシントン州のりんご農園やサイダリーを訪ねたのをきっかけに、技術交流を重ねながら商品開発を行ないました。そして2017年、ついに完成。夏にはオレゴンへお披露目に行き、現地の人たちから「明確なコンセプトと味のつくり方はすごいな」と驚いてもらえたのだとか。

宇田川さん この製品をつくる前から米国流のハードサイダーの美味しさや飲み方を啓蒙する団体をスタートさせました。夏フェスなどのイベントで米国のハードサイダーを売り、お客さんの声をたくさん聞いてきた上で生産に移行しています。そこで人のつながりもできたから、少量生産の第一弾はすぐに完売。

ただでさえ忙しい畑仕事の合間に、酒づくりに、イベントに、海外出張にと、彼らはみんな忙しい日々を送っています。でも次の世代に何を残せるかという大きな野望を持っているので、ここまでダイナミックに動けるのでしょう。こういう動きがもっと増えるといいなと思っています。

そんな宇田川さんの目には、大子町の特産品はいったいどう映っていたのでしょうか? そのお話は、これから始まる小野との対談で伺いましょう。

大子町の地域産品を見て、どんな感想を持ちましたか?

宇田川さん お茶はどこのメーカーも同じようなパッケージだったね。お茶の中では100グラム1,000円は高いほうです。売れているならいいけど、明確な魅力の訴求があったほうがもっとただしく売れるとは思いました。

沢山の生産者が似たような商品を出している中で、ひとつ明確なコンセプトの商品をつくったら、地域の代表商品になれますよね。まちの人が誇れるもの、いわゆるシビックプライドの象徴に育っていきます。地域の人たちがよそへ出かけるとき「うちはすごい田舎だけど、かっこいい特産品つくっているんだよ」って手土産に持っていってくれるようになるから。

そんな人が増えたら生産者は励みになるだろうし、もっといい商品を届けようって思いますよね。そして、1店舗でも都会でしっかり売ってくれる場所ができたりすると夢が持てます。山の奥や海辺にある地方では「あの商品、都会でも最近売れているらしいよ」ってニュースが人をワクワクさせているから。

greenz.jpプロデューサーの小野裕之。NPO法人グリーンズの事業戦略と組織づくり、企業や行政に向けた事業の開発や営業、オペレーションの責任者。ライフワークとして、ソーシャルなスタートアップビジネスの事業化を支援。

小野 地域にこそ、商品をどう体験してもらうかのデザインが必要ですよね。単にデザインをかっこよくするというよりは、その商品を誰が誰にどんな場面であげるのか、誰と一緒に飲むのかといった人間の行動を含めたデザインができる人の存在が今、必要だと僕は思っています。

地域と相性の合うデザイナーはどんなタイプですか?

宇田川さん デザイナーにもいろいろな専門分野がありますが、今の話でいうとまずはブランディングに強いタイプのデザイナーでしょうか。他の分野だとしてもコミュニケーションをしっかりとれるタイプが活躍できると思います。地方の小規模事業者が依頼主だと、ほしいものがよくわからないまま相談してくるケースが多いです。

特に、毎朝4時に起きて黙々と仕事と向かい合っている農家の方は、アーティストとか職人型の人が多い。

小野 デザイナーもアーティスト型とコンサルタント型に分けられると思うんですよ。

宇田川さん まとめるね(笑)

小野 アーティスト型はデザイン能力はとても高いんだけど、コミュニケーションがあんまり得意じゃない。仕事の関わり方としては、その人の作家性が商品の一部に必要とされるイメージ。一般的にはデザイナーって、このタイプを指すんじゃないかな。

コンサルタント型は、相手のニーズを汲み取ってビジョンに落としこんでいく作業も含めて、もっと全体的に関わる感じ。「いやこれは、デザインを良くすれば解決する問題じゃないと思いますよ」なんて提案もできなくてはいけない。地域に必要なのはこっちのタイプだけれど、実際デザインをやってる人でコンサルティングやりたい人は少ないっていうか。

宇田川さん その通りです。

小野 なぜって、多くの人はアーティストに憧れて美大に進学し、自分の作家性をどう表現するかの専門教育を受けてきたはずですからね。デザインの分野も、もちろん変わってきてるとは思うのだけど、マス・メディアで広告を制作してきたようなバブル世代が、自分の作家性を広告物にどう反映させてきたかを教えているような要素がまだまだ強い。

だけど大半は、そういった仕事が必ずしもできるわけではない企業に就職していくわけです。

小野 本来デザイナーの役割は、デザインを通じて限られた予算で売り上げを伸ばしたり、手にする人のプライドやモチベーションを高めたり、新しい希望をつくったりすること。

彼らが実務で培ったマーケティングやコミュニケーションの能力って、実はとっても強みなのに、アーティストへの憧れを残しながら、自分の表現を仕事に反映できないジレンマを抱えている人がすごく多いなと感じます。このジレンマの原因は、先天的なものではなく、大半が後天的につくられてしまっているのかもしれないと思います。

だからデザイナーには、アーティスト志向のコンサル予備軍がいっぱいいるんじゃないでしょうか。そういった人がまだコンサル予備軍のままなのは、プロジェクト全体を見渡し提案する機会が少ないから。大きな企業ほど限定的な仕事しか任せてもらえないですからね。

潜在的にはコンサルタント向きだから、長所を伸ばす方向に舵が切れると新しい可能性が見えてくる。地方で小さなプロジェクトに関わりながら腕を磨くのはアリだと思う。

デザイナーが地方の仕事をしたほうがいい理由はありますか?

小野 デザイナーの間でも今、地域の仕事をしてみたいって機運が高まっている感じはありますよね。都会の仕事に違和感を感じ取っているというか。お金とスキルの交換だけでする仕事って、効率もいいし悪くないんだけど、下請け的な状況も生みやすいし、無理やり関係性がつくられている側面もあって。

宇田川さん 地方の仕事は規模が小さいぶん、関係性から始まる仕事も生まれやすいですね。

小野 これからは個人と個人が気軽に仕事をつくることがもっと当たり前になると思う。最近盛り上がっている副業や個人起業の流れを見ても、日本の人口減少によって働き方を変えざるを得ないって状況がすでに始まっているなって。働く選択肢が増える、みたいな贅沢な話ばかりじゃなくて、生きるために仕事のやり方を工夫しないといけなくなる時代が来ています。

宇田川さん 僕の地域での仕事は、友だちとの遊びから始まっているものが多いです。「SON OF THE SMITH」も、僕がポートランドで楽しく仕事をしているから、りんご業界で話題の現地のりんご農家やお酒をつくっている場所を見学したいと相談されたのがきっかけです。

そうは言っても、最初はすごく難しい話でした。りんご農家も知らないし、お酒つくってる人も知らないから、つてを探すところから始めて。運よく人の紹介に恵まれて、政府機関と現地の業界団体がしっかりツアーを組んでくれました。車も人も手配してくれて。

遊びっぽく始まるもののほうが、後々刺激的な仕事になるような気がします。

小野 そこはちょっと夢がありますよね。友だちと一緒に行った旅行先で偶然仕事が生まれるとか。そういう自然な始まり方がもっと増えればいいな。なんかまだまだ、そういうのって1円にもならないんでしょっていう勘違いがあるけど、1円ぐらいにはなるわけ(笑)

宇田川さん (笑)

小野 もちろん、ビジネスを育てていく感覚を共有できる人と一緒にね。今すぐ移住とか、そんな仰々しいリスクじゃなくていいんだよね。少し時間を工夫して小さく試してみることから始めたらいい。

行政が果たすべき役割とはなんだと思いますか?

宇田川さん でもまぁ、都会の論理に慣れているデザイナーにとっては、そもそも入っていきにくいのが地域なんですね。成功の尺度が決まっていて、発注金額が決まっている仕事は地域に少ないし、相談を受けてから実際仕事になるまで、時間がかかることも多いです。

都会ではどうしても、メガヒットを狙ってベストを尽くすことが求められるけど、地域の仕事は必ずしもそれが正解ではない。銀座の百貨店に並ぶ商品をつくりたいのか、予算や人手も少ないから生産可能な範囲でそこそこ売りたいのか。それによって目指すデザインは変わってくる。

地域の仕事をする際に、そういう違いはやっぱり知っておいてほしいなと思います。

小野 仕事の依頼方法をよく分かっていない人が、いきなりアーティスト型デザイナーに依頼して失敗したケースが地方にはごまんとありますよね。経験はまだ浅いけれど、可能性のあるデザイナーにちょっと小さいところから仕事をお願いして、一緒に育つみたいな感覚がまだまだ少ない気がする。

デザイナーも見積もり出すところから関係を始めるんじゃなくて、もうちょっと普通に知り合いになって一緒にいて楽しいと思える人と一緒に、「なんかわからないけど、面白そうだし、大きくなりそうだから頑張る」みたいな仕事をつくっていいと思う。

宇田川さん 都会の大きな企業の案件は単価も高いし、世間への影響の大きさというダイナミズムがあります。でも、地方との仕事にはまた違ったダイナミズムがあります。規模が小さいだけに、ピリリと辛いようなものをつくらないといけない。売れるように川上のコンセプトの段階での大胆な工夫が求められます。そしたら川下の商品を広める段階の広告予算とか営業力とか、どうしても規模で負けてしまう部分を補える。

そういう頼み方をする人と頼まれ方をする人が増えればいいな。それはどうしたら増えるのかな?

小野 まずは認知だと思うんですよね。実際、そういう仕事は増えていると思うし。でも両者が簡単に出会えるわけでもないから、そこをつなぐ役割を行政が担っていくのは理想ですよね。発注スキルが低い小規模事業者とコンサル能力が低いデザイナーが出会い、共に成長できる機会を行政が提供していく必要があると思う。サポートする場じゃなくて実験する場をつくる。

「今回はぜんぜん予算ないです」みたいな相談に、「じゃあ、こんなコンセプトでやりましょう」って町医者が処方箋出す感覚で提案できるデザイナーが育つ土壌に、大子町がなってもらえたら。

(対談ここまで)

地域の生産者と都会のデザイナーがそれぞれの課題を持ち寄って、お互いに成長しあえる仕事の場をつくる。そこに、新しい未来の生まれる余白があるのだと、宇田川さんと小野は語ります。

必要なのは、両者が自分の強み弱みを理解したうえで、お互いを補い合いながら仕事をつくっていけるかどうか。

かっこいいデザインにするとか、地域で仕事をつくるとか、それ自体が新しさを運んでくるように思いがちだけれど、むしろ取り組み方のプロセスを変えることこそが、本質的な新しさを生む。だったらいっそ、自分たちが楽しんでできる働き方をつくってみようよ。

大子町の地域産品をよりよくするために今一番重要なのは、地域の生産者と都会のデザイナーが共にチャレンジできる場なのかもしれませんね。

(撮影: 秋山まどか)

– INFORMATION –

まちの資源を活かした事業づくりを学ぶ 「創業キャンプ」2月10日〜12日 茨城県北大子町で開催!


2018年2月10日(土)、2月11日(日)2月12日(月・祝)*2泊3日開催
10日(土)12:45受付/13:00〜17:00(*初日終了後、別途懇親会開催)
11日(日)9:30受付/10:00〜18:00(途中16:00より中間プレゼン)
12日(月)9:30受付/10:00-14:30(13:00最終発表)
https://greenz.jp/event/sougyo-daigo2018/