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『ゴッドファーザー』での「役職」から『オーシャンズ11』での「役割」へ? サービスグラント嵯峨生馬さん×TWDW横石崇さんが働き方の未来を語る。

近ごろ「働き方改革」という言葉がよく聞かれるようになりました。

「働き方改革」とは、簡単に言うと、長時間労働や非正規雇用、「単線型の日本のキャリアパス」といった課題をなくし、労働環境を改善して生産性を向上しようとする国の取り組みのこと。

2017年3月28日には、首相が議長の「働き方改革実行会議」は、「働き方改革実行計画」を決定。労働制度を改めて、働く人が将来に良い展望を持てるようにすることを目標にした、計画を進めようとしています。

一方で、「働き方」をつくる要素には、「仕事への取り組み方」も含まれています。今より明るい未来の展望を描く「働き方」をつくるために、個人ができることも多そうです。

そんな中、認定NPO法人サービスグラントの代表理事・嵯峨生馬さんは「プロボノ」というあり方に「仕事の取り組み方」を変える可能性を感じています。

嵯峨生馬(さが・いくま)
特定非営利活動法人サービスグラント代表理事。1974年生まれ、神奈川県出身。日本総合研究所を経て、地域通貨やNPOの可能性を広げる仕組みづくりの道へ。著書に『地域通貨』(NHK生活人新書)、『プロボノー新しい社会貢献 新しい働き方ー』(勁草書房)など

プロボノとは、ボランティアの一種です。プロボノワーカーは、NPOのような社会貢献活動団体に、活動の方針や戦略の意思決定に関わるような部分まで深く関係したり、ウェブサイトやパンフレットなどの広報物をはじめとした成果物を残し、団体を支援します。

嵯峨さんがプロボノを知ったのは、NPO調査の仕事でアメリカを訪れた2004年のこと。見ず知らずの人々がプロボノワーカーとして自由意志でチームを組み、限られた期間で確実に成果物を残す姿を見て、目から鱗が落ちたそう。

嵯峨さん こんなコラボレーションのやり方を日本に持って帰ったら、日本人のワークスタイルを刷新して、生産性を高めることにも貢献できるんじゃないかと思いました。

その後、2005年にサービスグラントを設立。2009年に法人化を果たし、今ではサービスグラント自身も企業や行政とコラボレーションしています。企業の社会貢献活動への参加促進や行政に対するプロボノ支援開拓など活動領域を広げています。

12年間で、プロボノワーカーの登録数は、約3,400人に。当初、嵯峨さんが感じたように、プロボノの経験で「働き方」そのものを見直したり、変化させるきっかけになった人もたくさんいます。

greenz.jpでは、そんなプロボノワーカーたちを紹介する連載「プロボノワーカーのはじめかた」をスタート。みなさんと一緒に、プロボノというあり方をヒントに、新しい働き方、社会への関わり方を考えていきたいと考えています。

連載1回目は、新たな未来をつくっていく働き方の祭典「TOKYO WORK DESIGN WEEK」を企画運営する、&Co.Ltd代表の横石崇さんをゲストに迎え、嵯峨さんと「これからの働き方」について対談します。

横石崇(よこいし・たかし)
TOKYO WORK DESIGN WEEKオーガナイザー。&Co.Ltd代表取締役。1978年生まれ、大阪府大阪市出身。広告代理店、人材紹介会社の役員を経て、”場の編集”を手法に、新しい価値を生み出すプロジェクトを手掛ける。著書に『これからの僕らの働き方』(早川書房)

果たして二人のクロストークは、どんなふうに働き方の未来予想図を描き出すのでしょう?

ソーシャルグッドの鐘の音は
逆境でこそ光り輝く

横石さん 嵯峨さんは、いつから「プロボノが広まってきた」と感じるようになりましたか?

嵯峨さん 2010年頃でしょうか。リーマンショックのあとで、景気がよくない時期。転職を考える人は少ない一方で、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんのような社会起業家に注目が集まりました。

嵯峨さん 社会貢献しながら活躍する姿に憧れる人が増えて、「会社員でも社会貢献したい」という気持ちが広がりました。プロボノは、受け皿にちょうどよかったんだと思います。

横石さん ぼくの手がけているTOKYO WORK DESIGN WEEK(TWDW)も状況が似ています。どうして立ち上げたのかというと、周りの同世代を見渡した時に、日本仕事百貨のナカムラケンタさんや仕事旅行の田中翼さんなど、面白い働き方をしたり、サポートしている人たちがポツポツ現れているのを感じたからです。

横石さん ぼくたちは、2000年前後に就職氷河期を体験した世代です。世の中的に悪い時期の象徴として語られがちですが、あの苦難の時期があったからこそ、10年後に面白い働き方をする人たちが生まれてきたんじゃないかと思いました。そんな世の中と少し違った人たち、つまり点と点を結んで線にして、面を起こしていったのがTWDWです。

横石さん 大学を卒業してから改めて世の中の働き方の変化を振り返ってみると、会社勤務一択だった時代から、それ以外の選択肢を持てる時代になったと思うんです。ひとつではなくなった。若い人たちにとって「社会=会社」ではなくなり、より社会を広くみれるようになったのではないでしょうか。

嵯峨さん そうですね。一方で、日本は経済先進国だった過去の時代から、今は少子高齢化に代表されるような課題先進国の時代に変わりました。でも、もっとポジティブに向き合って進んでいったほうがいいんと思うんですよ。

横石さん 確かに、ポジティブな物事は、人を変える大事な要素となります。サービスグラントが掲げている「社会参加先進国へ」というビジョンも、ポジティブですよね。

嵯峨さん そうなんです。プロボノの先にある未来を示したくて、2015年からこのビジョンにしました。

横石さん ぼくたちも、働き方をポジティブにとらえなおしたくて、TWDWを働き方版のフジロック・フェスティバルのようにしたいと「働き方の祭典」と呼ぶようにしました。立ち上げた2012年ごろの働き方にまつわるイベントは、テーマが「職探し」や「失業」のような暗いトーンのものばかりだったんです。

それに、働き方というのは人にとってのインターフェースなみたいなものではないでしょうか。その人の生き方や哲学が働き方に現れてくると思います。人間をPCで例えるならば生き方が“OS”で、働き方が“インターフェイス”といったところでしょうか。

嵯峨さん 生き方と働き方とは、対になっていますよね。子育てや介護をしながら働きたい時に、どうやって柔軟に時間を使っていけるか。働き方を変えたいし、変えざるを得なくなっている状況があります。

そういう状況に陥っていても、自分にとって大切な人とも一緒に働きたいから、みんなでポジティブに働き方を変えていきたいって感じるんですよ。

会社・行政・家族の乖離、
新しい社会でどう振る舞う?

嵯峨さん 「社会参加先進国へ」というビジョンを決める時、「今はどんな時代なんだろう?」と改めて考えたんです。

昔は、会社が個人を丸抱えでサポートしてくれました。会社以外で何か困ったことがあれば、行政が解決するものだと思われていました。家族や親戚も頼れましたよね。大きな会社、大きな行政、大きな家族という3つの領域が1つに重なっていて、個人が守られている時代でした。

それが今は随分と変わっています。会社は終身雇用から成果主義になっていきますし、行政も財政が厳しい。家族にも支えられないことが増えました。個人を守ってきた3つの領域が小さくなってしまい、重ならず、ぽっかりスペースが空いてしまったんです。そのスペースこそ、今の「社会」なんじゃないでしょうか。

横石さん きっと、プロボノをする人って、自分の能力がいまいる会社から溢れ出している人なんでしょうね。だから、3つの領域の間に生まれたスペースで自由に動き回りたいのでしょうし、動くことができる。会社一択じゃないってことを体現している人たちのように見えます。

嵯峨さん なるほど。確かにプロボノワーカーは、自分ができることをどうやって周りに分けるか、ということに関心を持っている人が多いです。会社は会社でちゃんと働くけれど、それ以外の領域にも参加して、そこで得たインスピレーションをまた会社に持ち帰っています。

あとは、自分がどんなふうに役立っているのか、精神的な喜びを実感するために、プロボノに参加している人も多いですし、定年を間近に控えて、会社以外で自分の力を発揮できる場所を探しにくる人もいますね。

会社なら飲み会に行けばいい、というようなコミュニケーションの共通ルールがありますけど、ぽっかり空いたスペースでは、どうやってみんなと手を組んでいったらいいかわからない。そんな時に、プロボノを通して社会に参加する振る舞い方を学ぶことだってできます。

プロボノワーカーの働く様子

横石さん 動機やバックグラウンドが異なるプロボノワーカーが、チームを組む時に注意することはありますか?

嵯峨さん いくつかパターンはありますけど、共通しているのは、プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャーを立てるなど、それぞれの役割を明確にすることです。

横石さん 役割がミスマッチになると苦労しますからね。

ぼくは新しい組織づくりの例として、映画『ゴッドファーザー』と『オーシャンズ11』を取り上げることがあります。ゴットファーザー的なチームでは役職が大事なんですが、オーシャンズ11的なチームでは役割が大事なんです。

いまのような先が読めないよう時代においては、役割があったほうが、個性が光ったり、チームが強くなったりするんだろうなと思います。

嵯峨さん 本当にそうですよね。例えば、プロボノのプロジェクトマネージャーは、進行管理が役割です。だからって、上下関係を生み出すような役職じゃありません。だからか、プロボノでプロジェクトマネージメントをしたあと、会社でもその役割につくと、「変わりましたね」って言われるそうなんです。

役職じゃなくて役割だって意識を持つことは、自分の意思で参加する人たちと働く時に、特に重要なことだと思います。

面白いのが、サービスグラントでプロジェクトマネージャーを経験した人たちが、これからプロボノをする人たちに向けて、プロボノ的プロジェクトマネージメントを教える勉強会を開いていること。

指示や命令ではなく、みんなの意見を聞いてチームを引っ張り上げていくのが役割だということを、共有し合うカルチャーが育ちはじめています。

プロジェクトマネージメントの勉強会の様子

横石さん プロボノをする人たち自身で、新しい働き方を深めていっているんですね。

嵯峨さん そうなんです。また、プロジェクトマネージャー以外のプロボノワーカーも働き方を変えています。

例えば会社で営業をしている方は、以前なら顧客の要望に忠実に応える営業をしていたのが、プロボノを通して、支援先の課題を発見して、自分から改善策を提案していく働き方を学んで、会社でも提案型の営業に変わったそうなんですよ。

横石さん それって、大きく人生を変える驚くべき経験じゃないですか。

これからはロールプレイと
セルフプロデュースの時代

横石さん TWDWにも、ボランタリーで参加してくれるスタッフがいます。約100名いるんですが、そのうち7割がTWDWをきっかけに転職したり、独立したりしているんです。

嵯峨さん 7割ってすごいですね。

横石さん ぼくも驚いています。

そういう人たちは、プロボノでプロジェクトマネージメントをする人と同じように、みんなとフラットな関係を保つ働き方をしてくれています。そして、TWDWをつくるためにみんなと自主的に働いていると、「なんか、自分もできるじゃん!」って気づきを得る。

TWDWでイキイキ働くスタッフ

横石さん そんな様子を見ていると、何かを学んで気づく機会を増やしていったら、人生が豊かになりそうだなと思うんです。学ぶ時間の中で、プロボノというあり方が存在感を増していくように思います。

嵯峨さん まさに、プロボノって学ぶ時間なんですよ。

かつてのハコモノ行政は批判の対象になってきましたが、今どきの行政は、社会で起きている課題解決のために、地域や学校などに地域おこし協力隊やスクールソーシャルワーカーとして働く人を配置するようになっています。

でも、そこに配置された人が環境にとけ込めなかったり、どうやって振る舞っていいのかわからずに、苦しんでいる状況があります。そして、うまくいった場所では、キーパーソンやカリスマの力があったと、説明されてしまうんです。

個性で勝負させてしまっては辛いですよ。そんな人たちのことを守ってあげたい。個性ではなく、振る舞い方のノウハウを教えていったほうが、そこで働く人が活躍できますし、そのために使われた税金も生きます。

だから、これからの社会で、課題を前にしたときに、どうやって振る舞っていけばいいか、スキルを学ぶ機会や、できることに気づくノウハウを広めたいって思うんです。

横石さん ところで、サービスグラントには自分の役割を自分で名乗る自由はありますか? 例えば、会社ではデザイナーをしているけれど、実はエンジニアとして力を発揮する可能性を探りたい人もいると思うんです。

嵯峨さん 実際に、デザイナーでもディレクターとして関わっている人がいますよ。プロボノでは、ちょっと背伸びしたり、ちょっと控えてみたり、役割に合わせて自分を変えていくことができます。

どういう自分で参加したいか、または参加できるか。ロールプレイをして、自分の多様性に気づくことができます。

横石さん そういう状況では、ある種のセルフプロデュース能力が必要なんじゃないかと思うんですね。計画しすぎなくていいけど、自分がどういう役割を担えるか、周りに伝える力はあったほうがいいように思います。

ちゃんと自分の自由な意思で、自分の役割を表明する働き方をしている人たちが、面白い働き方をしていって、それぞれがつながって、これからの社会で注目されていくといいですよね。ピコ太郎のようなセルフプロデュース能力が問われてくる時代ですね(笑)

(対談ここまで)

会社、行政、家族。社会の形が、3つの領域を1つに重ねてつくる大きなコミュニティだった過去から、3つのコミュニティを絶えず移ろい行き交うネットワークに変わった現在。個人に求められる振る舞い方も、その時々につながった人と人との間で変化する流動的なものになりました。

だから、新しい社会には役職のような決まった答えが1つ用意されているのではなく、その時々に応じて変わっていく役割が求められます。この先、たゆたう人間関係に翻弄されないで働くために、ロールプレイで自分の多様な可能性に気づき、セルフプロデュースすることが重要です。「プロボノ」には、そんな学びと気づきのチャンスがあります。

この連載では、2回目以降にいろんなプロボノワーカーを紹介していきます。彼・彼女らは一体、どんな振る舞い方で、新しい社会に参加しているのでしょう。そこには、これからの働き方を身につけるヒントが、きっと隠されています。

プロボノワーカーによる、新しい働き方の図鑑が完成していく連載を、お楽しみに!

– INFORMATION –

プロボノ1DAYチャレンジ
プロボノをコンパクトに体験できる企画「プロボノ1DAYチャレンジ」の参加者を募集中です。まずは1度プロボノを体験してみたいという方、短期間でのプロジェクトに参加したいという方など、ぜひご参加ください。
http://bit.ly/1DAYchallenge

大阪ええまちプロジェクト
若手からシニアまでオール大阪で住民主体の「介護予防」や「生活支援」などの活動を応援するプロジェクト。仕事の経験や視点を活かしながら、大阪をええまちにするまちづくり、高齢社会への備えに一歩踏み込む経験にご関心のある方はぜひご参加ください。
http://bit.ly/eemachi1

[sponsored by サービスグラント]