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東京から日本海を応援!スナックもやるデザイナー? greenz people山本加容さんの、運と縁を引き寄せる生き方とは

地方への移住者が増える一方で、移住するまではできないけれど、東京からでも地方を応援したいという声を聞くことも多くなりました。

デザイナーの山本加容さんは、東京で日本海側の地域の食や酒、手仕事を応援する「グレイスカイプロジェクト」を立ち上げ、仲間とともに活動しています。楽しいことにどんどん首を突っ込んで仕事や人との縁を得てきたと言う山本さんの、人生を楽しむ秘訣とは何なのでしょうか。

今年3月に清澄白河にオープンしたスナック「ちんぷん館TOKYO」でお話を聞きました。

山本加容(やまもと・かよ)
1969年金沢市生まれ。スタイリスト・グラフィックデザイナーを経て、2004年、プランニング・デザインオフィス サーモメーターを設立。2009年、器と道具の店SMLをオープン。2015年、日本海地域から豊かな暮らしを学ぶ「GRAYSKY project(グレイスカイプロジェクト)」をスタート。2017年、東京・清澄白河にコミュニケーションスナック「ちんぷん館 TOKYO」をオープン。日本海地域の食文化と手仕事を楽しみながら、地域や社会との新たな接点を模索するイベントを積極的に開催している。

「運と縁」

仕事にすごい恵まれて、わりとやりたい仕事をやらせていただいてたかもしれないですね。

こう話す山本さんは大学の家政科を卒業後、不動産会社に就職。その後、スタイリスト、デザイナーと仕事を変え、デザイン会社サーモメーター株式会社の社長を務めながらギャラリーを開店、そのギャラリーは今はうつわ屋さんになっています。そして、2年前にグレイスカイプロジェクトを始め、今年からスナックを始めたそうです。

というように、やられていることが多すぎるので、何から紹介していけばという感じですが、まずは、お話を聞く中で山本さんの生き方がイメージできた一つのエピソードから。それは、スタイリストからデザイナーになろうと勉強していた頃のこと。

『ブルータス』に渋谷のデザイン事務所が日替わり店長のバーをやっているという記事が載っていて、面白そうだなと思っていて。その頃、ちょうどたまたま新しい雑誌のデザイナーを募集しているという話を聞いて連絡してみたら、そのバーをやっているデザイン事務所だったんです。

それでバーに遊びに行ったら、「水曜日担当の子が3ヶ月パリにいっちゃうからやってみない?」と言われて、水曜日の担当になりました。

そして水曜日担当として働き始めたバーで仕事を紹介されます。

「こういう仕事あるけどやる?」みたいに経験が浅かったにも関わらず声かけていただいて、「やります!(できるかどうかわからないけど)」という感じで仕事をいただいていました。

「たまたま」「ちょうど」という言葉が次々に出てきます。本人によれば「デザイナーとしてここまでやってこれたのは運と縁」ということなんですが、「やりたいことにはすぐ首を突っ込む」とも言っていて、面白そうなことに積極的に関わっていくことが「運と縁」につながり、デザイナーとしての仕事にもつながったということのようです。

「面白いこと」は苦労にならない

20代は寝るのがもったいないと思っていて、フリーになってからメールの署名に「24時間営業」って書いたんです。そうしたら本当に24時間営業になってしまって、今思えば要領が悪かっただけなんですけど、徹夜で仕事してご飯を食べる暇もシャワー浴びる暇もない、みたいな。

相当な激務だと思いますが、それをむしろ楽しんで、次々と新しい仕事に手を出して、それがまた縁を生んでいきます。

ある時、雑誌の立ち上げの話が舞い込んできたんです。企画から全てのページをつくれるというので、やりたいと思ったんですが、100ページ以上を一人でデザインするというのは無理だな、と思って。グラフィックデザイナーを友だちに紹介してもらって、数人のチームで半年くらい合宿みたいにして仕事をしました。大変でしたけど、チームにすごい絆が生まれたんです。

スナックで使ううつわは作家さんに提供してもらったもので、ぐい呑は島根の出西窯のもの。ちなみに作家さんは飲み代がタダになるそう。

山本さんは、そうして出会ったグラフィックデザイナー(通称「おっちゃん」)と、デザイン会社を立ち上げます。

立ち上げるときは盛り上がってたから良かったんですけど、一緒にやり始めてすごく仲悪くなったんですよ。デザインに対する思いが違っていたりして、本当に毎日ケンカしてました。

でも一緒に仕事をやると、自分一人ではできなかったことができて、ケンカしてでも一緒にやった仕事は、自分ひとりでやったものより素直にいいと思えたんです。それで、人と力やアイデアを合わせてやることを楽しめるようになりました。

どんなに大変でも、人と一緒にやることでそこに楽しさを見い出し、苦にしない。ずっとニコニコと笑顔で話す山本さんの話を聞いて、この楽しもうという姿勢がなによりも重要なんだなと思いました。

「運と縁」で見直した日本海とスナック

ここでようやく、グレイスカイプロジェクトの話になりますが、このプロジェクトが始まったきっかけも、そんな「運と縁」によるものだったのです。

友だちに『一献の系譜』という能登を舞台にした映画のクラウドファンディングに誘われて、監督と酒蔵を巡るツアーというのに参加したんです。監督のつてでおうちの台所とかに入れてもらって、おばあちゃんがつくったサザエの麹漬けとかいただいて、本当に美味しくて。こういう心が豊かになれる暮らしを伝えていけないかと思うようになったんです。

ドキュメンタリー映画『一献の系譜』製作支援のため2011年に実施されたクラウドファンディング。

金沢出身で、小さい頃から発酵食に囲まれて育ったものの「小さい頃はありがたさが全くわかっていなかった」という山本さん。40歳ころに日本酒に目覚めたことで、「臭いほど美味い」という発酵食を始めとする故郷の食の素晴らしさを見直すようになり、この能登での体験でグレイスカイプロジェクトを立ち上げることを決めたそうです。

プロジェクトを一緒にやりたいと思った友人10人くらいに「ちょっと飲もうよ」みたいな感じで会社に来てもらって、いきなり企画書出して、「こういうのやりたいんだけどやるよね」って結構強引にはじめてしまいました。

こうして半ば強引にあまり準備もなく始まったプロジェクトですが、ウェブサイトで生産者のストーリーなどを伝えるほか、実際に食べ物やお酒を味わってもらうイベントに力を入れています。

プロジェクト名には灰色の空に覆われる厳しい冬が日本海の伝統的な文化を生んだという思いが込められているそう。

プロジェクトの中身ももちろんなんですけど、誰とやるかもすごく大事で。だから、小さいスペースでワークショップをしたり、トークイベントでモノの背景を聞いて買ってもらったり、器なら舌で食べたり飲んだり、そうやってディープにつながるのが自分たちにはあってると思うんです。

そんなイベントの拠点として今年オープンしたのがスナック「ちんぷん館TOKYO」。スナックではありますが、イベントを開催するときだけの不定期営業です。

「ちんぷん館TOKYO」。2階はレトロモダンな小上がりに。

このすぐ裏に住んでる友人に「面白そうな物件が空いてるから見に来ない?」みたいな感じで言われて来たら、一目惚れしてしまって、何やるかわからないけどとりあえず借りようって。もともと1階がスナックで2階が住居だったのを自分たちで改修しました。

「ちんぷん館」がもともとの店名でそこに東京をつけただけなので、昔のお客さんがたまに来て「またカラオケ歌えんの?」って。

そして、スナックとしてオープンしたこと、店名に東京とつけたことにもある思いがありました。

スナック文化っていいなと思って。近所のおじさんおばさんのコミュニケーションの場になっていたり、毎日楽しみにしている人がいたり。日本独自の文化で、それこそ日本中にあるわけですが、地方に行くと潰れたスナックがそのままになっていたりするのを見かけることも多いですよね。

そういう場所を「ちんぷん館○○」みたいに再オープンして、ちんぷん館の輪を広げていけたらなんて思ってるんです。

グレイスカイプロジェクトも、後継者問題など、地方の問題を解決する助けになればという思いもあって始めたという山本さん。スナックを「サードプレイス」と考えて再生することも、地方の問題を解決する一つの方法なのかもしれません。

4月に行われたイベント「日向(ひゅうが)時間」の様子。各地の美味しいものを飲んだり食べたりできるイベントを不定期に開催。

グリーンズとの出会いとこれから

こんな山本さんですから、greenz peopleになったきっかけももちろん「たまたま」です。

Facebookで友だちがシェアしてたgreenz.jpの記事を読んで、サイトに行こうと思ったら何故かgreenz peopleのサイトに行ってしまって、それで気まぐれでなってしまいました。

それから色々記事を見たり、本が送られてきたり、ちょうどイベントの告知があったので行ってみたら、7〜8人しかいなくて(笑) でもみんないい人で居心地が良くて、アットホームが好きなんで、すごく気に入ったんです。

その後、Mornin’ Greenz(2016年頃開催していた、グリーンズオフィスでの朝会)や遠足にも参加し、知り合ったgreenz peopleの人たちがグレイスカイプロジェクトのイベントに来てくれたりもしたそう。

greenz people遠足の様子

ピープルというのが魔法の言葉みたいに「あ、ピープル、仲良くなれる」っていう安心感があるんです。

実はこんなご縁から、greenz peopleのフライヤーも、山本さんにディレクションしていただきました。

greenz peopleのフライヤー(一部)

たまたま関わったことが楽しいと思えば、そこにどんどん首を突っ込んでいく。greenz peopleもそんな山本さんの「楽しいこと」の一つになれたようでよかったです。

山本さんの「狼煙」はこちら!

そして、山本さんはご自身がつくった「楽しい場」に色々な人に来てほしいといいます。

スナックは老若男女つながれるので、なかなか年が離れた友だちをつくることが難しい学生さんとか、ぜんぜん違う分野の友だちができて楽しいと思います。お酒と発酵食と器が好きなら、ぜひ来てください。

さらに、一緒にそんな「場」をつくってくれる人にも来てほしいそうです。

やっていてすごく楽しいんですけど、高齢チームが問題で、若者を増やしたいです。どんなふうに人と人がつながる場をつくっていくかを一から考えて、運営までやってくれる若い人が来てくれたらいいですね。

もちろん、日本海じゃなくて太平洋プロジェクトとか、自分で何かやりたい人がいれば一緒にやってもいいし、スナックやりたいっていう人も歓迎です!

とにかく「楽しそう」と思ったら、どんどん首を突っ込んできてほしい。山本さん自身がやってきたこと自体が狼煙となって、「何か楽しいことをやりたい!」という人が来てくれることを願っています。

そう思った方は是非山本さんに直接連絡してみてください。新しい「運と縁」が待っているかもしれませんよ。

【山本加容さんの連絡先】
Facebook https://www.facebook.com/grayskylove/
メール info@surmometer.net

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そんな山本さんも参加している、ほしい未来のつくり手が集まるグリーンズのコミュニティ「greenz people」。月々1,000円のご寄付で参加でき、あなたのほしい未来をつくる活動をグリーンズがサポートします。ご参加お待ちしています!

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