ひとつの場所をいろいろな人が共有する、コワーキングスペースやシェアオフィス。こうした言葉がいつからか耳なじみのある言葉になってきました。
不特定多数の人が集まる場所が増えることによって、場をいかに活性化させるかという課題も生まれ、「場づくり」や「コミュニティオーガナイズ」という言葉が注目を集めています。実は都内のコミュニティ&レンタルスペースのスタッフでもある筆者にとっても、これらは最大の関心事です。
今回お話しを伺うのは、「まちづくり会社ドラマチック」代表の今村ひろゆきさん。今村さんにはこれまで、街中のスキマ空間を間借りするサービス「MaGaRi」や会社員時代のユニークな働き方を通して、greenz.jpにご登場いただきました。ここ数年はスペース運営を中心にしながらも、ますますバリエーションに富む活動を広げています。
気になる最近の活動から、まちづくりで大切にしていること、これから挑戦していきたいこと、さらには求人(!)まで。ある晴れた春の日に、今村さんの活動拠点である東京都台東区入谷にお邪魔して、お話を伺ってきました。
今村さんの活動に心惹かれる方、ぜひ記事の最後の「今村さんの狼煙」までお見逃しなく!
千葉県松戸市出身、台東区浅草在住。3歳息子のいる3人家族、好きなものは旅とカレー。アトリエ・オフィス・ショップのプロデュース・運営を行い、拠点の立地する街の資産に注目したイベントやプロジェクトを展開。一連の活動を通じ、街にユニークな人材や活動が根づく土壌をつくる。
運営する拠点に現代の公民館「SOOO dramatic!」、シェアアトリエ「インストールの途中だビル」「reboot」など。まちづくりの活動に「革とモノづくりの祭典 浅草エーラウンド」「good day入谷」「イッサイガッサイ」「東東京マガジン」などがある。
現代の公民館!
こんにちは〜!
下町風情のあるまち・入谷のシェアアトリエ「reboot(リブート)」で出迎えてくれた今村さん。いただいた名刺の裏には手がけているプロジェクトの数々が。シェアアトリエにコミュニティスペース、メディアの運営からイベントの企画まで。まずは現在取り組んでいるプロジェクトについて、ご紹介いただきましょう。
スペースの運営をする、というのがメインの事業です。大きく分けて、シェアアトリエとイベントスペースをやっています。
「reboot」や「インストールの途中だビル」は、“シェアアトリエ”という名の通り、ファッションやジュエリー、そして家具のデザイナーなど、ものづくりをする人たちが入居しています。入居者たちは音やにおいを気にせず24時間365日作業をすることができます。
rebootの1階にはSOOO dramatic!(ソードラマチック)というイベントスペースがあって、トークイベントや、まちの人が一品持ち寄って集まる「入谷家の食卓」という食事会を開催しています。
たくさんの人がふらっと立ち寄れるイベントとしては、ビルの1F部分を開放してマーケットも開催しています。大勢が来るものもあれば、小さくコミュニティをつくろうというイベントもありますね。
SOOO dramatic!のキャッチフレーズは、「ワクワクみつかる、現代の公民館!」。
ドラマチックが主催するコミュニティの深さや目的の異なるさまざまなイベントを開催するほか、レンタルスペースとして貸し出しも行っています。
「レンタルスペース」ではなく「公民館」という言葉を使うことには、スペースを利用する人の気持ちのハードルを下げるという意味合いがあるほかに、こんな思いが込められているといいます。
公民館って、もともと地域の人の活動を応援するような場所だったと思うんですよ。僕たちも何か活動したい人を後押しするような場所でありたいな、ということがあって。
ただのレンタルスペースではなく、「まちづくり」を中心に据えているスペースであることも大きな特徴のひとつ。
例えば、拠点の周辺で活動をしているゲストを呼んでトークをしたり、地域の人が参加できるようなイベントを企画したり。さらには入谷界隈の店舗やゲストハウスなどが1週間特別なおもてなしを提供するイベント「good day入谷(グッデイイリヤ)」の事務局を務めるなど、そこに集まる人が、まちと“接続”できるようなきっかけをつくっているのです。
まちに拠点を構えて、そこにネットワークや仲間ができて、そこでまた新しい仕事がどんどん立ち上がっていく、ということを日々繰り返していますね。
ユニークな人が集まればまちは盛り上がる
一見、建物やスペースをつくっているように見える今村さんですが、実際にしているのは、まちのキープレイヤーとなる人をみつけ、つなぎ、そこに関わる人を巻き込んでいくこと。その「まちづくり」の活動の軸は、いつも人にあります。
「極端なことをいえば、ハードがなくてもソフトさえあればまちは盛り上がるんじゃないかな」と今村さん。
つまり、面白い活動をしてる人たちが集まったらそのまちって盛り上がると思っているんです。
その場所に関わるのは、「会いたい人がいる」、「建物が素敵だ」、「イベントがある」、いろんなモチベーションがある。でもその中で関係性を残せる唯一の要素って、人じゃないかなと思うんですよね。
お互い会ったときに嬉しいとか、あの人ならこのイベントを喜んでくれるかな、と声をかけるとか。人と人の輪が大きくなったらコミュニティになるので、まちづくりは、そのコミュニティをいかに育てていけるかっていうところが大事な気がしますね。
筆者もコミュニティスペースの運営に携わるひとりとして、ピンとくるものがありました。確かに最初に人が訪れるきっかけはさまざまで、そこに来る人の関わり方の濃度もそれぞれ違います。でも、その場所で新しい活動が生まれ、継続的な活動へと発展するとき、いつもそこには人と人とのつながりがあります。
どんな立派な建物やイベントよりも、場のにぎわいをつくり出すために必要なのは、人と人のつながり、そしてつながるための仕組みなのかもしれません。
「現代の公民館」から本物の「公民館」へ
これまでスペースの運営やイベントの企画などを通じて、自分の拠点である東東京を中心としたエリアを耕してきた今村さん。今後は、まちを飛び出して、培ってきたノウハウを伝えていきたいと話します。
まちにひとつ、SOOO dramatic!みたいな場所があると面白くなるだろうなと思っていて。自分でプロジェクトを起こせるようになったり、いろんな人に会えたり、演劇が見られたり。そういうのをいろんな公共施設でやっていきたいなと思ってます。
現在は、千葉県習志野市でリニューアルオープンされる公民館にアドバイザーとして関わっています。いよいよ「現代の公民館」から本物の「公民館」へ進出です!
しかし公共の施設をどのようにSOOO dramatic!のような人がつながる場所へとリニューアルしていくのでしょう?
今村さんに聞くと、すぐに「こちらから仕掛けるんでしょうね」と返事が返ってきました。
一般的な公民館やレンタルスペースって、誰かが使ってくれないかな、って待ってると思うんですけど、そうじゃなくて攻める作戦でいきます。具体的には、まちにいる面白い活動をしている人に使ってもらって、そこで公民館が中心になってまちのプレイヤーをつなげていくんです。
それによって公共施設自体の稼働率が高まったり、地域でサークルみたいな活動が生まれていったり、お互いにとって良い状況がつくっていけたらいいですよね。
現実的なステップとして、まずは地域で活動をしている人がいないかヒアリングしていくことから始めているといいます。そしてそこで出会った人にまた新しい人を紹介してもらって、“友だちの輪”形式で、まちのプレイヤーを見つけていくのです。
実は既に、そうして出会ったユニークな活動をする人たちを、習志野で活動する人物・ユニークな場所・街の魅力を発信するコミュニティである「ならしのスタディーズ」のトークイベントへ、ゲストとして呼んでいます。これから、そこに集まった人たちと一緒にできることを考えていきたいと話します。
プレイヤーの側も、「もっと活動できる場所があったらな」とか、「仲間が増えたらな」と思っていながらも、今は、それぞれの活動が点になってまちに散らばっている状態なんです。それをつなげることができたら、より面白い活動が起きるだろうと思っています。
「すべての人はクリエイター」
このように活躍の幅を広げ、今でこそ数々のメディアに取り上げられている今村さんですが、自分自身や進路について悩んでいた、「モヤモヤ期」と呼ぶ時期が長くあったとのこと。
社会人になったばかりの頃、学生時代に比べて何もできなくなってしまったと感じる時期があったんです。結局自分は何ができるのかわからなくなって、その期間は相当つらかったですね。
新卒で電機メーカーに勤めていた今村さん、自分のやりたいことを見つめ直し、得意の企画力が生かせるまちづくりコンサルティング会社へ転職。そこで商業施設の開発などに携わるうちに、さらに今度はハードだけではなくソフトとして、人や活動を応援する仕組みを現出させたいと思うようになり、独立しました。
決して順調に真っ直ぐな道を歩いてきたわけではなく、自分自身への違和感や、目指すところと現実とのギャップにひとつひとつ向き合って今があります。
実はgreenz peopleのひとりでもある今村さん。greenz.jpを読みだしたのは、モヤモヤ期の真っ只中だった2010年頃でした。「こんなアイデアいいな〜とか勇気付けられながら、たくさんメモしてましたよ」と当時を振り返ります。
やがて今村さんが自身のプロジェクト「MaGaRi」を立ち上げたときに、どうしても掲載してほしいと思ったウェブメディア、それがgreenz.jpでした。自らgreen drinks Tokyoに足を運び、編集長の鈴木菜央に活動をアピールした結果、掲載されたMaGaRiの記事は大反響! 認知度もぐっとあがったといいます。
「MaGaRiの今村」みたいな感じで、いろんな人が会いにきてくれたし、ネットワークも広がりましたね。最初に芽がポッと出始めたところを、後押ししてもらったのがすごくありがたかったです。
「モヤモヤ期」が原点だからこそ、かつての自分と同じように、悩み、迷う人を後押しし、「みんなが、『自分は何かができるんだ』ということを信じられる未来をつくりたい」と今村さんは話します。
「すべての人はクリエイター」というのが僕らの事業の信念なのですが、ここで指している「クリエイター」というのは、ものづくりをすることではなく、一歩前に踏み出して未来をつくりだす、前向きな人のイメージです。
きっかけは人に会いにいくこともしれないし、何かイベントを企画してみることかもしれない。これからも僕たちはリアルな場所として、会って話して後押ししていくことをやっていきたいです。
今村さんの「狼煙」はこちら!
最後に「greenz peopleの狼煙」連載恒例、今村さんの「こんな人とつながりたい」を伺いました!
・公民館の運営で困っている人。またはコミュニティやにぎわいをつくることを求めている人。
・ドラマチックと一緒にコミュニティマネージャーとして、場所の運営をしたい人。
・東東京エリアと千葉県習志野市で仲間になって、まちを盛り上げたい人。
我こそは!という読者のみなさん、ぜひ今村さんに連絡してみてください。かつての今村さんのように、モヤモヤしている方でも、もちろんOK。今村さんと会って話すことで、「何かができるんだ!」と自分の、そして誰かの背中を押す一歩へとつながるはずです。
– INFORMATION –
「当たり前の働き方」を疑ってみたら、やりたいことが仕事になった!自分の納得感のある仕事をつくろう。社会人5年目からの「働き方見直しクラス」10/20(金)開催
あなたもgreenz people コミュニティに参加しませんか?
そんな今村さんも参加している、ほしい未来のつくり手が集まるグリーンズのコミュニティ「greenz people」。月々1,000円のご寄付で参加でき、あなたのほしい未来をつくる活動をグリーンズがサポートします。ご参加お待ちしています!
詳細はこちら > https://people.greenz.jp/