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使われなくなった太陽光パネルの使い道は? 3万枚以上の使用済みパネルを再活用! ネクストエナジーの検査工場へ行ってみた!

太陽光パネルって、使われなくなったあとどうなっているの? そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
こんにちは。全国の自然エネルギーによる取り組みを伝える、ノンフィクションライターの髙橋真樹です。今回はそんな疑問にお答えするため、使用済み太陽光パネル(太陽電池)をリユース(再利用)して販売している企業を取材してきました。

訪れたのは、長野県駒ヶ根市に本社がある「ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社(以下、ネクストエナジー)」です。ネクストエナジーは、太陽光発電事業を中心に自然エネルギー利用を幅広く進めている企業です。

グリーンズ読者の皆さんの中には、送電網を使わずに、つくった電気を自家消費するオフグリッド用(独立型)の太陽光パネルやシステムを販売している会社としてご存じの方も多いのではないでしょうか?

あまり知られてはいませんが、ネクストエナジーはオフグリット用の太陽光パネルを販売する前から、全国に先駆けてリユース事業に力を入れてきました。資源の有効利用や廃棄物を減らすためには欠かせないリユースは、どのように行われているのでしょうか? 事業を始めた理由や検査の仕方、これからの課題などについて伺ってきました!

ネクストエナジーに梱包されて届けられてきた中古のパネル(©ネクストエナジー・アンド・リソース)

ほとんどの中古太陽光パネルは、まだ使える

ネクストエナジーは現在、太陽光パネルの販売から、太陽光発電設備の建設・保守、そして電力小売など自然エネルギーを普及させるための事業を幅広く手がけています。でも初めての事業は、使われなくなった太陽光パネルを買い取って検査し、中古として販売することでした。リユース事業の開始は2005年からなので、まだ世の中に太陽光発電が広まるずっと前のこと。先駆的な取り組みといえます。

その後、中古パネルとバッテリーを組み合わせ、独立型のオフグリッドシステムとして販売したところ、個人のお客さんから評判になりました。当時はまだ、このような形のオフグリッドシステムが販売されていなかったため、ニーズが高かったとのこと。オフグリッドシステムの販売は、中古パネルを活かそうとしたことから始まったんですね。

リユースパネルを利用したオフグリッドシステムで家庭の電力を自給(©ネクストエナジー・アンド・リソース)

リユース事業を始めて10年以上、これまでに同社が買い取って検査した中古パネルの枚数は、なんと3万枚以上にものぼります。その多くは、家屋や事業所の取り壊し、あるいは災害などによって出てきたものですが、検査をしてみるとほとんどの中古パネルはまだ十分な発電能力がありました。それらを廃棄物にしてしまうのは、社会的にも大きな損失だと考えたのです。

ネクストエナジーは、単に中古パネルを販売しているわけではありません。1枚1枚の中古パネルを検査し、故障原因なども分析してきました。そして、そこで培ったデータを積み上げて、販売する中古パネルに厳しい審査基準を設けました。販売する中古パネルに1年保証をつけているのも、ネクストエナジーの特徴です。では、どのように検査をしているのか、工場を案内してもらいました。

徹底した検査

案内してくれたのは、ネクストエナジー商品技術部の木下暁子さんと菅谷真美さんです。中古パネルは、検査設備のある駒ヶ根と名古屋の2つの工場に集められます。今集まっている中古パネルの多くは、事業の途中で災害にあって壊れたものが中心とのこと。中古パネルは1枚ずつ手作業で洗い、汚れを取り除きます。その後、さまざまな検査機器で現在の状態をチェックしていきます。

木下暁子さん(右)と菅谷真美さん(左)

木下さんが、検査工程を説明してくれました。

木下さん まずは見た目でひび割れがないかをチェックしますが、ぱっと見で大丈夫そうでも性能が低下していることがあります。そこで水槽の中に入れて絶縁性を確認したり、特殊なカメラで撮影して細かな傷をチェックしています。また、「I-V出力測定」という電流と電圧の検査も欠かせません。

こうした検査をすべての中古パネルで行い、ランク分けをします。そして、基本的には元の出力の80%以上発電できる中古パネルを合格品として、1年保証をつけて販売しています(※)。

さらに、販売される中古パネルには1枚ずつ、トレーサビリティ(追跡可能性)の表示をしています。購入した人が、検査結果はもちろん、以前使われていた地域や用途、使用期間などのデータがわかるようになっているのです。

現在では中古パネルを販売する業者は増えていますが、単に横流しのような売り方をしている会社もある中で、ここまで徹底して検査と品質にこだわっている会社はおそらく他にはありません。

パネルの検査は1枚ずつ丁寧に行われる(©ネクストエナジー・アンド・リソース)

採算性とは違う価値も

一連の流れは、とても手間とお金のかかる作業です。そのため「すぐに売って欲しい」という要望に対応できないケースもあるとのこと。ビジネスとして、これで採算が合うのでしょうか? 木下さんは、採算性だけでは計れないリユース事業の意義を話してくれました。

木下さん 現場からすると本当に大変な作業ですし、この事業だけ見れば採算として厳しい面があります。会社としても、今後はより簡単に検査できる方法を開発しなければと考えています。しかし、中古といっても販売するからには商品に対する責任がありますので、安心してご購入いただけるよう努めてきました。こうした実績を重ねてきたことが、信頼にもつながっています。

また、蓄積した検査データはネクストエナジーの別の分野でも活かされています。たとえば故障しにくい太陽光パネルの製造や、負荷の掛かりにくい設置の仕方などの技術開発につながっています。

※顧客の要望によっては、それより出力の劣る中古パネルを販売するケースもある。

届くパネルにはさまざまな種類が混ざっている

大きく変化する社会のニーズ

中古パネルの販売は、売り先を見つけるだけでなく、買い取り先も見つけないといけないバランスの難しい事業です。特にニーズは社会の変化によって大きく影響を受けています。大口の顧客は企業などの法人ですが、2012年にFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)ができ、売電価格が高くなった際には、ほとんどの会社が新品の太陽光パネルを使用したため、中古パネルが売れなくなりました。

ところが、太陽光発電の売電価格が急激に下がった現在は、一気に中古パネルのニーズが増えました。徹底した検査を行っているため、買い取れる中古パネルの量が限られていて、在庫が追いつかないほどです。ネクストエナジーでは2016年の1年間だけで1万枚ほどの中古パネルを販売しましたが、今後も需要と供給のバランスには頭を悩まされるかもしれません。

パネルの洗浄作業

リユースだけでなくリサイクルも

 
将来的に日本でも増えるとされる使用済みの太陽光パネル。環境省の試算では、2014年に2400トンだった廃棄パネルが、2040年代に80万トン(約330倍)に増えるとしています。そのような廃棄物を減らすという意味でも、まだ使えるものをリユースすることは非常に重要です。ネクストエナジーの菅谷さんは、まずはリユース事業をやっていることを多くの人に知ってもらいたいと訴えます。

菅谷さん 売電単価が下がったとしても、まだ使えるものなら使い続けて欲しいと思います。事業があってそれができなければ、リユースという方法があるということを知って、連絡をしてほしいですね。まだ使える太陽光パネルが廃棄されるのはもったいないですから。放置されたままだと傷んで買い取れなくなってしまうこともあるので、早めに知らせてもらうのが大切です(※)。 

パネルに電流を流した際にセルから発せられる赤外線を映像化し、細かな割れや配線異常をチェックするEL検査(©ネクストエナジー・アンド・リソース)

リユースだけではありません。ネクストエナジーでは、廃棄するしかない太陽光パネルをリサイクルにつなげようと、2016年3月、他社と共同で「合同会社アールツーソリューション」を設立しました。

これまでは廃棄するしかないものはネクストエナジーでは扱えませんでしたが、今後はこの新会社を通して、リユースできるものはネクストエナジーへ、廃棄するものは提携している名古屋のリサイクル会社へという流れができるようになりました。リサイクルについては、有料で引き取る形になっています。

なお、太陽光パネルの処分方法としては、アルミやガラス、金属資源などに分解するリサイクル技術が一般的になってきています。うまく集めることができれば、資源の大部分が別の素材として再利用できるのですが、資源を回収するルートの確立や法律の整備がまだ追いついていないといった課題もあり、今後の対策が急がれています。

リサイクル事業については、北九州市で実施されている実証事業の取り組みを取材しているので、以下の記事を参照してください。

廃棄された太陽光パネルはどうなるの? 北九州市のリサイクル工場を直撃!
http://ameblo.jp/enekeireport/entry-12250916291.html
(高橋真樹の全国ご当地エネルギーリポート)

北九州市にある太陽パネルのリサイクル工場設備(事業の運営は株式会社新菱)

※ネクストエナジーは個人からの買取りの問い合わせも受けている。ただ、屋根に設置されている太陽光パネルの取り外しは工事費用が必要となる。

髙橋真樹のひとこと

話が少し逸れましたが、取材を通して感じたことは、ネクストエナジーの「自然エネルギーに関わる企業として、再利用や廃棄のことまで考えるのが当然」という姿勢が貫かれているということでした。

リユースについては、まだまだ認知度が低いことや、新品の太陽光パネル価格が年々大幅に下がっていることなどで事業としては厳しい面もあります。しかし、紹介したように目先の売上にこだわらない取り組みが成果を上げてきた点もあります。

これまで、太陽光パネルの寿命は20年から30年と言われてきました。しかし、ネクストエナジーが検査を重ねたところ、20年以上使用した太陽光パネルのほとんどが十分に使えることが明らかになりました。自然エネルギーは新しい分野なので、こうした知見を積み重ねていくことは、単にリユース事業のためだけではなく、他の分野にも波及し、自然エネルギーの普及を加速させる効果も生み出しています。

今回のリポートはここまでです。みなさんも、太陽光パネルのリユースやリサイクルについて、関心を持っていただけたら幸いです!

ネクストエナジーで生まれ変わったリユースパネルは「リボーンテクノロジー」のブランド名で販売されている(©ネクストエナジー・アンド・リソース)

高橋真樹(たかはし・まさき)
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。世界70カ国をめぐり、持続可能な社会をめざして取材を続けている。このごろは地域で取り組む自然エネルギーをテーマに全国各地を取材。雑誌やWEBサイトのほか、全国ご当地電力リポート(主催・エネ経会議)でも執筆を続けている。著書に『観光コースでないハワイ〜楽園のもうひとつの姿』(高文研)、『自然エネルギー革命をはじめよう〜地域でつくるみんなの電力』、『親子でつくる自然エネルギー工作(4巻シリーズ)』(以上、大月書店)、『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など多数。2016年7月25日に新刊『そこが知りたい電力自由化・自然エネルギーを選べるの?』(大月書店)が発売された。

高橋真樹がゆく全国ご当地エネルギーリポート
http://ameblo.jp/enekeireport/
『そこが知りたい電力自由化・自然エネルギーを選べるの?』(大月書店)
http://www.amazon.co.jp/dp/toc/4272330888

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。