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難病の子どもと家族の拠り所となる「こどもホスピス」の文化を日本に! 「TSURUMIこどもホスピス」の”もうひとつの家”としての在り方。

みなさんには、自宅のようにくつろげて安心できる”もうひとつの家”と呼べる場所がありますか? 例えば、コーヒーのおいしい喫茶店がそうだという人もいれば、ふかふかソファのある本屋さんがそうだという人もいるでしょう。

今回ご紹介する「TSURUMIこどもホスピス」は、命に限りのある、または命を脅かす病気とともに暮らす子どもたちやそのきょうだい、保護者、それぞれにとっての”もうひとつの家”になることを目指して、2016年4月に誕生しました。

そこでどのような取り組みが行われているのか、そもそも、ホスピス活動とはどんな活動なのか、日本ではまだ始まったばかりの「子どもホスピス」について代表理事の高場秀樹さんにお話を伺ってきました。

高場秀樹(たかば・ひでき)
「一般社団法人 こどものホスピスプロジェクト(以下、こどものホスピスプロジェクト)」理事。ホテル勤務やイベント企画などを経て、27歳で起業。現在48歳。最初の事業はWEBプロダクションから始まり、現在はテクノロジーとクリエイティブなものを組み合わせた空間制作まで手がけている。エンジニアではなく経営面を担当。脳性麻痺の子どもを持つ親として「TSURUMIこどもホスピス」の設立に関わり現在に至る。

日本初のコミュニティ型子どもホスピス

活動内容が評価され2016年「グッドデザイン賞」を受賞。

現在、日本に15万人いると言われる難病の子どものうち、命を脅かされる病気を伴う子ども「LTC(Life-threatening condition)」の数は2万人と言われています。「TSURUMIこどもホスピス」は、この「LTC」の子どもとその家族のためにつくられました。

大阪市営地下鉄「鶴見緑地」駅を降りてしばらく歩くと見えてくる、山小屋のような愛くるしい建物と庭のある施設が「TSURUMIこどもホスピス」です。

またここに来たいと思わせてくれる、愛嬌ある建物。

ここは、病気の子どもと家族にとっての「LIVE DEEP(深く生きる)」を支える日本初のコミュニティ型子どもホスピス。「どんな病気になったとしても、同世代の子どもたちと同じ経験を生きる時間を大切にしたい」という思いを原点に、友のように寄り添って“生きる”を支える「Beside You」を理念に掲げ、「LTC」の子どもと、その家族に寄り添った活動を無料で行っています。

その活動は大きく2つ。命を脅かされた子どもの“学び”“遊び”“ふれあい”“やってみたいと思うこと”を叶え、その子の成長を支えること。そして、きょうだいや家族が、辛いときや悲しいときに支えが得られ、自由に休める場所であること。具体的には、友だちを呼んで中庭でパーティーを開く、好きな楽器を鳴らしてみる、家族とゲームで遊ぶ、プール遊びや水遊びをするなど、病気がなければ当たり前にできたことを、ここで思う存分実現するのです。

そんな「TSURUMIこどもホスピス」の設立は、2013年に具体化しました。きっかけは、日本に子どもホスピスをつくるために活動していた「こどものホスピスプロジェクト」の提案が、子どもたちに夢や希望を与えるアイデアを世界中から募った「Clothes for Smilesプロジェクト」に選ばれたこと。

「こどもホスピスプロジェクト」の活動を支援してきた「日本財団」と「ユニクロ」が共同で建設費と運営費を捻出することになり、さらには2014年、大阪市が公募した鶴見緑地駅前エリアの土地活用事業に「TSURUMIこどもホスピス」の活動を含めた「あそび創造広場」が採択されました。そして2016年、地域とともに豊かな社会をつくる試みとして、活動が始まったのです。

孤立を防ぎ、地域で支える仕組みとの出会い

専門職やボランティアなどたくさんの人の想いが実って誕生した「こどもホスピス」

「TSURUMIこどもホスピス」の代表理事を務める高場秀樹さんは、自身も重度の脳性麻痺を伴った子どもの親として日々を送るなかで、子どもホスピスの必要性を強く感じ、「TSURUMIこどもホスピス」の設立に取り組んできた1人です。

高場さんが語るご自身の体験は、今も日本のどこかで、別の家族が直面している悩みかも知れません。

9歳になる息子は、これまで何度もICU(集中治療室)に入りました。基本的に対処療法をすることしかできません。今後、いつ発作が起き、命がどうなるかわからない状態の子どもと暮らすには、24時間の見守りが必要です。日中は妻が息子に寄り添い、夜中は僕が寄り添っています。私はたまたま会社経営者だから、ある程度時間を調整できますが、勤務時間が決まっている仕事であれば、それも難しいでしょう。

高場さんは、息子さんが3回目の入院をしてICUに入ったとき、死を覚悟したそうです。幸い命はつながりましたが、高場さんは「その日を境に意識が変わり始めた」と言います。

それまでは、なんとか病を治せないかと、暗闇の中で一筋の光を探していましたが、「子どもが本当にいなくなるかもしれない」という体験を経てから、「なぜ、この子が生かされているのか?」を考え、「子どものありのままの生」に寄り添うことを意識するようになったそうです。

友のように寄り添って“生きる”を支える「Beside You」が理念。

ただ、街に息子を連れて出ると、私たち家族は異質でしかないんです。レストランで発作を起こしたら、もはや”事件”になります。何をしていても、居心地の悪さ、生きづらさを感じます。「何の気兼ねもなくいられる場所ってどこなの?」と考えると、もう家しかありません。こういう状況の中で、家族は社会から孤立していくんだと思いました。

そんな悩みを抱えていたときに高場さんが出会ったのが、イギリスの子どもホスピス「ヘレン&ダグラスハウス」の取り組みでした。

「ヘレン&ダグラスハウス」は、1982年、英国オックスフォードに開設された世界初の小児ホスピス。「LTC」の子ども・きょうだい・保護者を主人公に、教育や音楽、芸術などを通して成長を支えています。医療・福祉・教育の現場で活躍するボランティアが、友として寄り添い、サービスを提供。施設の運営費は地域の企業や個人からの寄付金で支えられているため、誰でも無料で利用することができます。

この真っ暗闇の状況を、地域で支えていくホスピスという文化がイギリスにあることを知って驚きました。私と子どもの周りには病院しかありませんでしたし、もちろん学校にも通えない。何も頼れるところがないという感じがして、イギリスの隣近所で支えあっている環境を羨ましく思いました。

「TSURUMIこどもホスピス」の4つの指針

「ヘレン&ダグラスハウス」の理念に強く共感した「TSURUMIこどもホスピス」は、現在4つの指針を大事にして取り組んでいます。

1.こどもたちと家族の「やりたいこと」を叶えること。
2.家庭的な環境で安心して休める場所であること。
3.子どもも、きょうだいも、おやも、家族全員にそっと寄り添うこと。
4.多様なコミュニティと関わり、新たな緩和ケアを実践すること。

1〜3については、寄付による民間事業という独立性のある側面を活かして、公的な医療機関や福祉事業ではどうしてもこぼれ落ちてしまう、個々の家族とその子らしいニーズにも可能な限り応えることができます。

決まったプログラムはなく、1人ひとりの遊びたいこと学びたいこと、一緒に過ごしたい時間をサポート。

重い病があっても、子どもは成長したいという気持ちを持っています。今、ありのままの生のなかで遊び、学び、友だちや家族と触れ合います。その機会が治療や闘病によって著しく失われてしまっているのです。また、私たち家族と同じように、安心できる場所がなく、家族やきょうだいも、精神的にも身体的にも厳しい状況になっていきます。「TSURUMIこどもホスピス」では、それらを支え、ささやかな望みを叶えることができます。

また、4についても、「TSURUMIこどもホスピス」が、鶴見緑地内の「あそび創造広場」としてハウスの一部を市民に開放していることなどで実践しています。難病児が一般の子どもとともに遊び、その家族が地域住民と日常的に触れ合う地域交流の拠点となることで、「TSURUMIこどもホスピス」が地域全体で難病児と家族を支える基盤となるのです。それを、高場さんは次のように例えました。

おらが町のサッカーチームのようなイメージですね。このハウスを持つことが自分たちの誇りになるような。イギリスではさらに合理的で、ホスピスがある地域に必要な機能を、ホスピスに盛り込むといったことも進められています。

まだスタートしたばかりですが、「ふらっとカフェ&おにわ」による一般開放や、一般向けのこどもの遊びプログラムなども始まっています。

寄付で支えられ持続できる自立した活動へ

「遊び創造広場」は地域に開かれた活用や交流も視野に。

会社を経営していた高場さんは、資金づくりや運営の面で役立てることがあるのではないかと考え、「こどものホスピスプロジェクト」の活動に加わりますが、そもそも子どもホスピス自体が日本にまだないものであったため、社会的意義を説明しても伝わりにくかったといいます。

そこで、高場さんは「LTC」の子どもと家族の旅行を実施するなど、会社経営と同じように小さくても実績をつくることから始めました。実は、こどもホスピスの創始者シスター・フランシスも”スモールスタート”、できることから始めなさいと説いています。例え、実現している規模は小さくても、大切にしている寄り添い方がきちんとあることを目指しなさいと言っているのです。

賛同者を増やす方法には、いろんなやり方があると思いますが、小さくても芯を持って行動できているかが大事だと思います。どんな建物をつくりたいかではなくて、どうやったら支え合う地域を生むことができるかを考え、「こういう社会をつくりたい」という芯を持っていることが、誰かの共感を呼ぶのではないでしょうか。

今後、企業や個人によるファドレイズ、協賛企業のアイテムを購入することで寄付ができる仕組みもデザインしていきたいと高場さんは考えています。そして近い将来、「TSURUMIこどもホスピス」がしっかり運営できている状態になれば、そのノウハウをまとめ、子どもホスピスを設立するための研修などもできるように、仕組みをつくりたいとも語ります。

次世代の育成者として動き、実践者を増やしていくことで、ゆくゆくは、日本中に子どもホスピスのある環境が生まれて、根付いてほしいと願っています。

カフェイベントに参加して“知る”ことも関わりのひとつ。

冒頭で、こどもホスピスは自宅のようにくつろげて安心できる”もうひとつの家”であるとご紹介しました。これまで、重い病気や障害を伴った暮らしは、地域の生活空間から遠ざけられてきた歴史がありますが、家は社会から隔離されたものではありません。「TSURUMIこどもホスピス」のような、まちのなかに開いた場があることで、重い病気だったとしても地域のなかで自分らしく生き、安心して過ごすことができる。そんな場は、誰にとっても心強い社会の基盤だと思うのです。

私たち1人ひとりが、地域社会の住民として支えあう暮らしに貢献できること。それは何でしょうか? お近くの方なら、「TSURUMIこどもホスピス」の一般開放の日に、一度たずねてみてください。 そして、自分の”スモールスタート”を考えてみませんか?

– INFORMATION –

寄付による支援はこちらから

TCHが支えようとするLTCの子どもたちに必要なのは、その子らしく生きる時間と機会であり、そのことを考え続け、在り続けたいと願っています。「TCHらしさ」を生かし、地域に根付いた取り組みができる「家」であるために、寄付による財源でもって運営する方針をとっています。あなたができる「寄り添い」を、ご一緒に。
http://www.childrenshospice.jp/support/money/

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。