「働く」で社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」

greenz people ロゴ

実に年間約80万トン、100年以上! 海外からゴミを大量に輸入し続けるスウェーデン。その驚きの使い道って?

みなさんは、スウェーデンと聞いて、どんなことを思い浮かべますか。世界一臭い缶詰「シュールストレミング」、シンプルでおしゃれな北欧デザイン、もしくは充実した社会福祉制度。

様々な側面で有名なスウェーデンですが、「近隣諸国からゴミを輸入する」という一風変わったこの国の政策があるのをご存知ですか?

実際に、ノルウェー、イギリス、アイルランド、イタリアなどから年間約80万トンものゴミを輸入しています。満員状態のジャンボジェット機が約350トンですから、実に2,285機分。かなりの量ですよね。(出典元

でもスウェーデンは、一体なぜそこまで大量のゴミを、わざわざ海外から輸入しているのでしょうか?

スウェーデンがイギリスから輸入したゴミ

スウェーデンがゴミを海外から輸入している理由、それはズバリ、エネルギーのためなんです。

エネルギー先進国として知られるスウェーデンは、総エネルギー供給源の中で、水力、風力、太陽光などの再生可能エネルギーが占める割合が、57%。日本が12.2%であることに比べると、その違いがよくわかります。しかも2040年までに、それを100%にすることを目指していると、スウェーデン政府は公表しています。(出典元

スウェーデンでは、年間200万トン以上のゴミが家庭から排出されていますが、埋め立て処理されるのは、たった1%。残りの99%は、半分がリサイクル、半分がゴミ処理場にて焼却され、電力に転換されているのだそう。現在では、このゴミの循環による発電で25万世帯もの電力をまかなっているそうですが、国内から出るゴミの量では足りなくなり、わざわざ海外からゴミを輸入するにいたった、という訳です。

とても画期的なこの仕組み、実は最新技術によって成り立っているわけではないというのだから驚きです。

なんと、最初のゴミ発電所が稼働し始めたのは、1904年までさかのぼります。地球環境問題に対する認知度がほとんど無く、右肩上がりの経済発展が推し進められていた20世紀当初からこのシステムを取り入れていたスウェーデンは、とても先進的な環境大国といえます。

毎時間20トンものゴミを熱エネルギーに変える、スウェーデンのゴミ発電所

このように環境政策の一つとして行われているゴミ発電ですが、
「ゴミを燃やすと二酸化炭素や有毒ガスによって、大気汚染につながるのでは?」
と懸念する方もいるかもしれません。

確かに、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料による発電に比べると、ゴミ発電所から排出される二酸化炭素量は1.5~2.5倍多くなります。しかし、ゴミを埋め立てる場合と発電所で焼却する場合を比べると、ゴミを埋め立てた時の方がはるかに多くの汚染物質を含んでいるのです。(出典元

つまり、ゴミをただ埋め立てしまっては、ただ有害物質に変わるだけ。だからこそ、ゴミ発電を行えば、埋め立てと比べ有害物質の量は少なく、さらに電力供給も行えます。

スウェーデンにおける1950年からの家庭ゴミの埋立量推移。2010年以降、その量は1%未満を維持している。

現在、スウェーデン国内に32か所のゴミ発電所を持つ「Avfall Sverige」社のCEO、Weine Wiqvist(以下、ウェイネさん)は、未来のゴミとエネルギー問題について、こう語ります。

ゴミありきのビジネスをしている私たちですが、会社のスローガンは“ゼロ・ウェイスト(ゴミがまったく存在しない世界)”なんです。将来的には、そもそも排出されるゴミの量がかぎりなくゼロに近づけば、それにこしたことはありません。でも、その目標を達成するには、時間がかかるでしょう。だから、今できる最善の策は、ゴミ発電なんです。

Avfall Sverige社のCEO、ウェイネさん

100年以上も前からゴミ問題に真剣に取り組んできた国、スウェーデンが目指すのは、ゼロ・ウェイスト。すなわち、ゴミがまったく存在しない世界。

「大量のゴミありき」のビジネスを手掛けるCEOが、100年先の未来を見つめて放つ言葉からは、潔さ、そしてゴミ問題・エネルギー問題に真摯に取り組む覚悟が感じられます。

私たちも、時には100年先の未来に思いをはせ、省エネやゴミの分別など、できることから行動に移していきたいですね。

[via HelloGiggles.com, D News, INDEPENDENT, 資源エネルギー庁, Avfall Sverige, Swedish Institute, Plastics Europe,Sweden.se,Slide Share]

(Text: 松尾茜)

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。