南米のコロンビアでは、20世紀の半ばから50年以上にわたって、政府と左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」による内戦が続いていました。たくさんの人が命を奪われ、故郷を追われることになった内戦を終わらせることは国民の悲願。その大きな一歩となったのが、2015年9月の和平合意です。
政府は合意の実行に向け、まず軍事よりも教育に多くの予算を充てるなどの取り組みをはじめました。和平への一歩となる画期的な予算組みです。この動きをシンボリックに伝え、国内外で和平への機運を高めるために、コロンビアの教育省はあるキャンペーンを実施しました。
まずコロンビア教育省は国家教育大臣のジナ・パロディ氏を中心に、軍部に使用済みの弾丸樽を提供するよう要請。そして、提供された弾丸に入っていた火薬を取り除いて洗浄し、インクを詰めてペンにつくり変えたのです!
ペンにはこんな刻印が。
Bullets marked our past. Education will write our future.
(弾丸は私たちの過去を示している。教育がわたしたちの未来を描くだろう)
このペンはコロンビア大統領をはじめ、ジャーナリストやライターといったオピニオンリーダーにクリスマスプレゼントとして贈られたほか、イベントでも配布。ペンを受け取った多くの人は弾丸でつくられた重みのあるペンで、思い思いにコロンビアの平和を描きました。
過去に武器として使われた弾丸が、未来を描くペンとして生まれ変わった。このキャンペーンは大きな希望をもって受け止められ、国内外のマスコミでニュースとして取り上げられ、新しいコロンビアを印象付けました。
泥沼化していた内戦を終わらせる合意は国際的にも注目を集め、コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領はノーベル平和賞を受賞。ノーベル賞委員会はこの受賞について、コロンビア国民を称えるものだと述べています。
しかし、和平への道はまだはじまったばかり。たくさんの命を奪ってきたゲリラ組織を合法な政党と認め、戦闘員を市民復帰させるということは許し難いと考える国民も数多くいます。2016年10月の和平合意をめぐる国民投票では、反対票が50.24%と賛成票をわずかながら上回る結果に。
長年続いた内戦を終わらせることは簡単ではありません。しかし、教育予算の割り振りが身を結び、いつかすべての銃弾がペンに変わる国へと変わることを願ってやみません。
(翻訳アシスタント: 大間千奈美)