ソーヤー海さんと一緒に学ぶ「アーバンパーマカルチャークラス」フィールドワークの様子
例えば、お金に依存せずに、商品やサービスに依存せずに、自分の手で暮らしをつくること。
石油や電力会社に依存せずに、再生可能エネルギーの可能性を考え、試してみること。
今まで依存していた“何か”から、自立して生きる。
今、そうした生きかたのリテラシーが問われているのではないでしょうか。
そんな、参考にしたい生きかたの土台には、“消費しないこと”が共通してあるように思います。そして消費することは、同時に“消費されること”でもあると思うのです。
自らの人生を切り開いて自由に生きる、そんな生きかたをひもとく新連載「消費されない生きかた」スタートに向けて、これまでgreenz.jpで紹介した、生きかたを考えさせられるような、5人の言葉を集めました。
いま必要なリテラシーは、自給力、自活力、仲間力
「快適、便利、スピード」を手に入れると本当に豊かになるの?「非電化工房」の藤村靖之さんに、未来をつくるためのキーワードを聞いてみた by 増村江利子さん
栃木県那須町にある「非電化工房」は、新しい暮らし方の実験工房でもあり、電気を使わずに暮らす道具の博物館でもあり、アトリエでもあり、本当の豊かさを追い求める私設テーマパークです。
代表の藤村靖之さんは、元大手企業のトップ・エンジニアで工学博士。
非電化工房には、電気を使わない「非電化冷蔵庫」や、太陽光を利用した温室「非電化グリーンハウス」、薪やゴミを燃やしてお湯を沸かす「非電化風呂小屋」、世界一貧しい国の家がモデルになっている「非電化カフェ」など、次々に風変わりな建物がつくられています。
その考え方は、至ってシンプル。エネルギーとお金をかけずにあるものを工夫して使い、自然との調和をはかること。本当の豊かさとは何だろうと、考えさせられます。
快適、便利、スピード。高度成長期はそういったことを求めて手に入れてきたけど、本当にそれで豊かになるの?って。
自立って、相当技を磨かないと、楽しくできないと思うんですよ。自給力を上げれば支出はどんどん減っていくけど、そうはいっても現金は必要だから、必要な現金は組織に属さなくても自分で楽しく稼ぐという自活。最後に、こういう生き方をしようとすると仲間の存在は必須ですから、積極的に仲間をつくる。仲間とともに生きていく。
自立力って、別の言葉で言うと、罠にはまらない力だと思うんです。罠にはまらないようにするためには、どうしてもこの3つは必要です。
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罠にはまらない、という事例として、藤村さんは再生可能エネルギーにおける、メガソーラーの建設を例に挙げていました。銀行も投資家も稼ぐために、メガソーラーをつくりましょうと遊休地の持ち主に声を掛けて、毎月収入がありますよと説く。
でもそれは、電気という商品をたくさんつくって、たくさん電気を使ってくれないと投資のリターンもないから、再生可能エネルギーにすれば社会は変わるということではないのだと教えてくれました。
収入も出費も減らして、手づくりと仲間を増やす
常識をうたがい、足るを知る。『減速して自由に生きる』高坂勝さんに、ダウンシフトの極意を聞いてみました by いとうあやねさん
東京都豊島区にある高坂勝さんのバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ(以下たまTSUKI)」は、池袋駅徒歩10分の十数席程度の小さな居酒屋。代表の高坂さんがひとりで経営し、週休3日。営業日も夜だけの営業で、食材やお酒はすべて小さな個人商店や農家から直接仕入れてまかなっています。
働く時間を減らすことで手に入れた自由な時間は、千葉県匝瑳市でお米と大豆を自給する高坂さん。
収入を減らして、出費も減らして、手づくりと仲間を増やして好きなことをして生きていく。そんな“ダウンシフト”する生きかたを伝える場が「たまTSUKI」なのです。
会社を辞めたあと1年間キャンプをしながら日本をまわっていました。東北で日本海を眺めつつサンマを焼いていたら、空が暗くなって三日月が水平線に沈んでいったんです。
それまではお金がなければレジャーもデートもできない、感動は得られないと思っていたけれど、毎晩目の前でこんなに感動することが起こっている。「じゃあお金なんて必要ないじゃん」って思いましたね。
川の流れ(社会)そのものを変えるのは難しいけれど、川から上がって、いい方向に行ける道をつくるのは可能なんじゃないかというのがダウンシフトの考え方です。
大きな流れだと、どんなに抗っても結果的には流されつづけてしまう。その先にあるのが未来のない崖だってわかっていても、流れから抜け出せない人もいる。そんな人のために階段をつくって「こっちの方がゆっくり降りられるよ。そこにずっといたら痛い目みるよ」と言ってロープを手渡す。そんなイメージです。
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老後への漠然とした不安、国の莫大な借金、人を人とも思わないような企業や国の人づかい、お金がないから結婚できない、子どもが産めないという若年層や、貧困層の子どもたちの増加…。
行きすぎた資本主義のせいでできあがった問題が山ほどあります。もっと稼がないと、生きていけない。そんな未来でいいのでしょうか?
収入と出費を減らす代わりに、手づくりと仲間を増やして、そして食べ物をできる限り自給し、たとえ収入がなくても生きてはいけるという状況をつくる。そうすれば、将来への漠然とした不安もなくなるのではないでしょうか。
見返りを求めない“ギフト”の生態系をつくる
稼ぐことから自分を解放しよう! ソーヤー海さんに聞く、“ギフト経済”の次にある、“ギフトエコロジー”の世界 by 増村江利子さん
コスタリカでのジャングル生活中にパーマカルチャーと出会い、アメリカでのパーマカルチャー研修を経て「東京アーバンパーマカルチャー」を主催するソーヤー海さんは、“ギフト経済”ではなく、お金を介さず、人と人との関係性による支え合いの中で生きる“ギフトエコロジー(与え合いの生態系)”の世界をつくろうと呼びかけます。
酸素、水、食料…。僕らが生きるために本当に欠かせないものは、すべて地球がつくっていて、フリーなんだよね。それを誰かが商品化して、販売している。
つまり、資本主義や貨幣経済といったものは、与え合いの生態系の上にちょこんとある、つい最近になって人間がつくったシステムにしか過ぎないと思っていて。本当は、与え合いの循環の中に生きているんです。
ギフトエコロジーは、そもそも与え合いの生態系の中に生きているという意識を取り戻す、意識の変革だと思うんだよね。
経済的には貧しくても、つくっているものがたくさんあれば、それを与え合っているうちに仲間もどんどん増えて、いろいろな人たちに支えられて生きている状態になる。これをソーシャルキャピタル(社会関係資本)と捉えると、ソーシャルキャピタルがどんどん豊かになっていくんです。
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必要なものは全て与えられているし、自分にも与えられるものがたくさんあると信じれば、どんどん世界が広がっていく。逆に、必要なものは全てお金を払う必要があるから、たくさん稼がないといけないと信じると、貧しさの世界に生きることになるのです。
もしかするとお金は、自分から離れたところにある何かしらの成果を、無理矢理に自分のもとへとたぐり寄せるために使う道具になっていて、「壊れた関係性をあらわすもの」なのかもしれません。
与えられた価値観ではなく、自分がゼロから積み上げてきた価値観を信じる
生きるということ。捨てるということ。過去から未来をつくり出す空間設計ユニット「グランドライン」に聞く、これからを生きるリテラシー by 石村研二さん
長野県諏訪郡富士見町で、パン職人のためのパン小屋をつくったり、古別荘をイタリアンレストランにリノベーションしたりという活動を行っている空間製作ユニット「グランドライン」。
代表の徳永青樹さんが中心となり、もらったり拾ったりした材料からさまざまなものを生み出しています。職人のようでもあり、アーティストのようでもある彼らの活動は、社会や既存のシステムから降りて、誰かに選ばされたものではなく、自分自身で考え、ひとつひとつ選択していくという積み重ねのうえに成り立っていました。
知らず知らずのうちに自分ではない誰かによって“選ばされたモノや空間”であることって、実はよくあるんです。
自分で選び取る責任を引き受けた上で次の選択をしていかないと、いつかもう一度その選択をしなければいけなくなってしまう、つまり先に進んでいることにならないんです。
物事は結局、やるかやらないかの二択。「やる」と選択するのは大変なことだけど、そこで大変なほうを選ばないと、結局より大変になって自分に帰ってくると思うんです。
そして、自分に由来した、自分の信じる道を進むのだけれど、その道に閉じ込められるのではなくて、ひらいて、循環して、その環が大きくなるほうがいい。相互負担していかないと社会全体は良くなっていかないから、すべてを自分の思い通りにしようと思わず、できる範囲でやっていこうと考えてます。
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究極的には「自分ができることをする」ことが社会全体が良くなることにつながるということ。
社会や既存のシステムといった、知らず知らずのうちに自分の中に入り込んでいる“常識”を疑い、それに頼らず、自分の力でやってみる。与えられた価値観ではなく、自分がゼロから積み上げてきた価値観を信じるからこそ、自分の生きる道が見えてくるのだと思うのです。
自分の原点に戻って、自由に生きる
軽トラの荷台に“家”をつくり、大工仕事を学び始めた手塚純子さんは、人生のテーマの根底にあるのは「自由」だと言います。昭和の家から考える“地域の未来”とは? by 新井由己さん
静岡県田方郡函南町で暮らす手塚純子さんは、「自力で生きていくこと」をテーマに大工仕事を学んで、アースバックハウス、軽トラモバイルハウスをつくり、自宅裏にあった空き家を手に入れて、自分でリフォームも手掛けるパワフルな人。
金槌を握ったことがなかったと話す手塚さんですが、やりたいこと、やってみたかったことを自力でどんどんかなえています。
48歳で引退したのが、人生の大きな転換期でした。でも、22年間、お金を稼ぐことを目標にして株式投資をしているうちに、1%の富める人たちと99%の貧しい人たちの構図と、戦争を商売にしている仕組みがあることを知りました。私がやってきたことが世界を悪くしてきたのかと、けっこうショックを受けたんですよ。
その影響で自給自足やコミュニティに興味を持っていました。3.11の震災のときにも感じましたが、いざとなったときに、水道が止まったら生きていけないし、実際、停電になって困りました。生きていくのに必要なものを、誰かに支配されていることに、あらためて気づいたんです。
年金もあてにしていないし、国の世話になりたくないと、ずっと思ってきました。子どものころから、人の世話にならないで生きていきたいと思っていて、16歳で家を出たのは、親の支配から逃れたいという気持ちからでした。
傍から見ると、やっていることはバラバラかもしれませんが、根底にあるのは「自由」なんです。自力で生きていくことが、私の人生のテーマなのかもしれません。
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いろいろな制約のなかで、いつの間にか自分自身の引き出しから取り出しにくくなっているもの。「自由さ」とは、本来誰もが持っているはずのものではないでしょうか。
こんなふうに生きたい、こんなふうに暮らしたい。そう思った次にどんなアクションがとれる自分がいるのかを、あらためて問われているのではないでしょうか。
千葉県匝瑳市の田んぼで草刈りをする高坂勝さん
5人それぞれの“自立”のありかたに、どんなことを感じましたか?
社会そのものや、さまざまな仕組みに頼ることが難しくなってきている今、個人が自立して生きることに、未来をつくるヒントがある気がしてなりません。
個人が自立して生きる要素は、パーマカルチャーにあるかもしれないし、セルフビルドやオフグリッドにあるかもしれない。こうした、いわゆる「カウンターカルチャー」(既存の、あるいは主流の体制的な文化に対抗する文化)には、この資本主義社会のなかにおいて“消費しないこと”が前提にあります。
私は、消費とは、単に欲求を満たすためにモノやサービスを消耗することだけではないと思います。知らず知らずのうちに、自分で考え、手をつかってつくる喜びや達成感を奪われ、モノやサービスをつかう代わりに得た時間は、消費するためのお金を稼ぐために奪われてしまう。
つまり冒頭でもお伝えしたように、消費することは、同時に消費されていることでもあると思うのです。
消費社会から降りて、自由に生きる。
エネルギー、お金、食、暮らし、政治…。社会のあらゆることを自分たちの手に取り戻し、自立して生きていく。
そんな生きかたを実践する人に会いに行き、持続可能な社会の、あるいは自立した生きかたや考えかたの種を見つけ、みなさんのもとに言葉として届けたい。
新連載「消費されない生きかた」をスタートする背景には、そんな思いがあります。
みなさんも、今、自分自身が必要な“生きるリテラシー”について、一緒に考えてみませんか?
– INFORMATION –
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