こんにちは。グリーンズの正太郎です。greenz.jpの寄付会員制度「greenz people」では、会員メンバー(ピープル)の「オフ会」が盛り上がっています!
当初は数人が集まる飲み会からスタートした集いの場でしたが、それだけでは満足できないのが「greenz people」のみなさん。前回は、様々な地域発のプロジェクトが生まれている神奈川県の藤野にピープルが9名で遠足しました。greenz.jpでもレポート記事として紹介しています。
そして今回の遠足は、東京は谷根千エリアを舞台に「まちじゅうが展覧会場」になってしまう「芸工展」を運営されているピープルの渡真利紘一さんが企画。自分の庭のように親しんでいる谷根千の魅力を、他のピープルに惜しげもなく伝えてくれる時間になりました! もちろんレポート記事も渡真利さんがまとめてくれました。
ガイドマップにもよく掲載される人気エリアですが、一人でふらっと訪れてもなかなか出会えないような素敵な人や場所ばかり紹介してくれました。ぜひ、みなさんも知られざる谷根千のスポットをチェックしてみてくださいね! それでは、記事をご覧あれ。
peopleメンバー@アイソメ(photo by Haruka Kuryu)
2016年2月6日、greenz peopleのみなさんと一緒に谷根千エリアへ遠足に行ってきました!
谷根千は、谷中・根津・千駄木の略語ですが、これは、1984年~2009年まで発行されていた地域雑誌『谷中・根津・千駄木(発行:谷根千工房)』の頭文字をとったもの。地域の人から「やねせん」と呼ばれていた愛称がそのまま定着したといわれています。
寺町、坂町、猫の町。あるいは、谷中銀座商店街の懐かしい風景や、路地の文化、手仕事やモノづくりのお店やギャラリーなど、様々な顔を持つ谷根千は、江戸の町並みや人情をもあわせ持つ都心のなかの行楽地として、散歩人の多くが訪れています。
また近頃は、これまで守り育ててきたまちの資源や文化を見つめ直そうとする若い人たちが増えています。例えばリノベーションによって、今ある資源を活かしながら新しい文化を根付かせようとする試みもその一つです。
今回の遠足は、谷中在住の私、greenz peopleの渡真利が実行委員をしている、まちじゅうを展覧会場に見立てる催し「芸工展」のつながりの中から、日頃お世話になっている場所をめぐり、谷根千の時間(とき)を感じていただこう、という企画です。
「greenz people」というコミュニティを深めるヒントに溢れていた1日。その様子を、早速レポートしていきましょう!
1)まち全体を設計する!HAGISOがはじめた「hanareプロジェクト」
2)“部室”のような場所 尺八稽古場「コムソーコヤ」
3)ほろ酔いランチ。一人ひとりが役割を味わう場「芸工展」の話
4)満喫!谷中~上野桜木界隈 寄り道散歩
5)「売ることではなく、人を喜ばせること」画家アランさんの想い
6)「コミュニティの場をつくる」 通りと一体化したアイソメのまちへの馴染み方
7)谷根千に学ぶ、コミュニティを深めるための3つのヒント
0)AM10:00 日暮里方面からまちあるきスタート
最初の目的地は、以前greenz.jpでも紹介した最小文化複合施設「HAGISO」。日暮里駅から小さな飲食店が並ぶ「初音小路」やメディアでも話題の「谷中銀座商店街」を眺めながら目的地へと向かいます。
カウンター席中心の飲食店が並ぶ「初音小路」。是非とも夜にもう一度訪れたい!(Photo by Tomoyasu Shimada)
夕やけだんだんの上から谷中銀座商店街を眺める(Photo by Tomoyasu Shimada)
1)まち全体を設計する!HAGISOがはじめた「hanareプロジェクト」
HAGISO外観。黒一色というスタイルは谷中では異質なのに、なぜかまちに溶け込んでいる(Photo by Tomoyasu Shimada)
宮崎さん ここ「HAGISO」は、カフェ、ギャラリー、オフィスなどの要素をあわせ持つ“最小文化複合施設”です。このまちに住む人たちにとって文化を身近に感じていただける場所でありたいと思っています。
そう紹介してくれたのは、HAGISOオーナーの宮崎晃吉さん。
HAGISOは、もともと「萩荘」という木造アパートでしたが、1955年の竣工から数十年の時を経て一時は空き家に。その後、2004年から解体が決定する2012年まで、東京藝術大学の学生寮として再び活用されていました。宮崎さんはちょうどその間の住人のひとりでした。
萩荘当時の味わい深い看板も飾られている(photo by Kayo Kitoh)
HAGISOができるまでのストーリーは、こちらの記事に譲りますが、萩荘解体前に催された記念アートイベント「ハギエンナーレ」を開催した後のエピソードがとても興味深いものだったので、ここでご紹介します。
宮崎さんは、「取り壊すのはもったいないかもしれない」と心が動いた大家さんに対し、萩荘の今後の活用案について、新築物件への建替えや駐車場といった他案と比較しながらリノベーションのメリットを説明したそう。
宮崎さん 萩荘が建てられた1950年代といえば、戦後地方からの出稼ぎによる人口増に対応するため、東京には次々に家が建っていた時代。木材は貴重な資源でした。萩荘は、そうした時代そのものを物語っている存在の一つとして残す価値があると思っていました。
現状物件をリノベーションして活用するアイデアは、単に建物の魅力を活かすというだけではありません。新築よりも投資額が安く済み、安定的な家賃収入が確保できれば、5年という短期間で投資額を回収できるという点も大きなメリットだと提案しました。
宮崎さんの、所有者に寄り添った丁寧な提案が大家さんの心に届き、萩荘は現在の「HAGISO」として生まれ変わることができました。近所に暮らす大家さんは今も時々「HAGISO」内のカフェにお茶をしにきてくれるのだとか。
「HAGISO」2階ショップ。店内の真ん中にある柱も印象的でした(photo by Koichi Tomari)
カフェ、ギャラリー等のある1階をあとにして2階に上がると、「HAGISO」ゆかりの作家さんたちの小物が並ぶショップがありました。そして奥には、いま話題のプロジェクト「hanare」のレセプションカウンターの姿も。
ホテルプロジェクトhanareのレセプションカウンター。hanareのロゴを立体物として眺めると、ひとつの箱のイメージが浮かび上がります。まち全体という面の広がりを持つと同時にひとつのホテルとしての箱でもあるという特別感を表したデザインです。(Photo by Tomoyasu Shimada)
宮崎さん hanareは、まち全体を一つの大きなホテルに見立てるというコンセプトのもと、地域と一体になった取り組みです。
空き家をリノベーションした宿泊室を起点として、大浴場はまちの銭湯、レストランはまちの飲食店、お土産は商店街や雑貨店、という具合にまち全体を行き来しながら味わうことができます。
その他にはトーキョーバイクという近所で人気の自転車屋さんでレンタサイクルを頼むこともできるんですよ。
2015年11月にスタートしたhanare宿泊室1号。次は泊まって味わいたい(photo by Kayo Kitoh)
さらに宮崎さんは、このプロジェクトの背景にあるまちへの想いも聞かせてくれました。
宮崎さん ここ数年、まちの資源である銭湯が閉店するという出来事が続きました。このhanareプロジェクトを通じて、少しでもまちへの貢献につながればと思っています。
宿泊室は現在一棟のみですが、今後は少しずつ物件の数を増やしていきたいですね。一つのまちで展開していくからこそ得られる相乗効果を大切にする。それは言い換えれば、まち全体を設計していくという感覚でもあります。
「宿泊者には楽しい谷根千巡りを」との願いから、hanareスタッフが厳選したおすすめスポットが載るオリジナルマップも手渡されるのだとか。マップは2種類。朝〜昼の散策に役立つカフェ&ショップ情報のあるday版。夕〜夜を楽しむ飲み屋などが盛り込まれたnight版。(photo by Kayo Kitoh)
「まち全体を設計していく」。今後について語る宮崎さんの力強い言葉を感じながら、次の目的地へと足を進めます。
※今回、やむなくご紹介できなかった内容については、宮崎さんご本人による連載記事「コロカルのリノベのすすめ」をご覧ください。
2)“部室”のような場所 尺八稽古場「コムソーコヤ」
あまりの居心地の良さに、思い出される部室という存在。(photo by Koichi Tomari)
次に立ち寄ったのは、「コムソーコヤ」という尺八の稽古場です。
この場所は、以前こちらに住んでいたDeUさんと、このまち育ちの慈航さんが5年ほど前から本格的に稽古場&尺八づくりのワークショップ体験場として活用しはじめました。その他、演奏会や芸工展の会場として、今では多様な人が出入りする空間となっています。
慈航さん 僕らがやっているワークショップは、ふらっと立ち寄って、マイ尺八をつくって、さぁ吹いてみよう、という気楽なもの。尺八には楽器として整えられたものもありますが、ここでは、制作過程をやさしくしているので、誰でも尺八づくりを楽しむことができます。
DeUさん 大切なのは、音というよりも吹くという行為そのものにある」といいます。 DeUさん「尺八は、吹くという行為によって、自分自身と向き合う“行”のための道具です。吹禅の道に終わりはありません。気楽に(あきらめて)吹いてゆくだけ。決して満足感は得られません。楽しみにもいろいろありますね。駄目な自分にも可笑しみがあります。
慈航さんによると、今は10名ほどが稽古に通って来ているのだとか。
慈航さん それはいわば「部活」のようなもの。そしてここは「部室」のような場所です。なのでよかったら一本つくって、僕らの仲間になってください。
尺八の吹き方を教える、慈航さん(photo by Kayo Kitoh)
地域の人と気軽に関わることができる部活や部室が、まちにある。
コミュニティづくりのヒントにもつながる慈航さんの言葉を味わううちに、フー、フー、とはじめは音にならなかったpeopleメンバーの尺八からも、少しずつ音が聴こえてきます。ここでメンバーから、DeUさん&慈航さんに一曲リクエストの声。お二人の生演奏に聴き入り、胸を熱くしてコムソーコヤを後にしました。
3)ほろ酔いランチ。一人ひとりが役割を味わう場「芸工展」の話
さんさき坂カフェ。暖簾もかわいい(Photo by Tomoyasu Shimada)
ランチには藝大生や地元の人も立ち寄る「さんさき坂カフェ」へ。 ここで私から改めて芸工展についてご紹介させていただきました。
渡真利 芸工展は、まちじゅうを展覧会場に見立て、職人さんの手の技や、芸術、地域活動など、表現することを通じた交流を目指す地域のお祭りです。今年(2016年)の10月で24回を数え、芸工展そのものが、まちの人たちのゆるやかなプラットフォームになっています。
ほろよい越しに芸工展ガイドマップをみるランチタイム(Photo by Tomoyasu Shimada)
「どんな人たちが運営してるの?」と、芸工展ガイドマップを手にしたpeopleメンバーから質問をいただきました。
渡真利 運営はこの地域で暮らしていたり、このまちが好きなメンバーが実行委員としてボランティアで関わっています。24年間、代替わりをしながら皆それぞれ別の仕事を持ちつつ、「やれる人がやれる時にやれることを」の精神でゆるやかに続けてきました。
「芸工展実行委員はいい人を競ってます!」とユニークな表現をされていたのは、先ほど登場した慈航さん。実行委員のひとりでもあります。
確かに「まちへの想い」が活動の原動力になっていることは間違いなさそうですが、実は一番大きいのは「まちの人たちと一緒に取り組むのが楽しい」という純粋な動機なのかもしれません。
渡真利 このまちで私が出会った人の多くは、町会のお祭りをはじめ、稽古や地域活動、行きつけのお店の常連としてなど、様々なつながりの中でいくつもの自分の顔や役割を持っています。
芸工展の活動も、関わる一人ひとりが役割を味わう場として大切にしてきたからこそ、今日まで続いてきたのだと思います。
4)満喫!谷中~上野桜木界隈 寄り道散歩
さて、ランチをまったり楽しんだ一行は、上野桜木方面へ出発しました。
「tokyobike gallery 谷中」や谷中の原風景である長屋と路地、「上野桜木あたり」や「SCAI THE BATHHOUSE」などを寄り道しながら見物。はじめて歩くメンバーの目には、谷中界隈のまちはどのように映ったのでしょうか。また今度ゆっくりたずねてみたいです。
酒屋の店構えを活かしてリノベーション「tokyobike gallery 谷中」(photo by Kayo Kitoh)
2015年度のGoodDesign賞を受賞した「上野桜木あたり」へ向かうpeopleメンバー(photo by Kayo Kitoh)
200年続いた銭湯をリノベーションして誕生した現代アートギャラリーSCAI THE BATHHOUSE(1993年~)(Photo by Tomoyasu Shimada)
5)「売ることではなく、人を喜ばせること」日本画家アランさんの想い
さて、今回この遠足を企画した私には、谷中エリアで是非寄っていただきたい場所がありました。「繪処アランウエスト」です。
やさしい口調で話してくれた日本画家・アランウエストさん(photo by Kayo Kitoh)
日本画家アランウエストさんは、アメリカ・ワシントンDC出身。子どもの頃から植物を描くことが大好きだったというアランさんは、アメリカの大学で絵画を学ぶ中で、自然界の魅力を古くから表現してきた日本文化と出会います。その後1989年東京藝術大学日本画科へ入学。以来、この谷中にアトリエを構えています。
ふらりと立ち寄ると中からアランさんの姿が。なんとジャストタイミングでしょう! そこでアランさんに、この空間や絵の制作についてお話を伺いました。
アランさん この場所はもともと自動車の整備工場でした。天井の高いこの空間を大切に活かしながら、少しずつ手を加えて今に至ります。
アランさんは、このアトリエ兼画廊を普段からオープンにして、誰もが立ち寄れる場としています(月~土曜の午後1時~夕方5時まで)。ときどき前を通りかかると正面のアトリエスペースで、制作中のアランさんの真剣な眼差しを見かけることも。
アランさん 画家の中には表現の個性を生み出す制作技法を知られることを良く思わず、アトリエの公開を避ける人もいますが、私は常にオープンにしてきました。制作技法そのものは表現のうちには含まれないと思っているのです。むしろ制作過程も見てもらうことで、日本画に親しみを持ってほしいと思っています。
ここは画廊でもあるので完成した絵も飾っていますが、主にオーダーメイドで制作していきます。絵の注文を受けると、まず飾る予定の場所を実際にみさせてもらい、依頼人と一緒にイメージを作り上げていきます。
こうしてできあがった一枚の絵ですが、アランさんは、それが依頼人のイメージに合わなければ「無理に買っていただく必要はない」と伝えるのだそう。
アランさん なぜなら画家の仕事は、絵を売ることではなく、依頼人に喜んでもらうことだと考えているからです。
2016年1月に完成したアランさんの天井絵(photo by Kayo Kitoh)
大切なのは「喜んでもらうこと」。そうした想いはコミュニティづくりとも重なります。アランさんの想いに触れてアトリエをあとにした一行は、谷中のランドマークの一つであるヒマラヤスギの大きさに「おお!」と声を上げ、立ち止まり、そして再度振り返って「パシャリ!」と、まちを味わいつつ、終着地の「アイソメ」を目指します。
ヒマラヤスギを眺める。元々は植木鉢から育ったとは驚きです。(photo by Kayo Kitoh)
6)「コミュニティの場をつくる」通りと一体化したアイソメのまちへの馴染み方
「アイソメ」。藍染大通りに面する。休みの日に歩行者天国となることも。(photo by Kayo Kitoh)
「アイソメ」は、築100年ほどの6軒長屋の一角をリノベーションした、地域に根付いたサロン兼シェアオフィスです(企画・設計 Mosaic design、山村咲子建築アトリエ)。2015年春からスタートしたアイソメの取り組みは、どのような経緯ではじまったのでしょうか。
栗生さん ここは、もともと年に一度、お祭りの時にお神酒所として開放される場所でした。地域に根付いた使い方を願っていた知人を通じてご縁があり、この場所を活用させていただくことになりました。私的な空間がまちに溢れ出す感じが良いなぁと思っています。
まちに溢れ出すアイソメ/Tokyo Street Gardenの様子(photo by Haruka Kuryu)
そう話してくれたのは、アイソメの運営を手掛ける栗生はるかさん。以前から人が集う公共空間に深い関心を寄せていたという栗生さんは、見過ごされがちな地域の魅力を建築的な視点から再発見し、その価値を共有する有志団体「文京建築会ユース」の代表も務めています 。
「文京・見どころ絵はがき大賞」の企画や、惜しまれながら廃業が決まったまちの銭湯の記録、旧伊勢屋質店の保存など、地域資源の可視化や地域一帯での価値を伝えることに力を注いでいる「文京建築会ユース」。その経験をもとに、「アイソメ」も通りと一体化した活用を心がけてきたという栗生さんに、まちへの馴染み方の3つのポイントを伺いました。
アイソメにて栗生さんの話に盛り上がるpeopleメンバー。壁側にはアイソメシェアメンバーのデザイナーの藤井さん(左)と建築家の佐々木さんの姿も。(photo by Haruka Kuryu)
1.まちの空気を読む
栗生さん まちに馴染むには、まちのもっている空気を丹念に読むことが大切です。このまちには、古くから住み続けている多世代の方々がいます。その方たちが日々暮らす中で作ってきた空気にこのまちと向き合うヒントがあるのです。
場面場面でその空気を読みながら、同じ時間を味わったり、お互いに楽しめる場を無理なく作っていくことが大切だと思います。
2.気取らない
栗生さん オシャレすぎるとかえって入りづらいですよね。これはオシャレにできないことの言い訳でもありますが(笑)、日常の中で育まれてきたこのエリアならではの、誰しもを受け入れる寛容性、今時のオシャレさとは違う良さを大切にしていきたいと思っています。
3.人付き合いに前のめり
栗生さん 受け身でなく、自ら入り込んでいくアグレッシブさも時には必要です。地域が好き、人が好きなアイソメのメンバーたちには助けられています。彼ら無くしてはこの場所は成り立ちません。
たとえばこの写真は、アイソメ2階のシェアオフィスに入居中の建築家・佐々木さんが根津権現のお祭りで町会のお神輿を担いでいる光景です。ご近所さんへの馴染み方が驚くほど早い佐々木さん。そうした“前のめり感”を大事にしていくこともまた、良い雰囲気づくりのには欠かせないと思うのです。
人付き合いに前のめりな佐々木さん(中央)@根津神社例大祭にて(photo by Haruka Kuryu)
こうした視点を大切にしながら、「とにかく開放的なコミュニティの場を心がけています」と栗生さん。ここには書ききれませんでしたが、開放的なコミュニティの大切さを感じたご自身の経験や、町会の新しい取り組みなど、ほかにもコミュニティづくりのヒントに溢れたさまざまなお話を聞かせていただきました。
そして、栗生さんの言葉に共感したpeopleメンバーからは、さらに根本的な問いが投げかけられました。
peopleメンバー いま各地でコミュニティやつながりが大切だといわれていますが、その「つながりたい」と思う気持ちの根本にあるみんなが求めているものは何だと思いますか?
栗生さんは、一呼吸おいてからゆっくりと答えてくれました。
栗生さん なんとなく、私が感じているのは、人の気配や安心感。こころの拠りどころみたいなもの。つながりたい気持ちの根っこにあるのは、そうした目には見えない感覚的なものではないでしょうか。
6)谷根千に学ぶ、コミュニティを深めるための3つのヒント
谷根千遠足ツアーレポート。いかがでしたでしょうか。このまちに住む私にとっても、ワクワクの絶えない貴重な機会でした。
「まち全体を設計していく」という「HAGISO」宮崎さんの言葉や、「地域との一体化」を試み続けるアイソメ栗生さんの取り組みから見えてきたのは、自分と社会との間に存在する境界線を踏み越えて、「まち単位」でより良い状態とは何かを考えること。そして、そのより良い状態に近づくために今、自分にできることから始めてみること。
「僕らの仲間になってください」(コムソーコヤ慈航さん)、「みなさんのアイデアでどうにかしてもらえませんか」(アイソメ栗生さん)など、初対面のpeopleメンバーに対してかけていただいた数々の言葉は、地域やまちという枠さえ越えて、仲間をつくる喜びを教えてくれています。
「コムソーコヤ」が“部室”であるように、そうした「コミュニティの窓」のような存在がいくつもあれば、そのコミュニティにはいつだって優しい風が吹いていて心地よいのかもしれません。
そして、全体を通して印象的だったのは、立ち寄った場所場所で出会った、人を喜ばせたり、人の役に立ったり、人との関わり合いを味わう姿。その根底にある純粋な「楽しい!」の気持ちが、あたたかい心のよりどころを生みだしている。それはなんだか、家族のためにつくるシチューの味見をしている瞬間の気持ちに近いような気がしてきました。
2.仲間とともに取り組む部活動と部室(「コミュニティの窓」)を増やすこと
3.人を喜ばせたり、人の役に立ったり、人と関わることを純粋に楽しむこと
まちを歩き、人に出会い、コミュニティを深めるヒントを探す「greenz people遠足」。まだまだ、続きます。ぜひご参加を!
※最後に、この場を借りまして、谷根千ツアーで立ち寄らせていただいた場所、お話くださったみなさまに厚く御礼申し上げます。
(Text: 渡真利紘一)