ISSUE ☆グリーンズ企画

7 months ago - 2016.02.14

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藤野電力やよろづ屋など、ユニークな取り組みが生まれている神奈川県の藤野エリアに、greenz peopleのみなさんと”大人の遠足”に行ってきました!

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今回、藤野の案内人を務めてくださった高橋さん&平川さんと、greenz peopleの愉快な仲間たち

この記事はgreenz people会員の方よりいただいた原稿を、そのままの内容で掲載しています。greenz peopleについての詳細は、こちらをご覧ください。

こんにちは。グリーンズの正太郎です。greenz.jpの寄付会員制度「greenz people」では最近、会員メンバー(ピープル)の「オフ会」が盛り上がっています!当初は数人が集まる飲み会からスタートした集いの場でしたが、それだけでは満足できないのが「greenz people」のみなさん。

12月のオフ会ではgreenz.jpでは何度も取り上げている神奈川県の藤野エリアに「大人の遠足」に行ってきました。

トランジションタウン活動をきっかけに、藤野電力、地域通貨「よろづ屋」など藤野発のユニークな取り組みがたくさん生まれているまち。その謎を解明しに、ピープル9名でお邪魔してきました。その一部始終をまとめたレポート記事をピープルの渡真利紘一さんが届けてくれましたのでご覧あれ!
 
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藤野駅から芸術の町を象徴する”巨大ラブレター”を眺める

去る12月19日、芸術の町・藤野へ、greenz peopleのみなさんと一緒に遠足にいってきました!

みなさんは、藤野というまちをご存じでしょうか? 藤野は、神奈川県相模原市(旧藤野町)に位置し、旧町域は全てが山間地、その中央には相模川や相模湖がある自然豊かな地域です。

このまちは、古くは甲州街道の宿場町として栄え、その後「芸術家が住むまち」として芸術振興に力を入れてきました。最近は、芸術家のみならず、まちを気に入って移り住む人も増え、ゆるやかなつながりの中から様々なおもしろいコミュニティが立ち上がっています。

藤野では若手アーティスト等の店舗を集めたアートヴィレッジやソーラーパネルによる自家発電の輪を広げる藤野電力など、それぞれに魅力を放つ地域の拠点や活動が誕生しています。30年ほど前に行政が芸術による町の振興策を始めると、その後は地域住民が自発的にさまざまな活動を実施するようになりました。

現在もアーティストの活動が盛んであり、それが現在の『トランジションタウン活動』や『萬屋(よろづや)』という地域通貨の活性化にもつながっています。

今回は、トランジションタウン活動に関わる髙橋靖典さんと土屋拓人(つっちー)さん、一般社団法人藤野エリアマネジメントの中村賢一さん、藤野在住のgreenz.jpシニアライター・平川(まんぼう)さんの4名にご案内いただき、いま話題のスポットをまるっとめぐらせていただいてきました。

いま、藤野で起こっていること、藤野のコミュニティの育み方、そして今後の目指すところなど、見て、聞いて、感じたことをレポートします。

本編目次
0.チェックイン
1.若手アーティストを育て、地域を育てる『藤野サンヒルズ(アートヴィレッジ2)』
2.地域のみんなで鶏を育てるプロジェクト『地域チキン』
3.『アートヴィレッジ』でまちの歴史を振り返る
4.地域通貨『よろづ屋』のお話
5.地域ファンドで生まれた『手づくり餃子 Yamato-Ya』と『暮らしの手仕事~くらして』
6.電気の自給自足を目指す『藤野電力』と『ひかり祭り』
7.一人ひとりの居場所カフェ『てくてく』
8.藤野のコミュニティの育み方と今後

0.チェックイン

遠足スタート地点の藤野サンヒルズにて、輪になって、一人ずつ自己紹介と本日の意気込みを語りました。案内役の髙橋さんより、藤野について、ご紹介いただきました。
 
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まずは班長 島田さんから遠足の趣旨、そして自己紹介!

1.若手アーティストを育て、地域を育てる『藤野サンヒルズ(アートヴィレッジ2)』

早速見学スタート。まずは、ホテル跡地の立体地下駐車場の空間をリノベーションして活用している若手アーティストたちのシェアアトリエ「藤野サンヒルズ」を見学しました。
 
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藤野サンヒルズにて 髙橋さんと中村さん(photo by Tomoyasu Shimada)

ホテルの経営破たん後、自治体が持ち主となり競売に出されていたものを仲間と落札した藤野エリアマネジメントの中村さんは、「廃墟の再生とは、命を与えていくこと。これが面白い」といいます。

当時、ここは廃墟と化していました。放っておくと若者の溜まり場になり、実際に火事も2回起きたそう。廃墟の再生を考案した中村さんは、購入するときにはすでにシェアアトリエのイメージがあったといいます。

中村さん 若い芸術家たちに月1万5千円〜で活用してもらっている。こうした場所をつくることで、作家同士がつながるコミュニティが確実に育っています。シェアアトリエで制作するアーティストたちがまちづくりに関わることも大事なんです。

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藤野サンヒルズは立体駐車場だったスペースを活用、与えられた空間は自由にDIYできる(photo by Yuto Chiba)

2.地域のみんなで鶏を育てるプロジェクト『地域チキン』

次に訪れたのは、ご近所さんと一緒に鶏を育てる「地域チキン」の現場。ひとりで鶏小屋を立てて、ひとりで育てることは難しいけれど、地域のみんなで集まって協力すれば育てられるよね、ということで始まったプロジェクト。藤野では、現在6箇所で取り組まれ、それぞれに世話人(オーナー)の数や飼育の仕方が異なります。

つっちーさん 鶏は、一羽で年300個もの卵を産みます。数羽の鶏を協力して飼育することで、例えば10人なら、10日に1日の世話当番でよいことになります。世話当番をした人がその日の卵をもらえる仕組みが面白い。

と、案内人のつっちーさん。

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地域チキンの現場。小屋の覗くと、あっ卵!(photo by Tomoyasu Shimada)

3.アートヴィレッジでまちの歴史を振り返る

ギャラリー9軒とレストランからなるアートヴィレッジには、藤野電力が設置した無料で使える充電ステーションがありました。ここで改めて中村さんからこのまちの歴史を伺いました。
 
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中村さんを囲んでお話を伺う一同

中村さん このまちは甲斐と相模と武蔵の国の境にあったので、戦の場になったし交易の拠点にもなりました。そういう土地だからたとえ嫌なことがあっても、ついみんなにいい顔をしてしまうDNAを持っている(笑)

つながりの中で生きていく文化が根付いているからこそ、新しい人を無下に拒むことはありません。

最近はアーティストだけでなく一般の人の移住も増えている藤野では、新旧住民の関係はどうなっているのでしょう。

中村さん 移住者が増えれば、当然混乱も起きます。ただその混乱こそが、ときには必要なのです。まちが変わるきっかけとなる新しいエネルギーになるからです。

新しく住み始めた人の中には、確かにエッジの効いた人もいますが、地元の人との間に立って仲を取りもつ人たちが見守っていることがうまくいっている秘訣だと思います。

中村さんは、「絆」は深まればいいものでもない、と続けます。

中村さん 地元の側が新しくまちへ加わった人たちの合理的な思考を受け入れることも大切です。程よいつながりをめざすこと。それが一番です

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手づくりに触れ、作家と会えるアートビレッジも大満喫

4.地域通貨『よろづ屋』のお話

藤野の活発な地域活動におけるインフラのひとつが、地域通貨「よろづ屋』のネットワークです。「よろづ屋」とは、子どもの送り迎えや大工仕事を手伝うなど、自分のできることを誰かのために行うことで助け合いの文化を育てている全国でも珍しい地域通貨です。通貨の単位は「よろづ」。

「1よろづ=1円」くらいの感覚でやり取りされます。この「よろづ屋」については、使い方も人それぞれだといいます。そこで、案内人のお三方に順番に聞いてみました。
 
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実際に高橋さんが使っているよろづ屋の通帳をみんなで拝見

まんぼうさん 初めて会った人に頼みごとはしづらいもの。そんな時、このよろづがあると、きっかけができて声がかけやすくなります。

じつは私は最初、助け合いを数値化にすることに抵抗感がありました。でも、実際によろづを使ってみると、コミュニケーションツールとしてありがたい存在だってことがよく分かりました。

ただ、今はあまり使わなくなったことも事実。それは、つながりが深まれば、わざわざよろづをやり取りしなくても助け合いは成り立っちゃうから。よろづを通じて『お互い様の精神が根付く』、そういうことが起きているんだと思います

髙橋さん よろづ屋は、損得よりも『恩送り』のシステムなんです。面白いのは、自分が誰かに助けてもらって手帳にマイナスが続くと、「自分は誰かのために何ができるだろうか」、と考え始めること。

誰かの役に立って貯まったよろづは、自分で使ってもいいですし、地域の団体に寄付することもできます。大事なことは、無駄が減ること。そしてつながりが深まること。

だから、まんぼうが言っていたように、つながりが深まって助け合える関係ができれば、最終的によろづの交換がなくなってしまっても構わないんです。

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「よろづ屋」が使える場所にはPOPが掲示されていたり(photo by Yuto Chiba)

つっちーさん 地域でよろづ屋に賛同しているお店では、カードのポイントと同じように例えば代金1割分としてよろづが使えるというのが嬉しい。それから、よろづステッカーというのがあってね。

このステッカーを貼っている車だったら、ヒッチハイクもOKという目印になってる。よろづを始めてから、友達が100人程増えたこともびっくり。そうなるとまちじゅう知り合いだらけで、プライバシーの確保についてはあきらめの域とも言えるけれど(笑)

5.地域ファンドで生まれた『手づくり餃子 Yamato-Ya』と『暮らしの手仕事』

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Yamato-Yaの外観

ここは、元々、地元の人が利用する食堂で、閉店してから10年程経っていたといいます。興味深かったのは、その元食堂をリノベーションするために「地域ファンド」を企画、実施したこと。

よろづのネットワークなどでも呼びかけ、寄付してくれた地域の人に会員証や割引券などを寄付金額に応じて設定したところ、募集後2日間でなんと180万円もの寄付が集まったそうです。ううむ、すごい。
 
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住民のあいだでは、すでに料理の腕に評判があった方がつくる自慢の餃子。ジューシーでとても美味しい。(photo by Tomoyasu Shimada)

Yamato-Yaさんの2階は、「暮らしの手仕事~くらして~」さん。お邪魔したときはちょうど、「わた糸紡ぎ」ワークショップをされていました。

くらしてのオーナー大和真由美さんは、「素材とつくり手のことを、体験を通して知っていただける場をもちたい」とここにお店を構えたのだそう。肌にやさしいスカーフや靴下などが気持ちよさそうに並んでいました。
 
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くらしてさんの「わた 糸紡ぎ」(photo by Yuto Chiba)

6.電気の自給自足を目指す『藤野電力』と『ひかり祭り』

そして、greenz.jpでも取り上げられていた藤野電力の拠点「牧郷ラボ」へ。すると、偶然にも小田嶋電哲さんの姿が。
 
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ここでお伺いしたお話の詳細は、既に記事にもなっていますのでそちらに譲りますが、毎年8月に催される廃校に希望のひかりを灯す芸術祭「ひかり祭り」の魅力と、祭りに首を突っ込みすぎて、会社をクビになったという小田嶋さんのお話は特に印象的でした。

それほど小田嶋さんを惹きつけてやまなかった「ひかり祭り」は、2003年に始まりました。震災を機に、社会へメッセージを打ち出そうと2011年には100%自家発電で開催され、それが藤野電力の始まるきっかけにもなりました。
 
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ワークショップ参加費と町補助金で制作したソーラーリアカーの姿も!(photo by Yuto Chiba)

7.一人ひとりの居場所「カフェてくてく」

「カフェてくてく」は、福祉事業所ふじのタンポポ内に併設されているカフェ。このタンポポにて以前勤めていたつっちーさんより、カフェでお茶をしながら施設のご紹介をしていただきました。

『福祉』という概念にとらわれることなく、『障がい』の有無に関わらず、みんなが『いろんな人がいていいんだよ!』と考えられる『地域』をつくることを目的としています。

タンポポHPには、「タンポポってどんなところ?」というタイトルで、上のメッセージを含む団体の理念や想いが丁寧に紹介されています。
 
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カフェてくてくで施設のことを語るつっちーさん

8.藤野のコミュニティの育み方と今後

人が人を呼ぶつながり

少子化の影響による全国的な小学校廃校。藤野でも小学校を 10校から3校に減らすことになりました。その廃校の一つへ、当時、町役場の職員だった中村さんの尽力もあり、芸術としての教育を行うシュタイナー学園が誘致されました。これが最近の新しい藤野の活動の人材供給源にもなっています。

実は髙橋さんも、子どもにシュタイナー教育を受けさせたいと移住してきた一人です。1クラス26名定員で、毎年、10家族以上が藤野に移住してくる。

近頃話題となっている徳島県神山町の大南さん提唱の”創造的過疎“という考え方によれば、6,000人のまちなら、子育て世代が毎年5世帯増えれば町の活力がよみがえると言われています。その試算に基づいて人数按分すれば、藤野は年間7-8家族が移住してくれば同水準。

それ以外でも芸術家や田舎暮らしの希望者などの移住もあり、すでにこの点では目標を達成しているんです。そして住み始めた人が、藤野を好きになり、また人を呼んでくる。その循環が加速しています。
 
つながりは、あえてゆるやかに

事前に読んだある記事の中で髙橋さんは「活動グループで集まる回数が多くなると集まる人が限定されがちになるため、回数を減らしてでも、あえてゆるやかにつながることを大切にしている。ゆるやかになれば、新しい人も入ってこられる。」と話していたことを思い出し、そのことについてもう少し尋ねてみました。
 
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これからの藤野を語る髙橋さん

髙橋さん 良くできたコミュニティは排他的である、という考え方があります。仲の良いグループ内では、共通言語も多いし、お互いが培ってきた時間もある。その分、新しい人がグループに入って来たときには、かなり意識的に受け入れる体制を取らないと、どうしても排他的な印象を与えてしまうんですね。

また、田舎でも都会でも、活動グループ間の壁が与える影響は大きく、「あのグループには協力したくない」などといった、ネガティブな感情が強くなると、地域の活性化にとっても障害になります。色々な活動をするグループ同士の壁をなるべくつくらないようにするにはどうすればよいか。

僕らが今実践しているのは、グループという固まりをなるべくゆるくして、且ついろんな活動に関わること。つまり、それぞれのグループに所属する人の層が幾重にも重なり合うことで、ゆるやかなつながりはつくられていくのだと思うんです。

そのためにも、活動自体をゆるやかにすることが大切。地域活動は草野球のように楽しみながらやる。それくらいの力の入れ加減が一番続くんじゃないかと思います。

これからの藤野が目指すところ

最後に、いまの課題とこれからの藤野の目指すところを聞きました。

髙橋さん 藤野は何でも揃っているわけじゃないけど、人のつながりがあって、楽しんでいる人がたくさんいて本当に暮らしやすい町です。けれども、このまちには「仕事」が少ない。

東京に近い分、都会に出て働けてしまいますからね。なので今後は、このまちでの仕事をつくること、そして地域全体の付加価値をつけていくことにチャレンジしたいと思っています。 

後継者のいない仕事の跡継ぎを見つけたり、新しい起業の促進をすることなども進めています。シェアオフィスの計画を地域ファンドでやってみるのも面白そう。やれることはまだまだありそうです。

おわりに

つっちーさん 藤野は、都会からの移住者も多くて案外、都会的。都会の人がいることは、藤野の人にとってもよい刺激になっている。

藤野の人は、田んぼに向かって写真パシャリなんてしないもの。その田んぼに都会の人が価値を見出す。すると藤野の人も誇らしげになったりしてね。僕も、移住してきた一人なんだけど、毎日いろんな体験をさせてもらっていて、なんだか留学している気分。楽しい時間であるせいか、いつか自分も旅立たないといけない、そんな気持ちになることがある。

これは、駅から最初の目的地まで、つっちーさんの車に乗せてもらった時の会話の一コマ。

「移住者だけど、留学している気分」と話されたつっちーさんの気持ち。この町へ来てすぐには、言葉の意味を理解することはできなかったけれど、一日過ごして、本当に色々な人がさまざまな活動をし、一日一日をやさしく丁寧に生きている、その光景を目にして少しわかるような気がしてきました。

いつか。自分もそんな生活を送りたいです。
 
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藤野倶楽部 百笑の台所の外観。ここは夜になると星がよく観えるとのこと

帰りの電車の中。早くもまた、藤野の空気を思いっきり吸いたくなってきました。目をつぶれば、あの清々しい青空と連なる山々が見える。また、近々ここへ来よう。そう決心したのでした。

ピープル遠足「12/19冬でも熱い藤野を感じるツアー」レポート。最後までお読み下さりありがとうございました。今度藤野に遠足へ行くときはみなさんもぜひ一緒に行きましょう。

そして、案内人の髙橋さん、まんぼうさん、つっちーさん、中村賢一さん、この度は本当にお世話になりました。

(Text & Photo: 渡真利紘一)

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