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あなたの夢の暮らし、一週間だけ体験しませんか? 空き物件と“試住”希望者をマッチングさせるサービス「microstay」が目指す未来

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「いつか海の見える家で暮らしたい」という夢を試せる鎌倉市の「microstay」物件

みなさんには、いつか住んでみたいエリアや、思い描いている暮らしがありますか?

例えば「本当は鎌倉に住みたい」けれど、仕事の都合で都内に住んでいるとか。もし、そんな思い描いている暮らしをお試しステイすることができたらどうでしょう? 暮らしを変えるにあたっての心配ごとを実際に確認で、その念願の暮らしに近づくきっかけになるかもしれません。

今回ご紹介する「microstay(マイクロステイ)」は、そんな人々の思い描く暮らしを体験できる、1週間単位のお試しステイ・サービスです。マンションの一室や一戸建といった、ふつうのおうちでの暮らしを試せる「試住」という暮らし体験を提供しています。

空き物件と、試住希望者をマッチング

「なぜ試着や試乗はあるのに試住はないのか?」。代表の川村達也さん自身が東京から湘南に住む場所を変えた際に感じた違和感がきっかけになり生まれた「microstay」は、住まいにも試住の機会をつくりだそうという取り組みをしています。

試住物件は2パターン。エリアを試すための“エリア試住”の物件と、試住後に実際にその物件を賃貸売買できる“物件試住”の物件です。遊休物件や賃貸売買の募集中物件を活用して、試住者とマッチングしています。
 
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あえて雪の季節に海の見える家に試住してみる、という使い方も

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鎌倉駅徒歩0分の部屋や古民家など、いろいろな試住物件を選べる

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エリアもいろいろ。「試住一括リクエスト」すると、空き状況や暮らしのイメージに合わせて物件を提案してくれる

試住を通して、これからの暮らしを考える

「microstay」での試住は、関東地区だけでなく福岡・糸島にも広がっているようです。

試住を体験した人の多くは、エリアや物件への移住を本格的に検討している人たち。ふつうのおうちに暮らして、ゴミ捨てや掃除洗濯なども試住者自身が行うため、リアルな暮らしがイメージできるのです。

試住体験者 葉山移住を考えているので、実際に一週間暮らしてみて、生活や通勤や実際のこまごましたことがわかって本当によかったです。窓越しに裏の緑の木々や、小鳥が遊ぶ様子をながめている時間は最高でした。

そして“住む場所を変えてみる”という体験は、暮らし方を考えるきっかけにもなっています。

試住体験者 海の近くに一度は住んでみたいと思い、申し込みました。今回の「microstay」で、これからどういう暮らし方をしていこうかを、より具体的に考えるきっかけとなりました。

こうした「このエリアへの移住を試したい!」と試住を希望する人が「microstay」に集まっています。そして地域への移住につながる「microstay」の活動に共感したオーナーたちが、「自分の物件を通して地域貢献したい!」と試住物件を提供しているのです。

「暮らし目線で地域体験する」試住を、地域で受け入れる

「microstay」の試住者受け入れには、物件近隣の地域の人たちも関わっています。試住中、地域の人たちは「microstay」のメーリングリストで試住者とゆるくつながってサポートします。また物件を掃除して試住者を迎える準備をするのも、地域の人たちです。

彼らは移住勧誘的な交流会やプログラムなどに前面的に参加するのではなく、困った時に頼りになる存在として試住者を見守っています。

例えば試住家族の子どもが熱を出した時に病院の相談に応じたり、「どうしても生しらすを自宅で食べるという体験をしたいが売っているお店が見つからない・・・」という時に買って届けたりして、試住をサポートしてくれるのだとか。
 
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「雑草が気になったので草むしりしました!」と地域の人が自主的に活動する。写真は草むしり前

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草むしり後。地域の人たちは前面に出てこないけれど試住を支えている

試住者を受け入れるのは地域愛があるから

観光宿泊施設やウィークリーマンションには無い、こうした地域との関係性が「microstay」の特徴にもなっています。「microstay」はどのようにして地域の人たちを巻き込んでいるのでしょうか?

「microstay」代表の川村さんは、試住者を受け入れる地域の人たちの根底にあるのは”地域愛”だといいます。地域の持続的な活性化のために「microstay」が役立つと考えているのです。

川村さん メーリングリストに参加する地域の人たちは、私や物件オーナーのつながりの方たちです。オーナーのつながりの場合、オーナーと私で「microstay」の趣旨を近隣の方々に説明して参加してもらっています。

「microstay」は、オーナーがエリアの価値を利用して儲けるための仕組みではありません。

愛する地域を持続的に活性していくには、愛着を持って移住してくる若い世代が増えることが必要で、「microstay」は、それを実現していくための仕組みなんです。だからこそ、このコンセプトに共感してもらえた地域の人たちが関わってくれています。

根底にはあるのは、地域愛なんです。

自分が住んで愛している地域に「住んでみたいな」「住んだらどんな感じなのかな」って訪れる人たちに対して、「想像以上だ」と感じてほしいという気持ちを地域の人たちは持っています。だから地域の人たちは、例えば物件のお掃除だけでなく周りの雑草も自主的に草取りしてくれるんです。

とはいえ、地域の人たちと「microstay」が信頼関係を保つためには、彼らに甘えっぱなしも良くないのでは・・・と思っていると、川村さんはこう話してくれました。

川村さん 地域の人たちには、活動時間を申告してもらってお礼をお支払いします。信頼関係があるので「なぜいつもより1時間多いのか」とか「頼んでいないので支払対象外だ」とかはありません。

川村さんは試住の受け入れを“地域のための活動”にすることで、初めから地域の方を巻き込み、きちんと対価を支払うことで信頼関係も育んでいました。

「microstay」で、変化を望む未来をつくる

試住を広げようと、地域の人と活動する川村さん。これから試住を広げることで、“変化を望む未来”をつくりたいと川村さんは考えています。

川村さん 「microstay」の根底には「変化を望む人が増えれば、世の中がよくなっていくんじゃないか」という思いがあります。

変化が怖いと、守りのために変化の要素を攻撃しがちです。変化にはいろいろありますが、住む環境を変えると物理的に環境が変わっちゃいます。そうすると、何かが終わり何かが始まってくる。そういう変化は実は楽しいし、望まないと起こらないんですね。その事実を体感していくことが大事だと思います。

変化を望むようになると、身軽になるというか、固執しなくなって戦うことが少なくなります。 仮に戦う場面になっても嫌なら自分が変化しちゃえばいい。そういう感覚が増えていったら、世の中が良くなっていくんじゃないかなと。

だからmicrostayを通して、変化を望む未来をつくっていけたら本望ですね。実は物件やエリアのお試しのためだけでなく、「自分らしい暮らしを再考する」ためにも役立ちたいと思っています。

移住のタイミングは人それぞれなので、試住してすぐ移住、だけじゃなくて何年後かの行動のきっかけになったらうれしいです。

私たちが思い描く「自分らしい暮らし」。しかし、その暮らしへのトランジションをいざ実行しようとなると、未知数なことも多く変化を恐れてしまうこともあるかもしれません。

みなさんも試住で新しい、自分の思い描く暮らしを体験してみませんか?
実際に体験することで、その夢の暮らしが確実に近づくはずです。