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地元の魅力を探り出すには、まちへダイブ! ダイニング付きゲストハウス「Tanga Table」が伝えるのは、北九州市・小倉の”おいしさ”

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左からTanga Tableのうめださん、遠矢さん、西方さん

みなさんは、自分の住んでいるまちの魅力を聞かれたら、何と答えますか?

お気に入りの景色があるとか、面白い人と出会える場所があるとか。もしかしたら、みなさんが知っているまちの魅力は、旅行者にとっても地元の人にとっても、とても有益な情報かもしれません。

今回ご紹介するのは、食を通してまちの魅力を味わえるゲストハウス「Tanga Table(タンガテーブル)」。おいしい地元食材を使った料理を食べられるレストラン付きで、まち歩きを楽しめる情報を地元スタッフが教えてくれます。

Tanga Table」があるのは、福岡県北九州市の小倉というまち。かつてはまちを離れていた北九州出身者が、今は運営側の一員としてまちの魅力を伝えています。実際に「Tanga Table」に行き、“番頭”としてフロントを担当する西方俊宏さんに案内してもらいました。

遊休不動産+市場の食=「Tanga Table」

「Tanga Table」は使われていなかった古いビルのワンフロアと、古くから続く市場の食を組み合わせることで生まれた新しいタイプの宿。まちのいろいろな人やことを、そこから見つけに行ったり、逆にそこに集まってきたり。そして「Tanga Table」がそれらをつなぎなおして、よりおもしろくして発信しています。
 
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ゲストハウス入口がこちら。カラフルなドアがおしゃれです。看板メニューには「モーニング&ランチ サンドイッチプレート500円」。エレベーターで4Fに上がります

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エレベーターから降りると、カラフルにデザインされたフロントにたどり着きます

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フロントで対応をする“番頭”の西方さん。ゲストにまちを案内したり、情報発信役も務めます

入口とフロントに共通する、印象的なカラフルタイル。株式会社タンガテーブルの取締役で、「Tanga Table」の運営を手がける遠矢弘毅さんは、こう話します。

遠矢さん これは「ブリコラージュ(ありあわせの材料や手段を元に、別の目的の新しいものをつくりだすこと)」をモチーフにしているんです。小倉にはいろんなおもしろい人やことがあるよと。いろんな人が集まってくるよ、ということもですけど。入口だけでなくて、この壁も、あのカウンターもそうなんです。

西方さんに施設を案内してもらうと、たしかに個性的な色や形が集まってにぎやかになっています。再利用したという木窓や陶器も味わいがあって、新しい施設なのにまるでこのまちで古くからずっと続いているかのよう。
 
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ダイニングの壁は、リノベーションスクール番外編のDIYワークショップでつくったもの

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別の壁に貼られているのはプロジェクトに共感した方から提供されたお皿。早起きすると、窓からの朝日を反射するきれいな風景を楽しめます

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バーカウンター下のフレームもDIYワークショップでつくったもの。塗装から最終仕上げまで4日間で完成

続けて、宿泊スペースを西方さんに見せてもらいました。
 
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ドミトリーは女性専用も。視線が気にならないようベッドは互い違いになっています。天井は剥きだしにしていて、高さがあるので上の段でもゆったり過ごせそうです

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ドミトリーのベッドには見えないほどのゆったりスペース。「マットレスはこだわって、シモンズを使っています」と西方さん

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水まわりの設備は男女分かれています。洗面スペースも女性専用があり、ゲストハウスに不慣れな女性にも好評だそう

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赤ちゃん連れでも泊まれるという広々ダブルベッドの個室

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和室ドミトリーの畳は特注のボロノイ畳

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和室ドミトリーは貸切もできます

宿泊スペースはゲストハウスの“寝床”のイメージを超えるおしゃれさで、ゆったりと眠れそうな空間でした。次は交流スペースを案内してもらいます。
 
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こちらはラウンジ。宿泊者向けに自炊キッチンもついています

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ダイニングがこちら。宿泊客でなくても食事できるレストランになっています。カフェに使ったり、お酒を飲んだり。旅人との交流も自然と生まれている様子

立食だと100名以上入るという広いスペースは、地元のパーティーや各種イベント、研修などにも使われています。観光客だけではない様々な人が集まる場所になっているのです。
 
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レストランでは、入口で気になっていた「サンドイッチプレート」を注文。キッチンのうめださんがつくってくれました。

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コーヒーを淹れてくれたのは西方さん。ゲストハウスで、本格的なドリップコーヒーを飲めるのは素敵

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目の前のオープンキッチンで調理してくれます。パンに塗ったのは何?と聞くと、小倉のローカルフード「ぬかだき」をアレンジしたクリームチーズ、と教えてくれました

このように、施設を案内してもらううちに気がついたのが、全体的にきれいな中でところどころ古さを感じさせる部分があること。

というのも「Tanga Table」は、遊休不動産をリノベーションした施設なんです。高級マットレスなどの設備や食事など、ポイントにはこだわりつつ、メリハリの効いた再生をしているんですね。

遊休不動産から生まれた、市場の“おいしい”を味わう宿

2015年にオープンした「Tanga Table」が生まれたのは、2014年に北九州市で開催されたリノベーションスクールでの提案からでした。

遠矢さん 2014年のリノベーションスクールの題材として遊休物件を探していたところ、このビルのオーナーさんが案件としてあげてくれました。そしてプランとして提案されたのが、すぐ近くにある旦過(たんが)市場の”おいしい”を味わえるホステル&ダイニングだったんです。

プランを出したユニットの講師役ユニットマスターは吉里裕也さん(株式会社SPEAC)と青木純さん(株式会社メゾン青樹)でした。

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リノベーションスクールを企画・運営する株式会社北九州家守舎の共同代表も務める遠矢さん。

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スクールで提案された「Tanga Table」のイメージラフ

このプランを聞いて「これはやりたい!」と感じた遠矢さんは、北九州家守舎共同代表の嶋田洋平さんらと事業化を進めます。

まず旦過市場の食材を使った料理のレシピづくりで声をかけたのが、食をテーマに国内外を旅する寺脇加恵さん(Globe Caravan)。以前にユニットマスターとしてリノベーションスクールに参加し、北九州のこともよく知っていました。

しかし事業予算の見積を細かく進めていくと、実は当初予定の2倍の約6,000万円かかるということが判明。それでも「やるっていうこと自体は決めていた」という遠矢さん。なぜそこまで「Tanga Table」を実現させたかったのでしょうか?

遠矢さん 「北九州って泊まってみたいなっていう宿が無いよね」という話は、ずっと続いていたんです。これまでリノベーションスクールをやっていく中で、北九州に滞在する人たちからもそんな声があがっていて。だから「これはやらなきゃいけない」っていう思いと、できたら必ず認められるという確信がありました。

このまちに泊まりたくなる宿をつくりたい!という強い想いで資金集めをはじめた遠矢さんたち。

個人からの共感や、共同事業者・オーナーなどの協力で金融機関などの信用を得て、資金調達に成功します。国交省の認定事業としてMINTO機構という国の機関も協力しています。オープンに向けたスタッフ募集でも、遠矢さんたちの想いに共感した応募者が集まりました。

それが”番頭”としてフロント業務などを担当する西方さんと、飲食まわりの現場マネジメントを担当するうめださんです。

西方さんとうめださんを採用した遠矢さんは、人材募集にはリノベーションスクールの影響も大きかったといいます。

遠矢さん 僕自身、もう6年ぐらい事業をやってるわけですけど、その前からも人材の募集にはずっと苦労してたんです。それが「Tanga Table」に関しては、来る人はみんな「OK、採用!」みたいな感じでした。まさにイメージしていた人材が集まってくれたんです。

リノベーションスクールが直接採用に結びついたとまでは言えないけど、採用のベースにスクールがあったのかなとは思います。スクールも北九州家守舎もやり続けていたので、それらを通じて「Tanga Table」のコンセプトを広く知らせることができたことが、仲間と知り合うきっかけになったんです。

市場とのつながり

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川向いに並ぶ建物が旦過(たんが)市場

こうして動きはじめた「Tanga Table」。旦過市場の”おいしい”を味わうというコンセプトの元、市場とはゆるくつながっているそうです。スタッフが市場にでかけ、市場の人が「Tanga Table」のダイニングにふらりとやってきてくれる。そんなまちの食卓のような場になりつつあるのです。

今では市場がおもしろいという、うめださんと西方さんですが、「Tanga Table」に入る前は違いました。おもしろくないと思って、距離を置いていたのです。

うめださん 旦過市場って、行く用事がない場所だなと思っていたんです。小倉のまちについても、なんか閉鎖的だなって。自分から関わっていかなかったから、おもしろさを知らなかったんです。

だけどここに入ってから市場を歩いてみると、実際は印象と全然違いました。たとえば市場では野菜も袋に入っていなくて、ドンと売っているんです。ただそれだけでもう、“美味しそう!”って楽しくなるんですよ。

だからこのまちの若い人たちにも、実際に市場を歩いてみてもらいたいです。

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「市場の人はみんな優しいんです。声もかけてくれるし、“お店どう?”とか毎日聞いてくれます」とうめださん。

西方さん 自分も、おもしろくないまちだなと感じていました。そして「ここに住むより、都会に行ったほうがおもしろいんじゃないか」とモヤモヤしたり。だけどそれは、まちとの関わりあいや接点が無かったからだったんです。

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「探って掘っていけば全然面白いまちだなって、わかってきたんです」と西方さん。

一度は北九州のまちを離れた二人でしたが、「Tanga Table」で働いて自分からまちにはいりこんでいくうちに、そのおもしろさに気がつきました。

それから二人は、まちでもっとおもしろいことができそうだと考えるようになります。そして今度は、自分からしかけをつくることが楽しくなってきます。

西方さんとうめださんがこれからやりたいこと

西方さんは今後「Tanga Table」を通して、フロントのカラフルタイルのように、まちの中のいろいろな個性や特徴を伝えていこうとしています。

西方さん 今一番やりたいことは、まちと連携して、食をテーマにしたイベントをつくることです。

たとえば市場の八百屋さんは野菜のおいしい食べ方やアレンジ方法をたくさん知っているので、それを発信するイベントとか。ローカルフードの「ぬかだき」を伝えたり、市場のユニークな野菜の生産者を紹介したり、まちの食を発信していく場をもっと提供していきたいです。

そうすると市場の人たちも、今までと違う商売の仕方や視点を得られるんじゃないかなと思っていて。

リノベーションスクールってまちにビジネスをつくるみたいなところがありますけど、この「Tanga Table」をきっかけに市場のビジネスもアップデートされていく、みたいな働きかけができたらいいですね。

その一方でうめださんは、まちの食卓としてもっと人をつなげていきたいと話します。

うめださん 「Tanga Table」は地元の人たちにはまだまだ知られてないので、こういう場所があるのをまず伝えていきたいです。そしてまちの人たちが「ここで何かをしたい」って思うような場になったらいいなと思います。

「Tanga Table」で最初に「すごくいいな」って思ったのも、募集記事に載っていたコンセプトのイメージラフだったんです。おっきいテーブルがあって、それぞれがいろいろやってて、地元の人と旅人がここで交流できるみたいな。

ふつうの飲食店ってお客さんにいろいろ話しかけたりとかしないじゃないですか。でもここは空間のおかげで、不思議と”何かで見られて来たんですか?”とか”どこから来たんですか?”とかって聞いてしまいます(笑)

これからはまちの人もなにかしら、ここにもっと集まってるような、交流の場にしていきたいんです。

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「ここの宣伝のためにも、ケータリングやお弁当を外で売り歩きたいです。リアカーなんかを引いて。」

泊まってみたくなる宿「Tanga Table」は、そこではたらいてまちに暮らしたくなる魅力も持っていました。そしてそこではたらく人たちは、施設をきっかけに自分のまちにあらためてフォーカスすることで、いろいろな気づきを得ていきます。

まちから「おもしろいもの」を与えられるのを待つのではなく、まちにダイブしてそれを自分から見つけ出し、さらにはつくりだす発想へ。

あなたも自分のまちを深掘りしてみませんか?もしかしたら意外なおもしろさに気がつくかもしれません。

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