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世界中の食糧廃棄物を有効に活用し、エネルギーの地産地消につなげたい! アメリカ・ワシントン州で、実際に稼働中のバイオガス発電機「the HORSE」

the HORSE

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

みなさんは”地産地消”というと、どんなことを思い浮かべますか? 野菜や果物といった食べ物を自分たちでつくり、自分たちで食べる。そんなひとコマを想像した方が多いかもしれません。

しかし最近では、エネルギーの地産地消を目指す取り組みが世界各地で始まっています。ここ日本でも、これまでにgreenz.jpでも紹介した、「中之条電力」や「片浦電力」など、エネルギーの地産地消を実現させることで、地域内でのお金の循環が生みだし、経済効果につなげようとしているのです。

アメリカ・ワシントン州に住むJan Allen(以下、ジャンさん)も、そんなエネルギーの地産地消を目指し活動しているひとり。ジャンさんは、食糧廃棄物などの有機物を電力に変換することができる移動式バイオガス発電機「the HORSE」を開発。そしてこの発電機を広めていくことで、世界中の地域でエネルギーの地産地消を進めようと考えています。

誰もが簡単に、次世代のクリーンエネルギーをつくりだせるように

温室効果ガスなどの有害物質をほとんど排出することなく電気を生成できるので、次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めているバイオガス発電。とはいえ、きっとバイオガス発電を自ら実践するというと、「難しそう」と感じる方も多いかもしれません。

しかし、「the HORSE」の操作手順はとてもシンプル。ジャンさんは、どんな場所で誰が触っても簡単に発電できるようにすることを目標に、この発電機を開発したといいます。それでは、実際の手順を説明していきましょう。

まずはじめに、機械前方部の投入口から、食べ残しや野菜の皮などの食糧廃棄物を入れます。
 
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次に機械側面の電源スイッチを入れ、機械内部の温度とpHの調節を行います。言葉にすると難しそうな行程ですが、ほんの少しの勉強で簡単に調節できるとのこと。「農場の馬を世話するようなもの」とジャンさんは言います。
 
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操作に必要なボタンは全て一箇所にまとめられています。

その調節が終わったら、フィルターを回転。この時、機械の中では廃棄物を液状のものと個体のものが分別され、それぞれを発酵することで、液体は液肥に、個体はバイオガスに変換されます。
 
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最後に、個体の食糧廃棄物からできたバイオガスを燃焼をさせることで、機械内のタービンを回し発電をします。発電された電力はバッテリーに蓄積され「the HORSE」を動かす際に用いたり、電力出力口から一般の電気と同様に使うこともできます。
 
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「the HORSE」の魅力は、みんなで食料廃棄物を集め、そして電気を分け合うために、トレーラーで牽引できること。町内会や近所で共同購入し、共に利用していくことで、エネルギーの地産地消と地域内循環の実現が進みますね。
 
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気になる発電量ですが、なんと年間25トンの食糧廃棄物を最大37MWhの電力と20,000Lの液体有機肥料に変換してくれるとのこと。この数値を日本の一般家庭に置き換えると、125世帯分の食料廃棄物で86世帯分の電力に変換できる計算になります!(出典元

このように、地域全体で電気と食糧の循環を促進しているジャンさん。これからの電力発電について、こう話します。

従来の大型発電所には、大きな問題があります。1つに処理代の問題、そして運送にかかる燃料の問題です。「the HORSE」はその問題を同時に解決するだけなく、地域社会の循環という新しい価値を見出してくれます。

「the HORSE」の値段は日本円で約520万、現在までに3台を売り上げました。さらに、クラウドファンディングで約450万円を集め、今後は電気還元効率を5倍にまで引き上げるために、更なる開発に取り組んでいくのだそう。
 
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会社役員と一緒に、ファンディング成功に喜ぶジャンさん(左から3番目)

食糧廃棄量は日本でも深刻な問題となっています。その解決のためには、もちろん食べ残しをしないことが最も大切です。しかしその一方で、捨てることしか処分の方法がない調理くずが、日本の食糧廃棄の半分もの量を占めていると言われています。(出典元

無駄な消費を抑えることも重要ですが、今後は必要な消費を無駄にしないための対策を講じていくことも、課題となっていくのではないでしょうか。

[via Kickstarter,IMPACT BIOENERGY,総務省,農林水産省]

(Text: 伊藤優汰)