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娘に心からすすめられる化粧品をつくりたい。日本に残された自然と共生しながら、次世代のためのコスメをつくる「株式会社クレコス」

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スキンケアといえば、女性がすること。そのように考えている人が多いかもしれませんが、実は最近、男性の間でもスキンケアを取り入れる人が増えていることをご存知でしょうか? なんと最近では、カップルや夫婦でオーガニックコスメをシェアする人も増えているんだとか。

オーガニックコスメも、さまざまな種類のものが出てきている中で、性別や年齢に関係なく使える、ユニセックスなデザインにこだわったコスメをつくっている会社があります。それが今回ご紹介する、日本のオーガニックコスメを牽引する「株式会社クレコス(以下、クレコス)」です。

娘に心から信頼してすすめられる化粧品を

「自分の娘に、心から信頼してすすめられる安心で安全な化粧品をつくろう」。創業者である暮部恵子さんのそんな思いから始まったクレコスは、1993年に「美しい日本のはじまり」と言われている奈良に会社を設立。

そして2011年には、日本で初めての国産ワイルドクラフトコスメ「QUON」をスタート。そのブランド名は、”遠い過去と未来”、”あることがいつまでも続くこと”を意味する「久遠(くおん)」という言葉から来ています。

そしてロゴマークは、日本に古くから野生する、「いつまでも香りが消えない果実」である柑橘種がモチーフに。永遠性と神秘性が崇拝されてきた「非時香実(ときじくのかぐのこのみ)」を意味しているのだと言います。
 
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クレコスのすべての化粧品は、「からだ《身》と環境《土》は切りはなすことができない」という東洋思想のもとつくられています。

クレコスが、社会との関係を意識しながら化粧品ビジネスを始めたきっかけとは、何だったのでしょうか? QUONのブランドディレクターをつとめる暮部達夫さんは、こう話します。

クレコスとの出会いをきっかけに、人と自然にあたたかな未来がもたらされてほしい。コスメは、自然の力、人の力をいただいて、命を持つもの。だからこそ世の中に少しでもお返しをしようと、設立当初からさまざまな活動を行ってきました。

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暮部達夫さん

クレコスでは、購入した人が商品を通して、日本の農業・森林・福祉の分野に貢献できる「QUON PROJECT」という取り組みを行っており、2014年には「ソーシャルプロダクツ・アワード 2014」を受賞。

さらに、農業と商工業が協力して新しいプロダクトやサービスを開発することで、日本国内の地域や産業を活性化する取り組みに対し、農林水産省・経済産業省から与えられる「農商工等連携事業計画」の認定も受けています。



その一つ、創業当時から今でも続いている、日本の森を守り生かす活動を行う、「クレコス いのちの森倶楽部」では、奈良の森から出た間伐材をパルプにし、化粧品の梱包材に使用。

こちらは、「社会福祉法人青葉仁会」の障がい者の人たちが手すきし、製紙しています。味わいのある紙質でつくられた素敵な梱包材を見て、コスメに興味を持ってくれる人も多いのだそう。
 
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間伐材に薬品・熱を一切使用せずパルプ化し、パッケージにしたもの。

日本の土地を守り、日本人の心を育てるコスメ

実際にコスメに使われている原料には、奈良県の大和高原にある、健一自然農園の大和茶を使用しています。greenz.jpでは、以前こちらの記事でも一部ご紹介しましたが、海外輸出に頼らない国産のもので、ワイルドクラフト原料と呼ばれる無農薬・自然農栽培の原料を、極めて高い比率で使用しています。
 
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普段何気なく私たちが取り入れている、食べもの、音、香り、景色、肌に触れるもの。「QUON」のコスメは、私たちの五感を豊かにしてくれる、国産の原料にこだわることで、次の世代の日本の心を育て、それをつなげていきたいという思いが込められているように感じられます。

私たちは、日本人のDNAに合ったもの、地産のものを取り入れることが自然だと考えていて、そういった日本人の心とからだに働きかける化粧品をつくりたいというのがありました。

そんな中伊川健一さんと、お茶の耕作放棄地を有効活用しようという話になったんですね。10年放棄されていた茶園は、伸び放題で森と化していたのですが、そこにはたくさんの花や実がなっていました。そのとき、これを使ったコスメづくりをしたいと思いついたのです。

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そして「QUON」の商品は、耕作放棄地の有効活用だけでなく、農家の安定的な収入源を生み出すことにも一役買っているのだそう。

通常茶園は、花や実がなる前に葉を摘んでしまいます。5月に一番茶を摘採し、10月に秋冬番茶が摘採され、農家さんはその半年間しか収益がありません。

その後は、11月に花が咲き、12月に実がなるのですが、「QUON」ではこの花と実のエキスを使ってコスメをつくっています。そうすることで、年間を通して農家の収益が安定し、雇用が守られるわけです。

今では、この場所を訪れ、新規就農を始める若者も増えています。また、無農薬で育てた国産の原料のものを選ぶということは、国内にある農薬に頼らない農業を助けます。そうして、次の世代に元気な大地を残していくことにつなげていきたいです。

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化粧品はすべて、合成防腐剤、合成香料、合成着色料、石油系合成界面活性剤、鉱物油、環境ホルモンの疑いのある物質が一切入っていません。


障がい者の人たちをビジネスパートナーに

採取された実は絞ってオイルにして、花は新潟にある障がい者施設「あおぞらソラシード」の化粧品工場に集められ、水蒸気蒸留し、化粧水にします。コスメは従来、石油系成分での抽出方法を採用するところが多いそうなのですが、「QUON」では世界でも珍しい亜臨界水抽出法を使用し、環境に配慮した商品づくりをしています。

(*) 亜臨界水抽出法とは、気圧と温度を調整し、水だけを媒体として必要な成分を効果的に抽出する方法。 クレコスでは、この方法を化粧品業界で初めて採用したそうです。

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水蒸気蒸留機

クレコスが障がい者施設と共につくっている化粧品は、これだけではありません。新商品のチョコレートを使ったコスメでは、全国夢のチョコレートプロジェクト「障害者を一流のショコラティエに!」に参画しています。ショコラティエの野口和男さんが厳選した、オーガニックカカオマスを使用し、付属のスパチュラは、「社会福祉法人青葉仁会」の障がい者の皆さんが一つひとつ手づくりしているのだそう。
 
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大和茶とオーガニックのカカオマスを使用したチョコレートパック

他にもクレコスでは、全国の障がい者施設と連携し、施設オリジナルの商品をプロデュースするプロジェクトが多数進行中。今年の春には、奈良に手づくりの石鹸工場をオープンする予定もあり、「ビジネスパートナーとして彼らと協業することで、雇用をつくっていくことが大切だ」と、暮部さんは話します。

最後に、クレコスでの取り組みを続けていくことで、どんな未来が見えてくるのかという質問に対して、暮部さんはこう話してくれました。

私は、地に足をつけてとことんやりたい。イメージアップのためにやるなんてことはしたくないんです。ボランティアや一部のサービスで、社会を意識した活動をすることも素晴らしいことですが、私は社会課題ときちんと正面から向き合いたいと思ってやっています。

クレコスという価値観に共感してくれた方たちのコミュニティの中で、クレコスが中心となって経済が回り、それを持続可能なものにしていく。それが私たちがクレコスを通じて実現したい未来ですね。


原材料にこだわるだけでなく、それに関わるすべての人の幸せや、未来のことも考えられてつくられている、クレコスのコスメ。

彼らの商品のように、誰も傷つけることなく生産され、みんなが笑顔になるものを選んで買っていくことは、私たちができる未来への投資といえます。そういった選択を多くの人が心がけていくことが、やがて良い社会をつくることにつながるのではないでしょうか。

あなたもコスメを通して、どんな人でも幸せに暮らせる持続可能な社会について考えてみませんか?