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【お知らせ】わたくしごとですが、編集長を卒業しました。今までの思い出とこれからの挑戦と、YOSH”元”編集長的10大ニュース!(後編)

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新たなマイプロジェクト「everyone’s STUDYHALL」の様子

こんにちは、greenz.jpの兼松佳宏(YOSH)です。いつもグリーンズをあたたかく支えていただきありがとうございます。先日のお知らせ記事でもご報告させていただきましたが、改めて、2015年11月末日をもってgreenz.jp編集長を卒業することとなりました。

今後はフリーランスの勉強家として「everyone’s STUDYHALL!」という新しいプロジェクトを仕掛けたり、2016年4月からは京都精華大学人文学部の教員として、新たな一歩を踏み出していく予定です。

僕自身の人生においても、何よりグリーンズの歴史においても、大きな転機だからこそ。今回は手前味噌ではありますが、編集長として過ごした5年間の出来事を”10大ニュース”として振り返ってみました。前編に続いて、今回はその後編です。

改めて、greenz.jp編集長として大切にしてきたことが、何かひとつでもみなさまのお役に立つことを願って。どうぞ、ご笑覧ください。
 
10位〜7位6位〜4位3位2位1位

YOSH元編集長が選ぶ”欲張り”10大ニュース、BEST3!

3位 グリーンズ編集学校 &『グリーンズ編集学校の教科書』出版(2014〜)


東京の編集学校の様子! 卒業生は100名を超えました

3位は、人生をかけて続けていきたいこととの出会いについて。

green school Tokyo(現「グリーンズの学校」)が始まったのは2011年6月。「コミュニティデザイン&まちづくり学科」を皮切りに、約20クラスまでに広がりました。講師に取材先をお呼びし、ファシリテーターはライターさんが担うなどメディアとのシナジーも大きく、今では収益の柱のひとつにまで成長しています。

その中で、僕が担当しているのが、2014年1月からスタートした「グリーンズ編集学校(現・greenz.jp編集クラス)」です。ちょうど東京 第五期が終わったばかりで、現在は1月8日からはじまる関西 第三期を絶賛受付中!

2015年2月には、今までの講義録をまとめた『グリーンズ編集学校の教科書』をgreen Books vol.4として出版。この教科書をきっかけに地域の編集者を志したり、メディアを立ち上げたりと嬉しい声も届いています。
 

『グリーンズ編集学校の教科書』は、編集学校に参加しないと入手できない状況に(何とかしたい…)

編集長として5年間、毎日のように記事を校正しては、ライターさんと対話をするなかで、改めて気付かされたのは「言葉の力の可能性」でした。

人の思いを伝える編集者やライターには、人を前向きにし、社会を動かす力がある。だからこそ、グリーンズが考える”編集”とは、「情報発信を通じてご縁を育むこと」。受講生には編集学校を通じて、その醍醐味を味わってほしいと思っています。

身近にある素敵な事例を、どうしてもgreenz.jpで紹介したい! そんな卒業生たちが書いたラブレターのような記事は、読んだ人の心を揺さぶるとともに、インタビュー先だけでなく、記事を書いた本人の可能性をも切り拓いていきます。その想像以上のご縁の広がりこそ、グリーンズの原点そのものです。

日本各地にパン屋さんがあるように、街にひとりは必ず志のある編集者やライターがいる。そして各地の面白いストーリーがどんどん共有され、いつのまにか世界は暮らしやすい場所になっている。いつかそんな時代が、本当に訪れることを願って。

『グリーンズ編集学校の教科書』のあとがきより

というわけで、今やすっかりライフワークとなった編集学校。これからも”人文系ソーシャルイノベーター”としての、新たな書き手を育む場づくりを続けていこうと思っているので、ご興味ある方はぜひ遊びにきてください!

 

2位  ライターさんのコミュニティづくり & ライターインターン(2011〜)


ライターさん会の記念写真!

2位は、編集長としてもっとも大切にしてきたことについて。

greenz.jpは立ち上げからずっと”非営利”メディアでした。それを言い訳にしてはいけないのですが、2010年当時の原稿料は1本2,000円ほど…中には「いっそプロボノでいい」という方もいましたが、greenz.jpに限らずメディアという分野の将来を考えると、ありがたいと思いつつも甘んじるわけにはいきません。

そのために、地道に取り組んできたのが、最近500人を超えたgreenz peopleです。みなさまからの寄付のおかげで、徐々に原稿料を上げることができ、最近ではライターさんのスキルや記事の種類に応じて、1本あたり2,500円〜30,000円までお支払いができるようになりました。

今やっと、編集部として予算を持って、攻めの姿勢で企画を仕掛けていこうと準備をしています。驚かれるかもしれませんが、こう思えるようになったのも9年目の今年からなのです。思いとお金の両立、愛と力のバランス。これらのことは、グリーンズの永遠のテーマといえるかもしれません。
 
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お金が潤沢ではないからこそ、ライターさんにとってグリーンズに関わるメリットを、もっと言えば、本当はやってみたかった企画を実現したり、一緒に仕事の軸を見つけたり、「グリーンズと関わってよかった」と思ってもらえるような瞬間を生み出さないといけない。

そこで僕が辿り着いた結論が、「コミュニティの温度をあったかくすること」でした。

半年に一度のヒアリングを通じて、ひとりひとりのライターさんと次のチャレンジを共有する。駆け出しのライターと先輩ライターがペアを組み、文章力を磨いていく。記事を書いてみたい未経験者の方向けに、インターンプログラムを展開する。

他にも、ライターさん同士のランチ会に1,000円ずつサポートしたり、地域を超えたGoogleハングアウト飲み会を開催したり、さまざまに書き手が自然と育つ土づくりに挑んでいきました。その成果としての信頼関係のもとに、いま次世代の編集部づくりが始まっています。

また、ライターインターンは、数年後のグリーンズを一緒につくっていけそうな仲間との最初の出会いとして、とても重要な位置を占めています。

インターン出身者には、出版・編集の分野だけでも、編集アシスタントを経てソトコトに転職した木村絵里ちゃんや、編集デスクまで成り上がったスズキコウタくんを始め、現代ビジネス編集部の佐藤慶一くん、WIRED編集部の宮本裕人くん、学芸出版社の松本優真くんなどなど、若き才能が巣立っていってくれました。
 

編集長として大事にしてきた、三つの「つくる」

「らしさ」をつくる。「可能性」をつくる。「居場所」をつくる。端から見たら”面倒くさそう”と思われるかもしれないけれど、そうやって培われてきたコンテンツのつくり手との信頼関係こそ、メディアの本質だと僕は考えています。

ライターさん自身がインタビュー先から影響を受けて、独立や移住といった人生の節目を迎える瞬間にたくさん立ち会いました。結果的に、取材される側になる機会も増えているようです。こうしたライターさんの成長が、そのままグリーンズの成長につながっています。

そんな10年目を迎えるグリーンズにとって、ますます大事にしていきたいこと。それは、グリーンズを通じてご縁があったすべての人にとって、「戻ってきたい場所」であり続けることなのかなと、何となく思っています。

今までに一本でも記事を書いてくれたライターさんは、ゆうに200名を超えます。ライフステージの変化によって、卒業された方もたくさんいます。

その中で、元インターンの植原正太郎くんのように、新卒で別の会社で経験を積み、やがてグリーンズに転職してくれたり、池田美砂子さんのように出産を経てコアメンバーとして復帰していただいたり。人生の岐路にあってグリーンズを思い浮かべてもらえること自体に、心の底からの歓びと、続けてきたことの誇りを感じるのです。

しばし離れたとしても、「いつか」の前向きな選択肢としてあり続けるためには、何より自分たち自身を磨いていくことが大切です。今回の編集長卒業のように、生まれ変わるくらいの変化も含めて、引き続き不断の努力をコツコツと続けてゆけたらと思います。

 

1位 『ソーシャルデザイン』出版 & メトロミニッツ「POWER OF SOCIAL DESIGN」特集(2011〜2012)

そして1位は、編集長として一番の手応えを感じた仕事について。

ライターさんと一緒につくり上げたグリーンズ初の本『ソーシャルデザイン』は、2012年1月発売以降、一週間で増刷が決定し、Amazonの「本」ランキングで38位を記録するなど、ベストセラーの仲間入りをすることができました。そして、このことはグリーンズにとって、明確なターニングポイントとなりました。

月間読者数も飛躍的に伸び、ライターさんのモチベーションも高まったこと。そして、本が名刺代わりとなり、講演依頼が増え、企業とも対等なパートナーシップを結べるようになったこと。一冊の本をきっかけに、できたてほやほやのNPO法人グリーンズの揺るぎない土台をつくることができたのです。

(あと、「ソーシャルデザイン」という考え方が、企業や行政にまで浸透しつつあることに、少しは貢献できたのではないかと思っています。ただ、よしあしもあって、「ソーシャルデザイン」という言葉そのものよりも、いま起こりつつある現象と、その背景にある本質の方が大事なのは、いうまでもないのですが)
 

出版のきっかけとなったメトロミニッツ「POWER OF SOCIAL DESIGN」特集

振り返ると、出版に至るまでの過程も手応えの連続でした。きっかけとなったのは、2011年の震災直後のメトロミニッツ「POWER OF SOCIAL DESIGN」特集

震災後、すっかり心ここにあらずの状態になっていた僕自身が、過去の記事を振り返り、まとめていく作業の中で、ソーシャルデザインの力にワクワクしていることに気付いたのです。

おかげさまでその号は大反響をいただき、当時メトロミニッツのクリエイティブディレクターをしていた菅付雅信さんから、書籍化のお話をいただきます。聞いてみると、僕がメトロミニッツに書いた600字ほどの短いコラムの文体に、何かピンとくるものがあったようでした。

納得感のある仕事を続けていれば、次の仕事につながっていく。それまでにない次元の手応えを感じた瞬間でした。兼松佳宏、31歳。やっとここで、プロフェッショナルへ。今まで、甘えてばかりでごめんなさい。

『グリーンズ編集学校の教科書』のあとがきより

『ソーシャルデザイン』は、グリーンズだけでなく、僕にとっても階段をひとつ登る契機となりました。担当いただいた朝日出版社の綾女欣伸さんからご紹介いただき、2013年末に京都精華大学のレクチャーへ。そして、その1カ月後、特任講師就任のオファーが届いたのです。
 
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初版の『ソーシャルデザイン』に書いてもらった仲間からのメッセージは、一生の宝物です

4月に京都へと引っ越してからは、編集長卒業の引き継ぎと、来春からの授業に向けた下準備をしてきました。いいこともたくさんありましたが、同時に、いまのライフステージならではのさまざまな迷いや焦り、葛藤がありました。

ときには大泣きしたこともあったけど、年末になってようやく晴れやかな気持ちになれていること、ほっとしています。もうね、奇跡といってもいいくらい。親しい方々には、ご心配とご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした。

悩めるときに、いつも心の支えとなったのは、『ソーシャルデザイン』刊行記念イベントなど、ことあるごとに仲間が本に書き込んでくれた言葉です。嬉しいことに、当時5歳の甥っ子・ゆうちゃんも一緒に、家族もメッセージを寄せてくれました。

正直にお伝えすれば、もしかしたらここ数年は、『ソーシャルデザイン』の”貯金”(印税という意味ではないですw)で、食べさせていただいたのかもしれません。実感として、それがそろそろゼロになるならば、『ソーシャルデザイン』以上の真新しい仕事をつくるのみ。いよいよその時が、やって参りました。

何者でもない真っさらの今、すべてのささやかな出来事が、兼松佳宏宛に届いた招待状のように思えます。こうしてさらなる脱皮の機会をいただいたすべてのご縁に、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました!
 

最後に少しだけ、これからのことを

まずは、フリーランスの勉強家として、勉強空間をリノベートする「everyone’s STUDYHALL!」という新プロジェクトを準備中です。夢は大きく「勉強空間プランナー」なる仕事を増やすこと、そしていつか自宅で塾を開くこと。1月19日(火)には、「勉強空間と図書館!」と題してトークイベントも。ぜひ遊びに来て下さい。

次に、メインの仕事となる京都精華大学では、人文学部の特任講師として、大学二年生の必修科目「ソーシャル・デザイン・プログラム」を展開していきます。”人文系ソーシャルイノベーター”という新たなロールモデルとは何なのか、自分自身もまだおぼろげだからこそ、少しずつその全貌を描いていきたいと思っています。

というからには、僕自身”人文系ソーシャルイノベーター”である必要があります。「空海とソーシャルデザイン」の研究は続けつつ、ジョルジュ・ペレックやデイブ・エガーズをヒントに「ことばあそびユニット」を結成し、遊びながら日本語の力を磨いていくワークショップを展開していけたら…!
 
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2015年のグリーンズ5人組

と、ここまで、お付き合いいただき、ありがとうございました!

改めて振り返ってみても、greenz.jp編集長だから達成できたことが、見えた景色が、本当にたくさんありました。そして、だからこそ、今はgreenz.jp編集長ではないからできることを探してみたい。

とはいえグリーンズは、誰がなんというと、僕にとって永遠のホームです。しばしの間、グリーンズの未来はメンバーに託しますが、きっと僕が歩み始める道もグリーンズの未来を切り拓くものだと信じています。そしていつか、僕自身が前向きに「ただいま」と言えるように。

改めて、こんなワガママを聞いてくれた鈴木菜央、小野裕之、スズキコウタ、植原正太郎にありがとうを。11月の沈黙を、12月のはにかみを、僕は一生忘れません。

そして、なみっきー、すずなおちゃん、なおちゃん、高橋さん。green drinks Tokyo のサプライズは、「生まれてきてよかった」と思えるほど、本当に本当に幸せな時間でした。ほかにもたくさんのあの顔やこの顔が浮かびます。それぞれに、心からの感謝を。

最後に、greenz peopleと読者のみなさまへ。これからますます、グリーンズは面白くなっていきます。今後とも、変わらないために変わり続けるグリーンズを、ますますよろしくおねがい致します。
 
 

santa 
兼松佳宏
as santa as possible