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週末の朝を学びの時間にする「greenz Weekend」スタート!西村佳哲さん、上田壮一さんと語りあう『ソーシャルデザインの話』[イベントレポート]

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午前中はみんなで一緒に楽しく学び、午後はそれぞれ思い思いに過ごす。そんな新しい週末の過ごし方を提案すべく、greenz.jpでは実験的にプロジェクトを始動しました。週末の朝を学びの時間に変えるプロジェクト、その名も「greenz Weekend」

1月14日(土)、その第1弾となるイベント『ソーシャルデザインのはなし』 が開催されました。ゲストは、西村佳哲さん(リビングワールド)、上田壮一さん(Think the Earth)のおふたり。土曜日にもかかわらず、朝早くから詰めかけたお客さんで、会場のコワーキングスペース「co-ba」はいっぱいに。円形に椅子を並べて、さて、どんな時間になったのでしょうか?

『ソーシャルデザイン』出版記念イベント!

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このイベントには、もうひとつ大事な意味がありました。1月10日に発売となったグリーンズ初の編著本『ソーシャルデザイン』。その出版記念イベントでもあったのです。記念すべきこのイベントにお招きしたゲストのおふたりについて、編集長YOSHは、こう語りました。

みなさんにも人生を変えた出会いがあったかと思いますが、僕にとってこちらのおふたりは本当に大きな存在なので、最初の本を出すにあたってお招きできたのはうれしく思います。

簡単におふたりのプロフィールをご紹介して、イベントレポートに移りたいと思います。

西村佳哲さん

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リビングワールド代表、プランニング・ディレクター、働き方研究家。
仕事は、「つくる・書く・教える」の三種類。情報デザインやコミュニケーション・デザイン領域のプロジェクトを手掛ける他、「自分の仕事を考える3日間」(2009〜11)など、各種ワークショップによる場づくりを行っている。著書に、『自分の仕事をつくる』(晶文社/ちくま文庫)など。

上田壮一さん

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クリエイティブ・ディレクター、一般社団法人Think the Earth理事/プロデューサー。コミュニケーションを通じて、環境や社会について考え、行動する「きっかけづくり」を行う。Think the Earthでは、地球時計wn-2、携帯アプリ「live earth」、写真集『百年の愚行』、書籍 『1秒の世界』などを手掛ける。2011年には10周年イベント「EARTHLING 2011」を開催し、大きな反響を呼んだ。


書籍『ソーシャルデザイン』についてのお話

グリーンズのイベントでは恒例となった「チェックイン」で頭を切り替えたところで、まずはうれしいご報告から。なんとこの日、書籍『ソーシャルデザイン』の増刷が決定したのです!

いつも応援してくださるみなさまへの感謝の気持ちと共に、編集長YOSHから、まずはグリーンズの歴史や活動、今考えていること、さらには書籍の内容についてお話しました。本の中に書かれていることもありますので、ここでは内容を抜粋してお届けします。

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グリーンズを始めた2006年頃は、気候変動や森林破壊など、世の中にネガティブなニュースが蔓延していて、僕自身も思考停止になっていました。でも周りにはステキな活動をしている人がいっぱいいて、そんな人たちの一番の理解者として応援したい、さらには社会問題に対して「こうすればいいじゃん!」という解決策を紹介し、明日をもっと楽しくしたい、と思ったことがきっかけとなり、グリーンズは始まりました。

グリーンズにとって記事とは、「新しい価値を呼ぶプレゼンテーション」であり「読者への贈り物」です。「アウトドアウエディング」や「まちの保育園」、「Karma Cup」といったgreenz.jpで多くの共感を生んだグッドアイデアに共通するものとしてグリーンズが考えた三ヶ条は、「サプライズがある」「思いやりや愛がある」「社会問題を一気に解決する」の3つ。これらの条件が揃っているグッドアイデアは、共感を呼び、一石二鳥どころか、一石六鳥にも七鳥にもなります。そんな記事をgreenz.jpでは発信していきたいと思っています。

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今、グリーンズの活動には3つの柱があります。ウェブマガジン「greenz.jp」、読者がつながることができる場「green drinks Tokyo」、最近始めた学びの場「green school Tokyo」です。今年の「green drinks Tokyo」では、マイプロジェクトの課題をみんなで飲みながら相談し合えるような、“マイ・ソーシャルデザインのためのオープンな場”をつくろうと思っています。

また、「green school Tokyo」のテーマは、ソーシャルデザインを実現するための3つのステップを考えています。まずはマイプロジェクトを「はじめる」こと、そして「つづける」ため必要なマイコミュニティをつくること、さらに「ひろげる」ために自分で発信するマイメディアを持つこと。「green school Tokyo」で大切にしているのは、政治や公共政策といった大きな課題よりも、“自分らしい”ということ。「“自分にとっての”社会的な課題を解決しながら、新しい価値を想像するような画期的な仕組みを“自分たちの手で”つくる」ということを大事にしていきたいと思っています。

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そして最後に、書籍『ソーシャルデザイン』の中に登場する7つのTIPSをご紹介しました。『ソーシャルデザイン』の特設ページに詳しく説明があるので、こちらでの紹介は避けますが、ソーシャルデザインを考える上で、グリーンズが大切に考えていることなので、ぜひ一度、目を通してみてください。

これら7つのTIPSによって、「自分ごと」→「共感」→「プロトタイプ」という三角形がぐるぐると回転し、繰り返していくことで、自分発信のソーシャルデザインができる。書籍『ソーシャルデザイン』の中ではそんなことを伝えています。


ゲストのおふたりに聞く「曼荼羅トーク」

さて、ここからは、ゲストのおふたりを交えた曼荼羅トークです。スライドには、前半に登場したキーワードやゲストのおふたりに関連する、合計9つの言葉が登場。この中から、参加者が自由に選び、そのテーマに則ったトークを展開していきます。

キーワード「自分ごと」

最初に選ばれたキーワードは“自分ごと”。おふたりにとって自分ごととしてやっていることとは、何なのでしょうか?

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僕の場合、上の人に言われてやっているような仕事はなく、自分たちでつくろうとしたり、自分で提案したりしてやっているので、自分ごとじゃないことが無いですね。マイプロジェクトについて語る時は、「マイプロジェクトじゃない仕事をやっている」という前提があると思いますが、僕の場合はそれが無いです。(西村さん)

僕もほとんど同じで、今やっていることは全部“自分ごと”なんです。でも、振り返ってみると、僕もサラリーマンだった時代があって、その当時“自分ごと”と思った仕事は1割くらいしかなかった。でも、フリーランスになった瞬間に全部の仕事が“自分ごと”になったという経験があります。

それはやっぱり「誰かからやらされている」という気持ちがあるからで、どんなに辛い仕事も、「最初に自分でやると決めたかどうか」「自分で選んだかどうか」という一点があるかどうかで、随分変わるのかな、と思います。そうすると、辛い状況に陥ったとしても「自分で選んだんだから、そこできっと学びがあるんじゃないか」と思える。こんな風に、マイプロジェクトじゃなくても、“自分ごと”と思い直せる方法があるのではないかと思います。(上田さん)

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さらに、今、自分ごととして取り組んでいるテーマを、ひとことでお話いただきました。

ひとことで言うと、「健全化」です。僕は社会変革をしたい、とか、何かの問題を解決したい、とか、そういう気持ちはあまりない方です。でも、「健やかじゃない状態を健やかにしたい」という気持ちはすごくあります。それは、「身体の中で凝っている部分があったら、ちゃんと凝りをとって血を流したいな」と思うのと同じくらいの感覚。自分が不健全だと思うことがあったら、できる範囲で健全化したいな、というだけです。(西村さん)

僕は「現場にいる人に会いに行く」ということ取り組んでいます。Think the Earthは「地球環境にまずいことが起きている」というようなことを、なるべくたくさんの人に「伝わるように伝えたい」という想いがあるのですが、伝わるように伝えるためには、自分の中に、「その場に行ってその場にいる人と話した」という実感値がないと、やっぱり無理なんですよね。自分の言葉で話すためには、身体ごとそこに行かなくてはならなくて。でも行くと、実際には3日では済まなくなって、何度も通うことになって、そこでプロジェクトが生まれていく。その感じが面白いんです。(上田さん)

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西村さん、上田さんにとっての自分ごと、あなたは何を感じましたか?

その後も、「座右の問い」「愛」「地球意識」といったキーワードについて、おふたりにざっくばらんにお話いただきました。カルガモの親子の話から、“宇宙萌え”の話、ダンサーにとっての愛の話(スミマセン、現場にいたの方以外は意味不明だと思います…)まで、様々なエピソードを、実に楽しそうに語るおふたり。和やかな雰囲気の中、参加者のみなさんは、その言葉をしっかりと噛み締め、自分に照らし合わせていた様子でした。


みんなで語り合う「金魚鉢トーク」

10分間の休憩の後、今度は参加者のみなさんが主体となって語っていただく「金魚鉢トーク」です。中央には6つの席があり、ひとつだけ空席ができています。しゃべりたくなった人がぬいぐるみを手にして発言し、しゃべりきったと思ったら席を抜け、またしゃべりたくなったら空席に座る。それを繰り返していきます。テーマは「あなたが自分ごととして貢献したい社会的課題はなんですか?」

YOSHの声がけで、5名のみなさんが椅子に座りました。自己紹介でそれぞれのバックグラウンドを理解した所で、ぬいぐるみを手にした方が話題を切り出します。さて、どんなトークが展開されるのでしょうか。

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100%“自分ごと”にするには?

まず口火を切ったのは、こんな自分ごとの課題でした。

社会的課題ではないかもしれませんが、個人的に、人の可能性をどうやって広げていくかということに興味があります。必ずしも100%“自分ごと”で生きる必要はないと思いますが、どうしたらそういう人を増やせるかな、増やして行きたいな、ということを考えています。

これに対し、隣に座った方はこのように発言しました。

僕はサラリーマンなので平日は夜遅くまで仕事なのですが、最近出会った人に、「人生の7分の2」という話を聞きました。週末をぼーっとしたりする過ごし方もあるけど、週末は人生の7分の2の時間で、ものすごくたくさん時間がある訳です。「その中で、自分が考えていることをやってみるといいんじゃないの?」と言われて、「行動してみよう」という気持ちになりました。

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これに対してYOSHは、

みんな「全部が自分ごとになりたい」と思っている所があると思います。でも、みんなやりたいことや表現したいことはあるし、それに向かって取り組んでいる瞬間はキラキラしていて、「みんなすごいじゃん」と思います。みんながそれぞれの得意なところをどんどん伸ばしていって、プロジェクトという形で提案になって、「いいね!」と言われた瞬間に自信を取り戻したりしています。

「マイプロジェクトを始めるのは大変」と思う方は、ニュースなど情報の中にある社会的課題から考えがちですが、「今自分は何がやりたいかな」ということから考えると考えやすいと思います。

とフォロー。ここから話題は、課題をみつけたその後の行動についてへと展開していきます。

見つけた課題、その後の行動は?

私は、「解決したい社会問題」を見つけて、その次にどう行動するのかが一番大事で難しいところだと思っています。思いはあっても、思いついて何かできるようなものじゃなくて、半端に調べただけでは伝えられない。中途半端な知識で伝えても言い返されてしまうし、じゃあ、どのくらい調べなくちゃいけないのでしょうか。始めちゃうことが先なのか、調べ尽くすことが先なのか、難しいな、と感じています。

この問題提起に対しては、次々に話し手が交代し、多くの意見が集まりました。

僕は、自分が言い返せなくなったことをすぐその後に調べるということを繰り返しています。人に何かを言われた方が前に進むと思います。

モヤモヤしている状態でも、イベントでも何でもいいので、一度やってみれば、行動している人と同じステージに立てると思います。

そんなに背景は必要ないと思う。自分が生活している中で「変えたい」とか「フェアじゃない」と思っていることを伝えると、周りに「それいいね」と思っている人が集まってきてくれます。

私は、プロフェッショナルの人たちの中で発言することにおびえていた時代がありました。でも、一度思い切ってしゃべってみたら、その人にも知らないことがあるんだとわかって、「お互いに本当の気持ちで話していたら、知識はそんなに必要じゃない」と思うようになったら、楽になりました。

そんな議論の中にも、「学びコンプレックス」「お金のまわり方を変えたい」といった、参加者の人たちが個人的に感じている課題が例として出てきて、共有されていきます。さらに「流通」に関する具体的な課題が提示されました。

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現在の流通を変えたい!

私は流通の業界で仕事をしていて、人がつくったものを選んできて「右から左に流す」ようなことをやっています。職人さんが一生懸命時間をかけてつくったものでも、ダウントレンドなものを切り捨ててしまうような風潮があって、それに心を病みかけています。私はウェブを担当しているので、そういう視点じゃなくてできることがないかな、と思っています。

これに対しては、より具体的な議論となり、

ウェブで紹介されていた商品製作の背景に惚れ込んで、すごく高いiPhoneケースを買ったことがあります。つくっている人の姿を見ることで買いたいという気持ちになります。

流通は「物を流す」のではなくその製品を作るときに込められた「想い」を流す、つまり縁を繋ぐものだと思う。

エチオピアのシープスキンでつくった雑貨を販売するプロジェクトを手伝っているので、よろしければ……

などなど、経験談から概念論、ビジネスにつながりそうな話題まで、幅広く話題が展開されました。ひょっとしたらこの場の出会いが今後、マイプロジェクトにつながっていくかも? そんな予感も残して、金魚鉢トークは終了となりました。最後にYOSHは、

働き方の話から始まり、最後は具体的な「流通」のテーマが入ることで、それまでの話を受けてまた広がるような感じがあって、すごく面白かったです。皆さんの考えから自分も考えたいな、という思いが生まれました。ありがとうございました。

とまとめ、チェックアウトの時間へ。会場のみなさんは今日一日で感じたそれぞれの思いを、名残惜しそうに共有していました。

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次回「greenz Weekend」は2月5日(日)!

様々な背景の人が集い、思いを言葉にすることによって、話題が連なり、新たな関係性が生まれていく。そんなワクワクを体験できた2時間半。会場の雰囲気が伝わりましたか?

イベントを終えて、なんと言ってもうれしかったのは、これだけ頭をフル回転して語り合っても、まだお昼だということ! 朝日が差し込む会場での充実した時間は、私たちをすがすがしい気持ちにさせてくれて、その後の時間も有効に活用できました。週末、ちょっと早起きをしてみるのも、なかなかいいものですよ。

次回「greenz Weekend」は、2月5日(日)、ゲストに林厚見さん(スピーク/東京R不動産)、中村健太さん(シゴトヒト/東京仕事百貨)をお迎えして「働き方編」を開催します。こちらは既に満席ですが、今後も開催予定ですので週末グリーンズを体験してみたい方、ぜひお待ちください。

『ソーシャルデザイン』ってどんな本?詳しく知ろう!