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地元のことは地元で解決! 課題が山積みのまちで生まれた「箱の浦自治会まちづくり協議会」に聞いた、住み続けたい町をつくる秘訣とは?

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箱の浦まちづくり協議会のコアメンバー。左から堀副会長、岡会長、寺嶋事務長。

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。こちらの記事は、会員サイト「マイ大阪ガス」内の支援金チャレンジ企画「Social Design+」との連動記事です。

箱の浦は、大阪府と和歌山県の境、阪南市(人口56,000人)の南西部海沿いにある人口およそ2,000人の団地です。今から40年前はニュータウンと呼ばれる地域でしたが、今では高齢化が進みオールドタウン化。買い物困難、2キロある駅まで距離の移動手段がない…など課題が山積みでした。

ならば、箱の浦のことは箱の浦で解決しよう! その思いで立ち上がったのが、「箱の浦自治会まちづくり協議会(以下、「まちづくり協議会」)」。助成金にほとんど頼らず、高齢者の憩いの場「おしゃべりサロン」の開設や買い物難民解消のための「箱の浦・朝市」など、自分たちの手で地域を変えてきた力強い組織です。

今回は、その中心メンバーである岡保正会長堀正夫副会長寺嶋勝治事務長に、住み続けたい町をつくる秘訣についてお話を伺ってきました。

認知症の予防にもなっている「おしゃべりサロン」

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毎回20名以上のメンバーが参加してにぎやかなおしゃべりサロン。

「まちづくり協議会」ができたのは、2012年6月のこと。家族の高齢化など、さまざまな事情で団地を出ていく人が増えるなかで、「”住み続けたい町”にするにはどうすれば?」という切迫な課題と直面していました。

また、もともとあった自治会では毎年のように会長や役員が入れ替わり、事業の継続が難しいことも。そこでおよそ20名の有志メンバーで立ち上がったのが「まちづくり協議会」だったのです。

寺嶋さん 自治会とは表裏一体の関係なんです。互いにできることを補完しあっていこうということで、単なるまちづくり協議会ではなく「箱の浦自治会まちづくり協議会」という名称になったのです。

「まちづくり協議会」ができて間もなく、最初のプロジェクトとして空き家を賃借してスタートしたのが、高齢者の憩いの場「おしゃべりサロン」です。地域のご婦人たちがボランティアとして参加。シフトを組みそれぞれが参加できる時間を使って、サロンを切り盛りしています。
 
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台所はご婦人たちにおまかせあれ!シフトを組み、ボランティアで活動しています。

当初は週に2回の開催でしたが、100円で気軽にコーヒーが飲めることや、ここに来れば仲間たちに会えることで徐々に訪れる人が増え、現在は週に3回(火・木・土の午前10時~午後3時)の開催になったそう。

「ほとんどの方が常連さん」という「おしゃべりサロン」は、その名の通りとてもにぎやか。取材に伺った日も、雨にも関わらず15名ほどの方が参加していました。

岡さん この場所に来ることを楽しみにしてくれているのはもちろん、「○○さんの様子が以前と違う」「最近見かけないなぁ」など、それぞれが気づきあうことで認知症の早期発見にもつながるんです。単身世帯の高齢者も多い地域だから、互いに見守り合うことがこのサロンの本当の目的なんですよ。

また、この場所には週に一度、ソーシャルワーカーが訪問。医療・福祉、認知症の不安から身の回りのことまで、高齢者の方たちのありとあらゆる悩みに寄り添い、応えてくれるとのことで、地域の人たちの安心感につながっています。

脱! 買い物困難地域「箱の浦・朝市」

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鮮魚売り場には、開店と同時にお客さんが殺到するのだとか。

箱の浦団地が抱える問題のひとつは、駅からは2キロ、最寄のスーパーまでは3キロ離れている、買い物困難地域であること。

阪南市でも買い物支援の施策があることを知った岡さんたちは、「移動販売車に来るようにしてほしい」とかけあったのですが、結果的には実現しませんでした。

岡さん 私は、やると言ったらやる性格なんですよ(笑) こうして行政と交渉を続けるのは時間の浪費だなと思い、自分たちの手で朝市や移動販売車の手配を進めたのです。

こうして2012年11月から始まったのが、週に一回開催されている「箱の浦・朝市」です。岡さんたちは、周辺の農家さんや漁師さんに声をかけ、新鮮な素材を安く提供してもらっているのだそう。今では、オープンと同時にお客さんでにぎわい、売り切れが続出するほどの大盛況ぶり!

さらに2014年からは、日用品も取り扱う「生協」の移動販売車が毎週巡回するようになるなど、買い物困難地域からの脱却が近づきつつあります。
 
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ご近所で採れたという安納いもを片手に元気にやってきたのは、地元の漁師さん。朝市にも積極的に協力してくれています。

また、飲食店がほとんどなく、気軽にご飯を食べる場所がない、という課題に対しては、2015年から新たな空き家を借りて「シニアランチハウス」事業をスタート。

「高齢者がみんなで昼食を楽しめる場をつくろう」という思いから始まった「シニアランチハウス」には、毎回25名ほどの方が参加し、すでに「月2回開催を月4回に増やしてほしい」とのリクエストがあるほど好評です。
 
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2015年5月からスタートしたシニアランチ事業。おしゃべりサロンに負けない盛況ぶり。

小さな活動が、仲間意識を高めるきっかけに

箱の浦発のプロジェクトはまだまだ続きます。高齢者の多い箱の浦団地では、災害時の対策にも慎重にならなければいけません。

岡さんたちは、地域の防災活動や避難経路について知るために勉強会を実施。2013年には、箱の浦団地の防災パンフレット「箱の浦 防災の栞」を作成しました。
 
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地域住民の協力しあって完成した、防災パンフレット。

このパンフレットには、地域に住むデザイナーさんや防災知識のある人など専門家も、ボランティアとして参加。「まちづくり協議会」のメンバーでさえ知らなかった、地域の「あんしん給水栓」の存在や避難経路などがとてもわかりやすくレイアウトされています。

岡さん パンフレットまでつくるつもりはなかったのですが、地域に住むデザイナーさんにお話しをしたところ、協力してくださることになって。防災のイロハの「イ」がわかるわかりやすいものができました。

こうして実績を重ねた結果、行政の方も聞く耳を持ってくださるようになり、今では私たちまちづくり協議会が行政を変えていっていると言っても過言ではないと思います。

ひとつのものをつくり上げていくことによって、地域の人たちの仲間意識もぐっと高まりました。「まちづくり協議会」を設立した当初は、どこか人ごとのように見ていた方たちも今ではすっかりおしゃべりサロンの常連さんになっているのだといいます。
 
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そうめん流しも、協議会のメンバーが手づくりで。

他にも、高齢者問題だけではなく子育て世代の問題にも目を向けています。そのひとつが、「のびのびクラブ」。

「まちづくり協議会」のボランティアが中心となり、竹馬づくりのワークショップやホタル観賞会やそうめん流しなど多彩な行事で子どもたちの健やかな成長を見守っています。

また、小学校の学童保育に通えない高学年の子どもたちが、自宅に帰ってきてひとりぼっちにならないようにと、岡さんたちは新たなプランの実現にむけて奔走しています。

岡さん 高学年の小学生や、不登校の子どもたちがそこに来れば本を読めたり、宿題を教えてもらえるような場をつくりたいんです。高齢者もそこに集うことで、子どもたちに元気をもらえるような新たな交流の場になればと。

さらには、日常の困りごとを解決する「お助け隊」や最寄り駅まで1日16便も往復する「会員制送迎」など、設立からわずか3年のあいだに、次々と活動を展開してきた岡さんたち。

驚いたことに、これら事業に対して阪南市と自治会から受けている助成金は30万円のみ。そのほかは各事業の収益でやりくりをして黒字運営を続けているのだと言います。助成金がいつ打ち切られても事業が継続できるよう、「財政基盤の確立」にむけた運営を行なっていると言葉を続けます。

堀さん 私たちの最大の特徴は、自分たちでお金を稼いで運営を続けているところなんです。「お助け隊」や資源ごみの回収も収入源になっています。

岡さん 協議会をはじめた当時、おしゃべりサロンのために格安で空き家を借りることができました。100円のコーヒーだけで運営を続けていけるのか不安でしたが、今では週に2回のサロンが3回になるほどの盛況ぶりで。

市からの助成金は今年度で終了しますが、これからも自立した運営を続けていきたいですね。

「なぜ無理だと思いますか?」という問いかけ

こうした変化をみて、「私たちもなんとかしたい」「どうしたら箱の浦のようになれますか?」という相談がやってくるほど、今やまちづくりのお手本となった箱の浦。

そういう方々に岡さんが伝えるのは、「なぜ無理だと思いますか?」という問いかけと、「自分たちの問題は、自分たちで解決するしかない」という意志でした。

岡さん いまも認知症の見守りや子どもの居場所づくりなどに取り組んでいますが、「条件がよくない」からこそ大きな挑戦ができるんです。

地域の活動には、シニア層が持つ貴重な経験が生きる場面も多いと思います。そうした活動をもとに会社員時代には出会えなかった、地域に住む友人が増えることで、新たな生きがいが見つかっていくのではないでしょうか。

箱の浦では女性だけなく、定年を迎えた男性もいきいき暮らしています。私なんて、現役時代よりも忙しいですよ(笑)

そう笑う岡さんは南海電鉄が運営する遊園地「みさき公園」の園長さんを。寺嶋さんも数十年にわたり、保険会社で営業マンとして活躍してきました。それぞれが企業で培ったノウハウは、まちづくりにおいて欠かせない原動力となっています。
  
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「元気な男衆が多い!」という箱の浦で行われている資源ゴミ回収。

住宅街のオールドタウン化は多くの地域で問題となっています。きっと、箱の浦団地と同じ悩みを抱えている地域は少なくありません。

「地域のことは行政がなんとかしてくれるだろう」と事態を見守るよりは、自分たちで解決策を見出したほうがいい。高齢者の方たちが、仕事で培ってきた知恵やスキルをまちづくりに活かせばきっとまちは変えられる。箱の浦のみなさんのお話を伺っていると、そんな気持ちが湧いてきます。

その土地ならではの究極的な条件こそ、アイデアの種となるはず。みなさんも目の前の「あるもの」に目を向けてみませんか?

(Text: 山森彩)