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都会の真ん中に市民参加型の音楽フェスは根付くのか!? 「渋谷ズンチャカ!」にみる、ズンチャカLOVERSたちの夢の始まり

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(左)松原大輔さん (右)細田幸子さん

今年も待ちに待った夏フェスの季節がやってきました。夏の屋外で聴く音楽はとても心地よくて、ワクワクするものです。小さなステージでもいいから、自分も屋外で音楽を奏でたり、歌ってみたら気持いいだろうなと思っている人も多いのでは?

それを実現しちゃおうというのが、プロもアマチュアも、世代や国籍も関係なく、誰でも参加してみんなで楽しめる音楽フェスティバル「渋谷ズンチャカ!」です。

音楽を“聴く”だけではなく、一緒に“歌う”、”演奏する”ことをメインに据えた参加型の音楽フェスティバルをつくりたい。その思いから始まった昨年のプレイベントを経て、今年の8月9日にいよいよ第一回目の開催を迎えます。しかもその名の通り、大都会のど真ん中、渋谷で!

今回は「渋谷ズンチャカ!」誕生の経緯や、今夏の開催に向けて準備を進める“チーム・ズンチャカ!”の奮闘ぶりを、昨年のプレイベントを企画運営された細田幸子さん、今年のリーダーである松原大輔さんにうかがいました。

渋谷が音楽で溢れる街に!

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変わりゆく渋谷の街

いま渋谷駅周辺は、東京オリンピックが開催される2020年に向けて、日々大きな変化が進んでいます。また、駅周辺だけでなく道玄坂や宮益坂周辺でも再開発がおこなわれ、街の景観が変わりつつあります。

これから渋谷の街がどうなるのだろうとワクワクする気持ちがある一方で、落ち着かない気持ちの人もいるかもしれません。

渋谷が新しく生まれ変わる中、そこに暮らす人たちだけでなく、渋谷を訪れる人、渋谷を大好きな人みんなが、渋谷の新しい未来に誇りや愛着を持てるきっかけをつくりたい。それが「渋谷ズンチャカ!」の発端でした。
  
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渋谷を訪れた人たちが気軽に参加できるのも「渋谷ズンチャカ!」の魅力のひとつです

昨年は、JR山手線沿いに位置するみやしたこうえん(宮下公園)と、神宮通公園の2つの公園を会場にして、20組を越えるバンドやダンサー、合唱チームなど様々な人たちが出演。またステージに立つ人だけでなく、誰でも気軽に音楽を楽しむことのできる企画もたくさん用意されました。

楽器を触ったことがない人でも楽しめるオリジナル楽器づくりや、輪になって太鼓を叩くといったワークショップも登場。

小さな男の子がドラマーとして大人に混じって演奏する即席バンドが誕生したり、飛び入り参加で楽器演奏を披露する人も登場するなど、渋谷の街なかは参加する人それぞれのスタイルで音楽を楽しむ一日になっていきます。
 
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初めての音楽体験に興味津々の子どもたち。大人たちも一緒に音楽をつくり上げます

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大人のサックスプレイヤーにリコーダーで音楽勝負!会場も大いに盛り上がります

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初めて触って、自分で音を出してみるサックスはどんな感じだったのでしょうか。上手いとか下手とか関係なく、音楽で楽しくなる光景があちらこちらで見られました

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Sing!恵比寿による大合唱。渋谷の夏空に素敵なコーラスが響き渡ります

聴こえてくるリズムや歌声に誘われてたくさんの人たちが集まり、参加者はなんと5,000人を超えたそう。

メインステージでおこなわれたファイナルセッションでは、たくさんの人が一緒に楽器を演奏したり、歌ったり、踊ったりと、思い思いに音楽を楽しむ一大空間が生まれていきました。

こうして渋谷という大きな街で開催された初の市民参加型の音楽フェスティバルは、その一歩を歩み始めたのです。

「ズンチャカ!」という言葉が世界中の人にひろがればいいね

「渋谷ズンチャカ!」のもともとのきっかけは、音楽の力で渋谷の街を盛り上げていきたいという桑原敏武・前渋谷区長の想いに、渋谷駅周辺の商店街が参加したことでした。

その実行委員会に、細田さんの勤め先であるヤマハの「音楽の街づくりプロジェクト」、渋谷区を中心に街づくりに取り組んでいる「NPO法人シブヤ大学」が加わり、プロジェクトが本格化していきます。
 
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フランスでは夏至の日を「音楽の日」と定めていて、この日は毎年一回フランス全土が音楽のリズムで溢れます。これは今年の開催風景。セーヌ川を渡る船の上でロックバンドが演奏していたりします。(撮影: 細田幸子さん)

そこでまず、細田さんたちがイメージしたのは、フランスで開催されている「音楽の日」でした。

細田さん 「音楽の日」では、年に一日だけフランス中の路上や公共の場所が解放され、ロックからクラシック、ジャズ、ソウル、民族音楽まで様々なジャンルの音楽を楽しむことができるんです。

プロやアマチュア問わず、街と一緒になって音楽を楽しめる音楽フェスティバルで、すでに30年以上も続いています。「渋谷ズンチャカ!」も「音楽の日」のように、たくさんの人が自由に音楽体験できる場所になっていけば素晴しいだろうなという気持が大きくなっていきました。

「音楽の日」のようにジャンルを飛び越え、たくさんの音楽を楽しめる、そんな音楽フェスティバルにふさわしいキーワードとは? 細田さんたちは思案を続けます。

細田さん そう思ってもなかなかよい言葉が見つからかったんですが、ネーミングを決める最終時期の頃に、スタッフから“ズンチャカ!”という言葉が出てきたんです。そしたらみんな、もうこれだろ!という感じになって(笑)

それを桑原前区長に提案してみたら、「子どもから年配の方、そして海外の人も含め、いろんな人が参加してくれる音楽祭にしたいのだったら、求められるのはこれかな」っておっしゃってくれたんです。

音楽という言葉が入っていないんですが、この“ズンチャカ!”という言葉が、自由な音楽フェスティバルのイメージを明快に伝えてくれるんじゃないかって思っています。いまでは、みんな“ズンチャカ!”が合言葉ですね(笑)

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ズンチャカ!らしい「渋谷ズンチャカ!」を楽しむための10ヶ条。

ズンチャカ!を支えていくのはズンチャカ!を愛する人たちの力で

もうひとつお手本となったのが、仙台で開催されている「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」でした。今年で25回目の開催を迎える、市民参加型の音楽フェスティバルの草分け的存在です。
 

定禅寺ストリートジャズフェスティバル

「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」も地元の商店会や企業の有志が集まり、街を盛り上げていきたいという思いから、1991年に始まりました。

最初の年の動員は「渋谷ズンチャカ!」のプレイベントと同様に約5,000人規模だったイベントが、いまでは2日間で70万人を超えるお客さんが訪れる世界でも稀な音楽フェスティバルになっています。

細田さん 「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」はその規模もさることながら、1,000人近い市民ボランティアの支えによって運営されている素晴らしい音楽フェスティバルといえます。

市民参加型の音楽フェスティバルを長く続けていくには行政や企業が主体になるのではなく、興味や関心を持ってくれる人たちが集まって継続してつくりあげていかなければなりません。

「渋谷ズンチャカ!」もそういった担い手をどうやって探していくか、協力してもらえるかという点もテーマでした。昨年のプレイベントは言わば土台づくりで、自ら渋谷という街と音楽に関わり、「渋谷ズンチャカ!」を一緒につくりあげていく担い手を見つけるズンチャカLOVERS探しでもありました(笑)

そして、そういう有志の人たちが集まってつくる最初の「渋谷ズンチャカ!」だからこそ、今年が本当の第一回目の開催だと考えています。

チーム・ズンチャカ!発足

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ここにいないメンバーも含めて約30名のチーム・ズンチャカ!のメンバーが企画運営に携わっています。

そしてズンチャカLOVERSの一人として企画運営に参加したのが、今春社会人になったばかりの松原大輔さん。生まれも育ちも渋谷という生粋の渋谷っ子です。

昨年はアコーディオン奏者として参加。初めて出会うほかの出演者と意気投合しセッションしながら会場を歩いていたら、いろんな人がその列に参加してきたことに感動したそう。

そこで今年は「渋谷ズンチャカ!」を企画運営するメンバーとして参加することを決めました。

松原さん 僕自身、7歳からピアノやっていて、本当に音楽が大好きでした。友人と一緒に渋谷の路上でよくセッションライブをやったりしてました。けど怒られちゃうんです、どうしても(笑)路上ならではの音楽体験があるんですけどね。

ある時、路上で演奏していたら、通りかかったスウェーデン留学生が、立ち止まって僕らの演奏をずっと聴いていてくれたんです。それで最後には演奏にのって、踊って、一緒になって盛り上がりました。言葉がつながらなくても、音楽ってこうやって人と人をつなげることができるんだなって本当に嬉しくなりました。

その時と同じ感動が「渋谷ズンチャカ!」でも生まれる場所にしたいし、多くの人に共有してもらえる場所にしたいと思っています。

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プレイベントに参加した時の松原さん。カラフルなパンツでズンチャカ!魂の心意気を感じます。

松原さんと同様、自分たちの手で「渋谷ズンチャカ!」に関わりたいと、現在約30名のズンチャカLOVERSたちが集まり、“チーム・ズンチャカ!”を結成。様々な企画の話し合いがおこなわれています。

昨年ステージで演奏した人、来場者としてプレイベントに参加して楽しんだ人、後から知って関心を持った人…参加した動機は様々ですが「渋谷ズンチャカ!」を自分ごととして集まっているメンバーです。

休日を返上してのミーティングではなんと12時間を超えるハードな日もあるとか。
 
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松原さん それでも、みんな本当に「渋谷ズンチャカ!」を盛り上げていきたいので時間を忘れてしまうんです(笑)

嬉しいことに商店会や町内会の方々からも「ここを会場にしたらどう?」とか「今年はもうひと肌ぬぐよ」などたくさんの応援を頂いています。

僕たちも、一人でも多くの人に参加してもらうためにも、できるだけ渋谷の広域にステージをつくりたいと思っています。

もちろん、限られた資金の中ですべてを賄っていくのは大変なことです。それでも想いをひとつでも多く実現できたらと、今年からクラウドファンディングも始めました。

資金が集まっていけば、たくさんの人が集まるヒカリエや、街角にピアノで演奏できるステージを増やすことができます。

松原さん クラウドファンディングは資金調達も大事なのですが、それだけではありません。実際、開催当日の運営スタッフもまだまだ足りていないんです。

ぼくらのメッセージが届いて、今年の「渋谷ズンチャカ!」を一緒につくってくれる仲間が増えてくれるようなきっかけにもしたいと思っています。

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5月末に開催されたキックオフパーティーの様子。細田さん、松原さんほかチーム・ズンチャカ!のメンバー自ら演奏し、ひと足早いズンチャカ気分を会場いっぱいにしました。

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昨年の「渋谷ズンチャカ!」プレイベントの会場MAP。今年はさらにたくさんのステージが設置される計画です。

また、松原さんが今年必ず実現させたいと思っているのが、桜丘からハチ公前、公園通りを渡り、みやしたこうえんまで、全長2キロの“ズンチャカパレード”。渋谷の街なかに“動くズンチャカ!”が繰り出すことで、もっとたくさんの人に「渋谷ズンチャカ!」を知ってもらう機会になればと考えています。

松原さん 渋谷という街は音楽や文化、ファッションなどたくさんの情報を発信している一方で、街自体にもう少し余白があってもいいのではないかなと感じることがあります。

街頭や公園、広場などパブリックスペースと呼ばれる場所はたくさんありますが、ぼくらは自由に使えているのかなと。もちろん勝手気ままに使うことはできないけど、パブリックスペースだからこそみんなでもっと共有できてもいいんじゃないかって思うんですね。

「渋谷ズンチャカ!」は音楽フェスティバルであると同時に、街とぼくらの関係を考えてみる場にもしたいと思っています。まだまだ限られた場所での開催ですが、近い将来、渋谷の街じゅうを音楽の解放区にできたら最高です!

 
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最後に松原さんから、今年の「渋谷ズンチャカ!」をこうしたい!という決意表明を聞いてみました。ちょっと長すぎる気もしますが、松原さんほか「チーム・ズンチャカ!」のみなさんが実現したい想いが溢れています。

多様で自由でハッピーでオープンでノーボーダーで、音や人の新たな出会いや演奏のきっかけに溢れ、ゆるさと余白があって、Just Funであることを大切にする、ザ・渋谷の街かつワールドワイドで参加型な「渋谷ズンチャカ!」を実現!

屋外で演奏したり歌ってみたいと思っても、ちょっとした勇気が必要です。でも「渋谷ズンチャカ!」だったら、友人や家族はもちろん、あなたひとりだけで立ち寄ったとしてもきっとハッピーな音楽体験ができそうですね。

ひょっとしたら隣でハンドクラップしているのは海外からの観光客かもしれない。そんな光景を想像し、あなたも「渋谷ズンチャカ!」に足を運んでみませんか?

合言葉は、もちろん“ズンチャカ!”