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子どもたちに考える力を! 第一線で働く大人たちとのワークショップを通じて、“未来をひらく”学びを提供する「ミライヒラクラボ」

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これからの社会に必要とされる「生きる力」や「考える力」。未来を担う子どもたちが、これらの力を身につけるには、どうしたらよいのでしょうか。

家庭でできること、教育現場でできること、地域でできること。様々な工夫が考えられそうです。そこで今回は、“未来をひらく”教育を目指す「ミライヒラクラボ」の活動をご紹介します。

学ぶこと、考えることに夢中になって取り組む子どもたちの姿から、未来を育むヒントが見えてきました。

子どもも大人も一緒に学ぶ、体験型学習イベント

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暑い真夏のことです。2014年7月末、夏休みの日曜日。

東京の郊外・八王子市にある「高尾の森わくわくビレッジ」グラウンドの片隅で、小さな子どもから大人までのいくつかのグループが、暑さも忘れて何やら作業をしていました。

「もっと水車を勢いよく回す工夫はないかな」
「この装置、どうやって使うんだろう」
「やっぱり火力は効率がいいんだね」

そんな言葉が聞こえてきます。

彼らがチャレンジしていたのは、発電。これは「考える力」を育むための体験型学習イベント「ミライヒラクラボ2014 Summer Program :You,発電しちゃいなよ」のワンシーンでした。

今回のテーマは“エネルギー”。「キミは何ワット?」を合言葉に、この日1日かけて、子どもから大人まで約20人の参加者が電気をつくり、学びました。
 
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火力、風力、水力、太陽光エネルギー・・・。大人も子どもも夢中で発電にチャレンジ!

停電!「自ら発電してスマホを充電し、助けを呼べ!」

イベントの様子をもう少し詳しく覗いてみましょう。

発電のワークショップは、ゲーム感覚で進められていました。最初に火力、水力、風力、原子力など多様な発電について学んだあと、「大変、地震!」「停電だ!」というスタッフのみなさんの迫真の演技が。

そして、「スマホの充電が切れている! 実験室のものを工夫して発電、スマホを充電して助けを呼んで!」という課題が出され、チームに分かれて取り組みました。
 
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会場に用意された道具の数々。どれも実際に発電に使える装置です。

会場には、発電のための道具が数種類。参加者は暑さもまったく気にならない様子で、使い方を試行錯誤しながらより速く大量の電力を生み出すことに熱中しています。

瞬間的に電気を起こすことはできても、ある程度の充電がされないとスマホは使えないので、「電気が起きた!」という喜びの声が、「ああ、弱い。足りない」と落胆の声に変わることも。
 
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「充電されてきた!」

結局、この日一番早く、しかもあまり手間をかけずに助けを呼べたのは、火力発電の装置を選んだ子どもたちのチーム。

こうして自力で電気を生み出す体験をすることで、目に見えない電力というものの貴重さに気づいたり、発電の技術そのもののしくみを理屈とは違う形で実感していたようでした。

第一線で活躍するプロに学び、社会への気づきを。

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その後は教室に会場を移し、実感をもったまま電気についての知識を学びます。講師は、電力の専門家である「一般社団法人多摩循環型エネルギー協会」の理事・山川勇一郎さんと「多摩電力合同会社」の梶川實さん。

おふたりとも、地域や市民が電力づくりに参画する循環型の社会づくりに取り組んでおり、第一線の現場でご活躍中です。

梶原さんは、なんと日本初の人工衛星づくりに関わった経歴で、まさに新しい「未来をひらいた」第一人者。
 
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エネルギーと社会との新しい関係を語る山川勇一郎さん

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“日本初の人工衛星職人”梶川實さん

参加者のみなさんは、経験と知識の豊富なおふたりのアドバイスを受けながら、現代社会で消費される電力の量や、それが取引されている金額などをデータで確認したり、自分たちで計算方法から考えて算出してみたり。

さらに、電気と社会の今後の在り方についての可能性や、市民も参加した太陽光発電の推進事業をはじめとする新しい取り組みのことなど、様々な話を聞くことができました。
 
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発電技術の仕組みを知る

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データを見て計算方法を考える

体験型屋外学習からプロの講義まで、様々な形で“エネルギー”について触れ、学んだ一日。子どもたちの満足そうな笑顔を残して、「ミライヒラクラボ2014 SummerProgram:You,発電しちゃいなよ」は終了しました。

子どもは学校でできないことを、大人は会社でできないことを。

今回のイベントを主催したのは、「ミライヒラクラボ実行員会」。2年前、「こんな教育がほしいのに、世の中にないよね。だったら自分たちでやっちゃうか」という声のもと立ち上がりました。

メンバーは、教育、IT、金融、エネルギー、社会事業など多彩な分野に関わる社会人と大学生。それぞれ仕事や生活の合間を縫って活動に関わり、イベントの開催は今回で2回目となります。

ミライヒラクラボのプログラムは、メンバーの知恵を集結させて考えられたもの。理科、社会、算数、国語といった教科が融合されている上に、その枠には入らない実践的な学びがあることが、参加者の様子からも見て取れました。
 
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スタート前のミーティング。メンバーのバックグラウンドは様々。

大野さん 多様なバックグラウンドをもった、普段の仕事場を出て構成されたチームだからこそ生み出せるものがあります。そして、その体験は、ひとりひとりに次の生き方や働き方にプラスになるものを与えます。

ミライヒラクラボは、子どもにとっても大人にとっても「未来をひらく実験場」なのです。

こう話すのは、コアメンバーのひとりで、教育コンテンツや学習ソフトのプロデュースでミリオンヒットも生みだしてきた大野智美さん。

ミライヒラクラボで扱う内容は、大切だけれど学校では扱いにくいテーマであり、大人の社会でも、未解決で、今ここにある問題。こうしたテーマを敢えて選ぶことで、子どもたちだけでなく社会人にとっても、「普段できないことを実践する場」になると大野さんは言います。

大野さん 「エネルギー」については、現在の原発問題だけでなく、未来においてもさらに重要な問題になっていきます。でも、目に見えないですし、大人でもなかなか身近に感じることができません。

だからこそ最先端の技術や本質を学びながら、大人と子どもが一緒に体験して考える場にしたいと思いました。

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“蹴って発電できるサッカーボール”の現物!世界最先端の技術にも直接触れます。

「わからない」は禁止

内容やテーマだけではなく、そのプログラムの運営方法にも、メンバーそれぞれの体験やスキルから生み出された、たくさんのこだわりがあります。「体感型ワークショップ」や「社会の第一線のテーマと講師」などと共に、イベントでその効果が際立っていたのは、「考えさせること」。

今回のイベントで、参加者は一日中、「なぜだと思う?」「どうしてその計算をしたの?」「どうしたらいいかな?」と、問いかけられ続けました。また、「わからない」を言わない約束もしていました。
 
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問いかけて考えを促す、ミライヒラクラボ実行委員会代表の為田裕之さん。

全体の進行を担当した「ミライヒラクラボ実行委員会」の代表を務める為田裕行さんは、テンポのよい切り返しで参加者と対話するように授業を進行し、「なぜ?」「どうして?」「どうやったらわかる?」と、たずね、思考を促していました。

為田さん いまは”答え”がわからない社会になっていて、「こうすればいい」という正解は誰も教えてくれないし、実際、正解はない。だから、大人も子どもも関係なく、「こうすればいいんじゃないか?」と、みんなが社会に関わって考えていけたらいいと思うんです。

イベントでは、為田さんの問いかけに答えようと、子どもも大人も最初から最後まで集中し、協力しあって課題に取り組んでいたのが印象的でした。

大人も子どもも「未来をひらく」学びをともに。

イベントに参加していた公立小学校の教師の方々も、「生徒の側になって学ぶことは多かった」「切り口をとりいれたい」「こんなによく考えて答えて動く。素晴らしい子どもたちと授業だと思った」など、その手法に対して多くの気付きを得たようでした。

また、小学生たちも「楽しかった」「面白かった」という声に加えて、「よく考えた」「知識が増えた」「生きていくのに役立ちそう」という言葉が、元気よく返ってきました。実は私の小学5年生の息子も参加したのですが、彼からもまさに「知らないことを知ったし、頭を使ったから楽しかった」という感想が。
 
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2年ぶりの開催に「次はいつ?」「絶対にやめないで」の声も。

暑い中、年齢やバックグラウンドの異なる多くの人たちと知見を広げ、次々と課題を解決した一日。さぞかし疲れただろうと思いきや、帰宅後も明るい笑顔を見せ続けたのが印象的です。

子どもと大人で、ともに「未来をひらく」学びの場。あなたも一度、体験してみませんか?