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ダムの壁面に描いたヒビが、本当にダムを終わらせる一撃に!?巨大ダムを撤去に導いた人びとのアクションを描いたドキュメンタリー映画『ダムネーション』

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これは、もはやダムの映画ではない。
自然を愛する人びとの挑戦の記録だ。

経済発展のために、20世紀に入ってからアメリカ全土につくられた何万基ものダム。電力をまかなうために、農業用の水を使うために、洪水を防ぐために、そして雇用のためにと、文明の発展のために大量につくられたダムは、自然に大きな傷を残してきました。河川の流れを分断し、栄養分と堆積物の移動を阻むことで、魚などの野生生物から住みかを奪い、周囲の森林をも破壊することになっていたのです。

かつては社会の発展のためにつくられたダムですが、中には電力をめぐる状況などが変わったために、もはや役目を果たしていないものもあります。役目を終えているのにもかかわらず、莫大な維持費がかかる。しかも、自然を壊し続ける。

映画『ダムネーション』は、そんなダムを撤去させるために立ち上がった人たちのドキュメンタリーです。
 
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巨大なダムの周辺には、世界の終わりを思わせるような荒涼とした風景が

巨大なダムを取り壊す。そんなことは無理だと、ほとんどの人が思っていました。

しかし、釣りやカヌーといった川のレジャーを楽しむ人たち、自然保護活動をする人たち、そして魚を取ることで生活と文化を保ってきた先住民の人たちなどの粘り強い運動は、徐々にダム撤去への流れを確かなものにしていきます。

そして決定的だったのは、ダムを舞台とした、アーティストたちの命がけのゲリラアート。ダムの壁面に巨大なヒビを描くという驚きの表現が、ダムの問題に関心がなかったような人たちをも巻き込み、世論を大きく動かしたのです。

草の根の行動の積み重ねと、多くの人の注目を集めるような驚きの表現がひとつになることで実現した変化。その劇的な流れは、決壊するダムの映像とともに、強烈なカタルシスとして迫ってきます。
 
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アートというよりはアドベンチャーのような、手に汗握る表現活動

映画の中のナレーションで、監督のベン・ナイトは作家のエドワード・アビーの印象的な言葉を引用して、こう言います。

行動なき感傷は、魂を殺す。

普段の生活の中で生まれた疑問や、社会的な問題への怒り。それを自分の胸にしまい込んで終わりにするのではなく、たくさんの人と共有し、行動する。それこそが、人間ひとりひとりに眠っている無限の可能性を開き、社会を変える力になっていくのかも知れません。

自然を制御することが文明だとされた時代。ダムはそのひとつの象徴と言えます。そんなダムが、人びとの意志と行動で撤去されるまでを圧倒的な映像で伝える映画『ダムネーション』は、自然とともに生きる時代の始まりを告げるファンファーレとして、観る人の心に響くのではないでしょうか。
 

ダムネーション
2014年11月22日(土)渋谷アップリンクほかでロードショー

提供:パタゴニア  
制作:シュテッカー・エコロジカル&フェルト・ソウルメディア

製作責任者:イヴォン・シュイナード  
プロデューサー:マット・シュテッカー&トラヴィス・ラメル

監督:ベン・ナイト&トラヴィス・ラメル

配給:ユナイテッドピープル 
原題:DAMNATION
87分/アメリカ/英語/ 2014年