植物園や自然公園など、自然や緑を楽しむ施設が身近にあるのは幸せなことです。一方で、施設を運営していくには電力が不可欠であり、普通は電線で外部から供給を受けています。
でも、「できるなら、オフグリッドで自然を楽しむ植物園をつくってみたい!」。そんな思いで完成した植物園がスコットランドにありました。そちらでは、近くの川でマイクロ水力発電を活用し、自然エネルギーで電力をまかなっているというのです。さっそくみてみましょう。
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今回ご紹介する「ダウィック植物園(Dawyck botanic garden)」は、「エディンバラ王立植物園(Royal Botanic Garden Edinburh: RBGE)」のサテライトサイトのひとつで、場所はスコットランドの首都エディンバラから南へ40キロほど。
25ヘクタール(東京ドーム5個分)の敷地があり、園内のダイナモ池から水を引き、セダムで屋根を葺いたタービン小屋で発電します。発電量は12キロワットで一般家庭8軒分ほど電力に相当し、それで園内のビジターセンターとその他のインフラすべての電力に対応しているとのこと。
また、ビジターセンターの暖房にはバイオマスボイラーを導入することで、オフグリッドだけでなくカーボンニュートラルなエネルギー供給を実現しました。
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もちろんそこに至るまでにさまざまな困難もありました。特に約300年前に植えられたギンモミやカラマツ、50メートルを超える高さのベイマツなど、多くの貴重な樹木を保護しているダウィック植物園では、樹木の根を傷めないように手堀りで配管工事を行うことからスタートしたのです。
スムーズにことが運べることになったきっかけは、工事の途中でかつて水力発電に用いられていた陶器製の給水管が発見されたこと。先達たちがつくったそのインフラは、大きな樹木の根を避けるように配置されていて、有効に活用できたのでした。
実はスコットランドには水力発電の伝統があり、古くは19世紀のビクトリア朝時代までさかのぼります。実際にダウィック植物園でも、1900年代のはじめから1953年まで小規模な水力発電を用いていました。
しかし、その後、一般的な送電網から電力を供給を受けるようになり、水力発電用の施設は使われなくなっていたのです。
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RBGEのSimon Milne(サイモンさん)はこう言います。
ビクトリア朝時代にこの場所で水力発電が行われていた事実を知ってから、伝統に学ばない理由はないと思っていました。伝統に新しい技術を加えることで、持続可能な未来をつくることができるのだと思います。
自然が豊かで水に恵まれたスコットランドの風土は、日本によく似ているとも言われます。また、明治時代に新しい技術を伝えたお雇い外国人の多くは、スコットランド人だったという話も。
「蛍の光」や「故郷の空」などのスコットランド民謡が現在まで愛されつづけているのは、心情の部分でもよく似たところがあるからかもしれません。伝統に学び、未来をつくる。それは今の日本でも大きなヒントになりそうですね。
[via THE SCOTSMAN]
(text:山根大地)