みなさんは、「greenz.jp」には英語版があるということをご存知ですか?「日本のソーシャルデザインを世界に広めたい!」という思いで昨年6月にスタートした「greenz global」は、週に1本のペースで英語記事を世界に発信しています。
まだまだスタートしたばかりですが、世界的に影響力を持つウェブマガジン「GOOD」や「inhabitat」でも推薦紹介されるなど、グリーンズの今後の可能性を広げていくうえで欠かせないプロジェクトとなっています。
「GOOD」に取り上げられ大反響を呼んだ「ぱぱとままになるまえに」の英語記事は、こちら
そんなgreenz globalが誌面での活動を飛び出して2014年3月9日に開催したのは、参加者もゲストも英語でコミュニケーションを行う「green drinks Toranomon in English」。
ゲストに迎えたのは、バイリンガルで日本の情報を発信してきた大先輩でもある「PingMag」編集長のトム・ヴィンセントさん。ホストは編集長のスズキコウタと、コミュニティ・マネージャーの安藤進之介(通称アンディ)がつとめました。
スズキコウタ編集長
イベントの幕開けと同時に始まったのは、コウタ編集長によるキーノート。greenz globalがローンチされるまでのエピソードや今後の展望について思いを語りました。
キーノートで使ったスライド
コウタ編集長のスピーチのあとは、参加者同士でしばらくのアイスブレイク。どの参加者も慣れないながらも英語で自己紹介をしたり、今夜トムさんに聞きたいことについて会話を楽しんでいる様子でした。
そして、ゲストのトム・ヴィンセントさんが登場。2005年にローンチし、日本語と英語の2言語での記事発信を行っているオンライン・デザイン・マガジン「PingMag」のことを伺いつつ、「greenz global」へのアドバイスをいただきました。
トム・ヴィンセントさん
メディアを運営するということは、とっても大変!
まず最初に「持続可能なメディアになるにはどうすればよいのでしょう?」というアンディくんからの質問に対し、「それはとても簡単な質問だ。なぜなら私たちは失敗したからね」とトムさん。
実は、PingMagは2008年に起こったリーマンショックの影響を受け活動停止し、去年ようやく活動を再開したという経緯があったのです。
トムさん メディアを運営するということは馬鹿馬鹿しいほど大変で、持続可能な組織運営はとても難しいことなんだ。
と話すトムさん。ではなぜ、トムさんは再びPingMagを再開したのでしょうか。その答えは、デザインマガジンへの深い思いにありました。
PingMagをオープンする前、トムさんはウェブデザインの会社で働いていましたが、当時のデザインマガジンは主にプログラマーやコンピューターオタクの為のもので、多くの人が気軽にデザインについて知ることができるものが無かったそう。そこで、トムさんは”自分たちが欲しいウェブマガジン”をつくることを決心し、PingMagをオープンしたのです。
しかし一方で、トムさんはただ”自分たちの欲しいメディアをつくりたい”という思いだけでPingMagを立ち上げたわけではないようです。その背景には、日本社会やメディアに対しての問題意識と危機感がありました。
トムさん もし多くの日本人が英語を使いこなすことができたなら、日本は多くの分野で成功できるのに。日本は、もっともっと情報の収集と発信をするべきですよ。
特にメディアは、多くがパブリックイメージ通りの日本を伝えるものばかりで、埋もれてしまいがちなデザインや風景を伝えるメディアがまだまだ少ないと思いませんか?
トムさんの指摘はメディアだけでなく、グローバル化が進む日本社会全体にもあてはまることかもしれません。
日本の田舎が世界を変える?!
「PingMag」で、日本のさまざまなデザインを発信しているトムさん。その一方で、最近興味を持っているのは、日本の田舎や地方のもつ力と素晴らしいアイデアだそうです。
トムさん これからの社会を変えるのは、田舎の力なんですよ。ぼくは、日本の田舎が世界を変えるのではないかと思っています。
ぼくは豊田市のはずれに一件の家を借りて、コミュニティづくりをはじめようとしているんです。田舎移住に憧れているけれど高いハードルを感じている人が多いと思うので、彼らに対して田舎移住へのステップを準備してあげたいんです。そのためにコミュニティをつくって、田舎へ遊びにいく理由を提示していきたい。
このトムさんのことばに対して、コウタ編集長は「日本の田舎でどのような取り組みが進んでいるのかを紹介することは、ぼくらの役目だ」と話します。
コウタ編集長 実は海外メディアでソーシャルデザインを取り上げている記事のほとんどが、大都市やそのまわりで起きていることばかりなんです。でも、ぼくらは意識せずに自然と地方で起きている取り組みも記事化して、世界に届けることができていたんです。
特に編集会議で「田舎を取りあげよう!」と話しているわけではありませんが、ひきつづき地方の事例も記事にしていきたいです。
トムさん そこは、まさにgreenz globalが貢献できることかもしれないね! たとえば、アメリカの中部でも面白いことは起きているはずだけど、スポットライトがあたらないのが残念。greenz globalが海外のメディアに「もっと地方を発信しろよ!」って言ってしまえばいいんじゃないかな。
「greenz.jp」YOSH編集長が住む鹿児島で開催されている「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」の記事も、先日発信しました!
最後にトムさんは、日本のソーシャルデザインのグローバル化の先にあるビジョンについて語ってくれました。
トムさん みんな「社会を変えたい!」と思っているけれど、もっと情報が欲しいですよね?
だからこそ日本のソーシャルデザイナーたちが、東南アジアの人々とアイデアや情報をシェアして、「みんなで一緒にやろうよ」と誘い出すことが大事。これが実現できれば、日本は東南アジアのソーシャルデザインのハブになれる。
東南アジア固有の文化とソーシャルデザインを団結して発信していくことで、新しい選択肢を世界に提示していけるはずです。
東南アジア諸国とのパートナーシップを築きパイプ役となる働きは、greenz globalが進めていけることかもしれませんね!
トークが終わったあとも、多くの参加者が会場のリトルトーキョーに残り、英語や日本語での会話が飛び交っていました。
次回の「green drinks Toranomon in English」は、6月27日(金)に開催します!
ゲストには、ネパール発のナチュラル化粧品ブランド「Lalitpur」の向田麻衣さんをお迎えして、「これからのグローバルとは?」というテーマでトーク&ワークショップを行います。「英語に自信が無いな…」という方も、ぜひ気軽に遊びにきてくださいね。
そしてみなさんの街でも、「green drinks English」を開催してみてください!
(Text: 阿部星渚 / greenz global)
(Photo: 宮本裕人)