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線路のスキマにソーラーパネルを設置する?福岡市と市民が一緒に考える「エネルギー創りからうまれるコミュニティ」 [イベントレポート]

greenz グリーンズ

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

福岡市が目指す「エネルギーを[創り、賢く使う]社会」。その実現に向けて、暮らしの中でできることを市民と一緒に考える「エネルギー創りからうまれるコミュニティ」ワークショップが、11月8日(金)と12月7日(土)の2回にわたって開催されました。

ワークショップの企画をしている富士通デザインは、「ビジネスのためのソーシャルデザイン」をテーマにグリーンズともあれこれお仕事をご一緒させていただいています。その御縁もありゲストとして、greenz.jpから1回目は副編集長の小野さんが、2回目は編集長のYOSHさんが参加しました。今回はそのレポートをお届けします。

エネルギー問題を“自分ごと”にする

1回目のワークショップのテーマは「自分ごとから始めるエネルギー」。まず最初に小野さんが、すでに“自分ごと”としてエネルギー問題に取り組んでいる、ミニ太陽光発電システムの「藤野電力」や、電気代200円生活のはらみづほさんの事例などを、greenz.jpの記事の中から紹介しました。

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また、グリーンズとして「わたしたち電力」というムーブメントづくりを展開する上で気付いた、エネルギーを自分ごとにするキーワードを5つを上げていました。

1.「不便」を「アイデア」で超える
2.「自給」するから見える景色
3. 発電「機会」を逃さない
4.「地産地消」も忘れずに
5.「コミュニティ」で楽しむ

その後、エネルギーに関して思っていること、ゲストトークを聞いて感じたことなどを、参加者同士でペアを組んでインタビューし、さらに4人ずつテーブルに分かれてワールドカフェ形式で対話の時間に入ります。

身の回りにあるエネルギーで何をしたいか

最初のセッションのテーマは、「身の回りのエネルギーを思いつく限りあげて分類する」。

すでに再生可能エネルギーとして注目されている、太陽光や風力などの自然エネルギーはもちろん、笑う、怒る、歩く、拍手、満員電車など、人間が放つエネルギーも数多く出ていました。思いついたエネルギーをそれぞれポストイットに書き、ワイワイと楽しそうに話しながらテーブルに貼っていきました。

次のセッションのテーマは、「自給したエネルギーを使って何をしたいか」です。満員電車になると電車が動く、車の屋根に太陽光パネルを付けて電動自動車を走らせるなど、発電と消費が直結しているアイデアが多かったようです。

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コミュニティを育むアイデアを考えるポイント

それから約1カ月後、12月7日(土)に開催された2回目のワークショップのテーマは、「エネルギー問題に取り組むにあたってコミュニティをうまく活用すること」。ゲストのYOSH編集長は、コミュニティを育むアイデアの事例を、greenz.jpの記事のから紹介していました。

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コミュニティを育むアイデアはどのように考えればいいのか、という参加者からの質問には

本当に必要とされていること?
本当にすぐできること?
本当にやりたいこと?

の3つのポイントで絞り込むことが大事だと答えていました。

アイデアを出す人は自分でなくてもいいので、違和感や困ったことがあれば、まずは問いを見つけるところから始めるといいのだそう。

カードの組み合わせでアイデアを考えてみる

前回と同じく参加者同士でペアになって感想を共有した後、ワールドカフェに移り、2回目は「アイデアリンク」というワークショップをすることに。

これは「ISSUE(未来への論点・課題)」「PLACE(生活の場)」「RESOURSE(技術・人材・資源)」3種類のカードの中から1枚ずつカードを選び、カードの組み合わせによって起こる関係性を考えながら、「エネルギーを創り、賢く使うアイデアを考えよう」をテーマに、新しいアイデアを出していく、というもの。

1セット45分×2セットでアイデアを考え、グループ間でアイデアの数と質に応じた得点を競い合いました。

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先に解決したいISSUEをすべて選び出し、それを解決するRESOURSEやPLACEを考えるグループもあれば、気になったカードを次々に出していき、それをヒントに頭をひねるグループも。ゲームのようなスタイルのワークショップに、アイデアを出すことに苦戦しながらも、楽しんで考えることができたようです。

最後に高得点を獲得したグループのアイデアは、線路のすき間にソーラーパネルを設置し、災害時にも電源が確保できるメガソーラーや、投資ファンドに投資すると、太陽光などを使って発電した自然エネルギーで還元される銀行などでした。

ワークショップの成果は一日にしてならず

ワークショップの中で参加者から、「このようなワークショップで皆で意見を出し合い、その場は盛り上がっても、それを実際に実現したり、長く続けるのは難しい」という意見が出ました。それに対してYOSH編集長は

ここで出たものをそのまま利用するというよりも、自分たちの持ち場に戻って、視野の広がった考え方を生かすことが大事だと思う。1日のワークショップでできることには限界があるので、部活動的にゆるくはじめてみては。

と答えていました。

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今回のワークショップの参加者は、エネルギーというすべての人に関わるテーマのためか、20〜30代の学生や会社員から60代以上のシニアまでが揃う、とても多彩な顔ぶれでした。そのお陰で、普段はあまり交流をしない世代やグループの人たちが、同じテーマで意見を交わし合うという、面白い場になっていました。

このように、行政が市民からのアイデアを募る目的でワークショップを開催するときに、ここで出た意見がそのまま市政に反映されるかどうかは未知数かもしれません。それよりも一方的に上からの変化を期待するのではなく、一人一人が自分のできる範囲で“自分ごと”としてエネルギー問題に取り組むことが大事なのではないかと、改めて実感しました。

そのような個が集まったコミュニティができれば、今あるエネルギー問題を根本から変えていける大きな流れとなるのかもしれません。福岡市の次の動きに期待です。