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“ありのままの福島”を感じてほしい。福島大学生が企画する、人に会いに行くスタディツアー「スタ☆ふくプロジェクト」

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

みなさんは”スタディツアー”に参加したことはありますか?

一般的な観光旅行とは違う、かといって作業に従事するボランティアとも違う。訪問先への見学や視察を通して自分自身の気づきや学びを得ることができるスタディツアー。

今までは国際協力や国際交流を行う市民団体が実施することが多かったのですが、近年では環境保全や社会的起業を学ぶものなど、様々なプログラムが増えてきました。

福島県にも、地元の大学生が企画して行っているスタディツアーがあります。その名も、福島を感じて考える「スタ☆ふくプロジェクト」です。

ツアーの魅力は、”人”

「スタ☆ふくプロジェクト」は現役の福島大学生が企画しているスタディツアー。福島の今を知ってもらうために、1泊2日や日帰りで福島の漁業や農業・観光などの産業に触れるプログラムを提供しています。

この2年で8回ほど催行され、昨年11月17日(日)に開催された「食ツアー@福島」は、福島県産食品の安全・安心や風評被害への取り組みを学び、福島を代表する果物農家さんのもとで美味しいりんごの収穫・ジャムの加工体験を行うものでした。

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代表で福島大学4年生の吉田哲朗さんは、スタ☆ふくツアーの魅力についてこう話します。

スタ☆ふくツアーの魅力は人です。畑の現場を見に行ったとしても、”その畑を紹介する人”が大事だと思っていますので、ツアー中は「1日に何人の人に会うんだろう」って感じです(笑)

僕たちは地元の大学生なので、地元の方も割と嫌がらずに受け入れていただけます。きっと同じ福島に住む者という意識があるんでしょう。こうして地元の方々とつながって、参加者の皆さんにも交流の機会を提供できていることが一番の強みだと思っています。

ツアーの参加者からは「まだまだ福島の問題も、そして良いところも全く知らなかったことに気づきました」という声や「地元の若者が企画したツアーならではの視点で、地元の人々の声を聞くことができた」という感想が寄せられています。

中には、参加者同士で飲み会を行っている方や地元の方とお茶を飲むためにわざわざ群馬から通うようになった方もいるそう。さらには運営側にも良い効果がありました。

企画しているメンバーからも「いわきってこういう町だったんですね」「漁師さんと初めて話しました」という感想が出てくるんです。個人的にも「福島大学に通う学生こそが、一番福島のことを学ばなくてはいけない」と思っているので、それはいいことですね。

主体的に自分から一歩踏み出さないとなかなか機会はやってこない。同じ時代に同じ福島に住んでいるのに、地域に関わらないのはもったいないと思います。

地元の人が元気になる

さらにもうひとつ、受け入れ側である地元の人たちが元気になるという変化もありました。今では「地元の人に喜んでもらいたい」ということもツアーの狙いの一つになっています。

地元福島の大学生として、”福島の中と外をつなぐ”役割を担いはじめているスタ☆ふくプロジェクトは、受け入れ側の地域の方々からの信頼も着実に築いています。

二本松市は有機農法をする方が多い先進的な場所で、さらにまちづくりにも意欲のある人が多いんです。その中でも東和地区の農家さんは、新たな観光の形としてのアルコールツーリズムを始めるために、自分で勉強してワイン酒蔵を作ってしまいました。「お客さんはスタふくでたくさん呼んで来てね」という雰囲気に自然となっていて、お互いに価値を提供しあう関係性が作られてきました。

また、いわき市の漁師さんを訪れるツアーをしたとき、去年は「お疲れさま、良いイベントだったね」というだけで終わってしまったんですが、2年目の今年は「来年もまたやろうよ」という前向きな反応に変わっていました。このときはとても嬉しかったですね。

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いわきのツアーでは、漁師さんのもとで漁業体験を行いました

ありのままの福島を伝えたい

そもそも、なぜ大学生がこのような企画を実施するに至ったのでしょうか。

震災当時、福島大学1年生だった吉田さんは、震災後の数ヶ月を実家の岩手県花巻市で過ごします。大学が始まるかどうかも分からず、そして放射能への不安から再開しても再び行くかどうか分からないような状況だったそう。

そんな中「自分も何かの役に立ちたい」と思い、ボランティアとして岩手県の大槌町を訪れたのは2011年の4月15日でした。

よく訪れていた大槌町が、津波で変わり果てた姿になっていてとても驚きました。さらに被災した家屋の泥出し作業をすることで、1軒の家を片付けるのに大変な労力がかかることを実感し、震災復興は途方もないことだと感じました。

もし福島に戻るとなれば、原発事故のあった福島はもっと複雑な状況になっているだろうから、自分の大学生活はボランティアや何か人のために使いたい。そう思うようになったんです。

s_sutafuku07スタ☆ふくプロジェクト代表の吉田さん

その後、福島に戻った吉田さんは、仮設住宅へのボランティアを行うこともあれば、東京の大学院に通う学生が福島大学で企画したワークショップに参加するなどして大学生活を送ります。

そして2011年の9月、大学の先輩から誘われたことをきっかけに日本学生プロジェクト(JASP)という学生団体に参加。「とにかく福島を盛り上げよう」という想いで、2012年の3月11日に合わせた日本一周タスキリレーのイベントを行いました。福島を出発したタスキを全国各地の学生がリレーでつないで日本一周し、また福島に戻ってくるというものです。

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最終日の3月11日には、福島市に1万人もの人が集まってくれて、人がつながることで生み出すエネルギーをとても感じました。これだけの人数が集まったイベントは過去にないそうです。

でもそれと同時に、イベントは単発の打ち上げ花火であることも感じ、企画を継続させるにはどうしたらいいか、もっと意味があることはないだろうかと考え始めました。

そしてイベント2週間後の3月25日に、JASP内のプロジェクトとして「スタ☆ふくプロジェクト」を立ち上げます(JASPは2013年春に解散し、スタ☆ふくプロジェクトは独立)。

せっかく佐賀や長崎からイベントに参加してもらったのに、仮設住宅の様子や産業の状況など、伝えられなかったことがたくさんある。リアルな暮らしに触れて、ありのままの福島の実情を知ってもらうことには価値があるんじゃないかと思い、スタディツアーのプロジェクトを立ち上げることになったのです。

現在は福島大学の学生15名が運営メンバーとして参加。旅行業法の関係上、地元の旅行会社と提携しながら運営しています。

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ツアーの先の、具体的なアクションを促したい

当初は「とにかく福島を盛り上げたい」という気持ちから単発のイベントをおこない、次は「もっと福島を知ってもらいたい」ということでスタディツアーに変化していった吉田さんのビジョンですが、最近はさらに長期的なものに変化し”まちづくり”に関わるべく動き出しています。

ここまでスタディツアーを行ってきてわかったことですが、一泊二日のツアーではどうしても旅行の域を出るのは難しく、地域に対するアクションを促すには至りません。なので、これからはスタディツアーと並行して「まちづくりアイディアコンテスト」も行いたいと思っています。

福島でアクションを起こす可能性がある方に来てもらって、そういう方々が地元に入っていけたら面白い町になるのかなって。

JASPでの日本一周タスキリレーやスタ☆ふくプロジェクト、そしてまちづくりアイディアコンテストなど、新たなプロジェクトの立ち上げに奔走されている吉田さんですが、「もともとはゼロから何かを立ち上げるタイプではなかった」といいます。

震災前までは、既存のものに乗っかっていればいいと思っていましたし、リーダーとして引っ張っていくタイプでもなかったように思います。しかし震災が起きてから、良くも悪くも世界から福島が注目されているという機会があるのに、どこか停滞感が漂っていました。その状況にしびれを切らして「周りがやらないなら自分がやろう」と思ったところから、今に至ります。

今年の春からは社会人になり福島を離れますが、これからも継続して地域での課題解決に取り組んでいきたいです。

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最後に、福島の魅力をお聞きしました。

福島の魅力もやっぱり人ですね。震災っていう共通の体験を通して、福島に住む誰もがどこか盛り返したいと思っているように感じます。人にもよりますが、エネルギーに満ちていますよ。

福島の現実はネガティブな要素を含むものが多いのも事実ですが、「福島は大変だね」で終わってしまうのではなく、ぜひ一度スタふくのツアーに参加してみてほしいと思います。

近日中に開催予定のツアーはありませんが、1月18日には「会津酒造活性化プランコンテスト」が予定されています。テーマは、ワカモノにとって魅力のある会津の日本酒をつくるプランを考えること。見据えているのは、福島よりもっと先にある”日本の課題”です。

百聞は一見にしかずと言いますが、福島のいまを知って感じて考えるためには現場の声が欠かせません。地元に住む大学生だからできる企画「スタ☆ふくプロジェクト」に、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

(Text:安藤貴明)