映画『パワー・トゥ・ザ・ピープル~グローバルからローカルへ』
現在、自主上映会が全国で開かれているユナイテッド・ピープル配給のドキュメンタリー映画『パワー・トゥ・ザ・ピープル~グローバルからローカルへ』。パワー=電力を人々の手にというエネルギーの民主化を推し進める人々を追った映画です。(グリーンズでも上映会を行う予定!)
9月に横浜で行われた上映会+監督を交えてのトークライブイベントに行ってきましたので、そのレポートをお届けします。
まずこの映画はどんな映画なのか、それは公式ホームページに掲載されている漫画を読んでいただくのが一番早いかもしれません。どこで作られどこを通ってやってくるのかわからない電気を、自分たちの手で作るようにすることでより良い生活を送ることができる、そしてそれはさらに電気にとどまらずさまざまなことを分散化する自立型の社会へとつながる、そんな話です。
これは、グローバルからローカルへ、自然エネルギー、コミュニティ、といったこれからよりよい社会を作っていく上で重要となって行くであろうキーワードを具体例とともにわかりやすく説明した映画ともいうことができるでしょう。
映画のあとは、ユナイテッド・ピープル代表の関根健次さんとサビーヌ監督、イベントを主催した「Team LINKS」の柳澤史樹さんとのトークセッションが行われました。Tema Linksはクリエイターが集まって作られたプロジェクトユニット、新しい価値やエネルギーを創造する場作りをしています。
柳澤さん、サビーヌ監督、関根さん
関根さんはこの映画を配給することにした背景について次のように話しました。
エネルギーを扱った作品は、震災の後に火を絶やさないようにやっていきたいと思ってます。未来を考える上で大切なのは、「ビジョン」です。こういう未来を実現したいと思える具体的な事例を見せてくれるような映画が必要だと思いました。
震災後まずグローバルなエネルギー革命の現実を見せてくれる『第4の革命』を配給しましたが、次に、より実践的で、すぐに始められるような事例を見せてくれるこの『パワー・トゥ・ザ・ピープル』でした。
エネルギーという難しそうでとっつきにくいものが、実はもっと身近で「楽しい」ものだということをこの映画は見せてくれます。一人ひとりが何かの活動を始める、そのヒントや刺激がたっぷり、この映画にはあるんです。
東日本大震災と原発事故を経験して私達はエネルギーについて考えるようになりました。しかし、時間が経つにつれ、少しずつもとの「人任せ」の気持ちに戻ってきてはいないか、この映画を観ることで、そのように自分を省みることができる、たしかにそのように思いました。
では、監督は、そもそもどうしてこのような映画を撮ろうと思ったのでしょうか。
放送局から「スマートグリッドについての映画を作ってほしい」と依頼されました。当時私は決してエネルギー問題に関心が高いわけではなかったんですが、調べるうちにその技術がいかに市民の考え方を変えるかということを知って、これは素晴らしいと思うようになりました。
気をつけたのは、統計や事実関係を出すのではなく、小さなグループで活動している人たちがどう感じているのかを感覚として伝えたいということです。そうすることでそれが伝染していくんじゃなかと思ったんです。
発電することが楽しくて仕方がない、通称「パネルおばさん」
これはある意味、もともとはあまり関心のなかったサビーヌさんが関心を持つようになったその経験を、見た人が映画を通して追体験できるということでもあります。サビーヌ監督は自分ではソーラーパネルは持っていないといいますが、仲間と活動は始めているといいます。映画を観てすぐソーラーパネルを買うということは難しいかもしれないけれど、その楽しさや気持ちさを感じることができれば、小さなことから始めてみようと思える、それが「伝染する」ということなのではないでしょうか。
このイベントは会場で小さなソーラー発電システムを販売したり、そのシステムでためた電気でライブを行ったりすることで、来た人がその小さな一歩を歩み出せる手助けもしています。映画を見た人が他の人にも見せたいと思い、それを見た人が何かしようと思う、そんな伝染の一つの例がこのイベントだったのです。
このトークの終盤で関根さんは次のようなことをいいます。
映画の中で未来学者のジェレミー・リフキンさんという人が「みんなが起業家になれる時代が来た」ということを言ってます。これはグローバルからローカルへという流れとインターネットとが掛け合わされた結果急速に進んだもので、具体的に言えばクラウドファンディングやファブラボというようなものによって実現しているわけです。
個人がアイデアを発表すると、それをいいなと思った人の間でシェアされて広がっていく、そしてそれがある種のコミュニティになって世界につながる。これって多分、革命なんですよね。
柳澤さんも「この映画会自体も、そういう仕組みのひとつで、こういう事例はどんどん作っていける」と発言。サビーヌ監督が「伝染」と呼んだ感覚の広がりの仕組みがここで実現され、それは「革命」にまでつながるという大きな話になったのです。
トークの中で関根さんがグリーンズの「わたしたち電力」にも言及されていましたが、「エネルギー自給に興味があるけれど難しそう」とか、「そうなればいいけど今の制度の中では何をやっても無駄」と思っている人はぜひこの映画を観てもらって、「いいビジョン」を頭に植え付けてください。
そして、来日していたサビーヌ・ルッベ・バッカー監督へのインタビューも行いましたので、その様子も、追ってお届けする予定です!