みなさんは、地元にお気に入りのカフェってありますか?
イギリス・ロンドン郊外のクラプトンという街に誕生したカフェ「NANA」がいま注目を集めています。ここで働くスタッフは、なんと全員が60歳以上のおばあちゃん!
いったいどんなカフェなのか、見ていきましょう。
「NANA」とは、イギリス英語で「おばあちゃん」を親しみやすくした呼び名です
「NANA」のスタッフは15人ほど。食事やケーキを作る担当はもちろん、テーブルへのサーブ担当など含めたスタッフ全員が60歳以上の女性たち。メニューは昔からイギリスの家庭で親しまれた温かいスープやケーキなどの懐かしいラインナップ。しかもすべておばあちゃんの手作りです。
現在は、一件のパブにて、10時から15時まで場所を借りるというかたちで営業しているそうです。
おばあちゃんが家で作っているレシピをそのまま使っているそう
お給料より大事なやりがいと喜び
だれでもウェルカムを大切にしているこちらのカフェ、あったかい雰囲気や心のこもったサービスがとても好評です。例えばお子さん連れのお客さんはおばあちゃんと子育ての話で盛り上がったり…。ケーキをいただくだけでなく、おばあちゃんやお客さんみんなの会話が自然と弾みます。
お給料はもちろんもらえますが、おばあちゃんたちのやりがいはお金ではないそうです。彼女たちは、地元に貢献している、いろんな人と楽しくおしゃべりする喜びに重きをおいています。
「NANAはわたしにとってかけがえのない場所です」と、スタッフとして働くおばあちゃんは笑顔で語っています。
カフェが地元のコミュニティをつくる
発起人のKatie Harrisさん(ケイティ・ハリス、以下ケイティさん)がクラプトンの地に引っ越した時、彼女はこの地について感じることがありました。
この辺りは中産階級が多いので、新しくておしゃれなカフェが次々とできていましたが、どのカフェも値が張るのが残念だなと思っていました。
発起人のケイティさん
その後ケイティさんは、友人との何気ない会話からカフェNANAの構想を得ます。
スコットランドや地方からロンドンに仕事や学業で来た友人が、みんな口をそろえて「実家で食べたような味が恋しい」と言っていることに気がつきました。
そこで、「お手頃な値段で実家の味を楽しみたい」という若者のニーズと、「まだ元気なので社会に役に立つことをしたい」と家で退屈しているおばあちゃんのニーズをマッチさせたら面白いんじゃないかと考えたのです。
クラプトンの新参者であるケイティさん、はじめはクラプトンの雰囲気を変えることに抵抗のある地元の人々もいましたが、幸運にも一件のパブに場所を借りることができ、なんとかカフェをオープンすることができました。その後、カフェの評判が広がり、いまでは若者も高齢者も交わる地元のコミュニティの場となっています。
オープン時の様子
地元のパブを借りてNANAが目指すのは、「高齢者」にまつわる一昔前のネガティブなステレオタイプを覆すこと。そして家の陰に隠れていたおばあちゃんたちを再びコミュニティーの一員として巻き込むことです。
インターネットで「aging population」を検索すると、90%はネガティブな内容が上がってきます。私たちは彼女たちのあふれる意欲と培った経験を活かす場を真剣に模索すべきなのです。
いきいきと笑顔でお客さんを迎え入れるおばあちゃんたちによって、街角の一件のカフェが地元コミュニティーの中心となったNANAの事例は、おばあちゃんたちの持つポジティブなパワーをもう一度見直すきっかけになるかもしれません。
あなたの街でも、そんなおばあちゃんたちと一緒に、何か始めてみませんか?
(Text: 恩田ひとみ)
[via: POSITIVE]
[photos: EAST LONDON LINE,EAT Hackney,THAT’S NOT MY AGE,THE WOMEN’S ROOM]