鎌倉にあるオフィスはぬくもりのある温かな雰囲気
海と山に囲まれた古都・鎌倉にオフィスを構える、広告制作会社「テトルクリエイティブ」(以下テトル)。ウェブを中心にさまざまな制作物を手がけてきたこのテトルが、NPOやNGOの広報活動を支援するサービス「Smoooth!」(以下スムース!)をリリースします。
スムース!とは、ひと言でいえば、彼らが得意とするクリエイティブの力を使って、広報の支援を行うサービスです。その内容はウェブの制作を中心に、多岐に広がっています。
ウェブの制作物などはどこに発注しても変わらない。もし、制作会社を単なる下請けのように捉えているのなら、制作会社はそのようにしか機能できないのかもしれません。でも、もし、制作会社が自分たちの広報活動を支援してくれるパートナーである、と捉えるのなら……。きっとテトルのスムース!は、広報支援を必要とする人たちや組織の大きな力になってくれるはずです。
スムース!の構想がテトルの中でスタートしたのは2013年になってからのこと。ただ、このサービスはテトルの創業からの想いが込もったものであり、そう捉えると、約8年前の創業時からはじまっていたプロジェクトであるとも言えるかもしれません。
なぜNPOやNGOの広報支援を行うツールを開発しようと考えたのか、そして、テトルとはどんな想いから創業された会社なのか。テトルの代表取締役兼デザイナーの平田陽一さんと、映像ディレクターの並木大典さんに話を伺いました。
テトル創業のきっかけはタイ・チェンマイの孤児院
まずテトルの創業について話をしますね。タイのチェンマイに母子感染によりHIVを患っている孤児たちが暮らす「バーンロムサイ」という孤児院があるのですが、テトル創業のきっかけはそのバーンロムサイに由来しています。
と平田さんが教えてくれた「バーンロムサイ」は、いまから10年ほど前、あるニュース番組で取り上げられたことがありました。モニター越しに伝わってきたことは、このバーンロムサイのことをもっとたくさんの人に知ってほしいということ、でも、広報機関がしっかりと整ってはいないことなどです。その番組を落ち着かない気持ちで見つめていたのが、テトルの創業メンバーのひとりである谷岡功一さんでした。
テトル創業のルーツ、タイの「バーンロムサイ」
谷岡はテトルの創業メンバーのひとりであり、前代表取締役社長です。番組が放送された当時、フリーランスのデザイナーとして活動していた谷岡は、番組を観た後、単身タイにわたって、住み込みでバーンロムサイの広報を手伝うようになったのです。
約半年ほどバーンロムサイを手伝った谷岡さんは帰国して、同じくフリーランスとして活動していた平田さんを含めた4人のメンバーに声をかけ、会社設立の相談をはじめたのです。
クリエイティブの力を世の中に役立つことに使いたい
フリーランスのデザイナーとして企業の制作物などを手がけていた谷岡でしたが、彼のなかには、もっとクリエイティブの力で、困っている人をサポートしたり、あるいは命を救うようなこともできるのではないか、という想いがありました。できるだけ積極的に、そちらに働きかけるべきではないのかと。
その彼の想いに共感する形で、テトルの創業メンバーは集まり、毎週土曜日に、会社について話し合いを重ねることになったのです。
テトルの代表取締役を務める平田さん
「テトル」という会社の名前も、その話し合いの中から生まれたのだそうです。
テトルはクライアントの単なる下請けではありません。クライアントと一緒になって、よりよい世の中をつくっていく、クライアントと手と手をとり合うパートナーでありたい……。そんな想いを込めて、手をとる会社、テトルという名前に決まりました。
テトルはその創業の想いのもと、バーンロムサイの広報支援を継続しながら、国内のNPOやNGOにも積極的な働きかけを行っていきました。
NPO、NGOといった第三セクターを支援する難しさ
NPOやNGOで広報に使える資金を潤沢に持っているところなどほとんどありません。また、活動への想いが優先されて、効果的な広報活動を考えるといった仕事はどうしても軽視されがちになってしまいます。パートナーとして広報支援をしようと声をかけてもなかなか乗り越えることのできないいくつもの壁……。活動するなかで、テトルはその壁の高さを感じることになりました。
映像ディレクターの並木さん(左)
どうすればあまりお金をかけずに、世の中のための活動をしている団体のパートナーになれるかということをずっと考えてきました。一時期は、NPOやNGOの活動を集めたサイトをつくろうと動き出したこともあります。
2007年頃、世の中をよくしたいと思う個人や団体の活動のプラットフォームをつくろうと、「Cause Park」というプロジェクトを練り上げたテトル。しかし、そのプロジェクトがローンチすることはありませんでした。
当時のことを振り返ると、まだまだ未熟な部分が多かったと感じます。よいものを作ろうとして、多くを盛り込み、システム開発から手がけようとしてまとまりがつかなくなってしまったのです。Cause Parkを断念せざるを得なくなってしまいました。
Cause Parkの失敗、リーマンショック…苦しい時期をなんとか乗り越え、テトルは変革の時期を迎えます。当時、代表取締役であった谷岡氏は代表を平田氏に譲り、自らは再びバーンロムサイのあるタイ・チェンマイへ。孤児院の広報活動支援を現地で行いながら、テトルの現地法人を設立するべく奔走しています。
また、渋谷にあったオフィスも現在の鎌倉へと移転して、よりゆったりと自然を感じながら仕事ができる環境の整備にはいりました。しかし、大きな変動のなかでもテトルがバラバラにならずに済んだのは、「“手をとるクリエイティブ”という創業からの想いがスタッフ間でしっかり共有できていたからだと思います」と平田さんは語ります。
まる一日、ヒアリングしてから制作をスタート
そして、そんなテトルが、満を持してリリースするサービスがスムース!です。
スムース!は大きく言ってしまえば、ワードプレスを用いて、ウェブを制作するというサービスです。一見、どこでもやっているようなサービスのように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
スムース!を構築する上で、まず考えたのは、いかに小さな予算でつくるかということ。そのため、サイト制作は、クライアントとテトルが一緒になって取り組むイメージを持ってもらったほうがよいかもしれません。
デザインのプラットフォームはある程度、ワードプレスによる構造をつくっておいて、パターンに当てはめられるよう工夫をしています。しかし、団体それぞれのデザインが似通ってしまう心配はありません。
スムース!の大きな特徴は、制作に入る前にじっくりまる1日かけて、団体の活動への想いや活動の内容についてヒアリングさせていただくことです。ここでしっかりとメッセージを汲みあげることで、団体の特徴や伝えたいことを適切に紹介するサイトを仕上げます。
手をとりあって、一緒に広報活動を!
これまで多くのNPOやNGOのウェブを手がけてきたために、NPOやNGOがぶつかりやすい問題などに詳しいこともテトルの特徴です。そして、スムース!には、その経験からくるアイデアもふんだんに盛り込まれています。
たとえば、素晴らしいプロジェクトがあっても、「こんな素晴らしい活動をしているよ!」ということを熱心に伝えたり、「この部分をボランティアでサポートして!」と訴えても、伝えたい相手になかなか伝わらないケースがあります。
どうすれば、多くの人に活動を効果的に伝えられるのか、また、団体のスタッフ全員に代表の想いをしっかり共有してもらうにはどうすればいいのか。そういったコンサルティングの目線を持っていることもスムース!ならではだと思っています。
制作のアドバイス、広報活動のレクチャー、団体のヴィジョン&ミッション&バリュー構築のサポート、CIや映像制作など、スムース!にはさまざまな要素が内包されています。
映像ディレクターの並木さんも
オプションとして映像がつくれることもスムース!の強みですね。団体代表者やスタッフ、現地の支援対象者等、ステークホルダーの生の声をダイレクトに伝える事は、支援者との距離を短くし、共感を集め、団体の信頼をより強固なものにします。モバイルインフラの普及する今、映像の担う役割はさらに重要なものになると思います。
と話してくれました。
テトルのメンバーは人柄の良さが大きな魅力
制作はどこに依頼しても同じ……?
テトルが創業の想いを貫いたことで、いよいよ形になったスムース!。会社として大きな失敗も経験したおかげで、やるべきことやできることも、より明確になりました。
もし、広報活動に悩みがある、迷いがあるようなNPOやNGOの団体があれば、ぜひ、想像してみてください。自分たちの活動をアピールする制作物は、本当にどこの制作会社がつくっても同じものになるのでしょうか?同じ効果しか得られないのでしょうか?
団体の想いを共有して、ともに活動してくれるパートナーのような広報部署を求めているなら、一度、スムース!をチェックして、テトルに声をかけてみてください。きっと親身になって、さまざまな相談に乗ってくれるはずです。