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介護施設からおしゃれな美容室へワープ!「いつまでもキレイでいたい」を叶える訪問美容サービス 「trip salon un.」

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ここは、とある美容室の入口。心地よいBGMとリラックスできるアロマの香りに部屋全体がつつまれています。

しばらくすると、お客様がやってきました。普段はあまり美容室では見かけない方でした。

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車いすを利用する高齢者の方がいらっしゃったのです。その後もいらっしゃるのはご高齢の女性ばかり!

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実は、ここは特別養護老人ホーム「アンミッコ」という介護施設の一角に定期的に現れる美容室「trip salon un.」(以下、un.)。

株式会社un.は関東、東京エリア内をメインに、さまざまな介護施設や介護が必要な方の在宅への出張、訪問美容サービスを行なっています。働いている美容師は原宿や青山で活躍していた美容師です。

左から株式会社「un.」の最高執行責任者櫻庭さん、代表取締役湯浅さん、スタッフ星野さん
左から株式会社「un.」の最高執行責任者櫻庭さん、代表取締役湯浅さん、スタッフ星野さん

「いつまでもキレイでいたい」を応援!

施術の流れは、一般的な美容院と変わりません。
まず、お客様をお迎えに伺います。

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「un.」に到着後、初めてサービスをご利用される方には自己紹介をおこない、カウンセリングをします。本日担当するのは、最高執行責任者の櫻庭太さん。

お客様は「中の方を短くして、外の方は伸ばしているので切らず、女性らしくしてください」とオーダーされていました。

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そして施術開始。カットとブローをします。

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施術後は、笑顔で一枚記念写真を撮影します。とても素敵なヘアスタイルですね。

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施術後、写真に写っている方にお話をうかがいました。

10歳は若返りましたよ。私は歩くのが難しくなってしまいましたが、だからといって楽をするために男みたいな髪型になるのは嫌なんです。やはりいつまでも女性らしくいたいですよね。希望どおりの髪型にしていただいて大満足です。家族に見てもらうのが楽しみです。

介護が必要になるとなかなかオシャレにまで気を配ることができなくなってしまうことも。一方で、「いつまでもキレイでいたい」という気持ちが本心なのではないでしょうか。自分の思いどおりのヘアスタイルになれれば、こちらのお客様のように「家族に会うのが楽しみ」になったりと、あらゆることが楽しくなって意欲が湧いてきます。

「un.」は訪問美容サービスを提供することで高齢者の生活を華やかにしているのです。
 

美容室にいない美容師を目指して

このような訪問美容サービスはどのような想いからはじまったのでしょうか。「un.」を立ち上げ、代表取締役を務める湯浅一也さんにお話を伺いました。

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私は中学生の頃から美容師を目指していました。幼い頃からずっと床屋さんで切ってもらっていたんですが、おぼっちゃまヘアーや変に刈り上げられた髪型にされてとても嫌だったんです。

はじめて美容室に行ったのが中学2年生のときでしたが、そのとき衝撃を受けたんです。女性のスタイリストさんがカットしてくれると、自分の理想どおりの髪型になったんです。人柄もとてもよくてお話していて楽しくて、憧れました。それで、そのスタイリストさんのように自分もなりたいと考えるようになりました。

そして、美容師になるために中学卒業後は専門学校に進学。湯浅さんは美容室で働く美容師ではなく、高齢者や障害者といったなかなか美容室へ行きづらい方を対象とした訪問美容に関心を持ったかについてはこう語ります。

私は北海道出身で、住んでいる地域ではよく高齢者の交流会が催されていました。中学生の頃、その交流会になぜか自分1人だけ若者が混ざって一緒にご飯を食べたり、遊んだりしていました。そうしているうちに、お年寄りの方々とお話するのが大好きになりました。ですから、主に高齢者をお客様とする訪問美容業界に興味を抱くようになりました。


施術中の湯浅さん

卒業後は、美容師としての実力を身につけるために上京し、原宿の美容室でアシスタントとして5年間、スタイリストとして3年間働きます。その間に、叶えられなかった大切な人への想いが、訪問美容への道へと湯浅さんを導いていくのです。

アシスタント2年目の頃、父親が亡くなり、父の髪を切れなかったことを後悔しました。以降、高齢者と自分の父が重なってみえるようになりました。そして、父の髪を切れなかった分、高齢者の髪を切って喜んでいただきたいという想いが強くなっていったのです。

アシスタントとして働いた後は、スタイリストに昇格。「いつかは訪問美容師になる」という思いを抱きつつも、仕事を続けていました。そんな時、突然転機がやってきたのです。

ずっと勤めていたサロンが閉店してしまったんです。戸惑いはありましたが、私にとっては大きなチャンス、タイミングでした。すぐに訪問美容師として働くために動き出しました。

“思い”が反映されない訪問美容の現場

まず、訪問美容のボランティア団体に登録し、ボランティアからはじめたという湯浅さん。しかし、その現場は湯浅さんが思い描いていたものと全く違ったのです。

私がボランティアをした高齢者施設では、流れ作業でヘアカットがおこなわれていました。ご利用者様の意思は全く反映されておらず、頭を洗うのが楽だから、またすぐに髪を切らなきゃいけなくなるからという理由でただ短くするだけという感じでしたね。みなさんの表情もとても暗かったんです。

そんな中、私はお客様のご要望をしっかり伺うことを心掛けてカットしたところ絶え間ない笑顔がみられ、「今度もあなたにお願いしたい」というお言葉をいただけました。その瞬間、「自分がこの業界を変えるんだ」と決意しました。

このボランティアの際、「un.」の共同設立者であり、当時、青山のサロンで働く美容師だった櫻庭太さんと出会いました。

左:櫻庭さん、右:湯浅さん
櫻庭さん(左)と湯浅さん(右)

ボランティアの後に、櫻庭といまの訪問美容業界に対する不満をお互いに言い合ったんです。全く同じことを考えていて、話しているうちに一緒に訪問美容業界を変えていこうという気持ちが強くなっていきました。

こうして2012年8月、二人は訪問美容サービスを提供する株式会社「un.」を立ち上げます。二人が出会ってから、わずか2ヶ月後のことでした。

「美容業界=オシャレ、訪問美容業界=ダサイ」はおかしい

起業してから一年経った現在、湯浅さんは確かな手応えを感じているそうです。

施設に訪問した際、ご利用者様の思い出に残ったワーンシーンが画用紙に描かれて飾ってあったんです。そこになんと「un.」の訪問美容の絵が描かれていたんです。絵の作者であるご利用者様は認知症にもかかわらず私たちのことは印象に残っていることを知り、思わず男泣きしそうになりました。

また、病院でカットをすることもあるのですが、ずっと担当させていただいていたお客様が退院される前の最後のカットの時泣かれていて驚きました。そこまで思ってくれるなんて嬉しかったです。

湯浅さんとお客様のツーショット 湯浅さんとお客様のツーショット

「un.」は訪問美容業界のイメージアップにも貢献しています。
 

美容業界っていうとオシャレでかっこいいイメージがあるんですけど、「訪問」がつくだけで華やかさがなくなっちゃうんですよね。それは変えなくてはいけないと思ってるんです。なので、私たちは空間づくりや自分たちの制服にもこだわり、美容室に訪れたかのような雰囲気をお客様に感じていただいております。

stylish space

また、訪問美容業界のイメージアップのために外への発信もしています。

ヘアショーを通して、訪問美容についてアピールする機会も最近は増えてきました。「訪問美容ってかっこいいじゃん」という認識がひろまってきています。

NPO法人Ubdobe主催「SOCiAL FUNK!」でのヘアショーの様子。 NPO法人Ubdobe主催「SOCiAL FUNK!」でのヘアショーの様子

全国に「いつまでもキレイ」をひろげる!

最後に、湯浅さんに今後の目標を伺いました。

「un.」の支部を全国に増やし理念や同じ志が共通する仲間たちと、この業界を盛り上げていきたいです。そして、美容師の就職先の選択肢として訪問美容業界がもっとあたりまえになるようにがんばっていきます。

今後、より高齢化していく日本。「un.」のような訪問美容サービスがあたりまえになれば、オシャレな高齢者であふれる素敵な国になりそうです。