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「お金がないからできない」をなくし、自分のやりたいことに向かって邁進する世界へ。米良はるかさんをゲストに迎えた「ダイアログBAR京都」[イベントレポート]

米良はるかさん
米良はるかさん

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

ミラツクが主催する人気トークイベント「ダイアログBAR」。2013年は“マイプロジェクト”をテーマに全5回シリーズで行なわれています。5月16日には「ダイアログBAR京都」の第2回目が、京都にある株式会社ウエダ本社南ビルで行なわれました。

ゲストは、日本のクラウドファンディングの第一人者、「READYFOR?」の米良はるかさん。

会場に集まった人の肩書きは学生や会社員、行政職員など様々です。さらに、実際にクラウドファンディングを利用しようとしている人、ファンドの仕組みに興味がある人、ひとりの女性として米良さんに憧れている人など、総勢60名が詰めかけました。

前半の米良はるかさんの講演と、後半は参加者みなさんの「マイプロジェクト」をテーマにしたダイアログについて、レポートをお送りします。

日本初のクラウドファンディング「READYFOR?」

まず最初に、「READYFOR?」の説明がありました。

2011年3月29日に日本で最初に立ち上がったクラウドファンディングです。インターネットを利用して、多くの人から小額の寄付金を募るサービスです。サービス開始から約2年が経ち、今では年間1億7千万円規模、日本で一番シェアの大きなサイトになりました。

利用者(プロジェクト実行者)はマイプロジェクトの目標金額と、目標期間を設定します。サイトを閲覧し、そのプロジェクトに共感した人は寄付を申請します。実行者は、目標期間内に目標金額を達成した場合のみ、お金を受け取ることができる「All or Nothing」方式を採用。また、目標金額が達成された場合のみ、手数料が発生するビジネス形態となっています。

これまでに300近いプロジェクトが掲載されましたが、その7割の方々が実際にお金を手にされています。

「『READYFOR?』を見たことがある人!」という問いかけに、ほぼ全員が挙手。(C)NaraYuko 「READYFOR?を見たことがある人!」という問いかけに、ほぼ全員が挙手。(C)NaraYuko

「マイプロジェクトを持っていて、クラウドファンディングを利用しようと思っている人」についても、会場の1/4〜1/5の人たちの手が挙りました。(C)NaraYuko 「マイプロジェクトを持っていて、クラウドファンディングを利用しようと思っている人」についても、会場の1/4〜1/5の人たちの手が挙りました。(C)NaraYuko

不成立でも、得るものがある

クラウドファンディングに興味はあるが「サイトに掲載される」ということに対して“怖さ”を感じるという参加者も。

もちろん、全員のプロジェクトが成立するわけではなく、3割は不成立です。でも、その方たちからも「勇気を出して掲載して良かった」とおっしゃっていただくんです。新しい出会いがあったとか、自分がやりたいことの視点が絞れたとか。

また、なぜ失敗したのかを受け止めて企画を練り直し、再チャレンジして成功するケースも見てきました。そんな姿はとても美しいと思いますし、そういう人こそ、応援したいとも思っています。

米良さんが繰り返し発言されて印象的だったのが、特別な人だけがプロジェクトに成功するのではなくて、みんな想いのある一般の方だということ。

まずは自分のプロジェクトを「READYFOR?」に掲載することで一歩を踏み出せますし、その一歩は、それがどんなに小さくても、社会を変えるキッカケになる、可能性があることをお伝えしたいですね。

「READYFOR?」のスタッフはキュレーションの役割を担い、何かそのプロジェクトの魅力なのかを見極め、実行者が目標を達成するために足りない視点や、ポイントの絞り込みやアドバイスも行います。一緒にプロジェクトを作っているような気持ちで、実行者ががんばり続ける限り、応援したいと思っているんですよ。

ミラツクの西村勇哉さんも、ご自身が「READYFOR?」を使用して資金集めをした経験をお話してくださいました。

米良さんの話を引き出しながら、進行を進める西村勇哉さん(右)。体験談には頷きながら耳を傾ける人多数。(C)NaraYuko 米良さんの話を引き出しながら、進行を進める西村勇哉さん(右)。体験談には頷きながら耳を傾ける人多数。(C)NaraYuko

企画書のやり取りを3週間ほど重ねるのですが、その中でのアドバイスは、プロジェクトが独り立ちするための道を示してくれるようなものなんです。あくまで実行者である自分が考え、形にする余白が残されている。企画書を練り直し、短い言葉に要約していくうちに、企画の一番大切な部分が見えてきます。

また、「もうダメかも」と思っても、あきらめないこと。語り続けることで、気づいたら最後の3日間くらいで目標金額が達成できていました。

ポジティブな連鎖を起こす仕掛け

参加者からは、たくさんあるクラウドファンディングのサービスのうち、「READYFOR?」の特徴はどこにあるのか、といった質問も寄せられました。

「READYFOR?」に寄せられるものには、社会問題・地域貢献・自治体やパブリックに関わるプロジェクトが多いです。被災地での取り組みや環境保全なんかも見られます。

規模も日本で一番大きいですし、高額なプロジェクトが多いです。ですが、「READYFOR?」には実行者を応援する仕掛けや、ポジティブな連鎖を起こすような仕掛けがいっぱいあります。支援者からの応援コメントが見れたり、また、支援者がこれまでにいくつプロジェクトを行なったのかが見れたりします。

実行者がマラソンランナーだとすると、支援者は、沿道で声援を送っているような存在なんです。沿道に居た人が、「自分も走ろう」と、実行者になるケースもあるんですよ。

米良さんが「READYFOR?」を立ち上げるまで

参参加者の女子大生からは、「今大学3年生だけど、この先の進路に迷いがある」という言葉も聞かれ、これを受けて米良さんの学生時代と、「READYFOR?」の立ち上げに至るまでをお話下さいました。

私が大学3年生の時は、文化祭実行員をやったり、ナイキジャパンという会社でマーケティング部門のインターンをしたり、とてもアクティブな学生でした。ナイキは先進的でとても面白い環境だったのですが、「自分で何かを一から立ち上げたいなぁ」と考えた時に、ネットの世界ならそれができるのではないかと思ったんです。

大学4年生の時に、パラリンピックのスキーチーム日本代表のワックス代100万円の寄付を募るプロジェクトを立ち上げた経験があります。「女子大生が寄付金を募っている」という“女子大生看板”を用いてたくさんメディアに取り上げていただき、結果的に100万円を集めることができました。

ただ、「お金を無理やり出してもらった」というような感触が残ったんです。もっと多くの人を巻き込み、お金を出すことが楽しくなれるような仕組み。なおかつ「お金がないからできない」人をなくしてみんなが自分の想いを叶えられるようなプラットフォームを作りたいなぁと思うようになりました。

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日本で初めてのクラウドファンディングのサイトを、誰の真似もせず、こつこつと改良しながら育ててきた米良さん。これからも、ますます多くの人に気軽に使ってもらえるようなサイトを目指して進んでいくということです。

「これが自分の人生の転換点だ!」とすぐに分かることはなかなかないし、初めての経験で、全てが叶えられるとも思わないんです。私も「READYFOR?」が人生の最高傑作だとは思っていませんし、これからもどんどん、いいものにしていきます。

自分の人生に悩むこと、もやもやしているのはみんな一緒。「こういう世界になったらいいな」「どういう世界になると皆がハッピーなのかな」と考えながら、まずは自分がやれることを見つける。決めたんだったら、納得のいくまでやり続けることだと思います。

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米良さんの描く“世界”についても、お話してくださいました。

「お金がないからできない」人がいなくなり、年齢や性別なども関係なく、みんなが自分のやりたいことに邁進して、キラキラ輝いているような世界になればいいなぁと思います。

今、さまざまなツールが出てきたおかげで、本気になれば大抵のことは叶う世界になったと思うんです。例えばスタンフォード大学の授業が受けたければ、ネットにその内容が掲載されているので、自分で勉強することもできます。

「できない」言い訳をしない社会にしたい。そして身近なみなさんのアイデアや想いは、十分に社会を変えるインパクトがあるので、勇気を出して一歩を踏み出してほしいと思います。

講演を通して、「READYFOR?」のサイト全体がまとっている温かさやワクワク感が「みんながやりたいことを実現できる世界をつくりたい」という米良さんの想いに根ざしたものであることを実感しました。 “寄付金を集める”と同時に、“プロジェクトの概要や想いを多くの人へ届ける”という広報の役割も担っているサイト。今後も、多くの想いあるプロジェクトが世の中へ発信され、実現していくといいなと思います。


みんながつくりたい社会

さて、後半のダイアログの時間では、15個の「プロジェクト」を参加者から募り、そのプロジェクトをベースにチームを作って話し合いをすることに。

「マイプロジェクトを発表してください」という西村さんの呼びかけに、たくさんの手が挙ります。(C)NaraYuko 「マイプロジェクトを発表してください」という西村さんの呼びかけに、たくさんの手が挙ります。(C)NaraYuko

話し合いはメンバー替えも有りの、2回行われ、プロジェクトの発案者はそれぞれ「なぜこのプロジェクトをやりたいと思ったのか」、また「このプロジェクトを実現するために足りないと思っていることは何か」をチームの皆さんと共有しながら進めました。

どんなプロジェクトが集まったのかを見てみましょう。

貼り出された15個のプロジェクトたち。(C)NaraYuko 貼り出された15個のプロジェクトたち。(C)NaraYuko

1. ボルネオ島の熱帯雨林が、食用油を作るために開発されている。森と共生できるように、現地の人と一緒に苗作りのプロジェクトを立ち上げたい。

2. 子どもたちと一緒に社会問題を考え、絵本を作るワークショップを開いている。これを製本したい。また製本した本を販売し、社会問題を解決する資金にする循環を作りたい。

3. 関西でソーシャルな活動をしている若いチャレンジャーやメンターのプロジェクト、またイベントが一覧できるポータルサイトを作りたい。

4. 出身地が石巻。被災後になくなってしまった子どもの遊び場を作ったり、現在全国の高校生が現地へ訪れてくれているので、そういった交流を支援したい。

5. 物作りを通して親と子供がコミュニケーションを計る場作りと、「働く」をテーマにした服作りを子どもたちと一緒に行ないたい。

6. カンボジアで、衛生支援を行なっているが、所得が少なく石けんを買えない人たちがいる。そこで廃油を使った石けん作りを実施したい。

7. 小学校で、子どもたちが地域や企業、シルバー人材や大学生などの色んな大人と出会い、つながる仕組みを作りたい。

8. 大学の新入生300名を対象に「大学で何がしたいか?」というアンケートを実施したところ、8割が「特に何もない」と回答。「やりたいことがあるから大学へ行く」流れをつくりたい。

9. 「働きたいけど働けない」長期離職者や生活保護を受けている人々が、買い物難民で困っているお年寄りを手伝い賃金を得る仕組みを作りたい。

10. ホスピタルアートで活躍できるアーティストを増やしたい。仲間とお金を集めるにはどうしたら良いかアイデアがほしい。

11. クラウドファンディングでお金を集めることが、もっと当たり前な世界へ変えたい。そのためにできることを考えたい。

12. 関西で、1000人のワールドカフェを開きたい。4月1日から仲間を募り、現在40名ほどが集まった。仲間が増えていく素晴らしさを形にしたい。

13. “学び”と“食”というキーワードで、お年寄りと子どもたちをつないで、みんながハッピーになれるようなプロジェクトのアイデアがほしい。

14. 大阪の高槻で、交通まちづくり系のNPOに所属している。バスの良さをうたったり、車からバスへ乗り換えたくなるようなバスマップを印刷したい。

15. 学校教育に馴染めなかった中学・高校生たちが、卒業後の就職で困っている。「仕事って何だろう」と語り合う場所や、紙袋の内職をプロジェクトにして、支援したい。

ダイアログ
ダイアログ
ダイアログ
カラフルなペンでアイデアが書き出された模造紙。見ているだけでワクワクします。(C)NaraYuko カラフルなペンでアイデアが書き出された模造紙。見ているだけでワクワクします。(C)NaraYuko

それぞれのテーブルに分かれて話し合いが行なわれ、模造紙に次々とアイデアが書き出されるチームや、名刺交換が行なわれるチーム、「ぜひ、一緒にやりましょう」と言葉が交わされるチームなど、それぞれのテーブルで盛り上がりが見られました。

プロジェクトを発表した皆さんからは、「プロジェクトを発信することの大切さを学んだ」「同じように考えている人や、賛同してもらえる人がいると元気が出る」「そもそも、プロジェクトを一から考え直さないといけないことに気づいた。チームの皆さんから様々な事例を教えてもらい、勉強になった」等の感想が聞かれ、想いを共有し、ブラッシュアップする時間を持つことで、それぞれが何かしらを得たようです。

ワークショップや、参加者の皆さんがアイデアをブラッシュアップするテーブルには、あえて入らないとおっしゃっていた米良さん。

今日のこの場所にも、ポジティブ想いを持った人がたくさんいることを感じました。実現するために、今日の場、出逢いを大切にして、世の中を変えるアクションに繋げていきましょう。「READYFOR?」もよろしくお願いします。

締めの挨拶に、会場中から拍手が沸き起こりました。

3時間という短い時間の中に、プロジェクトを実現するための出逢い、仲間とお金、アイデアが溢れる活気ある第2回目が終了。そして7月には、デザイナーとして、多くのプロジェクトを手がけ、地域や社会の力を引き出す取り組みを行っているNOSIGNER代表の太刀川英輔さんがゲスト。豊富な事例が聞けそうです。