大雪となった成人の日とはうってかわり、小春日和に恵まれた1月20日。年齢不問、セクシュアリティ不問の、一味違う成人式が世田谷区民会館で開かれました。合言葉は「もっと好きになれる自分へ」。
皆さん、LGBTという言葉をご存知ですか? これはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、そしてトランスジェンダーの頭文字をとった言葉です。一般的に性別は男性か女性かで区別され、異性愛が前提とされていますよね。けれど、セクシュアリティはもっといろいろあって、この前提に当てはまらない方々が世の中には大勢いるのです。
そんな多様なセクシュアリティをもつ人たちが、ありのままの自分を誇り、友人や家族に祝福してもらう特別な日が、1月20日に開催された「LGBT成人式」です。
ドレスコード:自分らしい服装
参加者:ありのままの自分と大切な人たち
ファッションショーやトークショーなど、楽しさが沢山詰まった成人式。会場にはスーツをビシっときめている人たち、袴や着物を着付けてもらう人たち、友達同士やカップルで参加している人、ご両親やお子さんを連れて家族で参加している人など、沢山の人の笑顔が溢れていました。初対面でも会話が弾みすぐに打ち解けられる、そんな温かい雰囲気が印象的でした。
トークショーでは、本当の自分を隠してきた過去、多様なファミリー観について、家族との関係などを、ゲストの皆さんがオープンに語ってくださいました。
自分を少しずつ発信し、理解者を増やしていく
ゲストのほとんどが、自分に自信が持てなかったり、拒絶されたらどうしようという不安から、セクシュアリティを隠してきたという経験があるとのこと。カミングアウト(自分のセクシュアリティを認め伝える)をすることは、容易に出来ることではなく、またその手段やタイミングも様々です。
カミングアウトに関しては、人それぞれ。立場が違うし、相手も違う。そもそも伝えたいかということも人によって違う。出来る人から、本人のニーズに合わせてしていくのが一番いい方法だと思う。(ブルボンヌさん)
人の数だけ生き方があるように、人間関係にマニュアルはありません。カミングアウトをするか、しないかにも正解はありません。壇上では、「もし現状を変えたいと思っているのなら、自分のことを少しずつ発信していき、周りに安全な環境を作りながら、理解者を増やしていければいいね」というアドバイスが交わされていました。
カミングアウトする時は、(する人もされる人も)絶対誤解している部分があります。それをすり合わせながら付き合っていける関係が一番いい。(虹色ダイバーシティ代表 村木真紀さん)
LGBTとか、ヘテロセクシュアルとか、カミングアウトとか関係なく、友達や家族と本当に分かり合えることって、人間関係を築いていくうえですごく大切。(ヨウスケ・クロフォードさん)
「成りたい人」になれる理想の社会って?
2013年の現在、LGBTの方々を取り巻く環境はいい方向へ変わってきたそうです。しかし、まだまだありのままの自分を肯定される経験が少ないのも事実。このLGBT成人式が、ありのままの自分をもっと好きになるきっかけになり、さらなる一歩を踏み出せることを願い、トークショーの最後のテーマは「成りたい人」で締めくくられました。
謝らない表現者になりたいと思う。周りや安全を気にしていると、表現したいものが表現できなくなってしまう。まずは自分をよく知って、受け入れて、自分というものを表現していきたい。(田中ロウマさん)
日本にあるほとんどの企業で、LGBTに関する取り組みが行われている社会。そこに行くまでには、自分が信頼できる仲間と、楽しいなと思えることを頑張っていけたらと思います。(村木真紀さん)
駆けつけてくださった世田谷区長の保坂展人さんは「本当の意味で多数派はいない」と仰っていました。私たちはどこかに必ず少数派の部分を抱えているのかもしれません。
“ありのままの自分”を語り、“なりたい人”を明確にしたステージ。ゲストの皆さんの言葉は、セクシュアリティという枠を超えた普遍的なメッセージだったように思います。
LGBTでない人も巻き込みたい
さて、LGBT成人式を企画・運営したのは早稲田大学公認の学生団体「Re:Bit」。今年が第二回目となるLGBT成人式にはどのような熱意が込められているのか、共同代表の小川奈津己さんにお話を伺いました。
今年の課題は出来るだけいろんな方に参加してもらうことでした。ツイッターやホームページ、フェイスブックなどを使い、発信の機会を増やしました。イベントも、成人式の他に、申し込み不要な展示会をしたり。メインイベントはハードルが高くて行きにくいという方のために、気軽に参加していただける小規模なイベントも開催予定です。
特に誰でも参加できる展示会では、LGBTの基本的なことから、家族のあり方など、当事者の私生活に関する様々なパネルが展示されていました。さらに、学校への要望を自由に書き込めるボードなども用意されており、理想の社会へ向うための具体的な解決方法が提案されていて、自分たちの力で社会を変えていこうという意気込みが感じられました。
本当に大勢の方がいらしてくれてびっくりしました。先ほど展示会を見に行ったのですが、お子さん連れの方が多かったのも嬉しかったです。
学生だから出来る事がある
「Re:Bit」のメンバーのほとんどが現役の大学生たち。彼らの真剣さは、観客への思いやりとして、また、ステージのマネージメントにおけるプロ意識として、随所に反映されていました。小川さんは、学生団体であることに意義があるといいます。
「Re:Bit」の主な活動に授業があります。実際に学校に出向いて、高校生や大学生と話しながらLGBTについて知ってもらうという内容です。そうした時に、年が近いとか、環境が同じであるということは大きなポイントだと思います。
高校や大学で開催されていた授業も、最近では教育委員会、企業、そして中学校にまで広がっているそうです。
楽しかったとか、面白い人たちだったといってくれる生徒さんもいます。もともと偏見を持っていたという生徒さんは実は少なく、受講後、LGBTに対する見方が180°変わったという劇的な変化がないのも事実ですが、授業をしていくことによって、LGBTを身近に感じてもらえたり、距離が縮まったという声が多いです。この様なスタンスでLGBTに関する授業をやっているのは「Re:Bit」の強みだと思っています。これからも地道に続けていきたいです。
「理解は力」
自分達の周りに理解者が増えてくことで、生きる喜びを分かち合えたり、次の一歩を踏み出す原動力になることって必ずあると思います。”少しずつ(Bit)、を何度でも(Re:)”という思いを込めて、自ら動き出し、地道な努力を重ねている「Re:Bit」の皆さんの姿がとても素敵でした。
LGBT成人式は自分をもっと好きになるきっかけです。
私たちがありのままの自分を受け入れて、認めてもらえる社会って、すごく素敵な社会だと思いませんか?