有機野菜、無添加食材等の会員制宅配サービスを提供する「らでぃっしゅぼーや」が、大学生の「食」についてあらためて考え直す機会を提供し、食生活を豊かにしていくためのワークショッププロジェクト、「おいしい”食べる”をデザインする」ワークショップの初回が開催されました。
プロジェクトは研究者と企業をつなぎ、社会科学系の産学連携をコーディネートしている株式会社ビジネスリサーチラボの主催、ワークショップはワークショップ研究者の安斎勇樹さんのファシリテーションで実施されました。今回はそのワークショップの様子をレポートしたいと思います。
ワークショップは、お酒が大好きな安斎さんによる「乾杯」から始まりました。飲み物は、らでぃっしゅぼーやの提供による無添加のりんごジュースで。
ワークショップの前半は、「食べる」という行為の意味について、あらためて考えていく時間に。日常的に行っている行為にも関わらず、自分にとっての食に対する価値観は、じっくり考える機会がなかったりします。
ワークショップに参加している学生のみなさんの参加動機は様々。最初に普段の活動やワークショップへの参加動機を話したところ、「食とコミュニケーション、メディアとしての食が研究テーマ」「消費されてしまうモノのデザインへの関心があります」「食・農などライフスタイルの研究」「食育の勉強、若者と農業」「教育実習で給食を楽しみにしていない子どもたちにショックを受けたから」「とにかく食べるのが好きだから」など、その参加動機からも多様な参加者が集まっていることがわかります。
全体での自己紹介が終了したあとは、グループごとにわかれてワークを開始。自分の食生活に振り返りなどを行う時間を経て、安斎さんから「デザイン論」についてミニレクチャーがありました。
「デザインとは、物の意味を与えることである。」
というクラウス・クリッペンドルフの言葉を引用しつつ、デザインとは物が持つその意味を与えるものであり、意味の変化が大きいとイノベーションと呼ばれるという話を紹介。食べるをデザインするとは、食べるという行為が持つ意味を変化させたり、より豊かにする方法を考えること。
この説明を聞いた後、各グループで大学生にとっての現在の「食べる」を取り巻く意味の分析や、「食べる」ことにより豊かな意味を与える新しいサービスをデザインしてもらいました。サービスを考えるにあたって、らでぃっしゅぼーやの金丸さんが、らでぃっしゅぼーやの歴史、ビジネスモデルなどをご紹介してくれました。
らでぃっしゅぼーやは、「食と暮らしを通じて持続可能な社会を実現する」というミッションを掲げて事業を展開しています。元々、食品事業ではなくフリーマーケットなどの環境活動を行う市民運動だったのが、らでぃっしゅぼーやの起源です。「農薬や化学肥料を減らした農業を拡大することが環境保全にも繋がる」との考えのもと、「安全・安心な食」をテーマに宅配事業を開始しました。
現在のメイン商品は旬の野菜や果物をセットボックスにした定期購入モデル「ぱれっと」。セットボックスにすることで、生産者と消費者の両方に異なる価値を提供しています。また、家庭の生ゴミを減らすための生ゴミ回収システム「エコキッチン倶楽部」、食育を3年学ぶスロープログラム「こども赤かぶ塾」など。その仕組みの素晴らしさが認められ、それぞれGOOD DESIGN賞を受賞しています。
「日本に正しい食卓を。」の想いのもと、仕組み・サービスのデザインをしているらでぃっしゅぼーやのビジネスモデルを参考に、ワークショップに参加した各グループはそれぞれのサービスアイデアを考えました。
各グループから生まれたアイデアは、それぞれ「食べる」をさらに価値あるものにするための独自の着眼点をもったアイデアたちでした。例えば、他人のためにご飯を作る楽しさに着目し、大学と連動してシェアキッチンを活用するアイデアや、ソーシャルメディアで常に他人とつながってしまう現代だからこそ、充実した「ひとりごはん」の時間を支援するためのサービスアイデアなどが発表されていました。
他にも、持ち寄りの楽しさに着目したアイデアや、飲み物と食べ物の相性に着目したアイデアなど、「食べる」の意味をより豊かにしてくれるさまざまな面白いアイデアが生まれていました。どのグループのアイデアも、「食べる」という行為を分解し、どこを変えたらより豊かなものになるのか、と考えた結果生まれたもの。4つのグループでもいくつかのアイデアが出るのですから、人によって「食べる」を豊かにする方法はまだまだありそうです。
ワークショップ終了後は、らでぃっしゅぼーやのオフィスにあるキッチンで作られたおかずたちと、らでぃっしゅぼーやが取り扱っているお米をつかってみんなでおにぎりを作り、食べながら交流する時間になりました。
今回のプロジェクトを主催しているビジネスリサーチラボの伊達さんは、今回のプロジェクトについてこのようなコメントをくださいました。
企業は個別の企業の利益を追求し、研究者は個別の研究を進めるものです。それでは両者が咬み合うことはありません。両者が協力して課題解決に乗り出すことで大きな力が生まれると考えています。その2つを結びつけるために、社会の中にプロジェクトを位置づけることが重要です。
食の問題が、日本社会の中で重要な問題だということにフォーカスできれば、企業も研究者も、社会的な意義を一緒に考える仲間になることができます。今回のワークショップも単発では終わらせません。いろいろな形でコラボレーションし続けること。
つい目先のことに囚われがちになってしまいますが、社会のことを考え大きな絵を描くことで、問題として認識できるものも多く存在します。その視座を研究者と企業で共有できるように働きかけ、共に考える場を継続的に設けられるようにしていくのが私たちの仕事です。
「食べる」という生活に身近で欠かすことができない行動。その行動をいかに豊かなものにできるか考え、実践していくことはとても重要なこと。その貴重な機会が、今回産学の連携によって生み出されました。普段考えが深められていないことを深め、新たな発想を生むためのワークショップ。そして、そうした考える場を作り出すために別の団体が協働していくことが求められる時代を象徴したプロジェクトなのではないでしょうか。
このワークショッププログラムは次回開催も決定しています。次回も学生向けの開催ですが、関心がある方は参加してみてはいかがでしょうか?
みなさんにとって、「おいしい食事」とはどのようなものでしょうか?良質の素材を、腕の良いシェフが調理した料理でしょうか。それとも、気心の知れた友人と、お酒を酌み交わしながら食べる食事でしょうか。あるいは、実家で食べる母親の手料理でしょうか。人によっては「たまに食べるジャンクフードが無ければ生きていけない!」という方もいるかもしれません。
“食べる”という行為が持つ意味は、”食べる”を取り巻くさまざまな文脈の中で決まるものであり、味や素材の良し悪しだけにはとどまりません。今回のワークショップでは、大学生の食生活を様々な角度から分析し、”食べる”について理解を深め、さらには「デザイン」の考え方について学びながら、新しい食生活を提案するビジネスの構想を企画することを試みます。
食べることが好きで毎日の食事をもっと楽しみたい方から、デザインの手法に関心ある方、食にまつわるビジネスに関心のある方まで、ご関心のある方は是非お気軽にご参加ください。おいしいおやつと飲み物を用意して皆様のご参加をお待ちしております。
○企画・ファシリテーター
安斎勇樹 YukiAnzai
1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業。現在、東京大学大学院 学際情報学府 山内研究室(学習環境デザイン論)在籍。実践活動と連携しながら創造性を引き出すワークショップデザインについて研究している。共著『ワークショップデザイン論–創ることで学ぶ』を2013年3月に出版予定。
twitter:@YukiAnzai
日程:2012年12月16日(日曜日)14時~18時(13時45分開場)
※終了後、1時間程度の懇親会を予定しておりますので、お時間のある方は是非ご参加ください。
場所:らでぃっしゅぼーや株式会社
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル 16階
京王新線「初台駅」東口(徒歩1分)[MAP]
定員:15名 ※定員を超えた場合は抽選の上、12月9日までにご連絡します。
参加費:無料
参加方法:下記のフォームからお申し込み下さい。
https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=151718
参加にあたってのご注意
1. 本ワークショップの参加者は「大学生」「大学院生」に限ります。
2. 本ワークショップの様子は写真で記録させて頂きます。写真はブログ等でワークショップレポートとして掲載する場合があります。
協力:Change it!
協賛:らでぃっしゅぼーや株式会社
主催:株式会社ビジネスリサーチラボ
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