渋谷の街全体をキャンパスに見立てて、個性的でユニークな授業を開催する「シブヤ大学」。そして、開かれた対話の場から進みたい未来を思い描いて、さまざまな企画を動かしていく「フューチャーセッション」。このふたつのプロジェクトがコラボレーションしたイベントが開催されています。
シブヤ大学とフューチャーセッションズがコラボレーションすると、なにが起きるのでしょうか。その答えは“渋谷の街全体がフューチャーセンターになってしまう”というもの。「なんだかおもしろそう!」と思った人はもちろん、「よくわからないけど、ちょっと気になる」って人も、このシブヤ大学×フューチャーセッションのレポートをチラリと読んでみてください。コラボセッションが実はあなたの参加を待っているということが、きっとわかると思うので!
シブヤ大学×フューチャーセッションのコラボレーションは、連続したセッションとなっていることが特徴です。最初は7月21日に、恵比寿社会教育館で「フューチャーセンターをつくろう ~シブヤの未来を考える一日~」をテーマに場が設けられ、9月16日には「~シブヤで”自分ごと”の未来をはじめよう~」というテーマでイベントが開催されました。
このシリーズ企画は、2013年3月まで隔月開催予定。全5回がひとつの流れをもったセッションになるのだそう。今回はその第二回目である「シブヤで”自分ごと”の未来をはじめよう」についてご報告したいと思います。
渋谷の街全体をフューチャーセンターに!
この日のセッションは、
13:00~13:30 4人島
13:30~14:30 伝道者14人が均等にばらけて座る
14:45~15:15 10〜20のテーマ発案者が前へ
15:15~16:15 10〜20のグループがワーク
16:15~17:00 シアター形式
というスケジュール。時間にしてみっちり4時間。なかなかの長丁場になりそうです。
最初に、シブヤ大学事務局長の榎本善晃さんと、フューチャーセッションズの野村恭彦さんによる、このセッションの趣旨の案内が行われました。シブヤ大学の榎本さんは、
このセッションでは、僕たちのほうから「なにかをはじめてください」とは言いません。みなさんそれぞれが自分ごととして渋谷という街を捉えるなかで、なにかがはじまってほしいと思ってます。
と、シブヤ大学×フューチャーセッションについて紹介。
野村さんもそれを受けて、次のようにお話してくださいました。
渋谷をキャンパスにして誰もが先生になれるシブヤ大学とコラボレーションすることで、渋谷の街全体をフューチャーセンターにしてしまおうというのが今回のコラボの狙いです。このコラボレーションから、どんなプロジェクトが生まれていくのか、本当に楽しみにしています。
応援ではなく、自ら主体的に関わる姿勢を
セッションのスタートは前回の振り返りから。恵比寿社会教育館で生まれた14のシナリオについての簡単な紹介が行われました。シナリオをざっと紹介してみると…
チーム名:2017年の働き方
テーマ:仕事
演目:“ワークショップ”を通じて、企業、起業家、会社員、ニートなど、課題に応じてさまざまな人をマッチングするコーディネーター
チーム名:助け愛
テーマ:助け愛の場
演目:助け愛劇場「109の裏側」。109の裏側になんでも悩みを聞いてくれる「おばあちゃんの家」を開設。
チーム名:渋谷観光畑
テーマ:観光
演目:「しぶやどうぶつえん」をつくる。緑が豊かで家族連れが訪れやすい街に。
などなど。
会場にはシナリオが書かれた紙を掲げた14人が散らばっていて、みんなでシナリオを見比べながら、気になるテーマを持った人のところへ移動。「どうすればそのシナリオは具体化するの?」「もっとシナリオに磨きをかけるには?」といった視点でディスカッションが行われました。これをひとつのセッションとして、合計3回のセッションが開かれました。
参加者はセッションごとに場所を移動してもいいし、その場にとどまってもよし。賑やかな会場のなか、参加者はダイナミックに動きながら、各シナリオでさまざまな話し合いが行われました。
そして、このセッションの最中には、フューチャーセッションズの野村さんから次のようなアドバイスも。
もしかしてみなさんは、「どのシナリオを応援しよう?」という目線で動いていらっしゃいませんか? そうじゃなくって、「自分自身が主体的に関わって、シナリオを動かしていくならここだ」という姿勢で関わってほしいと思います。「私ならこうする」という姿勢で、議論を深めてください。
参加者一同、シナリオを選ぶのも、グループのなかで討論するのも一生懸命になりました。
オープンスペーステクノロジーという方法論
いったん休憩をはさんだあと、後半戦はオープンスペースステクノロジーを実践しました。オープンスペーステクノロジーとは、4つの原則をもとに議論を進めていく方法論のこと。その4つの原則とは、
・ここにやってきた人は誰でも適任者である
・何が起ころうと、それしか起こることはない
・それがいつはじまろうと、はじまるときが適切なときである
・それが終わったときは、本当に終わったときなのである
というもの。
誰もが主体性を持って参加する必要があるけれど、プロジェクトがはじまるにせよ、はじまらないにせよ、そして終わってしまうにせよ、最終的には場の流れに任せよう、という感じでしょうか。
ここでもう一度、改めてそれまでのディスカッションを踏まえたうえでシナリオを発表することになりました。そこで発表されるシナリオは、前回から引き継いできた14のシナリオをもう一度白紙にもどしたもの。まったく新しいアイデアの提案でもかまわないし、引き継いできた14のテーマをもっと深めたものでもかまわない。そんなふうにして、情熱に火のついた人が次々と新しいシナリオを発表していきました。
その一例をのぞいてみると…
・渋谷動物園プロジェクト
・マイノリティ×コミュニティ=good action
・ゲームの力で渋谷を変えよう!
・CREATOR’S JUNCTION!
・エコな移動式青空教室
・シブヤアート特区プロジェクト
など、多彩なシナリオが15個ほど。そのラインナップは、前回から受け継いだ14のシナリオが発展したものもあれば、まったく新しいアイデアとして提供されているものも。ここからは、再びテーマを出した人が中心となって、そのまわりにプロジェクトに興味を持った人があつまる格好で議論が進められました。
渋谷の未来を、自分ごととして考えてみよう!
オープンスペーステクノロジーで、ファシリテーターの野村さんが念押ししたことは、
このオープンスペーステクノロジーでは、まずはプロジェクトの名前をはっきりさせて、それからゴールはなにかということを考えてください。たとえば動物園プロジェクトなら、動物園をつくるということを目標にしてしまうと、ちょっと遠すぎるような気がします。それよりも、たとえば動物たちをつれてきて渋谷でPRの意味を込めた触れ合いイベントをやってみるとか、まずは近いところに成功の定義を置いてみてください。
それから、本心から、心の底からそのプロジェクトがやりたいと思うようにしながら、その議論に参加するようにしてみてください。
オープンスペーステクノロジーでの話し合いは、盛り上がっているグループがある一方で、考えが煮つまって寡黙になってしまうグループも。もちろん、寡黙になっていることが悪いわけではありません。それだけ誰もがシナリオの実現を真剣に考えているからこそ、簡単に口を開くことができないのです。
やがて時間が来て、プロジェクトの具体的な名前や目標について、グループの代表者が順番に発表。第二回目のシブヤ大学×フューチャーセッションはそこで閉幕となりました。どんなプロジェクトが誕生したのかは、シブヤ大学のウェブサイトでご確認いただくことが可能です。そして、まだこれからもシブヤ大学×フューチャーセッションは、継続していくこととなります。新しい参加者が増えることにより、新しいシナリオが生まれたり、より進化したり。渋谷の未来を輝かせていくことになるでしょう。
シブヤ大学×フューチャーセッション。すべては参加者の本気の想いから。途中参加ももちろんOK。渋谷でこんなプロジェクトをやってみたい、渋谷をこんな街にしたい。参加する一人ひとりの真摯な想いさえあれば、その想いがきっと渋谷の未来をつくりあげていく。さて、いかがでしょうか。あなたの本気が渋谷の街を変えていくことに気づいてしまったのならば、これからはじまるシブヤ大学×フューチャーセッションが俄然気になってきませんか? 渋谷の未来を自分ごととして捉えて、ぜひ、未来をつくる一員になってみてください。
このプロジェクトは開かれているからこそおもしろい
それでは最後に、イベントを終えたシブヤ大学事務局長の榎本さんとフューチャーセッションズの野村さんから一言ずつコメントを。
シブヤ大学としても手探りで進めている部分が大きなプロジェクトです。でも、渋谷全体がフューチャーセンターになったら、いったいなにが起きるんだろうと想像すると、本当にわくわくしてきます。ぜひたくさんの人に参加していただいて、他人ごとではなく、自分ごととして、渋谷の未来に取り組んでみてほしいと思います。(榎本)
今回、シブヤ大学さんとのコラボレーションで二度目の開催となりました。一度目はシナリオができていくこと自体にわくわく感があったのですが、2回目はそれが具体化するような内容も考えなくてはいけませんでしたし、その過程でなくなってしまうプロジェクトもありました。だから、どうなってしまうのだろうと多少心配もしていた部分もあったんですよね。でも、ふたを開けてみれば、後半はとくに熱気がこもって、みんななんとかプロジェクトを実現させようと真剣になっていましたよね。その様子をみていたら、きっとこのプロジェクトはうまくいくと心強く感じました。
このように長期にわたってプロジェクトを行う場合は、本当は参加者を限定して、閉じた空間で進めたほうが実現性が高いと思っています。でも、シブヤ大学×フューチャーセッションは、開かれた場でなければおもしろくありません。途中から参加してくれる人も大歓迎。いろんな人の出入りのなかで、このプロジェクトがどこに向かうのか、僕自身も楽しみにしています。(野村)
次回のシブヤ大学×フューチャーセッションは11月17日(土)開催。気になる人はぜひ、参加してみてください!