ある日突然、知らない男性にこんなカードを渡されます。
あなたはわたしたちの新しいプロジェクトに選ばれました!1000ポンド(約12万円)はあなたのものです。”something good(世界を良くすること)” に使ってください。
封筒の中には現金で1000ポンド。カードの最後にはただ1文字 “X”。
何とも嘘みたいな話ですが、これ、本当の話なのです!今、世界中で話題になっている、たった一人の男性がはじめたラッキーをおすそわけするプロジェクト「Wearelucky.」をご紹介します。
ことの始まりは去年の夏。ある男性が突然、一生使い切れない程の大金を手にしました。せっかくなら、と小さい頃からの夢だった宇宙旅行を予約。しかし、「自分だったらそのお金でなにをしようかなあ」と話していた友人たちのアイデアの方が、もっとクリエイティブで面白いことに気付きます。
その数日後、彼は宇宙旅行をキャンセルし、代わりに「このお金を、みんながとびきりの笑顔になれるようなカッコイイ方法で使いたい」と考えるようになりました。
このお金をできるだけいかしたい!老若男女いろんな人に出会いたい!そして彼らの面白いアイデアをちょっとでも応援したい!そんな彼の思いの詰まった「Wearelucky.」は、至ってシンプルです。
毎日、偶然出会った人に1,000ポンドずつ渡す。条件は、something goodに使うこと。そして写真を撮ってインタビューに応えること。
毎日、新しい人に出会い1,000ポンドを渡すのは、想像以上に難しいようですが、それでも毎日コツコツ続け、今までにおよそ70人もの人々に1,000ポンドを渡してきました。始まってから1年弱、目標の100人までいよいよあと30人のところまで来ています!
ロンドンを始め、ニューヨーク、ケープタウン、ムンバイ、バミューダ諸島など各所で、突然1,000ポンドを手にしたラッキーな人々のインタビューは、続々と公式ホームページに掲載されています。
Berlyn(ラッキータクシー運転手)/バミューダ諸島
Q.何に使いますか?
俺が幸せにしたいと思っている4人にあげることにしたよ。あんたも彼らの顔が見れたらいいな。俺にとってそれって100万ドルと同じくらいだよ。
Q. 「wearelucky」を通じて、“与える”ことへの考え方は変わりましたか?
俺はいつも与えられてきたし、これからも与えていく。与えれば与える程、ちゃんとあんたに戻ってくるよ。まあ、オレにとっては誰かが笑ってくれるだけで十分だな。それだけで幸せだ。これからもそんな生き方をしながら、できるだけ少しのお金を持って生きていきたい。
Frola(リスの守り人 )/ロンドン
Q. 何に使いますか?
二つの慈善団体とイベントに寄付し、リスを助け、両親に誕生日プレゼントを買い、最後に自分の事業の補助費にします。
Q. 誰かに何かいいことをすると、どうして気分がいいのでしょうか?
誰かとつながってると感じられるからです。生きている実感を保ってくれています。
Emily(スーパーママ)/ケープタウン
Q. 何に使いますか?
半分は身近に居る必要としている人にあげる。もう半分はいくらかはまた誰かにあげて、あとは家族に食べ物を買ってあげるわ。
Q.あなたにとってGOODとはどういう意味ですか?
正直でいること、心優しくいること、気にかけること。
他にも、インドのムンバイではストリートチルドレンの保護施設などにも渡しています。元々は、慈善団体への寄付も使い道として考えていたそうです。しかし、この方法を選んだのは、もっと多くの人を巻き込める上に、誰しもがみんな持っている“something good”な取り組みを始めるきっかけを、与えることが出来るからなんだとか。
「やりたいこと」を応援するクラウドファウンディングが当たり前になりつつありますが、「Wearelucky.」は、お金をきっかけに「やりたい」を心の奥から発掘する“逆“クラウドファウンディングとも言えるようなこの仕組み。支援されるひとはもちろんですが、こんな風に新しいアイデアが生まれ、広がっていくことで、支援したひとにとっても魅力的ですね。
以前、greenz.jpでも「小さなカフェで起こった映画のような物語」を紹介しましたが、誰かのために使うことは、もしかしたら自分のために使うこと以上に、喜びのあるお金の使い方なのかも知れません。
だからこそ、このプロジェクトの名前は「“You”are lucky」でなく、「“We”are lucky」。あなたもわたしもお互いラッキーなんだ、というという彼の気持ちが伝わってきますね。
もしもあなたが1,000ポンドもらったら何に使いますか?「something good」なアイデアが浮かんだら、ぜひ教えてください!
(Text:鳥居真樹)