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“九谷焼スカル”も登場!進化する伝統工芸品の魅力を世界に発信する「まちづくりGIFT」 [マイプロSHOWCASE]

九谷焼スカル

これが伝統工芸品!?職人とデザイナーがコラボレーションした「九谷焼スカル」

ドキッとするようなこの髑髏(どくろ)、一体なんだと思いますか?
なんとこれ、日本の伝統工芸で作られたオブジェ。350年の歴史を持ち、鮮やかな色彩で昔から多くの方に愛されてきた「九谷焼(くたにやき)」なんです。

「伝統工芸品」と聞いて思い浮かべるのは陶磁器や漆器、織物などでしょうか。今の私たちの生活を改めて見回してみると、それらは必ずしも身近なものばかりではないかもしれません。実際に伝統工芸品産業を取り巻く環境は年々厳しくなっており、その生産額はこの20年あまりで60%強にまで落ち込みました。(経済産業大臣指定伝統的工芸品統計より)

そんな中、こうした伝統工芸品産業、さらには地域の雇用減少の問題に対して、これまでの伝統工芸品に現代の新しいセンスをミックスするなどの新しい視点を加えて、その両方の問題を解決しようと設立されたのが「まちづくりGIFT」です。

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日本の伝統工芸品の魅力を海外に伝えたい

伝統工芸品は、主に都市部ではなく地域の職人たちによって作られています。また、その商品価値は海外でも高く評価されています。そこで「まちづくりGIFT」では、地域で作られる伝統工芸品の海外進出の支援を主な事業として行っています。これまでに冒頭の「九谷焼スカル」のオブジェや、ハンドメイドにこだわったガラスメーカーの製品などを海外に紹介してきました。

具体的には、海外向けのネット通販事業や、商品の魅力をわかりやすく伝えるウェブページの制作や翻訳、また、海外配送のノウハウ提供やサポートなどです。

これらはどれも、高齢化する伝統工芸品の生産者自身で行うのにはなかなか難しいことばかり。そこでこうしたサービスの提供を利用することで、売上の低下に悩む伝統工芸品の生産者が“販売すること”に時間や労力をかける必要が無くなるのです。その結果、“制作すること”に集中できるようになり、品質を向上させることにも直接つながるのも大きなメリットといえるでしょう。

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しかし、販路を海外に広げることだけで伝統工芸品産業を取り巻く環境が改善し、それらを生産する地域に雇用が生まれるのでしょうか。

おそらく問題はそう簡単ではなく、伝統工芸品産業が以前より縮小してしまったのはどうしてなのか?を考える必要があります。

ひとつには近代化による生活様式の変化が挙げられます。古くからの暮らしに沿ったものが多い伝統工芸品にとって、個人の嗜好の変化はとても影響が大きいのです。また、標準化された低価格の商品が大量に供給されるようになったこともけっして無視できません。

長く大切に使え、使い込むほどに表情を変える伝統工芸品。もちろんその良さを知り、楽しんでいる人もたくさんいます。しかし多くの人にとっては、衰退していくことに寂しさを感じつつも、普段の暮らしに積極的に取り入れようとするものではなくなってしまっているのかもしれません。

では、このような状況を踏まえて、伝統工芸品がこれまで以上に選んでもらえるようになるには、一体どうしたらよいのでしょうか。「まちづくりGIFT」代表理事の斉藤潤一さんに聞いてみました。

伝統を守りつつ、新しいものを作り出す

「まちづくりGIFT」代表理事の斉藤潤一さん(右)
「まちづくりGIFT」代表理事の斉藤潤一さん(右)

大切なことは、伝統工芸品も他の商品と同じように世の中のニーズに応えることだと思います。

伝統工芸品産業は縮小していますが、もちろん元気なところもたくさんあります。でも、“伝統を守ること”に重きを置くことで、世の中のニーズから取り残されてしまったところが多いのもまた事実なんです。

伝統工芸品だって、“伝統”と呼ばれたのはあくまでも後々のこと。元々は生活に密着し、必要があったこらこそ生まれたはずです。だから今の伝統工芸品も、受け継がれてきた伝統の部分は守りつつも、それに囚われずに現代のセンスを加えて新しいものを作り出すことができれば、選んでくれる人はもっといるはずだと考えています。

「まちづくりGIFT」で取り扱っている「九谷焼スカル」などは、伝統工芸品の職人と気鋭のデザイナーがコラボレーションした、古さを感じさせない洗練された商品。こうした商品は海外でも人気が出やすいそうです。

「伝統の部分は守りつつも、それでいて新しいものを作り出しているかどうかが、そのまま「まちづくりGIFT」で取り扱う商品の基準のひとつにもなっている」と、斉藤さんは言います。

また、全国を飛び回り、たくさんの職人に直接お話を伺ってきた経験をふまえ、伝統工芸品の“粋”についてこう語ります。

とある職人さんが「一生懸命やった結果として時代の流れで衰退するなら、輝いていた時の形を守ったまま消えていくつもりです。それを受け入れるのも伝統工芸」と話してくれました。

中国産などのコストの安い製品と同じ土俵で対抗する道は選ばない、と。伝統に殉ずる、まさにサムライのような志を感じて心を打たれました。現状を受け止めて、今やるべきことに全力を尽くすというか。正に日本の粋ですよね。

ただ、やはりこれまでのままのものではどうしても売れにくいというのも、また事実です。時代の変化を知って努力した例で言うと、岩手の南部鉄瓶が中国に展開するために、3年間かけて市場調査した上で製品をカスタマイズしたんです。もちろん伝統の技は守りながらです。

そうすると、中国でプーアル茶を飲む方に支持されて大ヒットしました。あるがままに衰退を受け入れるのも粋ですが、伝統の技を守りながら今の人に喜ばれるものを作ることも、また粋なことだと思いました。

世界に通じる伝統工芸品をプロデュースしたい

画像提供:まちづくりGIFT
画像提供:まちづくりGIFT

「まちづくりGIFT」がこれから取り組もうとしているのは、伝統工芸品の魅力を海外に紹介することに加え、市場ニーズを反映したヒット商品を生み出すこと。

生産者の代わりに海外の消費者ニーズをリサーチして作り手に伝え、今よりもっと喜ばれるためのカスタマイズや、デザイナーとのコラボレーション企画を提案していく予定です。

近い将来、これまでの伝統工芸品のイメージから想像もつかなかった製品が私たちの暮らしに身近なものとして登場したら、どんなに面白いでしょう。「まちづくりGIFT」の働きかけで生まれる伝統工芸品を目にするのが、今からとても楽しみです。

地域の雇用を守りたいという原体験

日本の伝統工芸品の未来に新しい風を吹き込む「まちづくりGIFT」ですが、代表の斉藤さんにその活動を始めることになったきっかけを聞いてみました。

二十歳を過ぎた頃から留学や仕事で海外に暮らしていたのですが、その時に日本の素晴らしさに改めて気付いたんです。電気、ガス、水道のインフラ面もそうですし、国民性もそう。

外国の人と話をすると、必ず「日本は本当にいい国だよね」と言われるんです。このときの数年間で「日本の良さを世界にもっと伝えたい」という思いがぐっと芽生えました。

僕自身、小さい頃ずっと田舎育ちだったこともあって田舎が大好きなんです。なんにもない奈良の山奥に住んでいたこともありますし、長崎に住んでいたときにはいわゆる“おすそ分けの文化”が根付いているところで育ちました。

だから美しい田舎の原風景を守りたいという気持ちは強くあって、それが「地域の雇用を守りたい」という思いにつながりました。

「美しい田舎の原風景を守りたい」 License Some rights reserved by  harezou

「美しい田舎の原風景を守りたい」 License Some rights reserved by harezou

「日本の良さを世界にもっと伝えたい」、そして「地域の雇用を守りたい」というふたつの思い。そこにアーティストになろうかと思ったこともあというほどにアートが好きだったことも加わって、日本の伝統工芸品を海外に紹介するという活動に繋がったと言います。

僕が海外で特に感じるのは、日本への”信頼の厚さ”です。なぜそんなに信頼が厚いのかといえば、今の日本を築き、礎となった先輩たちのおかげです。そんな先輩方に感謝していると同時に、自分の世代も次の世代に良いものを残していかなくてはと思うんです。

そのために僕にできること、“GIFT”を社会に還元していくのが使命だと感じています。

先日greenz,jpでもご紹介した、伝統工芸の技術を使った子ども向けブランド「aeru」をはじめ、受け継がれてきた技術と現代の新しいセンスを取り入れた伝統工芸品も少しずつ生まれはじめています。

職人が一つひとつつくる製品のぬくもりと日本の文化。少しだけ敷居の高かった伝統工芸品も、より身近なものになることでこれらを次の世代につないでいくことになります。

日本の良さを世界のみならず、改めてわたしたちにも感じさせてくれる伝統工芸品。新鮮な驚きとの出会いにこれからも期待できそうです!

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