東日本大震災で最も被害が大きかった地域のひとつである、宮城県・石巻市。津波で街のほとんどがさらわれてしまった映像や写真を見て、茫然自失となってしまった人はたくさんいるのではないでしょうか。
石巻市の災害廃棄物の量は、宮城県で1年間に発生する廃棄物の19年分とも言われており、現在でも市内の仮置き場には、廃材が15〜20メートルほどの高さに積まれたまま処理が進んでいない状況です。
そんな石巻市にある渡波小学校で、昨年、立体イラストレーション作家の犬飼ともさんが代表を務めるNPO「ワタノハスマイル」が主宰して、震災のガレキを使ってオブジェを作るワークショップが行われました。
渡波小学校で避難生活を送る子どもたちが、校庭に流れついたガレキを集めて自由に組み合わせて作り上げたものは、どれもポップで、キュートで、ポジティブなメッセージに溢れています。
辛い記憶を抱えているのにも関わらず、彼、彼女たちが作るオブジェのほとんどに笑顔が描かれているのが印象的です。
この子どもたちによるアート作品たちは「ワタノハスマイル展」と名付けられて日本各地をまわり、多くの人に復興に向けた力強いメッセージを伝えていきました。活動はやがて海外にも知られることとなり、今年3月には、この取り組みに感動した在日イタリアの支援団体によって、イタリア・ザガローロ市にある市立おもちゃ博物館で展覧会も行われました。
子どもたちの渡航費用は、クラウドファンディング「READYFOR?」で呼びかけられ見事成立。イタリアに渡った子どもたちは、現地の子どもたちとともに、ワークショップやスポーツなどを通じて交流を深めているようです。この経験は、きっと彼・彼女たちの糧になり、復興への次なるアクションへとつながっていくことでしょう。
ガレキも元は誰かの生活の中で使われていた「大切なもの」だったはず。それが津波によって廃材となり、処分するのに莫大な時間と費用がかかるという状況の中、子どもたちの前向きなパワーによって再び「大切なもの」として生まれ変わったのです。人々を感動させ、新たなつながりを生み出すという付加価値もつけて。
たとえ価値がなくなってしまっても、発想の転換次第で新たな価値を生み出すことができる––。「ワタノハスマイル」プロジェクトはそんなメッセージを私たちに伝えてくれました。東日本大震災から1年が経った今、改めてその大切さを噛み締め、自分たちに何ができるのかを考え続けていきたいですね。
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