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ローカリゼーションで幸せになれる?映画『幸せの経済学』に学ぶローカリゼーション・ムーブメント

greenz/グリーンズ 幸せの経済学 ポスター

成長とは何か、幸せとは何か。

アメリカで行う世論調査で「非常に幸福だ」と答えた人の割合は、1956年をピークに徐々に下がっているそうです。その間も世界経済は成長を続け、世界中にものがあふれ、物質的には人は豊かになっているはずであるにもかかわらず。なぜ人々は豊かになっているのに幸せを感じることができなくなってしまっているのか… その答えをローカリゼーションに求めたヘレナ・ノーバーグ=ホッジなどが監督した映画『幸せの経済学』の全国100か所で同時自主上映会がまもなく行われる予定です。

言語学者としてISEC(The International Society for Ecology and Culture)を創設したヘレナ・ノーバーグ=ホッジはインドのラダック地方での研究を通じて、ローカリゼーションにこそ人々の幸せの鍵があると考えるようになりました。簡単に言ってしまえば、経済の成長とともに進行したグローバリゼーションこそが人々が幸せを感じられなくなった原因であり、ローカリゼーションが実現すれば人々は再び幸せを感じることができるようになるというのです。

そのことを人々に示すためにヘレナはISECの仲間達と5年という歳月をかけ、この映画を完成させました。

この映画にはラダックはもちろん、日本も含めさまざまな場所でのローカリゼーションの事例が登場します。それを観れば、ローカリゼーションの意味が理解できる。そんな映画になっています。ある意味では教科書的な、あるいは「グローバリゼーションってなんか…」と思っている人が次の一歩を踏み出すためのヒントになるような、そんな映画なのです。

greenz/グリーンズ 幸せの経済学 サブ 日本

しかし、この映画を観ればローカリゼーションについて多くを知ることができるかといえばそういうわけではなく、あくまで概説に過ぎないのも確かです。私がこの映画を観てまず思ったのは「ラダックについてもっと知りたい」ということ、30年前のラダックと現在のラダック、その変化から見えてくることはきっとさまざまなことを考えるヒントになるだろうということでした。観た人の多くはそのようにここに描かれた何かをさらに深く知りたいと考えるのではないでしょうか?あるいはそのような主体的な関わり方をこの映画は求めているのではないでしょうか?

実際にこの映画は単に映画として上映していくだけでなく、自主上映会という形で積極的に関わってくれる人を広く募集しています。そして、5/22(日)には全国100か所で同時自主上映会を開催することを目指して活動しているのです。さらに、自主上映会とともにワークショップなどを行うことも勧めており、上映会自体がローカリゼーションの試みとなるという仕組みなのです。

そのあたりを映画上映後に辻信一さんと対談を行ったヘレナさんの言葉で紐解いていきましょう。質問者は谷崎テトラさんです。

greenz/グリーンズ 幸せの経済学 対談

ローカリゼーションとは?
ヘレナ:ローカリゼーションは経済的な言葉で、生産地と消費地、生産者と消費者、人々と自然界の距離を縮めることをいいます。地域にある小さなビジネスを再評価し、巨大な企業に奪われていた富や豊かさを取り戻す。多国籍企業に依存するようになってしまった地域や国がもう一度自立していくことです。
グローバルからこのローカルへの流れは小さな変化を積み重ねることによってできます。この映画に登場したローカル化した経済は大きな企業やマスメディア、政府の支援ではなく、草の根の活動によって成立したもの。そこから人々は大きな利益を得て、幸せを感じられているのです。

この映画が作られた背景はどのようなものでしょうか?
ヘレナ:ラダックについての本と映画に対して、さまざまな地域から「これは私たち自身の物語でもある」という反応が返ってきました。それは、マスコミが喧伝している「大企業に頼らなければわれわれは食べていけなくなる」という物語とはまったく違う物語だったのです。
だから、その物語を集めるためにいろいろな場所に行きインタビューを重ねることで映画ができていきました。世界のどこにでも、世界をもっと平和でやさしいものに変革していこうという人たちはいるのです。人と人との絆を大切にし、人と自然界とがもっと良好な関係を結べるそんなモデルを困難に打ち勝って作り出しているのです。そんな人たちに励まされて映画は完成しました。

この映画はムーブメントだとおっしゃっていますがその真意は?
ヘレナ:世界ではすでにローカリゼーションについての動きがたくさんあります。ローカルフード、、エコビレッジ。トランジションタウン、そのような活動をする小さなグループがたくさんあります。それを横につないでいく必要があります。特に社会的な問題に関心がある人と環境問題に関心のある人の間がつながっておらず、時には対立さえしている。これは世界を支配したい人たちの思う壺なのです。「ビックピクチャー」を皆が分かち合うことができれば、つながっていくことができるはずです。
そのために、私たちはウェブサイトを作っています。そこにはたくさんの情報が用意されていますし、反応やメッセージを送っていただければ、それぞれの地域でどのようなこと

辻:自主上映という形で広げようとしているのもムーブメントです。ヘレナがよく言うのは、トップダウンに対するボトムアップということ。マスメディアに頼るという今までのやり方はトップダウンです。それに対して一人一人がこの映画をツールとして活用しながらムーブメントにしていくというのはボトムアップなのです。

東京のような大都市で「ローカル」というときには、何を指すのでしょうか?
ヘレナ:ローカルフードの運動は実はニューヨークやサンフランシスコといった大都市から始まりました。「より近い場所」から食べ物を得るべきだと気づいたんです。このように距離を縮めるということがローカリゼーションの基本です。また、3,40年前の大都市には都市の中に多様な地域があり、その特色のある地域が人々の幸せ度を高めていました。それを取り戻すというのもローカリゼーションを実現するひとつの方法だと思います。
今は匿名性が広がって隣の人が誰かもわからないという時代です。ローカルと言っても「自分の周りに住んでいる人」と厳密に考える必要はありません。もう少し範囲を広げて、自分と同じようなことに関心を持っている人たちと、グループを結成することでもいいのです。それが新しいコミュニティの出発点になります。踊りが踊りたいとか、料理がしたいといった自分がやりたいことをともに分かち合い、同時に社会的な問題についても話し合える仲間を見つけることです。ローカル化というのは具体的な地域に限定する必要はなく、もう少し広げて考えてもいいものなのです。

「ムーブメント」であること、これが強調されていました。これは単なる映画ではなく、活動のための道具、行動を起こすためのエンジンだということです。この映画によってローカルのコミュニティを活性化させ、「映画+X」によってローカリゼーションを進める。そして、それによってグローバル化する世界に疑問を持つ人々をどんどん巻き込んでいく、それがこの映画の真の意図なのでしょう。

まずはローカリゼーションとは何かを考えるために映画を観る。そこから先はあなた次第です。

幸せの経済学 The Economics of Happines
2010年, 68分
プロデューサー:ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ
監督:ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーリック、ジョン・ページ
制作:The International Society for Ecology and Culture(ISEC)
配給・宣伝:ユナイテッドピープル

渋谷アップリンク UPLINK X で5/21から公開決定!
2011年5月21日(土)~ 連日12:45から
料金:一般¥1500/学生¥1300/シニア¥1000/UPLINK会員¥1000
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5/21, 22はトークショーも
・5月21日(土)、12:45~、15:30~
ゲスト: 鎌田 陽司さん(NPO法人 懐かしい未来)
・5月22日(日)12:45~
ゲスト:辻信一さん(ナマケモノ倶楽部)

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