「うちの庭の木になったさくらんぼを収穫にきて!」そんな木の所有者の依頼に応えてくれるのが、カナダのトロントにある「Not Far From the Tree」。地域社会がつながるきっかけが生まれそうな、とても素敵な活動です。
「Not Far From the Tree」は、「誰か庭の木になったりんごを捕ってくれないかしら!」「さくらんぼが実りすぎちゃったの」といった依頼を受けて、ボランティアチームが依頼主のお宅に足を運び、木に実った果物を収穫するという団体です。収穫した果物は、木の所有者、ボランティア、そして、フードバンクなどの収穫物を有益に使ってくれる地域団体で3分の1ずつシェアします。地域で実った果物を、地域の人が収穫させて頂き、地域でシェアして食べるという、ユニークかつ素敵な取り組みなんです。
昨年はトロントのWard21地域を中心として活動し、3690kgもの果実を収穫したそう。そのまま放置しておいたら腐ってしまう食べ物を無駄にしないのは言うまでもなく、収穫を通じて、トロントという大都市で地域住民が助け合ったり、自分が住む地域ではどんな果物が育つのかわかったり、食べ物の安全性について考えたりなど、新しい気づきがたくさんありそうな点も、この活動の魅力だと思います。
さて、日本の大都市でこの「Not Far From the Tree」のような活動ができるかと言えば、おそらく難しいでしょう。大きな庭を持つ家庭は多くありませんし、土地が確保されている公共の場に果実をつける木が植えられることはなかなかありません。しかし、公園や廃校、空き地の一部に地域全体で育てるミニ果樹園を作り、時間に余裕がある高齢者やボランティアなどの活動拠点として機能させることは可能かもしれませんね。
「Not Far From the Tree」では今年から、果実の収穫できない冬には木からとれるメープルシロップを試験的に収穫し、試食しているそうです。カナダでも都市でシロップを獲るのは一般的ではないようですが、少し手を加えればおいしく頂けるとのことで、新しい食の可能性に挑戦している点も面白いと思います。
売ることが目的ではなく、地域の実りを、獲って、食べて、シェアして、そして楽しみとする。究極のおすそ分けというか、地産地消というか・・・。新しいカタチの都市での地域活動として、これからの「Not Far From the Tree」にも注目していきたいです。
All photo by Not Far From The Tree. Laura Reinsborough, Marnie Saskin, and Laurel Atkinson.
「Not Far From the Tree」に興味を持ったら・・・