「天然住宅」は、国産無垢材や自然素材にこだわり、健康でエコな住まいを提案・コーディネートしている専門家の集まりだ。国産の天然無垢材を使った化学物質フリーの家は、健康にも優しい。その「天然住宅」が、「コモンズの森をつくろう!」というプロジェクトをたちあげた。
このプロジェクトは、住宅の素材となる木が生まれる場所である森をみんなで守っていく仕組みだ。森を育て、家を建てる木材まで育てるためには、時間もお金もかかる。すぐには儲からないから、長期的な投資が必要になる。その投資のお金を、普通の市民の「志あるお金」を頂きながら、森を守っていこうという仕組みだ。利子を払わなくてよくなれば、その分を余裕を持って、森を育てることに専念できる。(似たような仕組みとして、岡山県西粟倉の「共有の森ファンド」がある。西粟倉についてのgreenz記事はこちら。)
どうして、こんな仕組みが必要なのか。その一端は、日本の森が抱える問題にある。
国土の67%が森林である森林大国、日本。旅の車窓から見える風景も、森、森、森だ。しかし、一見、深々とした緑に覆われた森にも問題がある。それは、人の手が入らなくなっていること。日本の森林の多くは、昔から人々が手を入れて育ててきた。手を入れることで、長い間私たちは森の恩恵を受けてきた。しかし、輸入材の台頭や担い手の減少で、森に人の手が入らなくなっている。これまで人の手で守られてきた森に手が入らなくなると、森が荒れ、森の力が弱まってしまう。それが、日本の多くの森で起きている問題だ。
「コモンズの森を作ろう!」が生まれるきっかけには、ちょっとしたストーリーがある。詳しくはウェブサイト(左のStoryに「ギザギザ山のおはなし」というスライドショーがあります)からみていただきたいが、ここでもちょっとだけ紹介しよう。
「コモンズの森をつくろう!」で集められたお金は、まずは宮城県の駒栗の森を守るために使われる。その森は、かつて産廃業者が買い取ろうとしていた森だった。山奥に産業廃棄物を片付けることができれば、じゅうぶん元手がとれる商売になるからだ。しかし、駒栗の森を守ってきた駒栗木材株式会社さんは、産廃業者の手に渡るのであればと、260haに及ぶその森を買った。正確に言うと、買ってしまった。採算の苦しい投資と知りながら・・・。
その後、地元のNPOであるエコラ倶楽部も山の手入れに加わった。しかし、金融機関に払う年間の利子は、減るわけではなかった。その額は、人件費2人分にも及ぶそうだ。その話をきいた「天然住宅」が、この森を「コモンズの森」にしようと動きだした。
コモンズの森とは、共有の森という意味だ。今のようなはっきりとした所有という概念がなかった時代の森は、コモンズの森だった。みんなで森を守り、みんなで森の恩恵を受けていた。もう、その時代には戻れないかもしれないけれど、工夫をすれば、コモンズの森に近づけることができるはずだ。
「コモンズの森」に出資したひとには、金利というリターンはありません。この部分は普通の投資とは違うところだ。しかし、出資者にはいくつかの特典がある。まず、コモンズの森の気持ちのよい保養施設に一泊1000円で泊まれる。そして、近くの森を楽しむことができる。近くに良い温泉もあるそうだ。お金にはならないけれど、自分が少しだけサポートしている森、いつでも遊びに行ける森ができる。
「コモンズの森」の仕組みは、日本の森の問題を解決していくきっかけになるかもしれない。でも、このプロジェクトの一番すごいところは、普通の人でも、森に関わり始めることができるところだと思う。森を思い、森と関わり、森に遊ぶ。そんなライフスタイルを指向するひとなら、この話にのってみる価値はおおありだと思う。
「コモンズの森」に出資する。