世界をより良い場所にするには様々なチカラが必要です。
政治のチカラ。
お金のチカラ。
エネルギーのチカラ。
時には、武器のチカラを信じる人もいます。
しかし、モノやお金ではなく、人間の心に訴える『音楽』のチカラを信じている人たちがいます。ここでは、音楽で世界を変えようと、複雑化する社会問題へ立ち向かう勇敢なアーティストを紹介します。
The Price of Silence
1948年12月10日に国際連合で採択された、世界人権宣言。その宣言では、第二次世界大戦で起こった悲劇を二度と繰り返さないようにという反省から、人権が「世界における自由、正義、および平和の基礎である」ということを示しています。世界人権宣言 | AMNESTY INTERNATIONAL JAPANより
その宣言60周年を祝いLink TV: Television Without Bordersによって制作された曲が『The Price of Silence』。プロデューサーAndres Levinのもと、経済制裁が続くキューバ、人権侵害が伝えらるチベット、紛争による混乱がいまだ続くスーダンなどのアーティストが参加。またアメリカからは個性的なことで知られるNatalie Merchantなど、合計13カ国の意識の高いミュージシャンがこの人権啓発プロジェクトに賛同し名乗りを上げました。この壮大なプロジェクトに取り組む彼らを結ぶのは、公平な人権への強い思い。そして『この歌が世界を変える』ということを信じ、力強い歌声にのせてそのメッセージを伝えています。
参加アーティスト
Julieta Venegas [Mexico], Aterciopelados [Colombia],
Yungchen Lhamo [Tibet], Angelique Kidjo [Benin] ,
Yerba Buena [Cuba/United States], Chiwoniso Maraire [Zimbabwe],
Rachid Taha [France/Algeria], Kiran Ahluwalia [India],
Emmanuel Jal [Sudan], Hugh Masekela [South Africa],
Chali 2na [United States], Natacha Atlas [United Kingdom/Egypt]
実際はこの曲の登場する以外にも数多くのアーティストが参加表明をしましたが、各国政府からの弾圧などの諸事情により参加断念したアーティストが数多くいるという話もあります。アーティストの表現の自由までも脅かす、その問題の複雑さが伺い知れます。また、このプロジェクトでは、楽曲の売り上げを世界的な人権保護団体「アムネスティーインターナショナル」に寄付が出来る仕組みになっています。
Aterciopelados – Canción Protesta
そのパワフルな曲の原曲は、Aterciopeladosという、ラテングラミー賞の受賞経験もあるコロンビアのロックバンドの「Canción Protesta 」という曲。彼らは、人権侵害、女性の権利や環境問題を歌で伝える社会派ミュージシャンとしても知られており、2008年にはコロンビアのボゴタ川の汚染問題に積極的に参加し、政治的な発言も続けています。このビデオでは、銃に見立てたギターをひくなど、流される映像とともに音楽を通して挑発的なメッセージを発信しています。
Music for Human Rights on Link TV
アムネスティーインターナショナルのMusic for Human Rightsというプロジェクトで、様々なアーティストのインタビュービデオをまとめたサイトがこちら。楽曲『The Price of Silence』に参加したアーティストや、その他のアーティストの人権への思いが自らの経験などとともに語られています。その中には。世界中から注目されているソマリア出身のラッパー、K’Naan (ケイナーン) のインタビューもあります。彼は祖国の内戦から逃げるように12歳でアメリカへ亡命し、現在ではカナダを拠点に音楽活動を行い、歌を通して平和のメッセージを伝えています。このように国籍や経験は違えど、アーティスト共通の強いメッセージを知る事ができます。
楽曲『The price of silence』の中で特に注目するのは、Emmanuel Jal(エマニュエル・ジャル)。彼はスーダン南部の農村地帯に生まれ、幼い頃から続く内戦の混乱の中、身内のほとんどを殺され幼い頃から少年兵として青春時代を送ります。しかし、子供ながら人を殺すことを強要させられた彼らを助け出したイギリスの慈善団体のおかげで、一人の人間としての人生を再スタートさせたのです。曲の中で彼はこう訴えます。
※Emmanuel Jalについては、次回詳しくお伝えします!
I see too many papers getting signed and nothing getting done
Young children in the battlefields firing guns
I, Emmanuel Jal, war child born in war-torn Sudan
Lost my childhood, was it really God’s plan?僕は見て来た。多くの決まり事が紙の上だけで、現実にならない事。
そして、多くの子供たちが戦場で戦っている事実も。
僕、エマニュエル・ジャルはスーダンに戦火の中に生まれ、war child (戦争の子)として子供の時間を失った。
それが本当に神の望む事なのだろうか?
“僕にとって音楽が最大の表現方法だ”。本当に想像を絶する体験をして来た彼が今熱心に取り組むのは、音楽を通して世界で起こっている事実を人に伝えること。そして他のアーティストと同じく訴えるのは、それぞれの人権が守られた平和で公平な社会。様々な社会問題を解決するのに客観的な視点が多く語られますが、実際にその境遇にあったエマニュエルたちが届ける言葉の中に、次の世代を人類が生き抜くヒントが隠されているかもしれません。音楽というツールを使い、世界をより良い場所へ変えようと努力を惜しまないアーティストたち。そんな彼らの歌声に耳をかたむけてみましょう。
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